不老不死の幻想入り   作:人生脇役

11 / 29
今回はルートの一人称と妹紅よりの三人称があります。




風呂場の場所は慧音に教えてもらった。

荷物から着替えと、借りたタオルを持って、脱衣場に入る。

服を脱ぎ、風呂場へ。

シャワーなんてものはやはりなかったので、まずは桶に湯を溜めて、かぶる。

石鹸はあったので、タオルで泡立ててから、体を洗う。

ちぐはぐな文化だという印象は拭えないな。

もう一度湯をかぶり、泡と汚れを落とす。

これでよし。

泡が体についていないことを確認してから、湯船につかる。

「ふぅ…………」

湯船に浸かったのは久しぶりだが、やはりいいものだ。

体が芯から暖まり、疲れが取れる。

しばらく浸かっていると眠気がしてきた。頃合いと思い、上がる。

体を乾いたタオルで吹き、替えの服を着た。

汚れ物は慧音が、一緒に洗ってしまうから、とりあえず脱衣場のかごのひとつに纏めておけと言っていたので、そうしておく。洗濯はあとで慧音に、俺がやると言ってみようか。

居間の慧音と妹紅に、上がったことを伝えて、借りた部屋へ足を向けた。

 

「ふぃー………」

座布団に腰を下ろし、後ろに体を倒す。

さっきの眠気が再び押し寄せてきた。

「あー、布団敷かなきゃー………」

そうは言うものの眠い。体が動かん。

頭にも霧がかかっているような感じが。今日はそこまで疲れることはしてないんだが、居心地がいいからか?風呂の後にも話をしたいと妹紅が言っていたのだが……。

あ、駄目だ。眠気が………。

「………すぅ」

 

 

 

ルートが布団も敷かずに寝てしまってから十分ほど。

慧音と一緒に風呂に入ってきた妹紅は、ルートの部屋に向かっていた。

「さーて、何してるかな」

呟きつつ、妹紅は襖を開ける。

「すぅ……すぅ……」

「あれ、寝てる」

襖を開けた妹紅が見たのは、布団も敷かずに眠っているルートの姿だった。畳に直寝では体が痛くなるだろう、と妹紅は思い、ルートを起こそうとしたのだが。

「……起こしづらいな」

穏やかで、正直可愛らしいと思える寝顔に、起こさずにそっとしておきたいと考えてしまい、手が止まった。

「………」

数秒考えるうち、妹紅にちょっとした悪戯心が。そして妹紅の手は、寝ているルートの頬を、指で突いた。

ぷに、とした感触。なかなかいい指ざわりだ。もう一度。

「ん、ぅ……」

頬を突いていた妹紅は、ルートの寝言にハッとなる。起こさなければ。

「ルート、起きろ」

「ぅ、むぅ………もこー?」

ゆるい。さっきより口調がゆるい。

「寝るなら布団を敷いたほうがいいよ」

「ぁー、わかった、起きる……」

むくりとルートが上体を起こす。

「ありがとー、妹紅」

まだ眠そうだ。

「ああ。というかルート、疲れてるの?」

「ふあぁ……。ああ、いや、な。ここは居心地が良くて、ついつい眠くなる」

欠伸をし、そう答えるルート。

「ああ、しょっちゅう野宿してたって言ってたもんな」

「そういうことだ」

ルートは投げ出していた足を戻し、胡座をかく。

「そういえばさっき気になったことがあるんだが」

気になること?と妹紅は思う。何だろうか。

「慧音の帽子。あれ、どうやって乗せているのか知らないか?」

「え?」

そう言われ、慧音の帽子を想像する妹紅。たしかにあれはかぶっていると言うより、乗っていると言うほうが的確だ。

しかし帽子か。今まで気にしたことはなかったが、と思いつつ、妹紅は口を開く。

「それは私も知らない。というか今不思議に気づいた」

「そうか……」

ルートは若干落胆したように言った。

「ホント、考えてみると謎だよ、あれ。ひもは使ってもないし、それなのに激しく動いても滅多に落ちないし……」

「やはり激しく動いても落ちないのか……」

「むむむむむ」

「むむむむむ」

考え込む二人。

たっぷり数十秒思考して、二人は結論を出した。それは、

「うん、気にしたら負けだな」

「そうだな、負けだな」

問題放棄であった。見事なまでの。

「この問題を考えるのはやめよう」

とルート。同感だ、と考えた妹紅は他の話題を探す。

「………あ。なぁルート。ルートは何か能力あるのか?」

「……能力?」

頭の上にハテナマークが浮かんでいそうな疑問顔のルートに、ああ、そこからか。説明しなければ、と考える妹紅であった。

 

 

能力というものについて妹紅に聞いたところ、何ができるかは人によって違うが、例えば火を出したりできる、とか。

そもそもない人もいるらしい。

「ふむ………どうだろうな、わからん」

「そう。あ、能力知らないってことは、スペルカードルールも知らないよな?」

「知らん」

「やっぱり。なら、明日博麗神社に行ってみたらどう?」

「博麗神社?どこだ……いや、待て、確か」

そこらへんに昨日買った地図があるはず。

「あった。……ここか」

地図の博麗神社と書かれた場所を指差す。……ふむ、歩いても行けるか。

「そうそう、ここ」

「何故ここに?」

「そこに、巫女の博麗霊夢ってのがいるんだけど、スペルカードルールは霊夢が考案したんだ。スペルカードルールはいずれ必要になるから、知っておいたほうがいい」

「ふむ、なるほど。わかった、明日はそこへ行くことにする」

「うん、わかった。慧音にも言っておこうか?」

「頼む」

「了解」

さて。また眠気が押し寄せてきた。

「……もう寝る」

「あ、もう?」

「ああ」

「じゃぁ、おやすみ」

「おやすみ」

妹紅は部屋から出ていった。

寝るか。

押入れから布団を出して、敷く。

布団に入る。

「あー……至福……」

寝袋とは雲泥の差だ。

本当に、慧音には感謝しなければ……。

そう思いながら、眠りについた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。