ラブライブ!~輝きの向こう側へ~   作:高宮 新太

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番外編 明日上げるなんて言ってすいませんでした。

 音ノ木坂学園学園祭。

 期間は二日間行われ、一日目は生徒間のみ。二日目は招待制、父兄や友達で校内がにぎやかになる。

 そしてその二日目に、ミューズの第一回ラブライブ予選突破のための最終ライブが予定されていた。

 結果からいえば散々で、その事が後々まで響いてくるのだがその事態にはまだ至っていない学園祭一日目。

「ま、間違えた」

 海田雪は本来なら二日目に行くはずだった。勿論ミューズのライブを見に行くために。いろいろと葛藤が残るものの、それでもまだ自らの足で見に行くだけの気力はあった。

 のだが、日にちを間違えてしまったのだ。しかし、おかしい。希に聞いた日にちだとこの日で合っているはずなのだが。

「あ!雪君。来た来た」

 校門で立ち尽くしていると、にぎやかな校舎から一人の女の子が、希が出てきた。

「ごめん、日にち間違えたみたい。また明日出直してくるよ」

「いやいや。今日であっとるで?」

「え?」

 希の言葉に首をかしげる。辺りを見回しても、他校の生徒や親御さんたちの姿は見えない。ここから覗く廊下や教室も横断幕や飾り付けがされているものの、そこから見える生徒の色は一種類のみだ。

「いやほら、明日やったら人も増えて動きづらいし、何よりライブがあるから一緒に回れへんやろ?」

「ああ、それはそうかもしれないけど・・・」

 だからって日にちを一日ずらして教えるだろうか普通。それに、結局これじゃあ雪は学校に入ることすらできない。

 そんな表情を汲み取ったのか、はたまた最初から考えていたのか、おもむろに後ろ手に持っていたものを取り出す。

「ほら!じゃーん!これがあれば雪君も学校に入っても怪しまれないやん?」

 そうやって手にしていたのは、どこから調達してきたのか音ノ木坂学園の制服だった。

「いや着ないからね!?」

「でも、これしか方法はないやん?」

「いやあるよ!普通に明日来るよ!」

 なぜかじりじりと詰め寄ってくる希。その表情はとてもいやらしい笑みを浮かべている。

「だから明日じゃだめなんよ。ね?大丈夫絶対似会うから」

「そう言う問題じゃないんだよ!大体、他の人になんて言い訳すればいいの!?」

 女装姿を知り合いに見られるだけでも黒歴史確定なのに、そこに加えて普段よく行く学校の大多数の生徒にも見られるなんて死んでもいやだ。

「大丈夫やって。ほら、みんなには会わないようにちゃんとエスコートしてあげるし、他の子だって雪君とは分からへんと思うで」 

 な?一回だけ。思い出を作りたいんよ。とそういう風に言われてしまうと困ってしまう雪である。

 ま、着るだけなら、一回だけならと、渋々了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜカツラまで用意してるんだ・・・」

 さすがに校門の真ん前で着替えるわけにはいかないので、部室棟にあった更衣室で着替えて出てきたところ。なぜか両手にカツラを持った希に半ば無理やり着用させられた。ちなみに音ノ木坂は女子高なので男子更衣室なる者は存在しない。

 白のカッターシャツに肌色のセーターを着込み、緑色の蝶ネクタイで首元を調節。そしてスースーするスカートに二ーソックスといういで立ちを鏡で確認する。ちなみに髪形は明るい茶髪の腰元まで伸びているロングヘアだった。

「―――――――――――。」

「え?何?やっぱ変?」

 その姿を見た希は若干打ちひしがれる。雪的にはあれ?若干ありじゃね?てな感じな雰囲気になっていたのだが希の醸し出す空気に一旦冷静になる。 

「いや、この世の中の不公平さに泣きたいとこなんよ」

 鏡から目を逸らす希に、雪は?マークを浮かべる。

 実際、雪の女装はドン引くほど似会っていた。傍から見れば男とはバレないだろう。ただ、胸という圧倒的性別の壁は取り払えなかったのだが。そこは貧乳ということで誤魔化せるはずだとは思うが、やけに胸のあたりに空洞を感じる。明らかに伸びてしまっているのだ。

「あの、希。もう聞くのも怖いんだけどこれ誰の制服?」

 胸からもわかるとおりそれは明らかに誰かの所有物だった。偶々誰も使ってないスペアなどではなかった。

「そんなん一人しかおらへんやろ?うちのや」

「あ、そうなんだ」

 いやまあこの状況で他の誰かのだといわれてもそれはそれで怖いのだが。

「あ!パンツどうしよう?」

 雪が今日はいていたのは当然だが男物の黒のボクサーパンツ。これだと座った時や階段などで見えるかもしれない。希と雪では足の長さが違うためスカートの長さに影響が出てしまっているのだ。

「うちが言うのもなんやけど、完全に乗り気やね」

 先ほどまでの拒否感どこへやら。もう完全に女装して校内を回る気満々である。

 しかし、流石に女物のパンツは調達できない。希が今履いているものを渡すということも一瞬考えたのだが、即座に打ち消す。

 仕方ないので妥協案として、ボクサーパンツをTバックのように後ろをお尻に食い込ませることで事なきを得た。

「いや得てないよ!?むしろ余計恥ずかしくなってる気がするんだけど!」

「仕方ないやん。それとも雪君はパンツを見られて、女装している変態が校内へ潜りこんできたってばれて警察に突き出されてもええの?」

「・・・・・・良くないです」

 想像してしまい寒気がする。格好の所為で想像にリアル感が増していた。

「ほら、じゃあ早くいこ?もう学園祭は始まってるんやから」  

 右手を掴まれ更衣室を後に、学園祭で普段の物静かなのとは違う雰囲気のある校舎へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校舎の中は外から見るよりも騒然としていた。女子同士の話し声や教室内外の出し物の宣伝や歓声が廊下を満たしている。

 その騒然さなどには一切振り向かず、不自然なくらい微動だにしない雪。

「?どうしたん雪君?」

「い、いやいざ目の前にすると足がすくんでる」

 目の前にいるのは圧倒的に女子、それだけなら別に何ともない雪だが今は女装中という状況が加味される。しかも、もしそれが今横切った人たちの一人にでもばれれば即人生が終わる。

「もう、ここまできて何言うてんの?」

 ぐいぐいと背中を押され雪は揺らぐ心を掴まえて決心する。なによりこのままじゃ不自然だし、堂々としてれば案外ばれないかもしれないと思ったからだ。

「うーんまずはどこから回る?やっぱり食べ物系やろか?」

「そうだね。そういえば希のクラスは何やってるの?」

「――――――――ビクッ!!」

 気になって尋ねてみたのだが、希はあからさまに動揺する。

「・・・・まぁそれは別にええやん。それよりほら焼きトウモロコシ売っとるで?」

「あ、おいしそう」

 雪の興味はとりあえず焼きトウモロコシへと移り、希は内心で安堵する。

 その後も焼きそばやかき氷など定番の屋台が廊下一帯に並ぶエリアに入って昼食を共にする。

「うんうん、流石女の子が作っただけあってどれもおいしいね」

「そうやね」

 二人でたこ焼きをつつきながら、希は周囲を警戒する。いくら女装してカツラまでかぶっているとはいえ、他のメンバーに見つかりでもしたらどうなるか分からない。特にことりちゃんなどに見つかったら謎理論で雪君の正体を看破されそうだ。

「雪君の名前どうしようか。そのまま雪君なんて呼んでたらいくらなんでもばれるやろ」

「ああ、そうりゃそうだね。なんでもいいけど・・・・じゃあ響で」

「・・・どうでもいいけどなんで響?」

「え?そりゃア●マスの名前出しとかないとでしょ」 

「メタ的な意味でなんだ」

 昼食もそこそこに歩きだす。階段を上がるとどうやら三年生の教室みたいだ。

 そこにはどうやら一つのクラスに行列ができているようだった。

「あれ何ですかね?行ってみましょうよ」

 と手を引っ張り連れて行こうとするも、がっくんと足が止まる。

「あそこは駄目!!」

「え?なんで?」

 めずらしく焦ったような表情で雪を引きとめる希。

「あそこは・・・・とにかく駄目なの!!」

 なにがなんやら分からないうちに希が雪をこのエリアから脱出させようとするとそこでひと際歓声が上がった。

 何事かと後ろを振り返ってみるとどうやら例の行列からのようだ。キャーキャーと黄色い歓声をあげている。

「ほら、行ってみましょうよ」

「うううううう」

 観念したように雪を引っ張る力が弱まる。

「あ!希先輩だ!!」

「え?嘘?」

「本当だ!!きっと先輩も今からなのよ!!」

「うわ!!二人が揃ってるところ見られるなんてラッキー!!」

 行列を形成していた女子達が希の事を見るや否やまるでモーゼの十戒のように割れていく。

「いや、別にうちはまだシフトじゃないんやけど・・・・」

「?」

 シフト、というからにはこの行列の先にあるクラスは希のクラスなのだろう。とにかく、道を開けてくれたのだから素直にその先にあるドアへと手をかける。

「おかえりなさいお兄ちゃん♪も~う待ってたんだからね!」

 ドアを開け、そこにいたのは絵里先輩だった。絵里先輩が紺色のセーラー服に身を包んで金色に輝く髪の毛をまるでにこちゃんのようにツインテールにしていた。その表情はまるで家に帰るのが遅れたお兄ちゃんを怒っているようだ。

「――――――――――――。」

 雪は声が出ずに、思わず扉を閉める。閉めた扉にデカデカと書かれていた文字は『妹喫茶』なるものだった。字面から考えてメイド喫茶の妹バージョンの様なものだろう。

 後ろで希先輩が顔を両手で隠し、うずくまっている。

 今まで見たことない表情で、今まで聞いたことない声だった。

 雪は、静かに、ただ静かにその場を去った。まるで今起こったことをなかったことにするかのように。その後、雪を泣きながら説教する人とはとても思えなかった。

 

 

 

 

「ほら!やっぱり私じゃダメなのよ!今の娘もなんか未確認生物をみるかのような目だったし!私のキャラじゃないのよ!」

「大丈夫です会長!!そのギャップが萌えを生み出すのです!!生徒会長なのに妹みたいな!生徒会長なのに家ではツンデレみたいな!!」

 その絵里と希が所属するクラスではこの『妹喫茶』をプロデュースしていた女子が熱弁をふるっていたのだが、雪には知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、次はどこ行こうか」

「そ、そうだね。凛ちゃん達が何やってるのか気になるよね」

 独特の気まずさを抱えたまま、さらに階段を上って一年生の教室があるフロア。

 一年生は一クラスしかない為、迷う必要もない。

 先ほどの経験から慎重にドアを開ける。どうやら特別教室などとつなげて作ったお化け屋敷みたいだ。

 ひんやりとした空気が雪を襲う。暗闇ということもあり希が腕をまわしていたが、雪は特に気にしない。

 やがて特別教室へとつながる扉へとたどり着く。おどろおどろしいBGMと辺りの雰囲気からそれなりの完成度を感じる。

 ごくりと、喉を鳴らし勢いよくドアを開ける。

 すると、

「開けんじゃねえよクソババア!!」

 なぜか傍らにポテチ、首筋にはマッサージ器具、手には携帯型のゲーム機。テレビの画面はずっと砂嵐を表示している。ヘアバンドにメガネをしたその少女はていうか良く見ると凛だった。

 状況に愕然としていると、ドアに一枚の張り紙がなされていることが分かる。

『ここは働く意思を粉々に砕かれた娘の亡霊に執り憑かれた女の末路。』

「いやおかしいだろ!!」

 おかしい。ここは完全にお化け屋敷だったはずだ。それがなんで三十代半ばにしてニートの娘を見守っている空間に迷い込んでいるんだ。

 ・・・・だがしかし、ここを抜けなければゴールはない。しかたないのでそっと抜き足差し足で凛の後ろを二人で通る。

 後ろ手に扉を閉める。なんにも反応がなかったのが逆に怖い。

「あれ?怖い確かに怖いけど、これはなんか違う気がする!」

 ともあれ第一関門は突破したので次だ。想像と違ったので一刻も早くここから出たい思いで眼前を見る。

 すると今度は何もない。真っ暗なことに変わりはないが、先ほどのように分かりやすいものが何もないのだ。

 目には見えない代わりに、声が聞こえる。呻き声の様なささやき声のようなそれは良く耳を澄まさないと聞こえないレベルだが、しかし確かに聞こえてくる。

「ブツブツブツなにが先に結婚しちゃってごめんねよ披露宴で盛大に黒歴史後悔してやろうかしらあんたも良い人見つけなさいよってなんで結婚したからって上から目線なのよむかつくわブツブツブツ」

 聞こえてくるそれは怨霊のようで、身震いする。

「ねえ。この声真姫ちゃんやない?」

 ――――――確かに。聞き覚えがあると思ったら真姫ちゃんの声だ。

 もしやと思いドアを見やると、やはり一枚の張り紙が。

 そこには『昔は美人で周りよりもモテていたのになぜか自分よりも周りが結婚し始めて行き遅れる女の霊』

「いや、あるけど!!確かにそう言うの良く聞くけども!ていうか最後結構無理やり霊に結び付けてね!?」

「怖いわー」

 いや怖いけど!確かに行き遅れるのは怖いけど!でもお化け屋敷ってそういう近い未来ありそうな怖さ体感しにくるところじゃないよね!?

 恐る恐る声の発生源からできるだけ遠回りして次の扉にたどり着く。暗がりで良かった。こんな真姫ちゃん見たくない。

 ようやく次で最後だ。もうこの仕組みを理解したので、開ける前に張り紙を見る。

『美魔女だなんだと周りからおだてられて必死に若さと美に執着する醜魔女(びまじょ)

「もはや霊でも何でもないじゃん!!ただの醜い人間じゃん!」

 何!?一番怖いのは霊でも心霊現象でもなくて人間ですってか!やかましいわ!!

 バカらしくなって来たのでもうドキドキも生まれずに扉を開ける。

 そしてここまでの流れ上、凛⇒真姫ちゃんと来たからには最後は花陽なのだろう。

「ふふふこの美容健康コスメとお肌つるっつるになる乳白化粧水を合わせれば顔のシミもなくなるわねふふふああアロエヨーグルトも食べれば最強かしら」

「誰だよ!!」

 そこにいたのは花陽ではなかった。最早暗闇でもなんでもない普通に明りのついた部屋の真ん中で、電動マッサージ機に揺らされながらアロエヨーグルトを食べている見知らぬ少女。

 後に真姫ちゃんの友達として崇められることになる放送部員の少女だった。だが、そんなことは今の二人は知らない。

 少女を無視してさっさと出口からこのお化け屋敷から脱出する。

「いやー、怖かったね」

「いや、うん。どっちかって言うと悲しかったけどね俺は」

 こんな悲しいお化け屋敷に入ったのは初めてだった。

「賑やかで楽しいな。うちこんな楽しい文化祭初めてなんよ」

「俺も、文化祭でこんなにツッコんだのは初めてだよ」

 希は本当に楽しそうだ。だけど、初めてってどういうことだろう。これよりマシな文化祭はいくらでもあると思うけど。

 それにしても暗がりということもあったのだろうが女装してるなんてばれる気配すらなかった。これは本格的にイケるのでは?と雪が思い始めていた頃。人の流れが変わる。

 今までは雑多な雰囲気の中、各々好きなように動いていたのだが、そこに一定の法則が生まれ始める。

「あれ?なんかあんの?」

「講堂の方で演劇やる見たいやね。行ってみる?」

 希につられらる形でその波に乗る。その中。

「あれ?希ちゃん?」

 人ごみというほど多くはないが、それでも人を見つけるのに苦労しそうな環境で、運悪く呼びとめられてしまう。

「ことりちゃんやん。ことりちゃんも演劇見に行くの?」

 振り返ると、クラスTシャツを着ていることりの姿。

 意識せずとも顔が引きつる。雪はできるだけ顔を見られないように俯き、前髪が視界を覆う。

「・・・・・そっちの人は?」

 気付いたぁぁぁぁ!気付かれたぁぁぁ!と、内心冷や汗でふやける。

 いやしかし待てと。雪は思い直す。ここまでバレなかったのだ。イケる、乗り切れる。と、姿勢をただし声のトーンを上げ。

「えーっと、希の友達の響きですぅ。よろしくね」

 できうる限り女の子らしく、最大限雪っぽさをなくし挨拶する。

「・・・・・・へー」

 疑ってる!明らかに疑ってるよこれ!

 だらだらと内心で冷や汗をかき続け、耐えられなくなった雪はいらぬ理由をつけてその場を去ろうとする。

「あ、あのー。私たちはこれで・・・・・」

「あれ?希ちゃん?」

 今度は前方から穂乃果と海未が。歩き出そうとしていた雪は体ごと反転させる。

(ぎゃあぁぁぁぁ!!なんでこんなタイミングで!?)

 驚いたせいかより一層挙動不審になり、それが疑わしさに拍車をかける。

「ちょっと響きさん、でしたっけ?大丈夫ですかさっきから」

 疑わしい目線を向けたまま、ことりが雪に近付く。

「大丈夫です!大丈夫だからちょ、あんま近付かないで!」

 そして、ことりの視線が上から下に、主に制服が伸びきった胸に行く。

「ちょっとぉ!!何してんの!?セクハラだからこれ!!」

 がっと伸びてきた腕を思わず掴み取る。

「・・・・どこかで会いましたか?」

 なんでだぁぁ!!!なんで腕を掴んだだけで不信感高まってんの!?なんで腕を掴んだら正体ばれそうになってんの!?

 内心でシャウトするものの、なんとか表情に出さないように気をつけて。

「あ、あれ。この学校人数少ないし、すれ違ったことくらいはあると思うよ」

「いや、そうですか?見たことない気がするんですが・・・」

 ことりに触発されたのか、海未までもが疑いの目線を送ってくる。

「それはあれよ。ほらこの人女装してるから」

「「「「・・・・・・え?」」」」

 言っちゃった!?希が言っちゃった!?

 最早表情を隠すこともせずに、希に詰め寄る。

「ちょっと!!何言ってんの!?なんで希がばらしちゃうの!?」

「えー?こっちの方が面白そうやん♪」

「あんたどっちの味方!?」

 とっても綺麗な笑顔で言われた。

「・・・もしかして雪君?」

「ぐぎゃぁぁぁ!!」

 名前までばバレた!名前までバレた!もう無理だ。もうやっていけない。もう顔合わせられない。ていうかなんでバレんだよぉ。

 若干半泣きになりながらもうこうなったら逃げるしかないと、後ろ向きに決心して、体を反転させたものの、前方には穂乃果と海未がいるということを忘れていた。

 ぐわーっと、さらに反転し、元の位置に戻る。

 すると、ことりの向こう側から、階段を下りてくるのは凛達一年生組。

「だからなんでこのタイミング!?」

「あれ?雪ちゃんだにゃー」

「なんで一発でバレんだ!!」

 おかしいだろ!さっきはバレなかったじゃん!なんで淀みなくバレんの!?

 もうこの道は駄目だと、ことり達に背を向け穂乃果達と向き合う。

 すると今度はその向こうから、遠目からでも目につく金髪を左右に垂らした絵里先輩が階段を上って来る。

「もういいよ!!分かってたよ!!あとあれはもう絵里先輩なんだね確定なんだねなんで妹喫茶なんてやってんだ!」

 しょうがないので全力疾走。後ろは振り返らない。

「いやー。雪君通ると退屈せえへんね」

「あれって、もしかして雪?」

 涙目で雪が通り過ぎた後を見送り、絵里先輩が尋ねる。

「そうみたいでしたけど」

「な、なんで女装してるんだろう」

 花陽んが当然の疑問を口に出すが、誰も答えない。

 唯一知っていそうな希に自然と視線が集まる。

「そういえば、なんで一緒にいたの?一緒にいたってことはつまり、一緒に回ってたってことだよね」

 ことりが問い詰める。

「大体、今日は他校の生徒の類の出入りは禁止でしょ。なんで雪が来てるのよ」

 真姫ちゃんも問い詰める。

 集まっていた視線が段々と固くなって行く中、希は。

「テヘッ」

 

 

 

 

 

 

 

「あーもう終わりだ。もういやだ。もう会わない。もう絶対疎遠になる。もうバイトの面接行こう」

 皆にあったショックで、格好の事は完全に頭から抜け落ちた雪は、走った。

「あー、で?おたく誰?」

「いやだから面接に来た海田雪です」

「なんで女の子?」

「あ?」

 ここで気づく。というか思い出す。自分が女装していることに。

「ぎゃああああああああ!!!」

 チャンチャン。

「やめろその終わり!!」  

 




どうもトッティ!高宮です。
希ちゃんごめん!!愛してる!大好き!
違うんだ愛がないとかそういうんじゃないんだ。ただ遅れたのはちょっと睡魔に負けてちょっとやる気がなくなっちゃっただけなんだ。愛してる。
ということで改めて希ちゃんハッピーバースデー!!

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