知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷
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【2017/02/26 追記】
今回の話で、4名から誤字脱字のご指摘をいただきました。

いつもありがとうございます。


【第13話】知人と会った。どうやら巻き込まれたようだ

----ポップSide----

「なんであんなこと言っちまったかなぁ…」

メルルの水晶玉で岩の巨人がパプニカに迫っていることを察したが、ロン・ベルク曰く作っている剣は今正に瀬戸際らしい。

そのため、足止めなんか楽勝だから剣が出来るのを待てと、啖呵を切ってしまい、森で自己嫌悪に陥っていた。

「マァムやクロコダインのおっさんがいてもな…」

「あれ?ポップと…どなたさん?」

草木をかき分けて出てきたのは、地底魔城で別れた以来のレイザーとクーラだった。

マァムにはレイザーの話はしているので、一緒にいるクーラを見て察しがついたようだ。

「ふふ、私はマァムよ。今はレイザーでしたっけ?お互い見違えたわね。…そうそう、あなたが書いた特技の本、ブロキーナ老師もすごく評価してたわ。生きていたらぜひ会いたかったって言ってたから、今度会ってくれない?」

親父やロン・ベルクから聞いてはいたが、やはり最近ランカークス村にいる変な魔族と無口な精霊はこの二人だった。

話を聞く限り、この二人は作った武器の出来栄えを確認して、工房を借りているロン・ベルクに報告しに来たらしい。

「地獄に仏だ!話は後!あんた達もパプニカまで付き合ってくれ!」

レイザーは氷炎将軍時代と比べて能力は落ちているが、そこら辺の兵士よりまともなはずだ。
また直接戦っているところは見たことないが、クーラはレイザーに次いで特技を使えるらしく、飛翔もできる。最悪彼女だけでも戦力になるだろう。

「親父!ロン・ベルクにはレイザー達を借りるって伝えてくれ!ルーラ!」

反論を与える間もなく、二人を巻き込んでルーラをした。
パプニカに着き次第、事情を把握できないレイザー達をほっといて、姫さんとお互いの現状を話す。

状況を把握している間に、ベンガーナ戦車部隊によって岩の巨人が破砕されたと思ったが、次の瞬間には巨人の反撃によって全滅してしまった。

「我は魔影軍団長、ミストバーンである…」

巨人から声が響く。その用件はシンプルだった。
『降伏は許さない。死ね』。それだけだった。

「この野郎…!ふざけんじゃねぇぞ!」

クーラのように人間から迫害されたことから化け物扱いされるならともかく、あの魔王軍から害虫扱いされるのは我慢ならなかった。

巨人に向かってトベルーラで空に駆け出す俺の手を、慌ててマァムが掴む。
それに並走して、翼を広げたクーラが追いついてくる。

「よくわかりませんが、あの巨人内にいるミストバーンを倒せばいいのですね?…あいつはフレイザード様を足蹴にしました。フレイザード様の石で作ったこの剣を一太刀浴びせなければ、私の気が済みません」

「ポップ!私は地上のクロコダイン達を援護するわ!」

地上を見ると、巨人から出てきた鎧のようなモンスターに、クロコダインのおっさんが襲われていた。

おっさんはそこら辺の壊れた戦車を持ち上げ、モンスターに投げつける。

「はぁぁぁ…!『岩石落とし』!」

おっさんのパワーも加わり、1度で多くの鎧兵士が押しつぶされ、戦車の火薬が残っていたのか、更に爆発まで起こる。

残っていた鎧兵士も、『かまいたち』によって引き裂かれる。

「どうした!?獣王相手に、遠慮はいらんぞ!」

「…ノリノリだな、おっさん。助けいらないんじゃね?」

「そんな気もするけど、私が掴まっているとポップの邪魔でしょ?」

そう言って俺の手を離すと、マァムも地上に降り、モンスターを拳で砕く。
今思えば手をつなげていて、ちょっと残念だった。

そういえば、一緒に飛んでいたはずのクーラがいないことに気づいた。
周囲を見渡すと、クーラはいつのまにか巨人の頭部に乗って一心不乱に鉄拳を振り下ろしていた。

「『地割れ』!『地割れ』!『地割れ』!『地割れ』!」

やだ。何この人、恐い。
しかもちょっとずつ巨人の頭部が割れ始め、既に片目部分が欠けているのが余計に恐い。

さすがのミストバーンも予想外だったのか、中から慌てた声がする。

「な、何をしている!?この無能軍団の生き残りめ!…ガスト共!そこの魔法使いと精霊を叩き落とせ!!」

マホトーンを使うガストの集団に俺は慌てるが、こちらに来る前にクーラが炎のブレスで一掃させる。
…俺、いらないんじゃないかな?

だが巨人は自身の腕を頭に置き、無理やりクーラを追い払う。
そして地上もチウとバダックじいさんの加勢もあるが、敵があまりに多いため押されてしまっている。

「おい、クーラ!俺が奴らを一掃するから、一度地上のメンバーと合流するぞ!…イオラ!」

俺の呪文で敵を半数近くまで減らすと、巨人からミストバーンの声が響く。

「精霊。貴様、バーン様が拾ってやった恩も忘れて何のつもりだ?」

「申し訳ありませんが、私が尽き従っていたのはフレイザード様のみです。ましてやあんな世紀の奇才を見限るような、節穴揃いの組織になど居られません」

「主人を亡くした哀れな犬だと思って放っておいてやったが、邪魔するなら容赦せんぞ!」

巨人から更に鎧兵士を放出される。

「暗黒闘気さえあれば、鎧兵士など幾らでも作れる。…それとせめてもの情けだ。奴の遺産で息の根を止めてやろう」

10数の鎧兵士を片手に乗せられる巨人でさえ、両手に乗せるほどの巨大モンスターが現れる。

「鋼の竜だと!?」

魔王軍にいたクロコダインのおっさんも見たことがないらしく、驚きの声を上げた。

「フレイザードが残した研究成果『メタルドラゴン』だ。奴の出来そこないを、我らが暗黒闘気をもって完成させたのだ。感謝するがいい」

「設計案よりも肥大化している、劣化品なくせに笑わせます。…あの鉄くずは私が相手します。皆さんは他をお願いします」

慕っている相手の技術を盗んで作成した物が、気に入らなかったのだろう。
止める間もなく、クーラはメタルドラゴンに飛びかかっていった。

「人のこと気にしてる余裕があるのか、ヘボ魔法使い!鎧の奴らがこっちに来るぞ!」

チウの怒鳴り声で、慌てて目の前の敵に意識を向き直す。
すると突然、何かが横切った気配がする。

「アバン流槍殺法海の技、海鳴閃」

その呟きの直後、鎧兵士だけが全て縦に裂ける。
先ほどのは、ヒュンケルの槍による一閃だったようだ。

「ヒュンケル!来てくれたのね!」

嬉しそうにマァムが駆け寄る。

「ちぇっ…。相変わらず、嫌なタイミングで来る奴だ」

思わず悪態吐く俺に、ヒュンケルは苦笑いを浮かべる。

「話は後だ。まずはあそこにいる鬼岩城と、中にいるミストバーン討伐だ」

「…なぁ。決めてるところ悪いんだけど、あっちはいいのか?」

メタルドラゴンをタコ殴りにし、素手で装甲を引き剥がしているクーラを指差す。
鋼が軋む音だとは思うが、メタルドラゴンから出る「ギィギィ」という音が助けを請う鳴き声にも聞こえる。

どうやらクーラは相手にルカニ、自分にバイキルトを使っているようだが、それでも十分異様な光景だ。

遠くを見るような目でヒュンケルが答える。

「…関わりたくないんだ。察しろ」


----レオナSide----

「ねぇ、レイザー。私、非常事態だから急げって言ったわよね?」

皆が巨人に向かっていったにも関わらず、私から事情を聞いたレイザーはこの場に残り、なぜかマリンやアポロ達を呼ばせてひたすら踊り狂っていた。

周りの王達も魔族は邪悪な印象があったらしく、愉快に踊っているレイザーを驚きと珍獣を見るような目で見ている。

「さっきも言っただろ。俺は修業終わった直後に連れてこられて、魔力が空なんだ。今回復してるから、待ってくれ」

レイザーが踊っているのは、マホトラと同じ効果のある踊りだそうだ。

「だったらせめて、世界のお偉い様がいるのだからもう少し見栄えのいい技はないのかしら?」

「違う、あのとき見た腰の切れはこんなんじゃ…。こうか!こうだな!OK!」

「私の話を聞きなさい!」

「…魔族と言っても、色々な奴がおるんじゃのぅ」

ロモス王が呟く。
ベンガーナ国王は先ほどから笑いをこらえて、楽しそうなのがまだ救いだ。

ただ彼のせいで魔族のイメージが別な方向に定着しそうだから、そろそろ無理やりにでも止めたほうが良いのかしら?

「あの…急に踊りを見せつけられて事情がわからなかったけど、魔力を回復したいなら魔法の聖水があるわよ?」

マリンがこの空気に耐えられず、レイザーに虎の子のアイテムを差し出した。