緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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counttheMedal!現在オーズの使えるメダルは

タカコア×1
コブラコア×1
プテラコア×!
クジャクコア×1
トラコア×1
カメコア×1
コンドルコア×1
バッタコア×1
ワニコア×1


欲望のスケールとひとっ走りと回復コンボ

 金さんの屋敷に泊まった俺達は日付が変わって朝を迎えると、外から怪しげな音色が聞こえていることに気づいた。

 

「この音色は・・・」

 

「間違いなくガラのヤミーか道化がやってくる合図ね」

 

俺達はその音色が聞こえる場所へと向かってみると・・・まだそこにはヤミーや道化の女の姿はなかった。

「やっぱりまた来るのか?」

 

「ああ、奴らは間違いなくお前の中にある紫のコアメダル・・・プテラコアを奪いにやってくる。キンジ、準備はいいか?」

 

 頷いた俺は変身をしないでメダジャリバーを構えようとすると・・・アンクは右腕を怪人態に変えて、俺からメダルホルダーを奪い取るとトラコアとバッタコアをその中から取り出した。

「変身しろキンジ・・・」

 

 俺はアンクに差し出された2枚のコアメダルを受け取るが・・・

 

「でも・・・これだけじゃ変身できない」

 

 頭部に該当するコアメダルがないせいで俺は変身できないままだった。

 

「あと1枚は・・・ここだ」

 

 そう言ったアンクは怪人態にしている自身の右腕を俺に見せつけてきた。まさかアンク・・・シャーロックとの戦いでやったようにまた・・。

 

「アンク、お前また・・・それはお前の意識が宿ったコアメダルだろ」

 

 お前の意識が宿っているコアメダルをまた使えっていうのかよ。

「無くしさえしなきゃ・・・またきっと戻れる。それにアイツらもご登場ときた」

 

「「っ!」」

 

 俺達はアンクの視線の先に顔を向けてみると・・・そこには数十体の兵士達を連れた鵺ヤミーが俺達の方にやってくるのが見えた。

「オーズ!オマエノメダルヲヨコセッ!」

 

「・・・キンジ。俺は何としても完全な身体を手に入れるまでは終わる気はない。だからお前も死ぬ気で何とかしろ!」

 

 そう言ったアンクは自身の右腕を俺へと近づける。分かったぜアンク。俺もこんなところで終わる気はないからな。

「明日も・・・バスカビールのメンバーで集まるためにもな!」

 

 俺は自身の右手をアンクの右手とぶつけ合うようにすると・・・アンクの身体は右腕だけの姿へと変わって、やがてセルメダルが周囲に散らばって、俺の手の中にはアンクのコアメダルが3枚手元に残った状態になった。

「アンク様・・・」

 

「アリア・・・粉雪と風雪のことは頼んだぞ」

 

「・・・分かったわ」

 

 アリアに頼んで粉雪と風雪を下げてもらった俺はアンクの意識が宿っているタカのコアメダルを眺める。

「死ぬ気で・・・か。悪いけどこんなところで死ぬ気はないな。絶対に元の時代に戻るぞ」

 

 3枚のコアメダルをベルトにセットした俺はオースキャナーでベルトを一気にスキャンする。

「変身ッ!」

 

『タカ!』

 

 変身の際のタカコアメダルを模したエフェクトが鵺ヤミーの放ってきた1発目の火球をガードしてくれる。

『トラ!』

 

『バッタ!』

 

 

 続く2発目と3発目もそれぞれメダルのエフェクトがガードをしてくれると・・・エフェクトの光は俺の身体を包みこんだ。

『タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

「うおぉぉぉぉぉっ!!」

 

 アンクの意識が宿ったタカコアを使ってオーズに変身した俺はジャリバーを構えると鵺ヤミーや兵士達に向かって走り出す。

「ハッァ!!」

 

 ジャリバーで兵士の数体を斬りつけた俺は、兵士の剣を1本奪い取って二刀流で兵士達を攻撃する。

「セイヤッ!ハァァァッ!!」

 

「ヴゥゥゥゥっ!」

 

「うわっ!?」

 

 しかしヒステリアモードになっていない俺では数的に不利な状況は変えられずに、鵺ヤミーの攻撃を喰らって吹き飛ばされてしまった。

「くっ!?このっ!」

 

 それでも俺はすぐさま立ち上がってジャリバーと両刃剣で兵士達を斬り倒す。しかしあまりの数と、鵺ヤミーの戦闘力に俺はどんどんと追い込まれてしまった。

「ヴゥゥゥっ!」

 

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

 

 やがて鵺ヤミーのキックを喰らって両刃剣が折られてしまった俺は、奉行所の手前へと転がってしまう。

「キンジッ!」

 

 小太刀を2本引き抜いたアリアは倒れている俺の前に立って兵士達と戦おうとしていると・・・右の上半身の肌に桜吹雪の刺青をしている男が俺達の前に現れて、兵士達を斬り倒した。

「大丈夫か?」

 

「金さんっ!」

 

 俺は金さんのところへと駆け寄っていくと・・・金さんは俺の右肩を軽く叩いた。

「やはりお前がオーズだったか。昨日の会話の時から何となくは感づいていたが・・・先の世のオーズがお前のようなもので良かったぞ」

 

 なんて言うか・・・改めてそう言われるとけっこう照れるな。しかもご先祖様である金さんに言われてるんだから、普通はありえないことだし・・・。

「「この桜吹雪・・・散らせるものなら、散らしてみやがれ!!」」

 

 俺と金さんは遠山家の決め台詞とも言える台詞を告げるとほぼ同時に駆け出して兵士達を斬り倒す。

「はぁっ!」

 

 アリアも兵士達と戦ってはいたが、さすがに数が多くてドンドンと壁際に追い込まれてしまっていると・・・

「このぉ!!」

 

「これでも喰らえっ!」

 

 タイムスリップしてきた人や、この時代の人々は昨日争っていたことがなかったかのように協力し合って兵士達と戦い出した。

「時代なんぞ関係ない。皆、味方だ。キンジ!存分に戦え!」

 

「上等ッ!」

 

『シングル・スキャニングチャージ!』

 

 メダジャリバーの斬撃で残りの兵士達を一掃すると、鵺ヤミーはこの場を逃げ出してしまった。

「逃がすかよッ!」

 

 俺は近くのライドベンダーをバイクモードにして鵺ヤミーを追跡しようとすると・・・

「キンジ、これを持っていけ!」

 

 金さんは懐にしまっていた木箱の中から3枚の橙色のコアメダルを取り出して、俺に投げ渡してきた。これってショッカーグリードを撃破してから行方不明になっちまった爬虫類系コアメダルじゃんかよ!

「先日お礼として譲り受けた品の中にあったものだ。オーズの使うものだとは分かっていたが、こんな形で役に立つとはな」

 

「それじゃあ使わせてもらうぜ」

 

 ベンダーを走らせた俺は鵺ヤミーを追跡しながらもベルトからタトバに使用するコアメダルを抜き取って橙色のコアメダルをセットした。

「ハァァァァァッ!!」

 

 そしてベンダーで体当たりを決めて、鵺ヤミーの動きを停止させると・・・俺はオースキャナーを手に取ってベルトをスキャンした。

『コブラ!カメ!ワニ!ブラカ~~ワニッ!』 

 

 すると黄緑色の複眼で鷹を思わせるデザインだったタカヘッドは、紫色の複眼に蛇の胴体が巻きついたようなコブラヘッドへと変わり、鋭い爪を展開することのできたトラアームは、両腕に亀の甲羅を半分に割ったような盾がついているカメアームへと変化した。そして超脚力を宿していたバッタレッグは、ワニの顎を両足で見立てたようなワニレッグとなった。

「ブラカワニコンボか・・・。他のコンボと違って一気に体力が持っていかれるような感覚はないな」

 

 体力が無くなるどころか、むしろさっきの戦闘でのダメージが回復してるじゃないか?って思えてくる。・・・いや、これは本当に回復してないか?

「ヴォッ!!」

 

「なるほど・・・このコンボの能力は回復能力ってことかよ」

 

 攻撃を回避しながら、このコンボの能力に気づいた俺は鵺ヤミーに右脚で回し蹴りを放とうとする。するとワニの頭部を思わせるエネルギーの塊みたいなものが右脚に出現した。

「ヴッォ!?」

 

 ワニの頭部は回し蹴りが直撃すると同時に鵺ヤミーへと噛み付く。・・・なるほど。ワニレッグの効果はこういう能力ってワケか。

「はぁぁぁぁっ!!」

 

 俺は数回連続の回し蹴りをして鵺ヤミーからセルメダルを削ぎ落とすと・・・鵺ヤミーは火球を放とうとしていた。

 

「コノォ!!」

 

「くっ!?」

 

 至近距離で火球を放たれた俺は、とっさに左腕についている亀の甲羅の半分で防ぐ。すると火球はあっさりと亀の甲羅に打ち消された。さすが亀の甲羅だけあって防御力は高いっぽいな。

「今だッ!」

 

「ヴゥゥゥッ!!」

 

 俺はカメアームで鵺ヤミーを殴り飛ばすと、鵺ヤミーは左手の白骨化している蛇の頭部を俺に向かって放ってきた。

「セイヤッ!」

 

 その攻撃を両腕の亀の甲羅を合わせて防ぐと・・・蛇の頭蓋骨はその強度に耐え切れずに砕け散った。・・・ここまで防御力が高いとはな。さすがにびっくりだよ。

「蛇はあまり好きじゃないけど・・・やってみるか」

 

 俺はブラカワニコンボの能力で出現させた笛を吹き鳴らすと・・・鵺ヤミーの首に巻きついている蛇が鵺ヤミーの首を絞める。そしてさらにコブラヘッドの蛇が動き出して、鵺ヤミーを攻撃した。

「ヴォォッ!?」

 

「ブラカワニの性能・・・だいたい分かってきたぞ」

 

 能力が回復だったり、亀の甲羅だったりで、全体的にあまり攻撃的なコンボには感じられないが・・・それを気にさせないほどの防御力がある。しかも決して攻撃力が低いわけじゃなくワニレッグの噛み付きキックと、蛇を操ることのできる笛だったり、けっこう万能型のコンボだな。

 

「これで決めるッ!」

 

『スキャニングチャージ!』

 

 笛を投げ捨ててベルトを再スキャンした俺は両脚蹴りの体勢でスライディングをすると、鵺ヤミーの火球を回避しながらも、どんどん距離をつめる。

「ハァァァァァッ!」

 

 そして鵺ヤミーの寸前で跳び上がると、先ほどまでは片脚を包む程度の大きさだったワニの頭部のエフェクトが肩辺りまでを包み込んでしまうほどのエフェクトとなった。

 

「セイヤァァァァァっ!!」

 

「ヴゥゥゥゥゥっ!?」

 

 ブラカワニコンボのキックが直撃した鵺ヤミーはそのまま爆発して、セルメダルが周囲に飛び散った。

「これにて・・・一件落着」

 

 俺の戦いを近くで見ていた金さんはもう1つの決め台詞を告げると・・・駆け寄ってきた人々のところからは歓声が上がった。

 

「すまないがアンク・・・ガラを倒すまではもうしばらくこのままでいてくれよ」

 

 変身を解除した俺はアンクのコアメダル3枚をポケットにしまい、爬虫類系コアメダルをメダルホルダーへとしまうと・・・金さんが俺の近くに歩み寄ってきた。

「この先も戦いが待っているんだな。先の世は頼むぞ」

 

「あぁ、少し頼りないかもしれないが・・・もうしばらくはやってやるよ」

 

「その意気だ。それでこそ遠山侍・・・俺の血筋だ」

 

 そう言い残した金さんはこの場を立ち去っていった。つーかやっぱり俺が子孫ってことに気づいていやがったか。オーズに変身しているのが俺だってことをすぐに分かっちまったり、さすが肌を晒してヒステリアモードになれるご先祖様は違うな。

「・・・・っ!?」

 

 ひとまずヤミーを倒したことで安心をしていると・・・またもや不思議な音色が周囲に鳴り響いた。

「お客様にご案内致します。遠山キンジ様、遠山キンジ様。只今より、お客様の欲望を満たすチャンスタイムとなります。私の質問にYESかNOでお答えください」

 

 ベルの音が聞こえた方向に振り向くと・・・そこには道化の女がこっちに向かって歩いてくる光景があった。

「では質問です!あなただけ元の時代に戻ることができます!ただし~それ以外の方々は、この町の皆様と一緒に全員消えて頂きます」

 

「「「っ!?」」」

 

 道化の女の質問に周囲は騒然としてしまう。

 

「YESかNOでお答えください!」

 

「・・・くだらないマネをしてくれるわね」

 

 アリアはそう呟きながらも焦っているような表情をみせる。

 

「俺・・・だけ・・」

 

 周囲の人々は「俺たち、どうなっちゃうんだ?」「消えるってどういうことだよっ!?」などと騒ぎ立てる。・・・いったい俺はどうすればいいんだ?この場合アンクだったらどういった選択をする。

 

「お客様、ご決断をお願いします。YESかNOで!」

 

「キンジ・・・」

 

 不安そうな様子で俺に視線を送ってきたアリアを見た俺は・・・こういう時にアンクだったらどのようにさせるかの1つを思いついた。・・・あまりこの手段を使いたくはないけど仕方ない。

「アリア・・・すまない」

 

 アリアと向かい合ってからそう言った俺は・・・思い切りアリアを抱きしめた。

「えっ!?ちょっとキンジ!?いきなり何よっ!?」

 

いきなり抱きしめられたことで顔を真っ赤にしながら驚いているアリアの前で血流を加速させた俺は・・・オーズとは違うもう1つの力を使い出した。

「さてと・・・それじゃ俺の欲望を満たしてもらおうかな?」

 

 ヒステリアモードとなって道化の女にそう言った俺は、アリアから手を離すと粉雪と風雪の手を繋がせて、そのまま俺の方に引き付ける。

「彼女達も一緒に戻れないかな?」

 

 俺の発言に再び周囲は騒然としてしまう。

「ご家族ですか?」

 

「・・・みたいなものかな?」

 

「分かりました!ならばご家族だけは一緒に帰ることを許可します!」

 

 『家族だけでも一緒』ということを認めてくれた道化の女は俺にそう返事をしてくると、周囲の人々はさらに動揺してしまう。

「待ちなさいキンジ!あたし達だけってそんな・・・」

 

「なりません遠山様!皆様は私達を助けてくれたんですよ!なのに・・・」

 

 粉雪の発言に周囲の人々は頷く。たしかにそうだな・・・みんな俺達に手を貸してくれた。助けてくれた。・・・だからこそだ。

「戻らなくちゃいけないんだよ」

 

「だからってここにいる人々を見捨てていい理由にはならないわ!」

 

「いいから静かにしていてくれ」

 

 アリアの頬に唇をつけて静かにさせた俺は道化の女に視線を戻した。

「お客様、お答えを・・・」

 

「俺の答えはYESだ。さぁ・・・叶えてみろ」

 

「承知いたしました!」

 

 俺が道化の女の質問にようやく答えると・・・道化の女は喜んで手に持っていたベルを鳴らした。

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

 ところ変わって現代にあるガラの塔、その中で俺達の様子を窺っているガラは大声を出しながら笑っていた。

「ほ~~ほっほっ!オーズの欲望で世界が終わる!これほど愉快なことはないな!」

 

「・・・フッ!」

 

 3枚のメダルの形をした天秤の中央に置かれているフラスコにセルメダルが溜まっていくのを視界に捉えた鴻上のおっさんは勝ち誇った表情になり始めていた。

『お客様にご連絡致します。只今をもって、世界を終了とさせて頂きます。今までのご利用、誠にありがとうございました』

 

 数人存在している道化の女の1人が告げた言葉が様々な画面を通して周囲に・・・世界に伝わった。

「お~~ほっほっほっ!」

 

 ガラがようやく自身の欲望が叶ったように盛大に笑っていると・・・フラスコの中のセルメダルに異変が起きた。

 

「何・・・?」

 

 セルメダルがフラスコから溢れ出し始めた。そして大量に溢れ出るセルメダルはやがて、フラスコの周りに置かれているメダル状の天秤にまで乗り出すと・・・大量のセルメダルはその重量で天秤を壊してしまった。

「何だとっ!?」

 

 天秤が壊れてしまった瞬間、土地が‘反転’してしまっている場所が再び宙に浮かびだして、何度も何度も反転を繰り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「あれ?」

 

 もうダメだと思ってしゃがみ込んで目を瞑っていたアリアは、その目を開いて数回マバタキをしながら周囲を見渡してみる。周囲の人々も自身の姿や、周りの姿を確認してみるが・・・誰一人、何一つとして消えているものはなかった。

「なぜっ!?なぜ消えない!?」

 

 本来は消えてしまうはずだった人々がその場に残っていることに驚いた道化の女は思わずベルを足元に落としてしまう。

 

「君は確かに言ったよね?『家族は特別に許可をする』と・・・」

 

「・・・まさかっ!?」

 

 ヒステリアモードとなっていた俺の作戦をようやく理解した道化の女は、慌てて俺を睨みつける。

 

「そうさ・・・。彼女達はみんな・・・一緒にいて助け合うことができる仲間・・・家族だ!」

 

 俺がその場で堂々と宣言をすると・・・周囲は再び歓声に包まれた。

「まさか・・・そんなきれい事が通るはずが・・・!!」

 

「きれい事じゃない。これは欲望を満たす質問だろう?・・・俺の欲望はこれぐらいのスケールじゃないと満たされないんだよ!!」

 

 後ろの方で歓声を上げた人々は時代や年齢を問わずに隣の人と手を繋ぎ出す。すると俺の欲望の大きさで存在を維持しきれなくなった道化の女はセルメダルとなって周囲にちらばってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして再びガラの塔、壊れてしまった天秤に驚きを隠せないガラは、フラスコすぐ上から入るはずのセルメダルが天井からどっさりと落ちてくる光景にも驚かされていた。

「バカな・・・。このようなことが起こるなんぞ・・・」

 

「はっはっはっ!」

 

 ガラは正面で盛大に笑っている鴻上のおっさんを睨み付けると・・・おっさんは片方の平手をすでに山済みになっているセルメダルへと向けた。

「これが欲望だ!底なしですべてを欲しがる大きさ!素晴らしいッ!!まさに欲望は世界を救うッ!!」

 

 鴻上のおっさんはガラにそう告げると・・・ガラは心底悔しそうな表情になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガラが鴻上のおっさんとの賭けに負けてしまった頃、江戸時代となっていた新宿の一部がようやく元に戻り、俺達は現代へと戻ってきた。

「ねぇキンジ・・・あれで絶対に全員無事に戻れるっていう確証はあったの?」

 

 アリアは先ほど俺のYESの答えに必ず成功する確証があったのかと尋ねてくる。

 

「正直に言うとグリードのアンクだけはどうか分からなかったな。だからまだ復活をさせてなかったんだけどな」

 

 そう言った俺はベルトにアンクの3枚のコアメダルをセットする。・・・アンク、もうしばらく俺に力を貸してくれよ。

「変身ッ!」

 

『タカ!クジャク!コンドル!タ~ジャ~~ドル~~!』

 

 オーズ・タジャドルコンボに変身した俺は真紅の翼を広げると空高く飛び上がってガラのいる塔へと目指した。すると塔へと向かって飛んでいる途中、下の方ではゼロノスとファイズ、それと見知らぬ白いライダーが鵺ヤミーと戦っているのが見えた。

「今だッ!撃て!」

 

「・・・はい」

 

 レキのドラグノフから放たれた磁力断裂弾はバリアの一部を貫くと・・・まるで風船が破裂するかのようにバリアは消滅した。

「キンジさん・・・ご武運を」

 

「あぁ!!」

 

 塔を守るバリアが無くなったので俺はそのまま塔の最上部へと突入すると・・・ガラは鴻上のおっさんを睨みつけていた。

「おのれぇぇぇっ!!」

 

 ガラは怪人の姿へと変化させた右腕を鴻上のおっさんに向かって伸ばして攻撃しようとしているところを・・・

「セイヤァァァァっ!!」

 

 俺はメダジャリバーでその腕を斬りつけて妨害した。

「ガラ・・・誰だろうと人の欲望や命や・・・大事なものを弄んでいいはずがない!これ以上させないし、お前が乗っ取っている白雪も絶対返してもらう!」

 

「黙れッ!」

 

 杖を捨てたガラは山済みになっていた大量のセルメダルを自身の身体に吸収し始めると・・・ガラの姿は蛇や恐竜を思わせる凶暴そうな怪人の姿に変化した。

「オーズッ!!」

 

「くっ!?里中君!起きたまえ!」

 

 怪人の姿へと変化をしたガラは再び右腕を伸ばして鞭のように振ってきたので、俺と鴻上のおっさんはしゃがんで攻撃を回避すると、おっさんは自身の隣で熟睡している里中さんに起きるように呼びかけるが・・・なかなか起きない。

「フンっ!」

 

 すると鴻上のおっさんは不安定な足場で思い切りジャンプをして着地をした振動で足元を揺らすと・・・里中さんは空中に飛び上がって不安定ではないちゃんとした足場に着地した。

「会長・・・残業代、いつもより多めに頂きますよ」

 

 そう鴻上のおっさんに告げた里中さんは近くに立っていた兵士達を次々と蹴り倒して、不安定な足場にやられた兵士で橋を作った。・・・えっ?マジで?あの人ってあんなに強かったの?

「遠山君!後は頼んだよっ!」

 

 兵士の橋を渡った鴻上のおっさんは急いで里中さんと最上階を去っていくと・・・

「逃がさんッ!」

 

「させるかっ!」

 

それに反応したガラの隙を突いて俺はガラを掴んで地上へと飛び降りた。

「ハァァッ!」

 

 樹海の中に着地をした俺はメダジャリバーでガラに切り掛かるが・・・硬い装甲にジャリバーの刃は弾かれてしまい、俺はすぐに殴り飛ばされてしまった。

「このっ!!」

 

 タジャスピナーに炎を込めて放ってみるも・・・それすらもあっさりと打ち消されてしまった。

「どうした?その程度か?」

 

「セイッ!!」

 

 俺はジャリバーの刀身にタジャスピナーから発せられる炎を灯して切り掛かってみたが・・・軽く止められてしまい、ジャリバーはどこかに投げ飛ばされてしまった。

 

「まだ・・・まだぁ・・」

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

 タジャドルからタトバに戻った俺は複眼を一瞬だけ紫に輝かせてメダガブリューを取り出すと・・・アリアが粉雪と風雪の2人と共に俺の後ろにやってきた。

「・・・うっ!?」

 

 粉雪と風雪を視界に捉えたガラの動きが止まると・・・その頭部からは白雪の顔が見え隠れし出した。

「「お姉様ッ!?」」

 

「来ちゃダメだ!・・・白雪は絶対に助けるから。・・・ぐわぁぁっ!?」

 

 そう2人に告げた俺はガブリューを構えて走り出して特攻してみるが、思い切り地面に叩きつけられてしまう。

「諦めるかよ・・・守るって決めたんだからな・・・うおぉぉぉぉっ!!」

 

 ガブリューを両手で握ってガラを押し出した俺は、一瞬だけ怯んだガラの腹部にガブリューの一撃を決めた。するとセルメダルがかなり減らされた様子のガラは支配力を僅かに失いだし、左腕からは白雪の白い手が出てきた。

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 全力で駆け出してその手を掴み取った俺は力の限り白雪を引っ張って、怪人の姿をしたガラから白雪を救い出した。

「きゃっ!?」

 

「「お姉様っ!?」」

 

ガラから無事に救い出された白雪に粉雪と風雪が駆け寄ろうとすると・・・ガラの右腕を伸ばした攻撃が3人を狙おうとしていた。

「あぶないっ!?」

 

「ごッ!?」

 

 俺がガブリューでその腕を斬りつけようとすると・・・何処からともなく走って来た赤い車がガラをはね飛ばして、白雪達は無事に済んだ。

「くっ!?いったい何者だ!?」

 

「どいてどいてどいてぇぇぇぇっ!?」

 

「むっ、ぬおっ!?」

 

 ガラは自分にぶつかってきた赤い車を睨みつけた途端、空から落下してきた薄い紫髪の少女の頭がガラの頭部に直撃した。

「いたた・・・」

 

 その少女は頭を軽くさすっているが・・・今、かなりの高度からけっこうな速さで落下して来てたのに、むしろなんでその程度で済んでいるのか疑問だった。

「え、えと・・・大丈夫か?」

 

「あ、うん。大丈夫。・・・ってオーズ!?」

 

 この娘。俺の事を知ってるのか?

「えと・・・どっかであったかな?」

 

「やだなぁ。この前助けてくれたじゃん!」

 

 え?俺、この娘を助けたっけ?ヒステリア状態で記憶を辿っても思い出せないんだが。

「久しぶりだな。仮面ライダーオーズ」

 車から降りてきた見たことない仮面戦士に話しかけられた。赤いボディにタイヤをたすき掛けのようにくっつけてる仮面戦士なんて見たことないどころか聞いたこともないんだが。

「覚えてないの?ネプテューヌだよ。この前うずめの時・・・」

 

 この紫髪の少女はネプテューヌと言う名前らしいが・・・うずめって誰だ?

「待てネプ子。様子がおかしい」

 

『零次元に来る前のオーズ。もしくは異なる次元のオーズかもしれないね』

 

「え?・・・今、ベルトがしゃべったような・・」

 

 いや。しゃべったようなではなく、はっきりとしゃべっていた。発言的に士さんと同じく異なる世界から来たような口ぶりだ。

「知らないようだから自己紹介しとくか。俺はシンスケ。またの名を仮面ライダードライブだ。ところで・・」

 

 シンスケ、仮面ライダードライブと名乗ったこの仮面戦士は車でガラにぶつかった際に出たセルメダルを1枚拾い上げる。

「お前が戦っていたってのと、奴の身体からこのメダルが出てきたってことから判断するに・・・今回の騒動はあいつが犯人ってことだな?」

 

「え・・は、はい」

 

 俺はドライブの質問に答えると、ドライブは中腰に構えた。

「分かった。ひとっ走り付き合うから一緒に事件を解決しよう」

 

「はい!」

 

 現場判断で協力してくれるドライブは真っ先に駆け出すとガラに跳び膝蹴りを決め込む。

「おのれ!」

 

 ガラは反撃しようと両腕を伸ばして振るおうとすると・・・ドライブは左腕のブレスレットについているレバーを3回倒した。

『Sp・Sp・Speed!』

 

 ただでさえ素早いドライブが加速をしてガラの攻撃を避けきる。かなり速い。ラトラーターコンボほどではないにしてもアクセルのそれは上回っているだろう。

「せっかくだから私にも活躍させてよ!」

 

 後ろで俺とドライブの戦いを眺めていたネプテューヌはこちらへと駆け出してきたと同時にレキぐらいの小柄な少女の姿から濃い紫髪の大人びた女性に変わった。服装も白いジャージからレオタードのような姿へと変わり・・・ヒステリア持ちの俺にとっては目に毒で、ヒステリアの血が加速してしまった。

「ハッぁっ!」

 

 その女性は手にした剣でガラをX時に斬りつける。

「ドライブ・・・あの女性はいったい?」

 

「あいつは女神パープルハート。俺達の次元を守護する女神様の1人だ」

 

 女神。そんなものがいたのか。・・・と以前の俺なら考えただろうが、玉藻やヒルダの事もあり既にびっくり超人に慣れつつある俺はそんなに驚かなかった。むしろあの高度から落下してきて無事だったことを考えると納得する部分もある。

「さてと、それじゃあそろそろ決めるぞオーズ」

『ヒッサーツ!FullThrottle!Speed!』

 

「はい」

『スキャニングチャージ!』

 

 無人の赤い車が俺達を取り囲むように周囲を回転し出したかと思うとガラの4方を囲んだタイヤ型のエネルギーがガラを吹き飛ばしてくる。するとドライブと俺は周囲を回転する車とガラを交互に蹴り、反射しながらの連続キックを決め込んだ。

「ハァァァァっ!」

 

「セイヤァァァァァッ!」

 

「ぬあぁぁぁぁぁっ!?」

 

 トドメのダブルキックを受けたガラは塔の最上階へと吹き飛んでいくと・・・パープルハートはネプテューヌの姿へと戻り、ドライブも変身を解除して長身のスーツの男性となる。襟元には警察バッチがついている。

「ご協力ありがとうございました。シンスケさんは警察で仮面ライダーなんですね」

 

「お礼なんていいさ。国民を守る警官として事件解決に対応しただけなんだからな」

 

『シンスケ。部分的に入れ替わっていた次元の一部が元に戻りつつある。そろそろ私達も戻らねば帰れなくなるぞ』

 

「分かった。それじゃあなオーズ!また会えたら会おうぜ!」

 

そう言い残したシンスケさんはネプテューヌと共に車に乗り込むと森を抜けていった。

 

「キンジ!」

 

「相棒ッ!」

 

「トオヤマ!」

 

 俺がシンスケさん達を見送ってからすぐ・・・アリアが矢車達と合流して俺の方にやってきた。あいつ等の向かってた奥の方では兵士達が何体も倒れているな。どうやら倒しながらこっちにやってきたっぽいな。

「ガラを倒したのか相棒?」

 

「あぁ、なんとかな・・・っ!?」

 

 矢車達と合流した俺はおそらく倒したと思われるガラのことを伝えている途中・・・俺の胸部からはガラの腕が突き抜けていた。

「ぐはっ!?」

 

 そしてその腕は俺から離れると・・・プテラのコアメダルを握って塔の方へと戻っていった。

「キンジっ!?」

 

「くっ!?・・・とりあえず大丈夫だ。・・・身体はな・・」

 

 幸いにも貫いたのは身体自体ではなく、人間にセルメダルを入れた時のような欲望の器のようなものを貫いたらしかったので外傷はなかったが・・・俺の中にあったプテラコア奪われてしまった。

「マズイな・・・これでほぼ完全に紫の力を引き出せなくなっちまった」

「キンジ、さっきこっちに来る途中で見つけたの」

 

 アリアは俺に先ほど遠くに飛ばされてしまったメダジャリバーを差し出してくる。

「相棒・・・俺達もいるぞ」

 

「みんなで錬金術師ガラを倒そう」

 

 矢車とワトソンも手伝ってくれるらしい。ワトソンの後ろに立っているテディもサムズアップをこちらに向けてくる。

「助かる。・・・そういえば後藤と理子は一緒じゃないのか?」

 

「後藤はアリアから受け取ったバースドライバーのメンテナンスをしている。それほど破損がヒドイ訳ではなかったらしく、数分でメンテナンスを終えてこちらに参戦するらしい。理子は後藤の手伝いをしている」

 

 なるほど。バースドライバーのダメージは数分で修理できる程度で済んでいたのか。壊してなくて安心したぜ。

「・・・変身ッ」

 

『CHANGE KICK HOPPER』

 

 矢車はホッパーゼクターをベルトにセットしてキックホッパーへと変身を遂げると、ため息をついてから塔の最上階に視線を向ける。

「変身ッ!」

 

『STRIKE FORM』

 

 ワトソンはパスをベルトにセタッチしてNEW電王に変身すると、テディに合図をしてマチェーテディへと変化させて、その剣を握った。

「それじゃ・・・行くか」

 

 俺達はガラのいる塔へ向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

 

 俺達が塔へと走り出した頃、かなりボロボロな状態でセルメダルを身体から何枚も落としているガラは俺から奪ったプテラコアを石版にはめ込もうと歩み寄っていた。

「くそっ・・・予想外の出来事があったがこれで我が野望が叶う」

 

 そう呟いたガラは最後の1枚だったプテラコアに石版をはめ込むと・・・石版は空中に浮かんで回転を始める。するとガラの手元にはバースのライダーシンボルのような絵柄のついた壷が出現した。

「かつて‘クガ王の鎧’とまで言われた欲望のメダルに宿す力をすべて同時に発動するための神器ッ!・・・その力さえあれば我こそが真のオーズとなれる!!」

 

 ガラはその壺を掴み取って壺を自身の身体へと取り込むと・・・コアメダルだけではなく、フラスコの中に個別に入れられていたサソリのメダルまでもがガラへと入っていった。

「これが真のオーズの力・・・欲望を支配する力か。・・・変身ッ!!」

 

 まるで仮面戦士の返信する掛け声のように「変身」と唱えたガラは・・・塔を構成していたセルメダルまでもすべて吸収して、様々な動物が混ざり合ったかような巨大な翼竜へと姿を変えてしまった。

 


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