知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷

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【2022/02/18 追記】
本日までに誤字報告機能にて、7名から誤字脱字のご指摘をいただきました。

ありがとうございます。


【第16話】フェンブレンは、本気で嫌がっている

----クロコダインSide----

 

敵の本拠地が死の大地であることを突き止め、ダイと戻ってきたポップだったが、レイザー達はいつまで経っても戻ってこなかった。

 

マリン達からレイザー達の魔力があまり残っていないことを聞いてようやく事情を察したポップは、マリンが持っていた魔法の聖水を全て奪い、同行すると言い張る傷ついたダイを制してから、俺達と一緒に捜索に出てほしいと頼み込んだ。

 

その協力者の指示で、怪しいと言われたのがこの氷山地帯だ。

 

「メルル!頼む!この辺りのどこなんだ!?なぁ、教えてくれ!」

 

「ぽ、ポップさん…近い…。顔、近すぎです…!」

 

俺以外に協力を頼んだメルルを問答無用で抱きかかえたまま、トベルーラで飛ぶポップが問い詰める。

 

…やれやれ。いくら俺でも、彼女の心情は理解できるぞ。

この様子では、出発する直前マァムが般若のような顔をしていたことも気づいてないんだろうな。

 

「落ち着くんだ、ポップ。そんなに焦っては何事も上手くいかんぞ」

 

とりあえず、彼女に助け舟を出してやる。

それと合わせて、鼻が利くという理由で一緒にガルーダに乗っているチウにも怪しい箇所はないか尋ねる。

 

「うぐぐ…!ダメですね。いくらぼくの鼻でも、こんな潮風強い場所なんかじゃあ…!」

 

必死に鼻を動かすが、辺り一面が海のこの場所では仕方がないだろう。

 

「くそ!メルル、お願いだ!あいつらは俺のせいで敵地に残る羽目になったんだ!正確な位置じゃなくてもいい!俺が出来ることなら何だってするから、あいつらがいそうな場所を教えてくれよ!!」

 

「ですから…近い…!あ、あそこが不自然で怪しいと思いますっ!」

 

羞恥で今にも気を失いそうになりながら、必死に彼女が指した方向を見る。

周囲は氷山と流氷だけのはずなのに、そこだけポツンと人工物があった。

 

具体的にいうと、かまくらだ。

 

「…おっさん。敵地からそんなに離れていないこんな場所で、のんきにかまくら作るようなことする奴、心当たりないか?」

 

「あんなのが世の中に何人もいてたまるか。さっさと行くぞ」

 

遠くからではわからなかったが、俺でも簡単に入れる大きさのかまくらに入る。

すると中から、大声が聞こえる。

 

「ヒムとか言ったなぁ!兄より優れた弟がいると思ったか!?…そのまま踊りながら、フェンブレンに全力で『ぱふぱふ』をするがいい!!」

 

「クネクネしながら、ワシの側に近寄るなぁー!」

 

「俺だって願い下げだぁ!ていうか、さっきから踊るな、かと言って踊らせるなっつてんだろ!このクソ野郎ぉー!」

 

「あぁ、クロコダイン達。良いところに来ました。ちょうどたまて貝が焼けた所です。このたまて貝を差し上げますから、この場から助けてくれませんか?いい加減こいつら全員、しばき倒しそうです」

 

踊るレイザーと全身メタリックの変な奴ら。そして死んだ魚のような目で、貝を焼くクーラがそこにはいた。

 

「…帰りてぇ」

 

ポップの呟きに、俺は本気で同意した。

 

 

 

「…ハァ。最悪の第一印象だが、俺はハドラー親衛騎団が一人、ヒム。こっちは同じくフェンブレンだ」

 

閑話休題。

ようやくこちらに気づいてくれたレイザーから解放された、一緒にいる者たちが名乗る。

 

「俺達はハドラー様の命で、この魔族と精霊を探してたんだよ。『非常識な奴らだから見ればわかる』って言われたが、こういう意味だとは思わなかったぜ…」

 

話を聞く限りこの見たことのない奴らは、フレイザードと同じ禁呪法によって作られた生命体ということか。

レイザーが兄とか弟とか言っていたのも、そのためだろう。

 

「…で、俺達アバンの使徒が来るのを待って、とどめを刺すつもりだったと?」

 

メルルをかばいながら、ポップはヒム達を睨みつける。

それをヒムは、心外だと言わんばかりに睨み返す。

 

「見損なうんじゃねぇ。俺らハドラー親衛騎団は、弱った者をいたぶったり、人質にするような外道な真似はしねぇんだよ」

 

「そもそも、ワシらの体は全身オリハルコン製だ。連戦で疲れきっているお前らなど相手にならんし、倒しても汚点にしかなら…わかった!言い過ぎた!わかったから踊ろうとするでない!」

 

立ち上がろうとするレイザーに、フェンブレンが怯える。

 

良かった。

フレイザードと同じ誕生の仕方をしたと聞いて恐れていたが、こいつらはまともなようだ。

本当に良かった。

 

「おい、クロコダイン。何で俺とクーラにそんな視線を向ける?…まぁ、とにかく何とか逃げれる所まで逃げて魔力切れで休んでたところ、こいつらが入ってきたんだよ。戦う気もないようだし、魔力が回復するまでの話し相手になってもらってたんだ」

 

ちなみにこのかまくらは氷山を一箇所に投げつけ、炎のブレスで中を空洞にして即席で作った物らしい。

その割には氷の椅子があるなど、妙にこだわっている。

 

クーラに体力と魔力の無駄遣いを指摘すると、足りない俺達用の椅子を氷のブレスで補充しながら答える。

 

「大丈夫です。ちゃんと『凍える吹雪』で作ってますから、魔力は使用しておりません」

 

「違う。そうじゃない」

 

今日二回目の、心からの言葉だった。

 

「あの…戦う気がないのでしたら、ハドラー親衛騎団の皆さんは、なぜレイザーさん達を探していたのですか?」

 

メルルの問いにヒムが何か言おうとした瞬間、フェンブレンが突然バギクロスを唱え、俺達とかまくらを吹き飛ばす。

 

「な、何をするんだ!?やっぱり魔王軍なんて、こんな奴ばっかりだな!」

 

チウがその行動に激怒すると、恐らくタカの目を使ったであろうクーラが遠くを指差す。

その方向を見ると、サタンパピーとバルログの大群が一斉にこちらに向かってきていた。

 

「あれは…妖魔士団の中でも、最上級のモンスターだと?だがダイ相手にならともかく、何故レイザー相手にあれほどの数を出したのだ?」

 

「ヒーヒッヒッヒッ…。脳筋の貴様にはわからんだろうな」

 

笑い声がした方向を見ると、こちらに向かってきている者と違うモンスターの大群に囲まれながら、突然現れたザボエラがこちらを見下ろしていた。

 

「馬鹿な貴様に教えてやろう。ミストバーンからバーン様への報告で聞いたが、そこの元フレイザードはどうやってかは知らんが、暗黒闘気さえ無視する回復手段を持っておるとのことだ。さらに転生術を完成させていて、これらを妖魔士団に取り込めばバーン様もワシに一目置くことじゃろう。それに死んでも生き返られるなら、超魔生物の実験にピッタリじゃろ。サンプルもタダではないのでな」

 

「呆れるな。まだそんな絵空事を信じているのか。貴様との因縁、今度こそ終止符を打たせてもらうぞ」

 

『ハッスルダンス』が暗黒闘気で受けた傷も回復できることは、恐らくミストバーンにとってトラウマとなっているため、故意に報告していないのだろう。

 

色々な意味で現実を知らないザボエラを打ちのめそうと俺がガルーダと共に飛び上がろうとするが、フェンブレンがそれを遮る。

 

「待て。…そもそもワシらは、ザボエラの奴を阻止しに来たのだ」

 

「なんじゃと?貴様、見かけん奴だと思っていたが新たな勇者の一味か!?」

 

「俺達を知らないことが、今のアンタの立場だよ。覚えておきな。俺達はハドラー親衛騎団。ハドラー様から結果的に勇者と全力で戦える機会を残してくれた礼に、レイザー達は帰せと命令を受けている。この雑兵は俺達が片づけてやる」

 

「だ、黙れ!サタンパピー、バルログ共!この邪魔者どもを叩きのめせ!」

 

ザボエラの号令でサタンパピーが一斉にメラゾーマを放つ。

合計で数十発になるメラゾーマが迫ることも関わらず、ヒムは何事もないかのように棒立ちで受けた。

 

ポップが驚きで目を見開く中、傷一つ付かないヒムはザボエラに蔑むような視線を向ける。

 

「阿呆が。オリハルコンには、この程度の呪文は効かねぇよ」

 

「遊ぶでない、ヒム。早くこのザボエラ達の首根っこを掴んで、ハドラー様の元へ戻るぞ。…それとレイザー。先ほどのバギクロスを、マホキテで吸収していただろう。さっさとルーラで立ち去るがいい」

 

「その通りなんだが…まぁ、いいか。兄のために尽くすのが、弟ってもんだろ。ルーラ」

 

「一緒にするでない!ワシは貴様のような奴と兄弟などど、絶対認めんぞ!…それと次に会った時は、二度と踊れないようにしてやるからな!」

 

ルーラが発動する中、フェンブレンの叫びが聞こえた。




最近多忙のため、あまり見直す時間がなく投稿しました。

プライベートが落ち着くまで、2週間に1本ぐらいのペースになりそうです…。

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