緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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counttheMedal!現在オーズの使えるメダルは

タカコア×1
クワガタコア×1
シャチコア×1
プテラコア×1
トラコア×1
カマキリコア×1
ゴリラコア×1
トリケラコア×1
チーターコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×1
ティラノコア×1

サソリギジ×1


錬金術師とちょんまげとタイムスリップ

 白雪が‘手’に攫われてしまう数分前、文化祭の翌日ということで一応武偵高が休みなので俺はアンクと共に近くのカードショップでカードゲームをやっていた。

「ババンバンバンでチェイサーにアタック!破壊だ!」

 

「俺のターン!ザ・マッハを召喚してアタックするときに侵略!レッドゾーンX!そっちのババンバンバンを封印!ダイレクトアタックだ!」

 

「甘いな!革命0トリガー!・・・ん?」

 

 すると何だか外が騒がしくなっていたことに気づき、俺とアンクは急いで外に出てみると・・・大量のセルメダルが空へと伸びていくのが見えた。

「何だアレ?」

 

「何だか嫌な気配がするな。・・・800年前に感じたことのある欲望の気配がな」

 

 俺は急いでオーラインクロスに跨ると、アンクも近くのライドベンダーをバイクモードにして、その場所へと向かうと・・・街中の一部が樹海に変わっていた。

「どうなっているんだ?どうして樹海に変わっているんだ?」

 

「トオヤマ!」

 

「っ?・・・ワトソン!」

 

 後ろから聞こえた声に振り返ると・・・ワトソンとテディが走ってくるのが見えた。

「いったいこれはどういうことだ?どうして東京の街中がドイツのテューリンゲン州になっている?」

 

「それは分からないが・・・たぶんあのセルメダルが絡んでるんだろうな。とりあえず進んでみるぞ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 俺達は慎重に樹海の奥へと進もうとすると・・・樹海の奥からは男性の悲鳴が聞こえた。

「「「っ!?」」」

 

 その悲鳴を耳にした俺達は急いで樹海の奥へと走っていくと、そこでは大量の西洋鎧が研究員っぽい人達を襲っていた。

「キンジ・・・あの鎧は人間じゃない。セルメダルで作られた何かだ。とっとと倒せ」

 

「皆さん逃げてください!早く!」

 

 俺は研究員の人達にそう呼びかけながらもベルトを腰につけて3枚のコアメダルを取り出すと、ワトソンもベルトを腰に巻きつけた。

 

「「変身っ!」」

 

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

『STRIKE FORM』

 

 オーズ・タトバコンボに変身した俺はアンクからメダジャリバーを受け取ると、NEW電王に変身したワトソンも剣に変化したテディを掴んだ。

「とにかく何とかしないとな・・・ハァァァッ!」

 

 俺は右手に持ったメダジャリバーで兵士の数体を斬り付けながら、左のトラクローで兵士に追い討ちを掛ける。

「ハァッ!」

 

『スキャニングチャージ!』

 

 バッタレッグの力で高く跳び上がって、兵士の攻撃を回避した俺はオースキャナーでベルトを再スキャンする。

「セイヤァァァァァァっ!!」

 

「「「・・・・・っ!?」」」

 

 タトバキックで兵士を一掃した俺は足元にセルメダルが落ちていることに気づいた。アンクの言うとおり、やっぱりこいつ等はセルメダルで作られている怪人達らしい。

『エル、カウントはどうする?』

 

「この数だ・・・カウントの仕様がない」

 

『FULL CHARGE』

 

「「「・・・・っ!?」」」

 

 NEW電王はフリーエネルギーを溜め込んだ剣を構えながら一回転をして数体の兵士をまとめて倒した。

 

「これはどういうことだ?」

 

「無事か・・・相棒」

 

「矢車・・・後藤・・」

 

 キックホッパーとバースも駆けつけてそれぞれ兵士達と戦い始めるが・・・やっぱり数が多い。

「まったくなんて数だ。・・・キリがない」

 

『ドリルアーム』

 

 バースバスターが弾切れになってしまったバースは、バースバスターを投げ捨てて、ドリルアームを装備すると兵士達を殴り飛ばすようにして攻撃をする。

「ハァァァァッ!!」

 

「フンッ!」

 

 俺は回し蹴りで兵士達の間に道を作りながら、右手のジャリバーと左腕のトラクローで斬りつける。キックホッパーも兵士達を次々と蹴り飛ばすが・・・一向に数は減らない。

「「っ!!」

 

「うおっ!?」

 

 左右から同時に襲い掛かってきた兵士の剣を折り畳まれている状態のトラクローで受け止めると、俺は1枚の緑色のコアメダルを取り出す。

「こうなったらこいつで・・・」

 

『クワガタ!トラ!バッタ!』

 

「ハァァァァァァっ!」

 

 オーズ・ガタトラバへと姿を変えた俺はクワガタホーンからの電撃で十数体ほど倒すが・・・まだ兵士達はかなりの数が残っていた。

「くっ!?それなら次はこれだ!」

 

『クワガタ!ゴリラ!チーター!』

 

 さらにオーズ・ガタゴリーターへと変わった俺はチーターレッグの高速ダッシュで走りながら、電撃で相手を牽制しながらゴリラアームの重たい一撃を次々と決め込んだ。

 

「さらにこいつでどうだ!」

 

『シャチ!ゴリラ!チーター!』

 

 そして兵士達と距離を取った俺はゴリバゴーンにメダルのエネルギーを溜め込むと、それを兵士達に向かってロケットパンチにように放った。

 

「こいつ等はいったい・・・?」

 

 高い木の上に座って状況を確認していたアンクは兵士達を睨みつけていた。

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

「ハァァァァッ!」

 

 とりあえず基本形態のタトバに戻った俺はジャリバーで兵士達を斬り付けるが・・・こいつ等、次から次へと出てきやがる。

「・・・妙な気配がすると思ったけど・・・何これ?」

 

「奇妙すぎるわ」

 

「奇妙だぁ~!」

 

 木陰の方に視線を移すと、カザリとメズール、そしてガメルの3体のグリードを視界に捕らえたが・・・今はあいつ等の相手をしている暇はないな。

「ハァァッ!!」

 

 俺はジャリバーの一撃で兵士の1体を遠くに吹き飛ばすと・・・その兵士は空中でいきなり動きを止めた。

「っ!?」

 

「なんだあれは?」

 

 俺達はこちらに近づいてくる派手な衣装を身に纏った仮面をつけた謎の人物に視線を移すと・・・そいつの目の前で動きを止めていた兵士は触れてもいないのにセルメダルに変換されてしまうと、そのセルメダルは気体になってしまうかのように消滅してしまった。

「・・・・・」

 

 衣装に隠れているが、足の部分はとても長く感じられる。こいつが何者かは分からないが・・・少なくとも人間じゃないことは確かだな。

「まったく酷いニオイだ。800年経っても欲望は減るどころか・・・ここまで腐っているとはな」

 

「「「っ!?」」」

 

 近くでその様子を見ていたカザリ達は数歩引き下がると、謎の人物は一度そっちに視線を移してから、再び俺達に視線を戻した。

「欲望に塗れた者達よ。お前達にメダルは似合わん!返せ!」

 

「うおっ!?」

 

 謎の相手は杖から黒く光る電撃のようなものを放つと、俺のベルトにセットされているコアメダルが杖についている球体に吸い寄せられそうになっていた。

「くっ!?」

 

 俺は慌ててベルトを抑えるが、メダルホルダーに入っていたメダルはノブナガのサソリメダルも含めて全て吸い込まれていった。

 

「「「うわぁぁぁぁっ!?」」」

 

 するとグリード達からもメズールとガメルは1枚ずつだったが、カザリが大量にコアメダルを奪われていた。

「メダルが!?」

 

 黒い電撃に吹き飛ばされた俺達は杖に視線を移すと・・・その杖の中には十数枚のメダルが入ってしまっていた。

「くそっ!?・・・あのヤロウ・・・」

 

 どうやらメダルを奪われるのはアンクも例外ではなかったようで、アンクもクジャクとコンドルのコアメダルは奪われてしまっていた様子だった。

「「っ!」」

 

 すると俺達の傍にはこんな形で久しぶりに出会うことになった粉雪と風雪の2人がやってきた。そして、その2人に視線を移した謎の人物は仮面を外すと・・・・

「「「なっ!?」」」

 

 そこには白雪の顔があった。

「目障りだ。お前達のようなものが何をしに来た!邪魔だ!!」

 

「ダメだ!危ないっ!?」

 

「遠山頼むぞっ!ぐわっ!?」

 

 俺が粉雪と風雪を庇うような体勢になると・・・バースが俺を庇って攻撃を喰らって吹き飛ばされてしまった。

 

「後藤っ!?」

 

「オーズ・・・お前もかつての王のように世界を手に入れるつもりだろう。だが、この世界は終わる。否、終わらせる。そして始まる新しい世界の王に我が!・・・我がオーズとなる!」

 

「くっ!?うわっ!?」

 

 俺達は白雪の身体を乗っ取っている様子の何者かの攻撃を再び喰らうと・・・ベルトに収まっていたタカのコアメダルまでもが奪われてしまった。

 

「そこに隠れているお前からもだ!!」

 

「何っ!?ぐおぉぉぉっ!?」

 

「「「うわぁぁぁぁぁっ!?」」」

 

 どうやら物陰に隠れていた様子のウヴァもバッタのコアメダルが1枚奪われてしまうと・・・俺達はさらに強力な攻撃を喰らって樹海から外に追い出されてしまった。

「くっ!・・・大丈夫か?」

 

 俺は上半身を起こして周りを確認してみると・・・粉雪と風雪はNEW電王とアンクが庇っていた。

 

「あのヤロウっ!・・・ぐわぁぁぁっ!?」

 

 風雪から離れたアンクはもう一度樹海の中へと入っていこうとすると・・・アンクはバリアのようなものに弾かれてしまい、吹き飛ばされてしまった。

「・・・バリアか・・」

 

 キックホッパーが上を見上げているので、俺も上を見上げると・・・樹海は半球状となっている半透明のバリアによって封鎖されてしまっていた。

「・・・ライダーキック」

 

『RIDER KICK』

 

 ライダーキックをバリアに叩き込んだキックホッパーだったが・・・そのキックを喰らってもバリアは傷1つついていなかった。

「なんていうバリアだ。・・・これでは突入できそうにないな」

 

 そう呟いた後藤は変身を解除すると、立ち上がろうとした風雪が崩れ落ちた。

「・・・うっ!?」

 

 どうやら右足をケガしてしまったらしい。けっこう強く擦り剥いたようで、肉が見えてしまっていてだいぶ痛そうだ。

「チッ!ほらよ・・・」

 

 風雪をネコを掴むように持ち上げたアンクは、ライドベンダーの後ろに風雪を乗せてやった。

「ワトソン、とりあえずクスクシエに着いたら手当てをしてやってくれ

 

「分かった」

 

 俺達はひとまず状況を整理するためにもクスクシエへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

 俺達がクスクシエに向かっている頃、塔の中に連れ去られてしまった鴻上のおっさん達はフラスコや試験管などが置いてあり、さらには遺跡の蓋となっていた21枚メダルがはめるところがある石版まで置いてある部屋の中心の自分達の足場が宙に浮いていて、周りがない場所に倒れていた。

 

「「・・・っ!」」

 

 意識を取り戻したおっさんと里中さんは周囲を見渡して、足場が不安定なことに驚くと、2体の兵士が王を迎え入れるかのように部屋の両サイドに立った。

 

「・・・・・」

 

 すると白雪に取り付いた何者かは、鴻上のおっさん達の前に立つと、おっさんも羽織っていたコートを脱ぎ捨てながら立ち上がった。

「ハッピィバースディ!マスターガラ!!まさか直にお目にかかれるとは・・・」

 

「・・・かつて我を滅ぼした者の血を引く者か。今度は我を目覚めさせるとは・・・皮肉なものだ」

 

 白雪の身体を乗っ取っていた‘ガラ’と呼ばれた相手は呆れ顔で鴻上のおっさんを睨みつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

 クスクシエに到着して、ワトソンが風雪の治療をしてやっている間、俺は暴れん坊将軍や、宇宙刑事ギャバンなどのチャンネルを切り替えてニュースをチェックしていた。

 

『只今入りました情報によりますと、ビル郡はドイツのテューリンゲン州に移動しています。ドイツの樹海と新宿のビル郡が入れ替わったわけですが・・・』

 

「とんでもないことになったな・・・」

 

 ここまで大規模なことをやられちまうと、エヴィルの時のように武偵高とかの権力で一般に対して情報を隠すことなんてできやしないな。

「とんでもないのはこっちもだ!メダルがだいぶ奪われちまって、お前はあの‘紫’以外変身できなくなっちまってんだぞ!」

 

 アンクは俺のメダルホルダーの中身を確認しながらイスに座る。確かにアンクの言う通りだ。・・・俺はかなりのコアメダルを取られちまって、俺の身体の中にある恐竜コア3枚を除くとトラコアとバッタコアしか残っていない状態になっちまっていた。アンクやレキのところにも確かにメダルはあるが・・・どちらも腕と足のメダルが残っている状態で、頭部にあたるメダルがない。プトティラ以外に変身するとしたら、アンクの意思が宿っているタカコアを使うしかない状況ってワケだ。

「トオヤマ、とりあえず彼女の治療は済んだ。しかし・・・」

 

 俺はワトソンに話しかけられて粉雪と風雪に視線を移す。やっぱり姉である白雪があんな風になってしまったのはかなりショックだったらしく、威圧感バリバリの粉雪も、常時冷静の風雪も普段の面影がないぐらいへこんでるな。・・・どうやら2人の話を聞くかぎりだと、白雪は2人を庇ってセルメダルの‘手’によって攫われてしまい、あの状況に至るらしい。・・・よりにもよってアンクの天敵の白雪を乗っ取るとはな。

「・・・・・」

 

 おかげでアンクの肩は僅かながらに震えていて、次に直接対面させてしまった時に、役に立ってくれるかは分からないぞ。

 

「おい!キンジ達が遭遇したっていう相手のことが分かったぞ!」

 

「会長と一緒にいたという研究員から聞いてきたよ」

 

 すると急ぎ足でクスクシエに入ってきた正太郎と陽は、謎の相手の説明を始めてくれた。

「相手の名前は『ガラ』。800年前の錬金術師だよ」

 

「錬金術師って・・・確か・・・」

 

 そういえばアンクのコアメダルを作ったアミカ以外にもいるんだったな。

 

「当時の王の命令でオーズ・グリード、その全てに関わるコアメダルを作った当時の科学者ともいえる人達だよ」

 

「ガラはその中でも強力なコアメダルを作れたらしくてな・・・鴻上会長が封印されたガラのメダルを掘り起こそうとしていたところ・・・お前達が見たような結果になっちまったらしい」

 

 なるほど。結論的にまとめると・・・ほぼ全部鴻上のおっさんのせいじゃんかよ。

 

「・・・そういえば今の世界を終わらせて、新しい世界の王・・・オーズになるって言っていたな」

 

 矢車がそう言ったことで・・・この場にいるだいたいの者達がコアメダルを奪った理由を理解した。

「簡単にまとめると、コアメダルの力で世界を滅ぼそうとしているってワケでしょ?」

 

「アリア・・・それに理子達まで・・」

 

 店の奥からは、どうやら全部のことを聞いていたらしいアリアと理子、そしてレキがやってきた。

「何とかバリアを破ってあの塔に行かないとダメじゃない」

 

 アリアがそう言った途端・・・不思議な鐘の音が何処からともなく響いてきた。

「ガラのと同じ気配だ!」

 

「「「っ!?」」」

 

 ガラの気配を感じ取ったアンクは真っ先に走り出したので、俺達もそれを追いかけるように走り出した。

「それにしてもアンク・・・お前だいぶ肩が震えてるけど大丈夫か?」

 

「ハッ!一応あれでも仲間だからな・・・仲間の命を見過ごすほど腐っちゃいねぇよ」

 

 なんて言うか・・・自分の命はないからって、他人の命を大切にしているアンクらしいよな。

 

「ところでアンク。お前はガラについて何か分からないのか?」

 

「残念ながら昔感じたことのある気配ぐらいでしか分からないな。基本的に俺は城の一部に引き篭もっていて、アミカとアミコ、それとリクくらいしか会っていなかったからな」

 

 アンクって昔はだいぶ引き篭もりだったんだな。

「ところでキンジ・・・行ったところでお前はどうするつもりだ?お前は今、俺のメダルを使わないかぎり変身はできないんだぞ?」

 

「今は一応武偵なんだから銃で戦えばいい。それに万が一の時には恐竜メダルがある。イザって時にはそれで変身すればいいさ」

 

「・・・チッ!無茶はするんじゃねぇぞ。こいつはしばらくお前が持っておけ!」

 

 そう言ったアンクは俺にジャリバーをパスしてくる。とりあえずこれでさっきの兵士ぐらいとなら戦えるな。この時の俺は「ピンチになったら紫のコアメダルを使えばいい」と言う考えがあった。・・・この時はまさか自分の中にある紫のコアメダルまで奪われてしまうとは考えてもなかった。

 鐘の音の聞こえてきた辺りへと向かってみると、ビルのスクリーンにはピンク色の道化衣装を着た怪しげな女が映っていた。

『お客様にご案内致します。只今より、お客様の欲望を満たすチャンスタイムとなります。私の質問にYESかNOでお答えください』

 

 そのスクリーンを見かけた人々は、どんどんと人が集まり始めていた。

『繰り返しお伝え致します。只今より、お客様の欲望を満たすチャンスタイムとなります。私の質問にYESかNOでお答えください。では質問です!500万円を受け取る代わりに、この先一生こちらの髪型で過ごす!』

 

 スクリーンに映し出されたちょんまげに周囲の人々は「何の番組だよ」「なにあの髪型?すげぇダセェ!」などと言いながらふざけたものだと思いながら笑っていた。

「バライティ番組か、何かかしら?」

 

「・・・あぁ。アンク、ガラと同じ気配って・・・」

 

 アンクは周囲を睨みつけるように見渡すと、俺達からそう遠くない場所を鋭く睨んだ。

「あれだ・・・!」

 

「「「・・・・?」」」

 

 俺達はアンクの睨んだ場所に視線を送ると・・・そこにはさっきスクリーンに映っていた道化の女が荷台を引きながら歩いてきたのが見えた。周囲の人々も道化の女を視界に捉えて、視線を向けると・・・道化の女は札束を大量に見せてきた。

「お客様、YESかNOでお答えください!」

 

「えっ?ホントに?ホントに500万くれんのこれ?」

 

 道化の女がそう言った途端、近くを通りかかった様子の海堂は興味津々でそれに近づいてきた。

「はいっ!」

 

「マジ?じゃあYES!だから500万くれよ。500万!」

 

「承知致しました」

 

海堂の欲望を聞き届けた道化の女は手に持っていたベルを鳴らすと・・・海堂の頭は一瞬だけ煙に包まれ、気がつくとちょんまげに変わっていた。

「おっ!?」

 

 ちょんまげとなった海堂は自身の髪型を確かめるために触れようとすると・・・海堂の額からはセルメダルが1枚飛び出てきて、すぐに消えてしまうのが見えた。

「お受け取りくださいっ!」

 

「こんなもの帽子を被っちゃえばどうでもいいんだよ」

 

 500万を受け取った海堂は手に持っていた帽子を被ろうとすると・・・帽子がどこかに吹き飛んでいってしまった。

「えっ?」

 

「お客様、一生その髪型とお申しました。帽子やカツラ、その他すべての被り物も無効となります!」

 

 周囲の人々は一斉に「え~~!?」と叫ぶと・・・海堂はだいぶ落ち込んだ様子でちょんまげに手を触れた。

「まぁ・・・これもアリっしょ」

 

 

 そしてすぐさま開き直った海堂は、その場を立ち去ろうとすると・・・次々と人々が道化の女に集まってきた。

「別に金が貰えるならあの髪型でもいいや!俺もYESで!」

 

「自分もだ!」

 

「承知いたしました~!」

 

 次々とちょんまげになっていく人々にアリアとワトソン、そして陽は残念な視線を送っていた。

 

「たかが500万のためにあんな髪型になる必要はないでしょ」

 

「まったくだ。500万にそれほどの価値は無い」

 

「500万なんて2ヶ月ぐらいでなくなっちゃうよね」

 

 このお金持ちグループはなんて贅沢な。500万なんてサラリーマンが1年間働いても貰えない額だぞ。庶民の気持ちを考えてみろよ。

「伊達さんだったら・・・飛びついていたかもな」

 

「・・・あれもあれでハードボイルドかもな。いやでもなぁ・・・」

 

 後藤は伊達さんのことを思い出しながら500万を見ていると、正太郎は何やら髪を少しだけ弄りながら少しずつ前進しては後退を繰り返していた。

「ひゃっはははっ!」

 

 

 矢車やレキはさすがに無反応だが、理子なんてちょんまげを見て爆笑してるし・・・。とりあえず状況を完全に把握していない俺達はしばらく様子を窺うことにした。

「これが世界の終わり・・・?」

 

「だとしたら・・・随分かわいいもんだな」

 

「500万・・・ちょんまげ。ハードボイルド・・・」

 

 ついに俺達よりも前に出た半熟卵こと正太郎は腕を組みながら自身のちょんまげ姿を想像し始める。

「・・・アリかもな」

 

 ねぇよ。少なくとも現代でそんなものはハードボイルドなんて呼べないぞ。

「悪い事は言わないから考え直せ、明智」

 

 バースドライバーやセルメダルが入っているリュックサックを足元に置いた後藤は半熟卵の肩を掴んで陽と共に説得を始めた。

「いいじゃんいいじゃん!ちょんまげになっちゃいなよ、YOU!」

 

 軽いノリで正太郎を煽り始めた理子も俺達よりも少し前に進みだすと・・・矢車も少しだけ前に進み近くのベンチへと座った。

「こんなところで無駄な話をしている場合ではないだろ」

 

「ちょんまげは何時でもなれるはずだ」

 

 ワトソンとテディは真面目さを失いかけていた正太郎達をそろそろ止めるためにも前に進んだ。

「レキ、すまないが・・・・」

 

「・・・了解しました」

 

 俺はレキに‘ある事’を頼み込むとレキは頼んだ場所へとスタスタと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「マスターガラ!これはいったいどういうことかね?」

 

 ガラが魔術で映し出した各地で次々と人々がちょんまげになっていくのを見ていた鴻上のおっさんは、セルメダルがフラスコの中に溜まっていくのを見ながら、少しずつ裏返ろうとしているメダルの形をした板をに視線を移して、ガラにそう尋ねた。

「これは人間共の欲望を計る天秤。欲望が開放されるたびに、その欲望の大きさがメダルに換算されていく」

 

 そう言ったガラが面白そうに天秤を眺めると・・・天秤は光を放ちながら反転を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「やっぱりちょんまげはハードボイルドだと思うんだ。時代劇を見てるかぎり・・・」

 

「時代劇に出てくるちょんまげが全員ハードボイルドなはずないだろ」

 

 後藤達の必死の説得でようやく正太郎がちょんまげの考えをストップしようとしていると・・・再び何処からともなく怪しい音色が聞こえてきた。

「「「・・・・?」」」

 

 後藤や正太郎達は何処から聞こえているのかと思いながら、さらに前へと進むと・・・俺達の足元がいきなり輝き出して、後藤達の立っているところから後ろに立っていた俺達はその光から出られなくなったかと思うと・・・光に包まれている地帯が宙に浮かび始めた。

「うわっ!?これはいったい・・・」

 

「とりあえずあんた達は何かに捕まっておきなさい!」

 

 アリアはとりあえず自分より後ろに立っていた粉雪と風雪に何かに掴まるように指示をすると・・・2人はとりあえず近くの電柱を掴んだ。

「なんじゃありゃぁぁぁ!?」

 

「遠山達が・・・・」

 

「相棒・・・っ!?」

 

 正太郎達はそれぞれ驚いた様子でこちらを見上げていたが・・・正太郎達の心配も空しく俺達の立っていた場所は‘反転’してしまった。

「っ!?」

 

 そして俺達の目の前が光に包まれたかと思うと・・・目の前に広がる街並みはビル街などではなく和風の作りの店や城などが見える景色へと変貌してしまった。

「嘘だろ・・・」

 

 周囲で俺達の方を恐怖の目で見てくる人々の姿は着物などの和服で髪型も男性の多くはちょんまげ。俺達はもしかして・・・

「江戸時代にタイムスリップしてしまったってことなのか?」

 

 その時の俺達はその場に立ち尽くすことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「さすがは天才錬金術師の1人だ。場所だけでなく時間さえも越えるとは!あの髪型もこのためかね!素晴らしいっ!」

 

 ガラによって俺達がタイムスリップしてしまった光景を見ていた鴻上のおっさんは、そう言いながら帽子を脱ぎ捨てると数人立っていた道化の女の1人がベルを振りながらおっさんに近づいてきたかと思うと・・・おっさんまでなぜかちょんまげにされてしまった。

「ぷっ・・・!ダッサっ・・・」

 

 それを間近で見ていた里中さんはつい笑いそうになると口を押さえた。鴻上のおっさんも少しはちょんまげを気にするように頭部をペタペタと触ると・・・すぐに真顔に戻り、天秤に視線を戻した。

「なるほど!天秤に人間の欲望が溜まる時、そのメダルと連動して土地がひっくり返る!世界の終末へのカウントダウンだぁ!」

 

 鴻上のおっさんが盛大に笑うと・・・道化の女の1人は集まっていたコアメダルを石版にはめ込もうとしていた。

「だんだん分かってきたよ!そうだろ里中君!!」

 

「定時に帰ることができないということだけは・・・」

 

 腕時計を確認して今日は帰れないと言うことを確信した里中さんは、ため息をつきながら俯いた。

「タカで御座います!クワガタで御座います!ライオンで御座います!」

 

「残業代・・・きちんと出してくださいね」

 

 道化の女がコアメダルを次々と石版へとはめ込む一方で、里中さんは鴻上のおっさんに残業代を要求していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

「本当に江戸時代に来ちまったんだな」

 

 俺はとりあえず後藤のリュックを肩に担ぎながら、アリア達と共に他に江戸時代に来てしまった人々を探すためにも周囲の探索を始めていた。周囲に立ち並ぶ店などには人は1人もいない。・・・おそらくはさっきの出来事で逃げ隠れでもしてしまっているんだろうな。

「これ・・・ちゃんと戻れるのかしら?」

 

 アリアがそう言った途端、近くから車のクラクションの音が聞こえてきた。

 

「行ってみましょう!」

 

 少しだけ元気を取り戻した。・・・というよりもやせ我慢をしている粉雪はクラクションの聞こえた場所へと走り出すと・・・そこでは俺達と同じくタイムスリップしてきた5~60人の人々が、この時代の人々に石や独楽などを投げつけられていた。

「てめぇ達!いったい何もんだぁ!!」

 

「怪しいモンじゃないって!!」

 

 車の窓から顔を出した男性は、この時代の人達にそう言ってみるが・・・

「どう見ても怪しいだろっ!」

 

「「「そうだ!そうだ!」」」

 

 この時代の人々はどうやら信じてくれていない様子だった。

 

「何遍言ったら分かるの!!」

 

 車に乗っている男性は再びクラクションを鳴らすと・・・それは余計に怪しがられる原因となり、さらに様々なものが投げつけられていた。

「とりあえず落ち着けって!」

 

 俺はとりあえずそれぞれの間に割り込むように立つと、投げつけられた石をキャッチして、この時代の人達に視線を向けた。

「大丈夫だって。俺達もあんた等と同じ人間だって・・・」

 

 俺の言葉に後ろに立っているタイムスリップしてしまった人々は頷くと・・・この時代の人々は半信半疑の視線を送ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 俺が江戸時代の人々を説得しようとしていた頃、元の時代で塔にいた鴻上のおっさんと里中さんは俺達の状況を見て驚いていた。

「遠山さん達がっ!?」

 

「・・・あの者は不要。ただ・・・あの者が持つメダルは渡して貰わんとな」

 

 ガラはセルメダルを不思議な液体の入ったフラスコに入れながら、そのように話すと・・・フラスコから上がった煙はガラの前で豹や蛇、猿といった生物が混ざりあった怪人が現れた。その姿は妖怪に例えると『鵺』といった感じだ。

 

「行けッ!」

 

「ヴゥゥゥッ!」

 

 鵺ヤミーはこうして江戸時代へと向かってきたことを・・・俺達は知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「っ!?・・・キンジ、何かが来るぞ」

 

「「えっ?」」

 

 いきなりアンクがそう言ってきたので、俺とアリアはとりあえず銃を構えながら周囲を警戒してみると・・・この時代の人々の少し手前の足元が輝き出した。

「ヴゥゥゥゥゥ!」

 

 そこからは豹や蛇、猿といった生物が混ざりあった、妖怪に例えると『鵺』みたいな怪人が現れた。

「「「うわぁぁぁぁぁっ!?」」」

 

当然その怪人に驚いた人々は時代を問わずにその場から離れ出す。

「メダルヲォォォォォ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 俺はいきなり襲い掛かってきた鵺のような怪人の右手に首を絞められると・・・車に叩きつけられてしまう。

「ヨコセェェェェッ!!」

 

「うわっ!?」

 

 そしてさらに米俵に投げ飛ばされてしまった。

「マズイっ!まさか江戸時代にまで・・・こうなったら・・」

 

 俺は瞳を輝かせながら紫の恐竜コアメダルを身体から3枚取り出すと・・・

「モラッタァァァっ!」

 

「なにっ!?」

 

 そのうちの2枚・・・トリケラコアとティラノコアが奪われてしまった。前に1回だけ紫の恐竜コアを取り出すために身体から出したのをアンクに掴んで、身体に戻るのを止めてもらうっていうチャレンジも失敗したことを・・・この状況でだ。

「何ともまぁ・・・最悪な展開だな・・ぐはっ!?」

 

 プトティラコンボまで封じられてしまった俺は鵺の怪人の攻撃を喰らって殴り飛ばされてしまう。

「このヤロウっ!」

 

 俺は背中に隠し持っていたメダジャリバーを構えて、鵺の怪人に向かって斬りかかってみるが・・・生身の身体じゃ充分な力で振るうことはできずにあっさりと弾かれてしまう。

「キンジっ!」

 

 アリアは2丁のガバメントで鵺の怪人を狙撃するが・・・まったくダメージは与えられていない様子だった。

「どうしよう・・・このままじゃキンジが・・・っ!」

 

 銃をしまったアリアはリュックサックを開けると、中からバースドライバーとバースバスターを取り出した。

「こうなったらやってみるしかないわね・・・」

 

 そう呟いたアリアは細い腰に少し隙間ができてしまうバースドライバーを腰に巻きつけると、セルメダルを数枚、リュックから取り出した。

「武偵は臨機応変にいかなくちゃね。・・・変身ッ!」

 

「「えっ!?」」

 

 俺やアンクが驚きながらもアリアに視線を送ると・・・アリアの身体は黄緑色の光に包まれると共に、伊達さんや後藤が変身するよりもだいぶ小柄のバースになっていた。

 

「さぁ・・・行くわよ!」

 

 バース(小)はバースバスターを両手で持ちながら鵺の怪人へと接近してきたので、俺は鵺のような怪人から一度距離を置いた。

「喰らいなさいっ!」

 

 俺が鵺の怪人から離れると、バース(小)はバースバスターのエネルギー弾を連射した。

「ヴゥゥ!?」

 

 さすがにその攻撃には怯んだ様子の鵺のような怪人からはセルメダルが数枚ほど落ちていた。やっぱりこの鵺のような怪人もヤミーと同じ類らしい。

 

「なんて反動の銃よ。・・・デザートイーグルの方がまだ使いやすいわ」

 

 そう言ったバース(小)はバースバスターを投げ捨てると、セルメダルを1枚ベルトに入れた。

「これならどうかしら?」

 

『クレーンアーム』

 

「ヴァァァッ!?」

 

 クレーンアームを装備したバース(小)は、その先端を伸ばしてワイヤーを鞭のように振るって鵺ヤミーを攻撃した。

「ヴゥゥゥッ!!」

 

 ワイヤー攻撃を5~6回喰らった鵺ヤミーはとうとうワイヤーを掴み取り、バース(小)をそのまま投げ飛ばした。

「きゃっ!?」

 

身軽なアリアならあれは着地など受身を取ることができるかと思ったが、どうやらうまくしきれていない。さっきからの戦いを見る限り・・・たしかにアリアは武偵としてはSランクでかなり優秀だが、仮面戦士となると体格的な問題でうまく戦えないところがあるようだな。

「ならもう一回これで・・・」

 

 クレーンアームを解除したバース(小)は再びバースバスターを手に持って、鵺ヤミーを狙撃しようとするが・・・

「チョウシニノルナァァァァッ!!」

 

「きゃあっ!?」

 

 鵺ヤミーの放ってきた火球を喰らってしまったバース(小)は近くの民家に吹き飛ばされてしまうと、その腰に巻きつけられてしまったバースドライバーはサイズのためか、あっさりと外れてしまった。

「やっぱり予想してた以上に変身して戦うっていうのは難しいわね。・・・キンジ!」

 

「っ!」

 

 そんなことを呟いたアリアは腰から外れたバースドライバーを掴み取ると、俺の方へと投げ渡してきた。・・・今度はいつも通り俺の出番ってことか。

 

「バースに変身するのは初めてだけど・・・やるしかないな」

 

 腰にバースドライバーを巻きつけた俺はセルメダルの1枚をコイントスのように上に飛ばすと、オーズに変身する時のようなポーズをしながらセルメダルをキャッチして、ベルトにそれを入れた。

 

「変身ッ!」

 

 バースに変身した俺は近くに落としたメダジャリバーを拾い上げると、俺はいつもオーズとして戦うときのように構えた。

「セヤッ!」

 

『ドリルアーム』

 

 俺は右手にドリルアームを装備してトラクローを振るうのと同じような戦い方で、それを鵺ヤミーに振るう。

「セイヤッ!」

 

 そしてそのまま身体を横に一回転させて、ジャリバーで追い討ちを掛けた。

「キンジ!こいつも使えッ!」

 

 俺はドリルアームを解除するとアンクからバースバスターも受け取り、1剣1銃で戦い始めた。

 

 

 


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