僕たちは天使になれなかった   作:GT(EW版)

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原作検索に「ドラゴンボール」が追加されていたようなので、原作名を「DRAGONBALL」から「ドラゴンボール」に変更しました。


小ネタ
もしもシリーズ 「ゼノバースの場合」


 

 トキトキ都――それは時空の中心部に位置する、「時間の流れ」その物を管理している世界である。

 

 管理と言っても、別段特別なことをしているわけではない。過去と現在、そして未来。そう言った時間の流れは「何もしなければ」平穏に流れていくものであり、彼らトキトキ都で働く「タイムパトロール」の存在は本来なくてもいい筈のものであった。

 しかしこの広大な宇宙の中には、時間の流れに介入する術を持った生物の存在がある。

 それは元々その種族に備わっている特殊能力であったり、「タイムマシン」と言った超技術であったりと実に多種多様である。

 このトキトキ都で働いている「タイムパトロール」の役目は、そう言った力を持つ者達が時間の流れに介入した場合に発生する、「時空の歪み」を封じ込めることにあった。

 

 

 

 ……要するに、「歴史を変えるのは犯罪なんだぞ!」ということだ。

 

 昔、小さい頃に読ませてもらった青い猫型ロボットが出てくる漫画とかをイメージすると、彼らの役目は実にわかりやすい。

 

 さて、ここからが重要だ。

 

 時間の中心にあるこのトキトキ都――そこで働くタイムパトロールの一人が、ある日「第七宇宙」の時間の流れの中でとてつもなく大きな異常を発見したのである。

 その異常とは、「歴史の改変」。明らかに外部犯の仕業であるとわかる、極めて恐ろしい異常の発生だった。

 

 具体的に言うと本来平和だった筈の「地球」が、ことごとく壊滅してしまう歴史に変えられてしまっていたのだ。

 

 もちろんその改変は時間の流れを管理するタイムパトロールにとっても、この宇宙全体の平和の為にも許されることではない。

 

『強い人を……俺と一緒に時空を超えて戦ってくれる強い人を連れて来てほしい!』

 

 時空全体の危機とも言えるこの問題に立ち上がったのは、この異常を最初に発見したタイムパトロールの一員――トランクスだった。

 トランクスは自分が介入することの出来る限られた時空の世界から「ドラゴンボール」を集め、呼び出した神龍に対して一心にそう願う。

 

 

 そうしてこの戦いに協力してもらう戦士として「ボク」が召還に応じ、このトキトキ都に呼び出されたのである。

 

 世界は摩訶不思議と言うけれど、この期に及んではつくづくその通りだとボクは思った。

 

 

「……だけど驚いたな。神龍に呼ばれたと思ったらトランクスが居て、だけどボクの知ってるトランクスじゃなくて、そのトランクスじゃないトランクスにいきなり勝負を挑まれるんだから」

「まず最初に、貴方の実力を知りたかったので……すみません」

「謝らないでよ。少し混乱したけど、後の説明で事情は大体わかったし」

 

 トランクスの願いによってこのトキトキ都に召還されたボクがまず最初に行った――と言うよりも行わされたことは、彼と対峙しての一対一の真剣勝負だった。

 

 歪んだ時空を元に戻す為に訪れるであろう苛烈な戦いにボクが使えるかどうか、要するにそれは実技試験だった。期待通りでも期待以下でも、呼び出した戦士の実力を早めに知っておくのは確かに大事なことだと思う。

 

 だけど突然、知り合いに顔が似ている人がいきなり剣を持って斬りかかってきたら、強い人だろうと弱い人だろうと誰でもビビると思う。

 まあそんな会遇をしたボクとトランクスじゃないトランクスだけれど、ボクもそんなことでブツクサネチネチ文句を言うつもりはなかった。寧ろ戦いがあるならバッチ来いって感じだし、ボクだってそう思ったから神龍の呼び出しに応じたわけだしね。

 

「それで、トランクスじゃないトランクスから見てボクの力はどうだった? 合格? 不合格? ボクとしてはこんな機会滅多に無いし、是非貴方にお供したいけど」

「試すようなことをしてすみません。もちろん、合格です。こちらこそ、よろしくお願いします」

「……調子狂うなぁ。トランクスなのに、すっごい真面目じゃん……」

「え?」

 

 トランクスじゃないトランクス……いや、トランクスさん(・・)に対して間違った対応をしてしまったボクはごめんなさいと言って頭を下げる。どうやらここに居るトランクスさんは私の居た世界のトランクス社長22歳とは随分性格が違うようで、あっちと同じようにひょうきんに接するべきではないと感じた。

 トランクスさんはそんなボクの無礼を笑って許すと、少々困った顔で訊ねてきた。

 

「あの、そろそろ貴方の名前を教えてほしいんですが……」

「ん……? トランクスさんはそっちの世界で、そっちのボクと会ったことないの?」

「色々あって、俺の居た世界と貴方の居た世界では違う歴史を辿っているんです」

「へぇ~、ってことは同じ地球でも、色々違ったりするんだ」

「……恐らく、俺の居た世界には貴方は存在していないでしょう」

「ってことはもしかして、ボクってオンリーワン?」

「はぁ……」

 

 このトランクスさんとトランクス社長の性格が大分違うように、辿ってきた歴史が違えば住む人も変わってくる。それは、当たり前と言えば当たり前なことだ。時空とか次元とかなんだかスケールが大きな話だけど……それも今更か。全くもう、世界は広くて面白い。

 

 トランクスさんの語る多元世界についての話は中々興味深いけれど……それを聞く前にはまず、自己紹介が先だ。一戦やり合った後に名前を名乗るって言うのも変だけど、ボクは改めて名乗った。

 

「ボクはノエン。歳は13で、種族は地球人。好きな食べ物はニンジンと白米で、嫌いな食べ物はベジタブル。あと菜っ葉が嫌い、大っ嫌い。あとはえっと……お父さんと師匠が鶴仙流の武道家で、面白い技が使えるよ。超能力とかも使えたり。ボクも教えてもらった。趣味は読書とスポーツで……ああそう! 髪が白いのは地毛だけど、若白髪とかじゃないからね。それと理想の人は宇宙一強い学者な友達のお父さんで、えっと、えっと……」

「そ、その辺りでどうか……」

「あ、ここまで話さなくても良かった?」

「……はい。というか、ほとんど聞き取れなかったと言うか……名前は、ノエンさんで合ってますね?」

「うん。ボクが生まれた時、お父さんとお母さんの頭にふわっと浮かんだんだって。良い名前でしょ?」

「ノエンさんはとても、喋ることが好きなんですね」

「うん! だけど興奮するとすぐ早口になっちゃうんだって」

「そ、そうですか。……大丈夫かなぁ……」

 

 自己紹介とか自己PRとか、そういうものは将来凄く大切になるって、ボクの尊敬している宇宙一強い学者さんも言ってた。だけどボクの場合は頭の中で整理する前に口に出したりするから、そういう癖は良くないとも言われていたり。

 ボクは結構、他の誰かと喋ることが好きだ。人と言葉を交わし合うことは心を繋ぐこと。言葉を交わしてわかり合うのは難しいけど、それが出来た時はとても気持ちがいい。それと同じぐらい、拳で殴り合うことも好きだけどね。

 

 ……あ、そう言えば言い忘れてた。

 

「あ、それとボク、こう見えても女だから」

「えっ」

「まあ、そんなことはどうでもいっか。それよりボクの前には絶対にベジタブルや菜っ葉を出さないでくださいお願いします」

 

 男だろうが女だろうがそんなのは重要な情報じゃないけど、この恰好をしていると初対面の人にはなんでかわかりにくいらしいのでこの際に一応報告しておく。これから一緒に戦っていく仲間に、つまらないことで誤解されるのも嫌だからね。

 こっちとしては別に男装ってつもりはないんだけど、この一人称のせいもあってかよく間違えられる。初めてパンに会った時も最初は男だと思われていたみたいだし、半年前なんかはボクを男だと思っていたブラちゃんが意を決して告白してきて……ああ、あれはお互い本当に、悲しい事件だった。

 トランクスさんの驚いている様子を見ると彼もボクのことを今まで男だと思っていたようなので、早めに誤解が解けて良き哉良き哉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――掴みどころのない少年、というのが彼もとい彼女を召還したトランクスが抱いた、彼女への第一印象である。

 

 華奢な身体の中に感じる、静かだが確かに揺らめいている大きな「力」。後に彼女自身は地球人だと名乗っていたが、彼女から感じる力の種類はトランクスの知る地球人戦士たるクリリンやヤムチャとはどこか根本的に違うように思えた。

 

 彼女を見た瞬間、トランクスはその力の正体を一刻も早く知りたくなった――いや、恐れを抱いたのだ。

 

 彼女の「気」は至って澄んだものであり、悪人の放つそれではない。にも関わらず、トランクスはほんの僅かだが、その脳裏に危険を感じたのである。

 それが彼の中にあるサイヤ人としての「生存本能」が、彼女の存在に対して一瞬だけ警報を鳴らしたのだという事実であることを――この時のトランクスには知る由もない。

 尤も一瞬を過ぎた後にはそんな感覚は消え去っており、言葉も交わせばトランクスは彼女に対する危険意識はとうになくなっている。

 

 お互いの自己紹介を終えた後、このトキトキ都の支配者である「時の界王神」の元へ向かう道中で、彼女は暇な時間を埋めるように自分語りを始めた。その内容はトランクスにとっては彼がタイムマシンで歴史を変えた世界の未来の話でもあり、実に感慨深く、興味深い話であった。

 

「魔人ブウにジャネンバ、ベビー……どれも、俺の居た世界には出てきませんでしたね」

「そんなところも色々違うんだね。じゃあトランクスさんの世界はその頃、どんな感じだったんですか?」

「俺の居た世界だと、その頃は……」

 

 彼女の住む世界の歴史には、トランクスの知らない未知の敵との遭遇があったとのことだ。魔人ブウやベビーという巨悪の存在はこのトキトキ都で仕事をするようになってから知ったが、ジャネンバという存在のことはこの時までは聞いたこともなかった。

 それもまた、住む世界が違えば辿ってきた歴史も違うという相違点である。しかしそれでも、ところどころには全く変わらないものもあり……それが良いものであれば、トランクスには面白いと感じた。

 

「その頃は……人造人間を相手に、悟飯さんが活躍していましたね」

「おおー! さっすが悟飯さん! そっちでもカッコいいんだねぇ」

 

 トランクスはかつて、絶望の未来を生きていた。

 トランクスにはもはや、二度と取り戻せない過去がある。

 だがそれでも、トランクスは自分が今生きているこの時間を誇りに思っていた。

 失ったものを取り戻したいと思ったことは何度もあったが、いい意味で割り切れるようになったのだ。

 壮絶な人生経験から生まれた強い正義感を持つ彼にとって、始めこそ半ば強制されたものではあれど、タイムパトロールという仕事はまさに天職であった。

 

 しかしこのノエンという少女、話を聞くにどうにも自分の親世代の人間のことが好きらしい。

 

 特に孫悟飯の活躍に関しては、自分がまだ生まれていない頃であろうともお構いなしにウキウキとした笑顔で語ってくれた。

 トランクスは彼女の話に対して、まるで弟の自慢話に付き合う歳の離れた兄のように微笑みながら相槌を打つ。その最中、トランクスは彼女の姿を今一度見据えてみた。

 彼女が今身に纏っているのは砂漠の旅人が着ているような飾り気のない簡素な服であり、頭部にはピッコロを彷彿する白いターバンによって白銀の頭髪の半分が隠されている。そんな装いであったが、彼女の顔立ちや風格と言った見た目はまるで研ぎ澄まされた宝剣のように凛々しく、そのせいか実年齢よりも少々大人っぽく見える。13歳と聞けばその若さに驚くが、話してみれば確かに、彼女は歳相応の幼さを持ったあどけない性格をしているようだった。

 本当に……この見た目と性格を見ただけでは、とてもではないが信じられない。

 

 どこまで本気だったのかわからないが――彼女の力が、(スーパー)サイヤ人になった自分と同等以上かもしれないということが。

 

 














 ――そして、始まる!


「私は時の界王神。貴方の活躍に……ちょっと不安だけど期待しているわ」


 ――蠢く陰謀!


「フフフ、暗黒魔界の復活も近いわ……」
「力を……もっと強い力を……!」


 ――改変された歴史!


「なんだこれは……生き残ったナッパとラディッツが超サイヤ人に……?」


 ――予期せぬ事態!


「こちらノエンこちらノエン、応答せよー……あっ、つながった。ごめんトランクスさん、なんかタイムマシン壊れてそっち戻れないんだけど」
《な、なんだって!?》


 ――偉人達との共闘!


「うん? 誰だおめえ?」
「おおっ、若い……って言うほどあんまり変わってないか。援護しますよ、悟空さん、ピッコロさん!」
「チッ……少しは出来るようだが俺達の足を引っ張るなよ」
「ピッコロさんも相変わらず……よっし! 燃えてきた!」
「カカロット! 三人で掛かってこようが無駄だ! 死んでしまえー!」


 ――幼き日の恩人(ごはん)


「あれぇ? お姉ちゃん、誰……?」
「か……カワイイ!!」


 ――明かされる父と母!


「え……じゃあもしかして、ノエンさんの両親って……」
「そう……天津飯とランチ。似てないでしょ?」


 ――激突する帝王!


「一部以外のサイヤ人を滅ぼしてくれてありがとね。でも、お前は要らない」
「ほざけ……! 地球人ごとき、一瞬で木っ端微塵にしてやるぞ!」


 ――帝王一家、降臨!


「弟よ、手を貸してやろう」
「クウラ兄さん……!」
「だが勘違いするな。猿共と地球人なんぞに同じ一族がやられることを、この俺のプライドが許さんだけだ」
「息子よ、わしも居るぞ」
「パパ……!」


 ――混沌の人造人間!


「人造人間13号、14号、15号、16号、17号、18号、19号、20号だと?」
「おいトランクス! 数多すぎじゃねぇか!?」
「どういうことなんだこれは……一体、何人と戦えばいいんだ……」


 ――現れるサイヤ人の生き残り!


「パラガスでございます」
「ブロリーです……」


 ――伝説の超サイヤ人、覚醒!


「カカロット、まずお前から血祭りにあげてやる」
「カカロットじゃねぇ! オラ孫悟空だぁ!」
「貴様が伝説の超サイヤ人なら! 俺様は伝説の超スーパーサイヤ人だ!」


 ――セルゲーム、場外乱闘!


「悟飯さんの邪魔をするなアアアアアアッッ!!」
《な、なんてデタラメな……》
「なんだこの娘っ……この俺が押されているだと……!?」
「ミラ、ここは撤退よ!」


 ――魔人、増殖!


「ブウ!」
「ブウ!」
「ブウ!」
「おめえ……それはちょっとズリィんじゃねぇか?」
「いいんだもーん!」
「ちょっと可愛いかも……」


 ――破壊神、激昂!


「たったそれだけのことで破壊するの? 何が神だよ、フリーザとやってること変わんないクズじゃないか」
「……なんだい? 可愛げのない娘だね」
「おい! なにしてやがる白髪ァ! そんなことよりそのプリンを渡せぇぇ!」
「はい、ブウさん、どうぞ」
「ブウー! お前、いい奴」
「かんっぜんにキレたぞおおおおおっっ!!」


 ――フュージョン、承認!


「……フュージョンするぞカカロット」
「ベジータ……!」
「時間は、ボクが稼ぐ……!」


 ――二人の(ゴッド)、融合!


「破壊の神を舐めちゃいけないよ、お嬢ちゃん」
「お前こそ、人を舐めんな」
「なに?」

「その通りだ」


 ――神々も驚く、復活のフュージョン!


「俺は悟空でもベジータでもない……俺は貴様を倒す者だ!」
「……少しは楽しめそうだ」


 ――黒幕!!


「破壊神の力を取り込み、今こそ私は真の魔神となったァ!」
「おやおやビルス様……暴食の貴方が食べられてお亡くなりとは皮肉なことで」
「おい、勝手に殺すな」


 ――神と人間、魔神の時空決戦!


「おい自称破壊神! コイツを倒したら次はお前だからな!」
「ほんっとに生意気な嬢ちゃんだ」
「ガキが……私を見くびるなァ!」


 ――親子気功砲、発動!


「娘よっ! 父が叶えられなかった夢を叶えろ!」
「はああああああっ!!」



 時空の戦士の思いが一つになった時、奇跡は起きる。

 それは時間を巡る少女の物語――。







「……来てやったよ、ベビー」



 ――魂の救済、運命の再会。



「俺は……俺はベビーだ! ツフル王の魂なぞ捨てた……一人のベビーだ!」

「いこう……前世のボク。そして、おかえり」



 生と死。
 破壊と創造。
 時間と空間。


 少女は時間を越えて、本当の強さを手に入れることが出来るのか!?



 【ドラゴンボールNT 時空まるごと超決戦!!】



 多分、始まりませんが小ネタ的に続くかもしれません。

 ある意味自重していたネオンと違って、ノエンは結構自由に場を引っ掻き回すタイプだったり。端的に言うとウザキャラ。悪人じゃないけどウザキャラ。生まれ変わっても相変わらず悟飯スキーですが、危ない感情は一切ありませんがウザキャラです。




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