不老不死の幻想入り   作:人生脇役

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なにか3000文字超えた。


霊力の扱い

外に出る。

博麗も来たのを見てから、言う。

「まずはこれだな」

右手を上げ、霊力を凝固させる。作り上げたのはコンバットナイフ。*1

「!……へぇ、やるじゃない」

「感心するほどなのか?」

「幻想郷に来るまで霊力を知らなかったっていうことは、扱い方も知らなかったはずよ。そんな人間がここまでできるなんて、なかなかないわ」

う、結構褒めるな。実際の所、この力のこと自体は知っていたし、ある程度使ってもいたのだが。

「そりゃどうも。他には、エネルギー弾も撃てるぞ」

「え、もうそんなことも出来るの?」

「ああ」

答えながら、意識を少し霊力コントロールに割く。武器を使う仕草を見せずに攻撃できるのは、大きな利点だったから、よく使っていた。

霊力を手に集め、小型の光弾を撃つ。

「へぇ、本当に撃てるのね。外来人とは思えないわ」

「まぁ、俺は外一般の常識からは微妙に外れているからな」

「微妙どころじゃないわよね?……まあいいわ。ところで」

「ん」

博麗の目付きが少しきつくなった。何だ?

「あんた、何でそんな容姿なの?」

む。それか。まだ引き摺っていたのか。

「なんでこんなに可愛くなるのよ、男が」

博麗が俺の両頬をつついてきた。

「あーもう、ぷにぷにじゃない。本当になんでよ」

「知らん。あとやめろ」

いい加減この容姿で驚かれるのも慣れすぎて、イラついてきた。

「そのすかした態度もまったく似合ってないわ。背伸びしているみたい」

「気取っているつもりはないんだがな」

「というかあんたいくつなのよ。やけに大人びてるけど」

「もう30だ」

「おっさんじゃない。老化を知らないの?」

「不老不死だからな」

「そうだったの?驚きね」 

「……」

会ったときからの印象だが、博麗はどうにも巫女らしくないような気がする。服とか、態度とか。

巫女らしさは知らないので、気がするだけなのだが。というか脇出しってどういう趣味だ?

「お、見慣れない顔がいるね」

声がした方を見ると、角を生やした幼い少女がいた。

角が体に比して大きい。

「あー、萃香。こいつはルート・フォンク。来たばかりの外来人だって」

博麗がその少女に俺を紹介してくれた。

「そうなの?私は、鬼の伊吹萃香だよ」

「ルートだ。よろしく頼む」

「よろしく。にしても、随分可愛らしい男だね」

「わかるのか?」

始めて間違われなかった。少し、嬉しい。

「わかるよ。ところでさ」

伊吹がにやりとする。

「ちょいと力比べをしないか?」

「駄目よ」

博麗が横槍を入れてきた。

「えー、なんで」

「何でも何も、そもそも鬼のあんたとこいつじゃ力の差がありすぎるじゃない。こいつは人間なのよ?」

「そうなの?強そうなのに」

博麗の言うことに、俺は頷く。鬼がどれほどかはわからないが、妖怪と人ではスペックが違うだろう。

「むー、いい勝負できそうに見えるんだけどなー。霊力使えるんでしょ?」

「そうだが。でも力比べは勘弁してほしい」

「えー、どうしてもー?」

「そうだ」

そういうと、残念そうに伊吹は縁側へ歩いていき、腰かけた。見ている気か?

それにしても、霊力か。色々と応用できるらしいし、練習でもしてみるか?

「博麗」

「何?」

「今からちょっと霊力を使ってみるから、思うことがあったら言ってくれ」

「え?ああ、成る程ね、わかったわ」

「よし」

先程と同じように、手に霊力を集める。 

集まったら、薄く広げる。

前面を覆う霊力の盾。とりあえず形は作れたが、どれ程のものか。

「博麗、俺に弾幕を撃ってみてくれ」

「わかったわ」

博麗の手から赤い札が連射される。

飛んできた札は、すべて盾で消滅した。

「やっぱり盾ね。強度もなかなか。カード無しでは破れそうにない」

「そうか。上手くいったようでなによりだ」

「限界も知りたい?」

「出来るなら把握しておきたいな」

博麗の顔に、笑みが浮かぶ。

「じゃあ、これからスペルカードを撃つから、防いでみなさい」

「わかった。手加減してくれよ」

「ええ」

霊夢の返答を聞きつつ装置を準備。

「霊符『夢想封印』」

来た。

でかくてカラフルな光弾が八ほど。とりあえず後ろへ飛ぶ。

破られるのを見越して前面シールドは五メートルほど前で張った。

案の定、二発で破られた。残り六発。

もう一度霊力シールド。こんどは直径三十センチほどのものを両手に纏わせる。

飛んでくる光弾を、右手のシールドで相殺。

密度を高めるほど防御力は上がるようで、再展開はしなくて済みそうだ。

次は左手。二発を振り払うように掻き消す。

右手で正面からくる一発を防ぎ、最後に左右の二発を両手で。

「……手加減したか?」

「手加減したわよ」

「嘘だろう?手加減したように見えなかったぞ」

「まったく応えていなさそうじゃないの。というか飛べたのね」

「……そうだが」

たしかに先程のは応えるものではなかったが。

「それにしても、あんたの霊力はどうなってるの?」

「は?」

「身体強化と防壁張り。それもかなり強い物。さらに飛行。そんなの人間の貴方が同時にやってたらモリモリ減るはずなのに、ぜんぜん減ってる様子がないのよ」

「激しく使うと減るのだが、これくらいなら回復量の方が上回るようだ。あと、飛行は機械を使っている」

「すごい回復力ね。本当に人間?」

「それは間違いない。不老不死だが」

「やっぱりそこなのかしらね」

「そうだろうな」

博麗の言い草からして、霊力というのは生命力が絡んでくるのだろう。

そして、生命力なら、俺を上回るやつはそうはいないに違いない。何せ、頭が蒸発しても、記憶障害も何も無しに、元通りになる体だ。いや、これは生きているとは言えないか。生物として越えられないラインを越えている。

「まぁ、練習し続けてみるさ」

「そう」

色々と活用出来そうだからな、霊力は。

そこまで考え、ふと縁側に目を向けると、さっきの鬼、伊吹萃香とやらが、こちらへ駆けてきていた。

「ルート!やっぱりやろうよ力比べ!」

自然に呼び捨てされた。というか、またかよ。

さっきのあれを見て、やはり面白そうだとでも思ったのだろうが。

「悪いがやりたくないんだ、伊吹」

「なら弾幕ごっこは?」

「なおさら駄目だ。こっちは勝手も知らないんだぞ」

「手加減するからさ」

……しつこい。おまけにさっきは気づかなかったが、酒の臭いがするぞ、こいつ。酔ってて手加減ができるのか?

「というかさ、伊吹ってのもまどろっこしいから萃香って呼んでよ」

ここの住人は知り合いでも名前呼びが普通なのだろうか。名前で呼ぶように言ってくるやつが多い。

「なら、萃香。せめてこっち流の戦い方とかに慣れてからにさせてほしい」

「慣れてからならいいんだね?」

しまった、迂闊。

「………慣れたらだぞ」

「よし!その時が楽しみだ」

満面の笑みを浮かべて言う萃香に、思う。こいつは俺の苦手な部類のやつだ。

そういえば、と先程から蚊帳の外の博麗を見やると、こちらはさもありなんという顔でこっちを見返してきた。こうなることをわかっていやがったな、あいつ。

「………少し、休んでくる」

と、萃香と博麗に言い、縁側へ歩く。

縁側に腰掛け、溜め息をひとつ。

博麗たちは、二人で何か話をしているようだ。

「お兄さん」

ルーミアの声だ。見ると、まだ眠そうな様子のルーミアが、俺の横に来ていた。

「ああ、ルーミア。起きたか」

「うん。よく寝た」

それにしても。

ルーミアは、見た目には単なる幼女なのだが、人喰いだという。

実際俺を襲ってきたし、それは事実なのだろう。

ここでは、人を見た目で判断はできないな。

さてと。

「そろそろ帰ろうと思うんだが、お前はどうする?」

「あ、じゃあ私も行く」

ついてくるらしい。

「なら、行くか」

「ん、あんた帰るの?」

「ああ」

「そう。お饅頭、ありがとね」

「ああ」

表へ歩き、鳥居をくぐる。

目の前に見えるのは、幻想郷。ここはかなり高いところにあるらしく、見晴らしがいい。

「………いいところだな」

自然が多いし、空気もうまい。 

その景色を暫く堪能したあと、俺は人里へ飛び立った。

 

*1
霊力なので半透明。




ちなみに霊夢は、夢想封印を防ぎきったルートを見て、力比べくらいならやらせてもいいのでは、と思ったそうな。

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