上空を飛んでいると、何やら人の影が見えた。何かにまたがって飛んでいる。
「よう!見ない顔だな!」
そのまますれ違おうとしたら、相対速度を落として、話しかけてきた。
「誰だ?」
お互いに距離を縮め、空中で静止する。
「私は霧雨魔理沙だぜ!あんたは?」
「俺は、ルート・フォンクだ」
名乗りつつ、相手を観察する。
鮮やかな金色の髪をした少女だ。箒に跨がっているそいつは、白黒のエプロンドレス?を身につけ、とんがった帽子をかぶっている。
「へぇ、ルートって言うのか。ん?俺って言うことは男なのか?」
「そうだ」
「そうだよな、男な訳が……えっ」
「俺は男だ」
くそ、いくらなんでも間違われすぎだろう。まさか初対面のやつと会うたびにこれが続くんじゃなかろうな?
「………あー、変わったやつもいたもんだな」
「ああ………」
「ところで、あんたは博麗神社に行ってきたのか?」
「そうだ」
「外来人なのか?」
「ああ。ただ、俺は外に帰る気はないんだ」
「そうなのか?それは珍しいな」
「………ああ」
「それにしても、外来人なのに飛べるんだな」
「ああ、これは俺が身に付けている機械を使って飛んでいるんだ」
「え、そうなのか?でもそんな機械見えないんだぜ?」
「わりと小さいからな」
「小さいのに飛べるのか………すごいんだぜ」
「ああ。これには俺も何度も助けられてる」
「へぇ……」
好奇心満載な顔だな。
そう思いながら、ふと西の空に目を向ける。
「おっと、そろそろ日が暮れるな」
「あ、そうだな」
「俺は帰るよ。またな」
「ああ!」
別れを交わすと、魔理沙は飛び去っていった。
さて、俺も帰らなければ。慧音が心配してしまうかもしれない。
俺は人里に向けて、加速する。
「ああ、すっかり夜だ」
人里に到着した。すでに辺りは暗い。
寺子屋の前に着地して、玄関から中へ。
「慧音ー、今帰ったぞー」
少し大きな声で帰りを告げる。
ほどなくして、慧音の声がどこからか聞こえてきた。
「ああ、お帰り」
台所からか。
とりあえずは、荷物を置いてこよう。
自分の部屋へ行き、武器を置く。
それから、台所へ向かった。
「慧音、手伝うよ」
「ああ」
手を洗ってから、今朝と同じように分担して食事を準備する。
準備を終え、食卓へついた。
「それで、収穫はあったか?」
食べていると、慧音が訊いてくる。収穫、か。
「幻想郷のことや、スペルカードルールについて教えてもらったな。あと、ルーミアという妖怪と仲良くなった」
「ルーミアと?」
「ああ。行きの道中で襲ってこようとしたから、銃で気絶させたんだ。そうしたら、何故か付いてきてな」
「ふむ」
「まぁ、見た目相応な感じだったな」
見た目相応に幼かった。
「そうか」
「あと、博麗のことだが……」
「霊夢か……」
「大分貧乏しているようだったな」
「ああ………。霊夢には、人里を妖怪から守る結界を張ってもらったりして、報酬を出しているんだ。だが、最近は平穏そのものだからな……」
「やってもらうこともない、か」
「そうなんだよ。ううむ、どうしたものか……」
そう言うと慧音はうんうんうなり始めた。やはりと言うべきか、人里を守ってくれている巫女がそんな状態では、困るのだろう。
「ふむ」
これから博麗神社に行くことがあったら、何か食べ物を持っていくことにしよう。
俺はそう考えた。
あの歳でまともに食べられないのは、可哀想だ。
そうこうしているうちに、食べ終わった。
「慧音、食器は片付けておく」
「ああ、ありがとう。なら、私は、先に風呂へ入るよ」
「ああ」
二人分の食器を持って、台所へ。
食器を洗いながら、今日のことを思い返す。
スペルカードルール。生死を賭けない戦い。
弾は非殺傷らしいが、あれは当たり方によっては死ぬのではないだろうか?
とはいえ、博麗曰く、スペルカードで対戦するのは大抵が妖怪らしい。
妖怪は人間より頑丈だとも聞いた。だから、問題はないのだろう。
あとは、霊力。
幻想郷に来るまでは、精々光弾を撃ったり、身体能力の強化程度にしか使っていなかった。それも、そう長くは使えなかったのだが。
神社でシールドを展開した時は、時間に制限無く使えるような感覚だった。
とにかく、使い方は練習しなければ。
そういえば、帰りに会った霧雨魔理沙とかいうやつは魔法使いだったのだろうか?
箒に乗っていたし。
また会ったら、話を聞こう。
食器を片付け終えた。
あとは、風呂に入って寝るだけだ。