知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷
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【第1話】フレイザードは、仲間になってほしそうにこちらを見ている

----フレイザードSide----

俺がこの世界に気がついたときは、何か目の前の炎の中からメダル取れと言われたときだった。

いわゆる転生というものらしく、俺の体は半分氷・半分炎という人外になっていたが、元の持ち主の記憶を吸収したようで、この世界のことは瞬時に理解できた。

その結果どうやらドラクエっぽい世界に転生したらしいが、バーンやハドラーという魔王は俺がやったドラクエにはいない。

「7以降のドラクエ世界だろうな。ドラクエは6で止めちまったからなぁ…」

6以降のレベルを上げると特技を覚えなくなる職業システムが苦手で、それ以降のドラクエはやってないからだ。
だが原作を知らないのも痛いが、それ以上に次のことが痛い。

「この体、ハドラー様の魔力で作られているから、基本逆らえないんだよなぁ…」

体に忠誠心が埋め込まれているらしく、呼び捨てにすらできない。

そしてどう考えても、人間に対して攻撃しなければいけない。人を殴ったこともない俺にとって、悪役なんて無理難題過ぎる。
それを避けるためと、せっかくドラクエ世界に来れたこともあり、他ドラクエにあった『とくぎ』を古代技術と言い張り、研究すると駄々をこねた。

長期戦になると思っていたが、研究をすると言い出してからは意外にすんなり研究室をもらうことができた。元の体の持ち主がフィンガー・フレア・ボムズなど、幾つかオリジナルの呪文を作っていたおかげだろう。
ただ研究を開始して、思ったことがある。

「この体、研究者に向いてねぇ…」

記録を残そうと筆や紙を持っても、燃える・凍る・濡れるの三重苦。
とりあえず『瞑想』とか一部のとくぎを自分で使えるようになったものの、その過程や効果を成果として残すことができない。

氷炎魔団の手下もフレイムとか爆弾岩とかそんなのばっかで使えず、妖魔士団に助けを求めたけど、あの妖怪ジジイと部下は鼻で笑いやがった。
腹が立ったが、ため息をつくついでに『激しい炎』と『凍える吹雪』で室内温度を急変させたんで、水に流してやろう。

だがそんな状態で研究が進むはずもなく、研究を続けたければ軍を率いて来いと命じられてしまった。
できるだけ人死にだけは出さないようにしたが、それでも相当嫌気がさしている。

でも今回の遠征でしばらくは大丈夫だろう。
転生前でも仕事以外では外出しない、プチ引きこもりだったんだ。周囲の白い目などなんてことない。

ついでに他の体に乗り移る研究もしよう。ドラクエの世界は下着が装備として認められるほど露出が高く、魅力的なキャラが多い。きっとこの世界でも、素敵な女性がいるはずだ。
その際にこんな体じゃ、恋人すら作れない。

「そして神は俺を見捨てていなかった…!ようやく運が向いてきたぞ!」

まず転生先肉体の候補として、脳死した魔族の肉体もバーン様より手に入れた。すぐに転生できるとは思えないが、千里の道も一歩から。とりあえず蘇生液に漬けておいて腐らせず、少しずつ進めていこう。

更に攻め込んだオーザム王国に、恐らく奴隷として扱われていたと思われる、翼の生えた美女を見つけた。
きっと天空人だろう。

この体では恋人候補にできないが、それでも目の保養としても助手としても文句なしの逸材だ。何とか説得してみよう。


----???Side----

私は精霊。
天界に住む、天空人とも呼ばれる存在だった。

だが私は他の同族と違っていた。通常なら封印術が得意で武力がない精霊でありながら、攻撃呪文や格闘を得意としていたからだ。
そのため周囲からは精霊のふりをした人間、または魔族だと常に罵られた。

私はそれに耐えられなかった。だから地上界であれば、私を受け入れてくれると思った。そう思って地上界に下りた私を待っていたのは、人間によって首につけられた鎖とあざけ笑う声だった。
そしてその人間達を蹴散らし、私を人間の国から引きずり出したのは氷と炎を合わせた化け物。魔王軍の手先だという。

「私が生きてきた理由は、何だったの…?」

同族・人間に人として扱われず、魔族どころか人でもない者に殺される。私はきっと、神にも嫌われているのだろう。

「いや、そんな死んだ魚のような目しないで、俺の話を聞いてくれない?」

化け物はそう言ってくる。死に方でも選ばせる気だろう。

「そんなことしないから!…そうじゃなくて、俺が研究している戦闘技術の手伝いをしてほしいんだよ」

言っていることが本当なら、私はこの化け物の研究記録だけを行えば、戦闘も何もしないでいいらしい。

「俺はそもそも、戦闘は嫌いなんだ。かといって何もしないと魔力の提供断たれて死んじまうから、研究して引きこもることが命綱なんだよ。だから、この通り!」

両手を合わせて、懇願してくる。その目は外見に反してこちらにすがるような、弱々しい目だ。
…私がこれまで生きてきて、誰かからこんな目で見られるのは初めてだった。

どうせ私は、精霊・人間・神から嫌われた存在だ。たとえ魔王や悪魔に協力しても、誰も気に留めないだろう。

「…わかりました。私の名前はクーラ。私に唯一持つことを許されたこの名に懸けて、あなたに協力することを誓いましょう」



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