ある日の朝。
場所はリトの家。
「リトー、朝ご飯出来てるよー!」
リトの妹の美柑が、1階から声をかける。
「まーうー!まう~♬」
既にテーブルにはセリーヌが座っており、美味しそうに美柑が作った朝食を食べていた。
「…リト―?まったく…」
リトの反応が無いと分かると、美柑はぶつぶつと文句を言いながら階段を昇って行った。
「リート―!朝だよー!」
リトの部屋の前まで来て、再び呼びかける。
しかし、リトからの返事は無い。
「…ここまで呼んで返事が無いなら、部屋に入っても問題無いよね、うん…」
自分に言い聞かせるようにして、部屋のドアを開けた。
「…モモさんは…いないか」
度々リトの部屋に夜這い(?)に来ているモモが居ないのを確認して、安心する美柑。
この場合の美柑の安心感には、モモが居ないことと、気兼ねなくリトと同じ空間に居られることという2つの意味があるのだが。
少し前までの、二人でこの家に住んでいた頃であれば、こんなことは日常茶飯事だった。
二人きりで居ることは至極当たり前のことで、お互い、何ら気兼ねなく暮らしていた。
しかし、ララ達が住み始めてからは、少なくとも美柑の中では、確実に感情の変化が生じていた。
―今まではただの『大切な兄』としか見ていなかったリトへの、少なからぬ恋心―
ララのリトに対する真っ直ぐな愛情は勿論知っているが、今まで家族として抱いていた愛情が男性に抱く愛情に変化して来ている美柑にとって、リトへの恋愛感情と言うものは、ララとは少しばかり方向性が違うが、これもかなり強いものとなっていた。
そんな状況下での、わずかばかりの、二人きりの時間。
何も、意識しない訳には行かなかった。
「…むにゃ…」
「リト―、朝だぞ~?」
「…むにゃ…?むにゃむにゃ…」
「…まったく、気持ち良さそうに寝ちゃって…。」
美柑はリトの安らかな寝顔を見て、呆れつつもにこやかに微笑む。
そして、ベッドに腰を下ろして、間近でリトの顔を見つめる。
「…リ~ト~?」
耳元で呼びかけてみる。
「…むにゃ…マシュマロ…」
しかし、リトは起きない。
「なんで毎回マシュマロなのよ…」
思わず、寝ているリトにツッコミを入れる。
「ほれほれ~、朝だぞ~…♬」
「ん…むにゃ…んむ…?」
ここまで呼んでも起きないリトに、一周回って面白さを感じ始めたのか、美柑はリトの頬をつつき始めた。
しかし、つつかれても尚、リトが起きる様子は無い。
徐々に、美柑の中でいたずら心を通り越した何かが芽生え始める。
「リト~?…起きないと…もっとすごいことしちゃうぞ~…?」
再び、リトの頬をぷにぷにとつつく。
「むにゃ…」
やはり、起きる様子は無い。
「…。」
辺りを見回して、もう一度誰か(主にモモ)が居ないか確認する。
そして、リトの顔に思い切り近付いた。
美柑の目と鼻の先にリトの顔がある状態になっている。
互いの唇が、今にも触れ合いそうな距離だ。
「…ほ、ほんとに、すごいこと、しちゃうぞ…?」
「…むにゅむにゅ…」
美柑が喋っただけで、息がリトの唇に当たる。
その度、少しくすぐったそうに口を動かすリト。
「(わ、私何やってんだろ…!?でも…止めらんない…!)」
美柑は心臓が爆発しそうになる程に緊張していた。
「…いいのか~?…しちゃうぞ~?」
念入りに許可を取るかのように、何度も寝ているリトに念押しをする。
そして、今にも唇と唇が触れ合いそうになったその時。
ぱちっ。
「ん…あれ、美柑?何やってんだ?」
「!!!」
ここに来て、やっとリトが目を覚ました。
限界まで近付いた状態の美柑を見て、寝ぼけながらも不思議がるリト。
美柑は完全に不意打ちを食らった形になり、大慌てで何を言うか考える。
「な、なな、な、何でもないわよ!!ただ、起きないなーって思って近付いただけなんだから!!
ほら、ご飯出来たからさっさと起きて!!」
「んあ、そうなのか?わかった…ごめん、ありがとな。」
美柑の苦しい言い訳に少し違和感を覚えたが、眠気に負けて、細かいことを考えるのはやめたようだ。
「ほ、ほらほら!」
「わーかったよ~…ふあぁ…」
動揺を隠すように、リトをベッドから起こして部屋から出そうとする。
「はは~ん…♬」
そんな美柑の様子を、モモが物陰からにやにやとしながら覗いていた。
続く。
いかがでしたでしょうか!
ToLOVEるの話はまだほとんど書いたことが無いため、試行錯誤して行こうと思います。
ご感想、お待ちしています(^^)!
それでは、お読み頂きありがとうございました(^^)!!