----ハドラーSide----
バーン様より新たな命をいただいて、
初めて六大団長をご覧いただける機会をいただいた。
「実に頼もしい顔ぶれ。余は大変満足しておる」
バーン様のお言葉に、頭をたれる。
「では六大団長の誕生を祝して、褒美を取らせよう」
その言葉の直後、天井にまで届くほどの業火が現れる。
「この炎の中央にあるのは、暴魔のメダル。さあ、忠誠心の証として手に取るがよい」
その炎の勢いに魔族である私はもちろん、魔鎧を身にまとったヒュンケルすら躊躇する。
だが忠誠心を示すため、取らないわけにはいかない。
ザボエラなど一部の者を除いて覚悟を決めて手を伸ばそうとした瞬間、躊躇いなくフレイザードがメダルを掻っ攫う。
「見事なり。フレイザ『あっちぃよ!バーン様!!』…何?」
戸惑うバーン様に、フレイザードは更に叫ぶ。
「俺が半分氷なのは見ればわかるっしょ!?その俺の前で火柱とか、どう考えても俺へのダメージが一番大きいですよね!?ねぇ!?…というかハドラー様やチョビ髭とか、もっと早く取れよ!氷部分、こんなに溶けちまったじゃんかよ!!」
…六大軍団発足早々、あまりの熱さにフレイザードが狂ったようだ。
----バーンSide----
最近のフレイザードの様子がおかしい。
嬉々として前線に立っては人間を皆殺しにするあの残虐なフレイザードが、いきなり古代戦闘技術を研究すると言い出し、与えた部屋にこもってしまった。
コアの再調整をハドラーに命じ、結果を確認するために予定していたオーザム王国へ前倒して攻め入るように命令したが、報告によると自ら最前線に立つということは変わっていないものの、虐殺はせずに敵側の死者は0だったらしい。
曰く、「氷炎魔団の名声を語り継がせるため、あえて殺すな」という命令を下したらしい。
それでも腕は衰えていないようで、難なくオーザム王国壊滅を済ませたとのことだ。
禁呪法によって作られた生命体であるため、幾分かハドラーの性格を引き継いでいるはずだが…。
「も、申し訳ございません!魔軍司令の名に懸けて、必ず再度コアの調整をしてみせますので、どうかお時間を…!」
帰還したフレイザードの報告を黙って聞いていると、憤怒していると勘違いしたらしく、ハドラーが頭を下げる。
所詮、戯れに作った六大軍団。この程度の事態、余興としてちょうどいいだろう。
「調整してこの結果ならば、時間をかける必要はない。そもそもフレイザードは誕生して1年にも満たぬ、呪法生命体。実力は十分なので、多少の不安要素など問題なかろう」
余の言葉に、ハドラーはますます恐縮する。
「それよりも今回の報酬として、フレイザードが求めていることとは何だ?」
ハドラー曰く、オーザム王国で拉致した精霊を研究の助手として許可してもらいたい。そして研究素材として、脳死した魔族の肉体を要望しているとのことだ。
「…まあ、よかろう」
捕えた精霊は、人間の見世物となっていたらしい。神の使いとも言われる精霊が魔王軍に協力しているとなれば、天界への良い見せしめになる。
そして魔族の死体も魔界の余に逆らう一族を狩ればいいため、小石を与えるようなものだ。
「ただし、近いうちに研究すると言った技術を形にしてみせよ。その結果次第では、この話は無しだ」
名誉欲に取りつかれていた人形が何を生み出すか、せいぜい楽しませてもらおう。
ほとんどしゃべってないですが、フレイザードに転生した男が主役です。