ラブライブ!~輝きの向こう側へ~   作:高宮 新太

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劇場版 シーン3 募る思い

「昨日の中継すごい評判よかったみたいだよ!」

 空港。僕らは無事に。いや、本当に無事に日本へと帰ってきた。だから本当に無事だってば。

 色々あったニューヨークに別れを告げて、僕らは帰ってきた。

 花陽の言う通り、どうやらライブも大成功だったようだ。

「ドーム大会も、この調子で実現してくれるといいよね♪」

 帰りの飛行機の中、みんなが眠っている最中に穂乃果は言っていた。「また来よう。みんなで。いつか、必ず」と。

 僕はそれを耳で聞いていただけだったけど、でもその言葉をきっと。僕はずっと求めていたのだ。

 また。

 もう一度。

 そういう願望を。

 あれが最後だなんて、それこそ死ぬほどわかってるけど。

 でも———————————。

「はー、エコノミーってこんな感じなのね」

「じまん?」

 後ろで真姫ちゃんとにこちゃんの会話が聞こえる。二人は、ニューヨークに行っても相変わらずだった。僕はあんなに苦労したというのに。一切観光とかできなかった。

「あ、そういえば真姫ちゃん」

「?」

 希が真姫ちゃんに顔を近づける。

「—————曲は出来た?」

「んな!」

 小さな声で、耳元でそう言ったのを僕は聞き逃さなかった。

 ・・・・真姫ちゃん。耳が弱いのかな?

「だから!あれは関係ないって」

 何の話をしてるのか、僕にはわからなかったけど。考える暇もなく絵里先輩が僕らを呼びに来た。もうすぐバスが来るそうだ。

「じゃあ帰ろう」

 穂乃果の言葉通り、みんなで家路に着こうというとき。

 ちょっぴり寂しさを感じながら、終わりを実感していると。

 どこからか、視線を感じた。

 それは、僕だけじゃないようで。

 視線だけじゃなく、なんか、こう、高揚感というか。例えるならそう、道端で偶然有名人に会ったかのような。そんなさざめきが、空港のあちこちに存在していた。

「知り合いですか?」

「ううん」

 海未が聞いて、穂乃果が首を振る。もちろん、他のメンバーの知り合いでもなければ僕の知り合いでもなかった。

「・・・・・雪ちゃん。また何かしたのかにゃ!?」

「真っ先に疑われてる!?違うよ!本当に今回は何もしてないよ!」

 こんな言い方すると、じゃあ前回は何かしたのかってなるけど!いやしたな!ごめん!

「・・・・・雪。正直に言いなさい。今なら怒らないから」

「だからなんでやってる前提なの!?信用とかないわけ!?」

 

「「「「「「ない!!!!!!」」」」」」

 

「うわー!息ぴったり!」

 ちくしょう。こんな悲しい団結感はいらないよ。

 僕を見る目がみんなジトーっと訝しんでいる。僕の名誉を晴らすためにも、耳を澄ませて周りをよく観察した。

 すると、ヒソヒソ声はどちらかというと黄色い歓声のようなもので。あちこちから「かわいい」だとか「本物だー」とか、そういった声が聞こえる。

「あれ?これは、本当に雪君じゃないんじゃないかな」

 どうやらその反応の違和感にみんなも気づいたようで、花陽がいの一番に僕じゃないと言ってくれた。

「・・・・確かに。雪には変な反応ですね」

 話し込んでいたからだろうか、その声も段々と大きく広くなっていく。

「これは、どういうこと?」

 さすがの希も動揺しているようだった。

「凄い、見られてる?」

 絵里先輩の言う通り、最早隠す気などなくあまつさえ手を振っている者もいた。

「もしかしてスナイパー!?」

 花陽の一言に、ミューズは騒然となる。

「————何をしたんですか!?もしかして向こうから何かヘンな物でも持ち込んだんですか!?」

「だからなんで僕なの!?持ち込んでないから!」

 容疑が再発した。花陽め、余計なことを。

 そうして、見当たらない原因に軽くパニックに陥っていると。一人の女生徒が勇気を振り絞った様子で僕らに話しかけてきた。

 

 

「あの!サインください!」

 

 

「「「「「・・・・・へ?」」」」」

 

 

 全員、口をぽかんと開けていた。

「あの・・・ミューズの高坂穂乃果さんですよ、ね?」

「え、あ、はい!」

 その反応に不安になったのだろう。その女生徒は恐る恐る確かめるようにそう聞いた。

「そちらは南ことりさんですよね!?」

 穂乃果が肯定したことにより核心を得たのか、どんどん勢いが増していく。

「そちらは園田海未さんですね!!」

 最早確定していた。

「違います」

 あ、嘘ついた。嘘ついたよこの人。

「海未ちゃん!」

「なんで嘘つくにゃ!」

 花陽と凛から咎められ、海未は少々顔を赤くしながら。

「だって!怖いじゃないですか!」

 あー。なんか変わってないなー。

 昔は相当怖がりで臆病だった海未。今でこそこんなにしっかりしてるけど、やっぱ根本のとこでは変わってない。

「空港でいきなり、こんな「私!ミューズの大ファンなんです!」

 海未の言葉をさえぎって、その女生徒は興奮気味にそう告げた。

「・・・ファン?」

「あれだよ、その人たちのことが好きって意味だよ?」

「わかってるよそれくらい!」

 穂乃果に耳打ちしたのだが、ブンブンと手を上下に振られ返される。

「あの!私も!」「私も大好きです!」

「「「お願いします!」」」

 すると、その女生徒の友達だろうか。同じ制服の子が増えサイン色紙を手渡された。

 一人が二人に、二人が四人に。四人が・・・・・だめだ。数えてたら眠くなる。

 とにかくそれくらい。あっという間にミューズのみんなの前には長蛇の列ができていた。

 みんな、サイン欲しさに並んでいる。

 え?僕?

 僕は。

「はーい、押さないでくださーい。順番にお並びくださーい。慌てないでー」

 列の整理をやっていた。・・・・バイトか。

 なんだろう、なんか最近全然良いとこないぞ僕。わけわからんうちに捕まって、ギャング潰したり。全然良いとこないよ!僕主人公なのに!劇場版なのに!

「これは、いったい」

 どうやら困惑していたのは僕だけでないらしい。凛もまた、不思議なものを見るような顔をしていた。

「はっ!もしかして夢!?」

 穂乃果、それはいくらなんでも。

「それは考えられるにゃ!」

 え?

「でも、だとしたらどこからが夢?」

 あれえ?ことりまで?

「うーんと・・・旅行に行く前くらい?」

 列の整備をしているため、心の中でしかツッコめないのがもどかしい。

「えー!そんな前から!?」

 ねえなんでそんなに新鮮なリアクションができるの?なんでそんなに一部の疑いもなく信じることができるの?なんなの?ピュアなの?

 だったらもうちょっと僕のことも信じてもらってもいいんじゃありません?

「それは・・・いくらなんでも」

 そうそう。そうだよ、言ってやってよことり。

「幼稚園の時のことだった。くらいからじゃないかな?」

 まさかの一話冒頭から———————————っ!?

 このssまるまる夢?なわけないでしょうが。

「長い夢だにゃー!」

 だからツッコめや!!なんでそんなに驚けるの!?クイズ番組で、大魔王といえばピッコ・・・・?ぐらい簡単な間違い探しだよ今の!ロ!しかないよもう!

「ねえ、海未ちゃん。海未ちゃん?」

 穂乃果の声が、どうやら海未には届いてないらしい。さっきからずっと色紙とにらめっこして唸っている。

「・・・・じゃあ、どうして」

 そんな海未に聞くのは諦めたのか、穂乃果は周りをキョロキョロとしだした。

 そして———————————。

「———————っ」

 段々、驚愕に目が見開かれていく。

 そんな穂乃果の顔が気になって、穂乃果の視線の先をたどると。

「—————————っ!」

 あんぐりと、口を開けてそのまま表情筋が固まってしまったように僕は動けなくなる。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「「えーーーーーーーーー!!?」」

 

 

 二人の声が、空港に響き渡るのは自然なことだったろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、驚いたのはそれだけじゃなかった。

 空港だけじゃなく、秋葉の街、至る所にミューズが存在していたからだ。

 家電量販店の画面にミューズ。ショップの看板にミューズ。ビルの壁一面に、ミューズ。

 まさに、ミューズが街を支配していた。

「ほえー」

 能天気な声。その声は穂乃果のものだった。

 だが、そう言いたくなる気持ちもわかる。僕は声も出せなかったが。

「これは」「いったい」「どういうことー?」

 順番に希、絵里先輩。そして穂乃果だった。その気持ちはわかんない。

「うわ!こっちにもあるにゃ!」

「こんな応援チラシもある!」

 ことりも凛も、異様なその状況に驚いているのか戸惑っているのか。

 いや。ことの大きさに、僕も海未も、いやみんなついていけてなかった。

「こ、これは・・・・」

「あの!」「やっぱり!?」

 そうやって騒いでいたからだろうか。ファンと思しき女の子に見つかってしまった。

 いつもとは違うその状況に、海未の顔もひきつっている。

 僕は。僕は。

「・・・・穂乃果、サイン頂戴」

「ええ!?ゆ、雪ちゃんも?」

「もしかしたらみんなのサインがこの先高騰してものすごい値段になるかもしれないそうこれは投資だよ投資なんだなにもやましいことはない僕を助けると思ってさあ早くみんなのサインを!」

 もれなく、瞳が¥マークになっていた。ダブルでなってた。何も見えなかった。

「ぶべら!」

 はたかれた。無表情な穂乃果に。ほっぺたを。

「・・・・・・ごめんなさいは?」「ごめんなさい」

 謝った。すぐ謝った。びしっと九十度腰を折り曲げて謝った。

 そんなことをしていたら、いやしていたといっても数秒だ。だが人の口に戸は立てられぬというように、あっという間に空港の再現が。

  

「あうー。ど、どうもー」

 

 困ったような穂乃果の表情が終始顔に張り付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参ったわね」

「真姫ちゃん。そのグラサンなに?」

「うっぅうう」

「海未」

「あれ?無視?」

 いくない!無視はいくないよ!確かにさっきのは僕がちょっと悪かったけども!

「無理です!こんなの無理です!!」

 海未はまた泣いていた。それもそうだろう、どこにいってもファンだという人たちに追っかけ回されて怖かったのだと思う。僕ですらちょっと怖かった。

 海未も、みんなもスクールアイドルだ。アイドルだけど、プロじゃない。だから、こういうのには慣れてない。

「こっちに来てから、街を歩いていても気づかれるくらいの注目度。海外でのライブが色んなところで流れてる」

 グラサンのまま、真顔で口を開く真姫ちゃん。ツッコんだら負けだと思うことにした。

「やっぱり、夢なんじゃない?」

 穂乃果は自分の頬をつねるような仕草で、現実感を確かめている。

「穂乃果ちゃん!」

 ことりがなだめるようにいうと、凛が「でもそう思うのもわかる!」と、若干興奮した手つきで話す。

「凄い再生数になってる!」

 花陽の手元にあるのはスマホ。そこには動画サイトでのミューズが映っている。

「じゃあ私たち、本当に有名人に?」

「そんな!無理です!恥ずかしい」

 おいおいおいと、海未は一層泣き崩れた。

 それほど?それほど嫌なの?

 でも確かに、海外でライブをして今まで比じゃないほどの反応だ。

「でもさ!海外ライブは大成功だったってことだよね!?」

 穂乃果の顔はようやく明るくなった。

「うん!そうだと思う!」

「ドームも夢じゃないよね!これでドームが実現したら、ラブライブはずっと続いていくんだね!」

 良かったうれしいと、子供のように跳ねる穂乃果。

 そっか。ラブライブは、続くのか。もし、ドームが実現すれば。

 そのことには、気づきなかった。

 

「まだよ。まだ、早いわ」

 

 んんん?

 

「それより、バレずにここを離脱するのが先よ」

 

 あれれ?

 なーんで三人とも、グラサンしてるの?

「ねえ、絵里先輩・・・・」

 絵里先輩までぇ!?ちょっと!あなたそういうキャラでしたっけ!?

 

「そうよ。今や私たち、スターなんですものぉ!」

 あれぇ?なんかどっかから音楽かかってるぅ!?なんか三人が踊りだしてるぅ!?なんか歩き出してるぅ!ランナウェイだあ!!

 ・・・・いやいや、なにこれ!戻ってきて!三人とも戻ってきてえ!

 負けだった。ツッコんだ僕の負けだった。

 

 

 

 

 

 

「そうなの!あのライブ中継がやっぱり凄かったらしくて」

 穂むらで雪歩が今までの経緯を説明してくれる。

「ほら」

 差し出されたのはパソコン。そこには秋葉の街だけではなく色んなところでミューズが話題になっているのが見て取れた。

 雪歩によると、穂むらも穂乃果のおかげで売り上げが上がったらしい。

「うそ!お小遣いの交渉してこなきゃ!」

 流石穂乃果だ。この事態を目の前にしてもいつも通り。平常心を崩さない。

「そんないいもんじゃないでしょ」

 お茶をすする真姫ちゃんに言われ、だよねーと返す。

「そうよ。人気アイドルなんだから行動に注意しなさい」

 にこちゃんは?にこちゃんのさっきの奴は人気アイドルの行動なの?

 ていうかなんで普通に座ってられるの?さっきのことはなかったことにしようとしてるの?無理だよ?あの衝撃は絶対忘れないよ?

「そんなことより「「考えなきゃいけないことがあるでしょ?」」

 絵里先輩と真姫ちゃんの声が被る。

「考えなきゃいけないこと?」

 なんのことか穂乃果はピンときていない様子。かくいう僕もピンと来てない。

「わかんない?」

 ちらと、真姫ちゃんと目があう。けど、やっぱりわかんない。

「こんなにファンに注目されているのよ」

「そうやね。これは間違いなく」

 どうやら、希は察しているようだ。・・・・・・えー、なに?なんなの?

 

「次のライブ!?」

 

 ああー、ん?どういうこと?

 なぜか学校の部室へと移動して。その言葉を聞いた。

 納得しかけたけど、やっぱり無理だった。

「つまりね。みんな次のライブがあるって思ってるんよ」

 なるほど!

 でも、ミューズは終わるんだ。

 ・・・そのはずだ。

「まあ、これだけ人気が出れば。解散のことは私たち以外には話していませんでしたからね」

 ああ!確かに!

 そこで、僕はやっと納得した。自分たちのことで頭いっぱいで、確かにそのことを周りの人には言っていなかった。

 ・・・言っていたら、次のライブだなんて話はなかったのだろうか。

「でも!絵里ちゃんたちが三年生だってみんな知ってるんだよ!卒業したらスクールアイドルは無理ってわかるじゃん!」

 穂乃果はぶーぶーとしかめっつらだ。

 でも、多分。

「見てる人にとっては、私たちがスクールアイドルかそうじゃないかってのはあまり関係ないのよ」

 真姫ちゃんの言う通りきっと見てる人には、アイドルとスクールアイドルの区別なんて気にしてないんだ。それを気にしているのは、今現在僕らだけ。

 だったら。

 だったら、もう一回ライブすればいいなんて。そんな簡単に僕には言えなかった。

 区切りをつけて、最後だと言って。その気持ちに泥はつけたくない。

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「でも、実際に学校を卒業してもスクールアイドルを続ける人はいる。ラブライブには出られないけど、歌を発表したり踊ったりしてる人はいるから」

「そっか」

 その言葉を聞いたからといって、僕の何かが変わるわけではないし。皆の何かが変わるわけでもないんだろう。

 だけど、僕は一縷の望みに賭けてしまう。どこかで、ひょんなことで心変わりしてくれないかと。

 ずっと。ずっと、そう思ってる。

「では、どうすればいいのですか?」

 仕方ないけど————、今回ばかりは———————。

 みんなが思案してる中、僕は半ば諦めていた。 

「ライブ、やるしかないんやない?」

 

「ええ!?」

 

 きっと希の言葉に一番驚いていたのは僕だ。だって、みんなこっちをびっくりしたような表情で見てるもの。

「・・・・雪、ちゃん?」

 ことりの心配そうな表情が目に映る。

「い、いやだって。ミューズはもう終わりで、解散で・・・」

 言葉尻に下を向いてしまう。

「うん。だから、ちゃんと終わるために、終わるんだって皆の前でいうために。ライブをするんよ」

 希のその言葉は一理どころか百理はある。

「・・・・・あのね、雪。私たちは」「いえ」

 その絵里先輩の言葉を、僕は遮る。

「わかってます。ちゃんと、わかってます。すいません、ちょっと驚いただけです」

 だから、できるだけ晴れやかに。できるだけ笑顔で。

 僕はそういった。

 大丈夫だと。

 大体、もう一度ライブがみられるんだ。恋い焦がれて、いつだって呆れるほどに望んだそのライブを。

 なら、僕の気持ちなんてどうだっていい。ライブが見られるなら、それが事実なら。後はどうだっていい。

「それに、ふさわしい曲もあるし」

 曲?

「ちょっと!希!」

 希の言葉に真姫ちゃんが反論している。

「いいやろ。実は、真姫ちゃんが曲を作ってたんよ。ミューズの新曲を」

 ・・・・ああ。それで空港のときになんか耳打ちしてたのか。

「ほんと!?」

 穂乃果のその顔は新曲と聞いて綻んでいた。

 

「でも、終わるのにどうして?」

 

 それは、ことりだけじゃなくて僕も、みんなも聞きたいことだった。

「別に、ライブで歌ったのが最後の曲かと思ったけど、そのあと色々あったでしょ?だから、自分の区切りとして。ただ、ライブで歌うなんてそんなつもりなかったのよ」

 そういって真姫ちゃんは音楽プレイヤーを取り出した。

 穂乃果が、ことりがイヤホンを耳にする。そして凛がにこちゃんが、やがて全員にその曲は行き届いた。

「これで作詞できる!?海未ちゃん!」

「ええ、実は私も書き溜めていましたから」

「私も!海外で衣装のことばっかり考えてた♪」

「みんな、考えることは同じやね」

 そうだったんだ。僕があっちでニューヨークの魔力にやられてる間にそんなこと考えてたんだみんな。

 なんか、本当に申し訳ないというか目を逸らすしかない僕である。

「はい!雪ちゃんも!」

 みんなが聞いていたイヤホンを、今度は僕に差し出す穂乃果。

「い、いいの?」

 僕が、聞いても。

「いいに決まってるでしょ?」

 真姫ちゃんが、髪をくるくるしながらそう言ったので。

「はい♪」

 穂乃果が笑顔で僕の耳にイヤホンを差し込んでくれるのを、受け入れた。

 耳に、穂乃果の柔らかくて温かい両手が添えられる。

 

 

「—————————、」

 

 

 ああ、本当に。いい曲だ。

「真姫ちゃんが作る曲は、いつも好きだけど。でもこの曲はその中でも最高に好きだよ」

 それは、なんていうか本心だった。いつもなら恥ずかしくて言えないようなことを、その時は言えた。

「・・・・そ、そう」

 代わりに真姫ちゃんが恥ずかしそうだったけど。

「どう?やってみない?最後のライブ」

 希が確認する。

「・・・・穂乃果ちゃん?」

 けれど、穂乃果から返事は聞こえなくて。

 

「なんのために歌う」

 

「穂乃果ちゃん?」

「——————あ、ごめん!こんな素敵な曲があるんだったらやらないともったいないよね!」

 穂乃果の言葉にみんな頷く。

 穂乃果の呟き、みんなが聞いていたのかどうかはわからないけど、僕には聞こえた。

 なんのために歌うのか。それはあのニューヨークで会ったお姉さんも言っていたことだ。

 あのお姉さんはすぐわかると言っていたけど、穂乃果は、見つけたのだろうか。

「やろう!最後を伝える最後のライブ!」

 そして、穂乃果の言葉通り。本当に、これでラスト。

 そのラストがやってくる。

「お母さん?」

 と、思っていたんだけど。

 どうやら、一筋縄ではいかないようだ。それほどまでに、ミューズは大きくなっていたらしい。

 僕も、みんなもちゃんと最終回を迎えるために。

 僕らは紡ぐ、最後の物語を———————————。




 どうも皆さんμ's Final LoveLive!〜μ'sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪〜高宮です。
 ということで、一昨日、昨日とライブビューイングではありますが、行ってきましたファイナルライブ。
 感想は活動報告でも書いたのですが、本当にいいライブでした。時が経てば経つほど、寂寥感がこみあげてきて。そう思えるライブというのも少ないのではないかと思います。
 言葉にすればするほど、なんか薄っぺらくなっていきそうで怖いんですけど。でも言葉に、文字にするのが僕なりのけじめだと思うので。
 このssを書こうと思ったとき、ほとんど何も考えずに書き始めました。途中から愛を描こうと意識し始めました。暗い話をするときは受け入れてもらえるか不安でもありました。 
 それでも、これだけ多くの人の目に触れてもらえて、面白い。頑張って。と言われるたび嬉しくて何回も読み直したりして。
 それは全部。ミューズの、ラブライブのおかげです。
 この小説は二次小説なので本家というか、オリジナルがないと成立しません。
 僕の持論ですけど、二次小説はそもそもオリジナルが面白くないと好きでないと面白くならないと思ってます。
 その点でいえばラブライブという作品は、これ以上ないくらい最高の作品でした。
 あれ?なんか最終回っぽい!凄い最終回っぽい!とっとけばよかった!
 ・・・まあ、次で最後なんですけど。劇場版編がね!
 このssは劇場版編が終わってもあと、ちょっとだけ続きます。そこからがこの物語のファイナルです。
 それまでよろしくお願いします。
 あ、相変わらず話のネタは探してますんで。
 とまあ、色々書きましたけど、言いたいことはこれからもよろしくお願いしますというこの一言だけです。
 最後はやっぱりこの言葉で絞めたいと思います。
 せーっの!

 今が最高!!

 

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