香霖堂を目指し西へ、飛ぶ。
道のような物が人里から続いているので、それに沿って飛ぶ。
しばらくすると、建物を見つけた。
近くに降りる。
ストレイドから降りて建物を見ると、「香霖堂」と書いてある看板、だろうか。それがあったので、目的の店だとわかった。
扉を開けて、中に入る。
「む」
ちょっと埃っぽい。
「いらっしゃい」
銀髪で眼鏡をかけた男性に声を掛けられる。ここの店主か。
「物を換金したいのだが……」
「換金ですか?」
「ああ」
それにしても妙な服を着ているな、この人。和服といえば和服だが、変わった模様がある。
「金を換金してほしい」
「金、ですか」
「そう、これだ」
持ってきた鞄から、金の塊を出す。
「これは………かなりの価値になりますね」
煙草の箱ほどの大きさの金が10個ほど、だからな。
「少し待っていて下さい」
そう言って店主は奥に引っ込む。金を用意してくるのだろう。
俺は店内を眺める。
色々あるな。
炊飯器やら、ストーブやら、ナイフやら。
とにかくごちゃごちゃとしていて、品物もバラエティ豊かだ。
「……む?」
棚にある品物の中に、妙な銃を見つけた。
サイズとしては大きめのライフルだが、普通の銃とは違い、グリップが高い位置かつ、後ろの方にある。持って指を伸ばしたら、その先に銃身があるかんじだ。グリップの下にも、伸びている部分がある。ストックはない。
見た感じ重心が前に寄っていて、持ちにくそうなことこの上ない。
が、持ってみると、以外と軽く、片手で十分に保持できた。
しかし、どうにも人が持つことを考えられた設計とは思えない。
第一、アイアンサイトがないのだ。
スコープのようなものもない。
センサーのようなものはあるが、これは使えない。
考えていると、店主が戻ってきた。
「ええと、このくらいの価値になります」
貨幣価値はあまりわからないが、数字の桁が多いので、それなりにあるだろう。
「それでいい」
「わかりました」
換金された金を受けとる。
「ああ、そうだ」
「なんでしょう?」
「この銃を外で試させてもらっていいだろうか?」
「唐澤弐式ですか、どうぞ」
許可がでたので、持って外に出る。
スイッチとセイフティらしきものを動かしてから、空へ向けて構える。
トリガーを引くと、特徴的な発射音とともに、光弾が発射された。
「む、これは……」
弾を見るに、かなり強力なものだ。
店内に戻る。
「これを買いたい」
レーザーライフルを店主に差し出した。
「わかりました。これくらいでよろしいでしょうか」
「それでいい」
金を払う。
「ところで店主さん、名前は?」
これからも訪れるかもしれないし、聞いておこう。
「名前ですか?僕は、森近霖之助といいます」
「俺は、ルート・フォンクと言う。あと、敬語は止めてくれないか?何かむず痒い」
「え?ああ、わかり……わかったよ」
店主、森近霖之助が敬語を止める。
「ところで、ここの品物は、何処で仕入れているんだ?」
「無縁塚と言う場所で拾っている」
無縁塚ね。覚えておこう。
「僕からも聞きたいことがあるんだが」
「む?」
「失礼だが、君の性別を聞いてもいいかい?どっちなのか判断がつけづらくてね」
「あー、俺は、男だ」
「男?」
間違えられるまでは行かないが、男なのが意外なようだ。相変わらずこの容姿は面倒臭い。
まぁ、悪人面なのよりはいいが。
「また来るよ」
俺はそう言って店から出る。
唐澤弐式ねぇ。なんか買ってみたはいいけど、あまり使うことはなさそうだ。威力がありすぎる。
まぁ、それはストレイドに仕舞っておくとして。
そろそろ、どう夜を明かすかも考えなければ。
時間は3時。
ストレイドに乗り込みながら考える。テントはあるし、野宿するか。
何はともあれ、買い物だ。
俺はストレイドを、人里に向けた。
霖之助が敬語を使っているのは
客商売なのだから愛想をよくするべきだろうか→まずは敬語で話すことから始めてみよう
という霖之助の思考の結果、という設定です。
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指摘して頂いた誤字を修正しました。