ソードボッチ・オンライン   作:ケロ助

7 / 33
やってしまった……。途中で投稿とかマジで……。

しかも全然話進まないし。ボス部屋まで何千文字かかるのか。そして会話文すくねぇ。よし、一気に進めれたら進めたい!


第2話

邪気の無い笑顔に気圧され、イエスボタンを押す。晴れて俺は、黒髪の少年とフードのフェンサーとパーティーを組んだ。視界の左上、そこに見慣れない名前とHPバーが現れる。《キリト》と《アスナ》……で合ってるのか?

 

わざわざ、「キリトさんって読むんですか?」と聞くのもあれなので、黙って彼らの一段後ろに座る。こいつらが話しかけてくるタイプじゃなくて良かった。

 

「よーし、そろそろ決め終わったかな?じゃあ……」

 

「ちょお、待ってんか!」

 

声のした方を見ると、トゲトゲのヘアースタイルをした小男が、人垣を割って階段を飛び降りている。よくあの頭でナーヴギア被れたな。

 

「わいは《キバオウ》ってもんや。ボスと戦う前に、言わせてもらいたいことがある。こん中に、今まで死んでいった二千人に、詫びぃ入れなあかん奴がおるはずや」

 

前に座るキリトの肩がピクリと反応する。

 

「キバオウさん、君の言う奴らとはつまり、元βテスターの人たちのこと、かな?」

 

「決まってるやないか!」

 

スケイルメイルをじゃらりと鳴らし、キバオウは続ける。

 

「β上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨てて消えよった。奴らはウマい狩場やら、ボロいクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なって、その後もずーっと知らんぷりや。こん中にもおるはずやで、β上がりの奴らが!そいつらに土下座さして、貯め込んだ金やアイテムをはき出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」

 

キバオウの言葉に、集まったプレイヤー達はざわつき、辺りを見る。βテスターでも探しているのかよ。探す気もないくせに、周囲に合わせてポージングを取っているだけの茶番だ。

 

ただ、俺の前に座る黒髪の少年キリトの反応は、周囲の大勢とは違っていた。ポージングを取るでもなく、俯いて何かを耐えているように見えた。

 

……恐らくだが、キリトはβテスターだ。ダンジョンで見かけた時、キリトはアスナにアドバイスをしていた。素人の俺から見れば、見事としか言いようのない剣さばきのアスナに忠告なんて、そうそうできはしない。

 

自分を生かすために全力な素人が、同じキャリアのプレイヤーにアドバイスなんて、それも命のかかったデスゲームでは簡単じゃない。できるとしたら、このゲームでの生き方を他のプレイヤーよりも知っている人物だ。

 

証拠というには薄っぺらく、確信は無い。だが、恐らくそうだろう。今のキリトの態度が、その推論を後押ししている。

 

……まあ、なんというか。キリトがβテスターでも、俺は構わない。むしろパーティーメンバーなんだから、心強いまである。なのに、あのトゲゾーにアイテムや装備品を奪われては、ただでさえ三人しかいない俺のパーティーは、非常に困る。他意は無い。それだけだ。

 

俺は覚悟を決め、スッと立ち上がる。

 

「お——」

 

「発言、良いか?」

 

ーーおい、よく聞け、と格好良く言うつもりが、前の方に座っていた黒人っぽいスキンヘッドのバリトンに遮られる。

 

「……おお、今日は良い天気だな」

 

とだけ言って座る。あと一瞬座るのが遅ければ、振り返ったキリトに立ってるのを見られるところだった。恥ずかしくて目が合わせらんない。元から全然合わせてないけど。

 

「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元βテスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って謝罪、賠償しろ、ということだな?」

 

「そ……そうや」

 

エギルと名乗ったプレイヤーの迫力に、キバオウが気圧される。仕方がない、エギル……さんは顔の迫力もなかなかだが、かなりの高身長で背中には両手用戦斧。俺なら既に土下座してる。

 

「このガイドブック、あんたも貰っただろう?道具屋で無料配布されてる」

 

エギルさんが取り出したのは、表紙に《鼠マーク》の描かれた小さな本。俺も鼠から購入して読み込んでいる。あれれー?おっかしーなー。俺は鼠にお金払って買ったんだけどなー。

 

「……貰たで?それが何や」

 

「配布していたのは、元βテスターたちだ」

 

キバオウはグッと唸り、周囲はどよめく。

 

「いいか、情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて、俺たちはどうボスに挑むべきなのか。それがこの場で論議されると、俺は思っていたんだがな」

 

エギルさんがキバオウを一瞥すると、キバオウは複雑そうな表情を浮かべて集団の前列に戻っていく。それを見たエギルさんも、元の場所に戻った。

 

「よし、じゃあ再開していいかな」

 

そこからは、ボスの説明やボス戦での各パーティーの役割、アイテムや金の分配などを決めた。全部を説明し終えたディアベルの解散の号令で、明日に備え各々自分の宿に戻り始める。さて、俺も帰って寝よう。

 

「おーい、ハチマン……で良いんだよな?明日のことで、ちょっと話したいことがあるんだ」

 

「…………」

 

後ろの無言のやつ何なの?と尋ねることはできないので、代わりに大きくため息を一つ。

 

「……なんだよ」

 

「いや、だからさ。明日のボス戦での役割をさ。三人いるから、スイッチやPOTローテの順番とか、他にも色々とあるだろ?」

 

「……スイッチって何?」

 

「えっ!?パ、パーティーを組んだこと、一度もないのか?」

 

びっくりくりくりといった表情のキリト。そのままギギギと首だけを動かして、アスナを見る。

 

「わたしも知らない」

 

ガックリと肩を落とすキリト。何だその大丈夫かなぁ、みたいな目は。俺だって、この世界なら役に立てる自信はある。……多分。

 

・ ・ ・

 

ボス攻略会議の翌朝、俺たちは発見されたばかりのボス部屋のまえにいる。あれから、スイッチとPOTローテはきっちり教えてもらった。

 

「みんな……もう、オレから言うことはたった一つだ!…………勝とうぜ!!」

 

ディアベルの演説にうおお!!と歓声が巻き起こる。そして俺たちは、ついにボス部屋へと足を踏み入れた。

 

《イルファング・ザ・コボルドロード》

 

第一層のフロアボス。その取り巻きのモンスターは、《ルインコボルド・センチネル》。武器は斧とバックラーだが、HPバーの最後の一段が赤くなると、曲刀カテゴリの湾刀に持ち替え攻撃パターンも変わる。

 

なお、以上の情報はβテスト時代のものであり、現行版では変更されている可能性もある。

 

ーーアルゴの攻略本より抜粋ーー

 

四十五人全員が部屋に入り、入り口の扉が自動で閉まる。薄暗かった部屋が一気に明るくなり、赤い身体の巨大なコボルドが飛び出してくる。あれがコボルドロードか……。

 

俺たちの担当は取り巻きのコボルドの殲滅。コボルドロードと戦っている面々が、安心して戦えるようにするためだそうだ。

 

「スイッチ!」

 

キリトがコボルドのソードスキルを、自分のソードスキルで相殺させノックバックさせて隙を作る。そこへアスナのレーザーの如き《リニアー》(刺突剣のソードスキルらしい)が煌めく。

 

うわーい、この二人とっても強いわ。働かなくてもいいって素晴らしい。

 

「ハチマン、スイッチ!」

 

「……おう」

 

俺いらなくね?と思うが、ご指名されては仕方がない。社畜とはそういうものだ。

 

またコボルドを一体倒し、ふうと息をつく。ボスの方はどうなっているかと見ると、コボルドロードの体力は最後の一段が赤く染まっている。

 

コボルドロードは轟然と吼え、斧とバックラーを投げ捨て、腰の後ろから新たな武器を抜く。

 

「みんな下がれ!俺が出る!」

 

青の騎士ディアベルが、一人コボルドロードに突っ込んでいく。素人の俺は特に何も思わなかったが、キリトは怪訝そうな顔をする。それより俺が気になったのは、湾刀というわりにコボルドロードの武器が反っていないことだった。

 

「駄目だ!全力で後ろに飛べ!」

 

キリトが叫ぶ。それと同時にディアベルの身体は宙に舞う。

 

今のは……何だ?曲刀のソードスキル?なら何でディアベルは吹き飛ばされた?情報通りの曲刀なら、ディアベルが防げないはずがない……。

 

呆然とするしかない俺たちの前で、ディアベルは空中で更に追撃を喰らい、地面に叩きつけられた。

 

「ディアベル!」

 

いち早く硬直の解けたキリトが、慌ててディアベルに駆け寄るのを見て、俺も後を追う。キリトがポーションを渡そうとするが、ディアベルはそれを受け取らなかった。

 

「何故一人で……」

 

「お前も……βテスターだったら、分かるだろ……?」

 

「……ラストアタックボーナスによるレアアイテム狙い。お前も、β上がりだったのか……」

 

「……頼む。ボスを、倒してくれ。みんなの、ために……」

 

それだけを言い残し、青髪の騎士は、砕け散って消えた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。