緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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チーターコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×1
ティラノコア×1

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スカイツリーと薬と猛毒の矢

「さて・・・そろそろ撤退するよテディ」

 

 グリード達がそれぞれ撤退し、俺と後藤が名護先輩と合流した頃、青い電王の変身を解除したワトソンは隣に立っていたテディにそう告げて再び学校へと戻ろうとしていた。

「くそ、カザリめ。このままでは済まさんぞ」

 

 すると撤退途中でワトソンが視界に入ったウヴァはマシーンのメモリと1枚のセルメダルを取り出す。

「あいつ・・・先ほどまでの白い戦士ほどではないが強い欲望を感じるな。その欲望・・・利用させてもらおう」

 

『MACHHINE』

「うっ!?」

 

 マシーン・ウヴァとなったウヴァはセルメダルをワトソンの後頭部へと挿入すると・・・ワトソンの背中からは白ヤミーが出てきた。

「何者っ!?」

 

 その気配に気づいたテディはすぐさま後ろへと振り返ると・・・白ヤミーはまだセルメダルを溜めて完全な姿になっていないにも関わらず地面に散らばっている落ち葉の色に擬態して移動してしまい・・・テディが振り返った先には誰もいなかった。

「どうしたんだいテディ?」

 

「・・・いや、何でもない。それよりも先ほど何処か痛がっていたようだが・・・大丈夫なのか?」

 

「あぁ、たぶん上から落ちてきた木の枝か何かが掠ったんだと思うよ。それよりも、そろそろ学校に戻ろう」

 

 テディは「あぁ」と頷くとバイクに跨り、後ろにワトソンを乗せて武偵高へと走っていった。

「トオヤマ、ジャマ・・」

 

 そのように呟いた白ヤミーは元の色に戻って何処かへと行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

 名護先輩が欲望から開放されてから数時間ほど経った午後、最近エヴィル戦以降ジャンヌを見かけないと心配しているとたまたま遭遇した中空知からジャンヌは陽だけではなく自身や亜希子ともルームメイトということを聞き出した。意思疎通にそれなりに時間がかかったが何とか第3女子寮にあるジャンヌ達の行くことができることになった。そして膝をガクガク震わせている中空知と共に部屋に入ると・・・

「うおっ・・・」

 

 思わず声を上げてしまうくらい音響機器がビッシリと集められていた。アクセスランプが至るところでピカピカして、窓際にちょこんと置かれているミニ観葉植物だけが女子の部屋っぽいといえば、ぽいかもな。ていうか双葉の鉢、トオヤマクンって書かれた小さなプラカードみたいなのが立っているんだが・・・そんな植物あったか?

「ちっちっ、違いますっ!わ、私、植物なんかに話しかけたりはしてませんっ!そっ、そこまで孤独じゃありませんよっ!わ、それと私の部屋には何もありませんよっ!不測の事態に備えて買い溜めした、ふ、不埒な下着とかはありませんっ!」

 

「いや、別にがさ入れしに来たわけじゃないから。それよりジャンヌは・・・」

 

「ジャンヌさんは、そちらですっ」

 

 トオヤマクンを隠すように背にした中空知が指差した扉は・・・そこだけいきなり古風で洋風の装飾がされた木目調のドアだった。いかにもジャンヌっぽいな。

「・・・・」

 

 ドアを開けてみると・・・明るい。確かにいるみたいだ。ここからじゃ姿は見えないけど。一流の執務官みたいなシックな装飾がされているな。中空知とは大違いだ。本棚にはフランスや日本語の歴史書と思われる書籍が並んでいる。て本棚から一冊を抜き取ると革表紙の向こうにはもう一列・・・それも少女漫画が大量に隠されていた。花とゆめ、君に届け、・・・ジャンヌってこういうのを読むのか。ちょっと意外な一面を発見したな。女っぽい部分は奥に隠しておくってわけか。ジャンヌらしいぜ。

「っ!」

 

 気配に顔を上げると、奥にはもう一部屋あった。・・・そうだった、笑っている場合じゃないな。俺は騒がしくしちゃいけないなと思いながらソッと扉を開けると・・・室内には水色やピンク色をした様々な衣装が服屋のように集積されていた。理子から預かったかとも思ったが・・・サイズが違う。とりあえず服を掻き分けるようにしてさらに奥へと進んでいくと・・・変装食堂のくじ引きで俺がジャンヌの代わりに引いた『アットホーム・カフェテリア』のロゴが入ったウェイトレスの衣装を着たジャンヌがポーズを決めて鏡の前に立っていた。

「ふふ、やはり良いな」

 

膝に片手をついて前屈みになったり、微妙に振り返って背中の大きなリボンを調整したりして・・・何やってんだジャンヌ?全然元気じゃんか。

「フッ・・・私はこんなにも愛らしい」

 

「・・・・・」

 

 駄目だ、声を掛けるにかけられない。完全に1人の世界に入って1人ファッションショーをやってやがる。

「フフッまさか、みんなの前で堂々とこれを着れる日が来るとな。元々持っていたとは情報科の誰も思うまい。遠山のやつ、最高のクジを引くものだ、でかした」

 

 ジャンヌはそんな独り言をいっていたので・・・俺はついつい「はぁ・・・」とため息をついてしまった。すると俺の声を聞いた銀氷の魔女・ジャンヌが凍りつき、鏡の中のジャンヌと目が合うと・・・そのまま心停止したみたいに動かなくなってしまった。

「ジャンヌ、まず1つ。元気じゃねぇか。中空知がケガしたっつーから心配したんだぞ。もう1つ、何だこれ?全部お前の私物か?」

 

 ようやく動き出したジャンヌは両手で自身の顔を覆うと・・・

「お・・・おしまいだ・・・」

 

 そう呟きながらへなへなと悲劇のヒロインのように崩れ落ちた。

「何がおしまいなんだよ?」

 

「遠山・・・お前は見てはならないものを見た。生かして帰すワケにはいかん」

 

 ジャンヌは背中からデュランダルを取り出して構えた。

「おいっ!そんな格好をしていても武装してたのかよっ!」

 

 俺に裸でも見られてしまったかのようなノリのジャンヌが持つ鞘を俺は慌てて掴むと・・・ジャンヌは手に力が入らないのか、あっけなく武器を落としてしまった。

 

「こっ、この部屋を見た者はいない。ここは私だけの秘密の花園だったんだ。理子にも秘密にしていたのに・・・!」

 

 涙目になっているジャンヌのエプロンからは拳銃が御出でになろうとしていた。

「分かった、内緒にする!秘密にする!だから撃つな!」

 

「・・・約束するか?誰かに話したらお前を冷凍グラタンにするぞ」

 

「約束する。・・・というか人間はグラタンにならない」

 

 憂鬱そのものといったため息をついたジャンヌは「こんなところで発砲したら服に穴が開く」といって銃を収めてくれた。そして執務官みたいな部屋でしばしジャンヌを待っていると・・・制服に着替えたジャンヌは仏頂面でコーヒーを入れてくれた。

 

「言っておくが自分でも分かっているからな」

 

「何をだよ?」

 

「ああいった服は私のようなものには似合わないということがだ」

 

 心から恥ずかしそうな様子のジャンヌはやや上目遣いで俺を見てくる。

「あの手のドレスは理子のような小柄な少女が着ることで愛らしく見える。私はこのような身長だし、幼い頃から男のように育てられたから・・・似合わないのだ、本来。だが思えば、思うほど・・・なぜかああいうドレスに憧れ・・・」

 

 まぁ、何となくは分かるな。人は自分にないものに憧れるっていうしな。

「理子の影響もあって・・・似合わないと分かっていても、一着だけと思って日本の原宿で買ってみたら・・・それ以降クセになってごらんの有様だ。ハハッ、私は可笑しい女だろう。笑えば笑え、ハハッ・・」

 

「い、いや、笑ったりしない。可愛かっただろ」

 

 お前の着ていた服がな。

 

「か、可愛い?」

 

 俺の言葉が意外だったのか、ジャンヌはアイスブルーの瞳を丸くする。

 

「ん?あ、ああ」

 

「お前はヘンな奴だな。センスがないぞ」

 

 

 そう言いながら横を向いたジャンヌは壁に向かってちょっと嬉しさにニヤけるのをガマンしている様子だった。どうやら俺は理子の持っているようなゲームで言う正しい選択をしたらしい。これでようやく本題に入れると思った俺は、ジャンヌにどこに言っていたのかを聞いたり『師団』と『眷属』のことをアリアに話すかと聞いたりした。どうやらジャンヌはずっと『眷属』の動きを追っていたらしく、さっき剣を簡単に俺に取られてしまったのは、ヒルダの電流を喰らって全身の腱に未だにダメージが残っているらしい。そしてアリアにはギリギリまで黙っておくことで話がまとまり、話題はワトソンに変わった。

「お前もどうやら気づいているらしいが、ヤツの動きは不自然だ。それで経歴を洗ってみたがあれは曲者だぞ。二つ名は『西欧忍者』・・・秘密結社リバティー・メイソンでは有能な諜報員として勲章を授かっているような男だ」

 

「あいつ・・・」

 

「私はそういう姑息な活動をするやつは嫌いだ。それに硬式テニス部で、私の支持者が随分ワトソンに鞍替えしたらしい。それも気に入らない」

 

 姑息って・・・お前がやっていたらしい盗聴は姑息じゃないのか?しかも人気を取られた腹いせっぽい感じもするんだが・・・それは言わないでおこう。ジャンヌが反ワトソン派なのは頼もしいからな。

「遠山、これを聞け。ヤツは動いたらしいぞ。アリアと1対1で話している」

 

そう言われた俺は中空知の部屋に入るジャンヌから携帯を取り、急いで耳に当てる。どうやら中空知に先週依頼したというのはワトソンのことだったようだ。

『・・・今、店内です。台場1-9-1、ホテル日航東京3階。コンチネンタルレストラン、テラス、オンザ、ベイ。個室に入りました。室内の会話音声、比較的明瞭』

 

 さっきとは別人のようにシャキっとした女子アナみたいな中空知の声が聞こえてくる。さすが中空知。通信機さえあれば普通に話せるな。

「そんなところに盗聴器を仕掛けたのか?」

 

『いいえ、女子寮の屋上に設置した極指向性のレーザーマイクで集音しています。半径3キロほどまでの地上であれば、特定した方向の音声をモニタリングできます。・・・窓ガラスに伝わる振動を元に音を増幅します。室内の会話音声明瞭。回線に繋ぎます』

 

 なんて言うか・・・科学の力ってすげぇ。台場のレストランの声が筒抜けかよ。化学レベルが凡人の俺にとっては超能力に等しいレベルだぞ。

 

『「・・・れで、メヌはなんて言ったの?」』

 

 距離があるせいか雑音が混じっているが・・・この声は間違いなくアリアだ。

 

『「・・・ンドンに寄ったとき、メヌエットさんは・・・お姉様の・・・をよろしく、って、言っ・・・たよ」「あの子ったら・・・妹のくせに・・上から目線・・・から」「あとトランプの罰ゲームは継続中だって」「相変わらずね。やらしいんだから・・・捻くれてるわ」』

 

 ワトソンとアリアの声が交互に聞こえる。微妙に途切れ途切れだが・・・アリアの妹の話をしているぞ。ていうかいたんだ・・・妹。半年も一緒だったのに聞かされたことがなかったぞ。まぁ俺も兄さんことを隠していたから人のことは言えないがな。

「・・・・・」

 

 それにしても妙な不愉快さがあるな。アリアとワトソンが自分達しか知らない共通の話題で話しているのは。

 

『着席するようです。ワトソン側、足音。・・・足音に違和感、有益な情報ではありませんが気づいたので報告します。どうもワトソンは体脂肪率が高いようです。27%と思われます』

 

 中空知・・・雑音だらけの足音だけでそこまで分かるのかよ。音響捜査をさせると本当に天才だな。しかし体脂肪率27%か。それは多いな。・・・強襲科をやめた俺でさえ15%なのに。ワトソンは隠れ肥満ってやつなのか?

『アリア着席。ワトソン着席』

 

『「・・・がイギリスに帰ってこないのはどうしてだ?ボクは明日にでも挙式を」「・・・あたしには、そうゆうのを考えるのは・・・まだ早いわ」「なぜ渋る。他に婚約者でもいるのか?」「・・・・」』

 

 中空知が『アリア沈黙中』と伝えてくると・・・再び2人の会話は再開される。

 

『「どうした?他に婚約でもしたのか?」「・・・」』

 

『・・・います。アリアは「婚約」と聞かれるたびに心音が大きく高鳴る。その他身体的反応あり。特定の強い好意のある男性がいる女性の反応です』

 

 中空知が断言した。・・・ワトソンの他にも婚約者がいるのか。アリアはアリアでモテるじゃんか。俺には話してくれなかったみたいだが。

 

『「アリア。君はホームズ家では評判が悪いみたいだが・・・ボクと結婚してワトソン家に入れば・・・も・・だ。・・・ワトソン家は金融で成功して、今やホームズ家よりも裕福・・・から・・を・・見返してやれるんだよ?それに仕事もロンドン武偵庁の切り込み隊長なんかじゃなくて・・・ワトソン家の一員になれば・・・の・・・幹部として」』

 

 口説こうとするワトソンと黙っているアリアが続く。

『「それにワトソン家は日本の政治的・法律的にも・・・君の母親の裁判を・・」「・・・・」』

 

『アリア「母親」・「裁判」の部分で心音に変化。発汗』

 

『「なら書類上だけでもどうかな?」「・・・考えておくわ」』

 

 おい・・・考えさせてってアリアはワトソンと結婚する気なのかよ。

 

「中空知・・・その、アリアは本気なのか?結婚のこと・・・」

 

『本気です。ただ語調は同年代の女性の音声データから推測すると・・・何か自分を犠牲にしてでも守りたいものがある。と言った語調です』

 

 アリア・・・お前、ワトソンのものになるのか?

「っ!?」

 

 そう思った時、俺の中で2つの灼けつくような鼓動が走った。それが交互に何度も続いている。・・・この頭に血が上って何も考えられなくなるような感覚・・・ヒステリアに似ているが違う感覚と、内側から力が溢れ出しそうな感覚。どっちも覚えがあるぞ。1つはイ・ウーでシャーロックにアリアを攫われた時に発動させたヒステリア・ベルセ。・・・派生系のヒステリアだ。女を『守る』ではなく『奪う』力。そしてもう1つは・・・身体の中に入った時と同じ反応をしている紫のメダルの力だ。まるで「自分を使え」って主張するかのように紫のメダルから力が湧き出てくる。

「どうにも抑えられそうにないな・・」

 

 ベルセは戦闘力が通常のヒステリアの1,7倍になる代わりに、思考が攻撃一端になる。諸刃の剣で・・・紫が強力な戦闘力の代わりに暴走する可能性があるっていうマイナス点もあったが・・・そんなことどうでもよくなってきた。逆に自分の不甲斐無さを呪いたくなってくる。

「・・・・・」

 

 手に付けている腕時計が僅かに凍りつく。・・・何で俺は今までアリアに近づくワトソンを放置していたんだ。たしかにワトソンは俺よりもあらゆる点で有能だろう。

「それが何だ・・・」

 

 完全に凍りついた腕時計は粉々に砕け散ってしまう。・・・ワトソン、アリアを奪いたいってんなら男らしく俺と戦え。アリアを言葉巧みに騙して、横から掠め取ろうとするな。・・・そしてアリア、悪いが今回は気遣いなんて無しだ。奪うぞ・・・お前を。

「・・・・」

 

 瞳を紫色に輝かせた俺は窓から見える夜空を眺めた。思い出してみれば俺がレキと無理やり組まされた時もアリアも1度同じことをしようとしていたな。俺も1度奪え返しにいかせてもらうぜ。

「遠山どうしたッ」

 

 ジャンヌに肩を掴まれて俺は耳からジャンヌの携帯を離してしまっていたことに気づく。俺の目つきが普段より鋭くなって紫色に染まっているのを見たジャンヌが何かを言おうとしたのでバッと、その口を右手で押さえる。そしてすぐさま背後に回った俺は、ジャンヌの後頭部を自分の胸に抱き寄せながら部屋にいる中空知からは見えない角度まで連れ込んだ。

「ウッ!?」

 

 鏡に写るジャンヌは俺に抱かれて身悶えしているが・・・やはり身体に力が入らないらしく、俺になされるがままだ。お前、今の俺みたいな奴に襲われないようにしばらく気をつけた方がいいぞ。

「ジャンヌ・・」

 

 

 俺は左手の指で氷のような色をした髪の間から片耳をそっと探り出す。耳に触れられてビクリと身を震わせたジャンヌに「声を立てるな」と囁いた俺は中空知の方を振り向く。中空知はヘッドホンをかけ、盗聴に集中しているおかげで、これぐらいの声なら聞こえないらしい。

 

「・・・・!」

 

 ジャンヌがまだ動こうとするので、俺は左手で腰も抱き寄せる。すると耳元に口を寄せられた自分の姿にアイスブルーの目を見開いたジャンヌは頬と耳をどんどんピンクに染めてく。息継ぎをさせてやるように手を口からどけて・・・それでも唇に人差し指を立てて「静かに」のジェスチャーを続ける俺に・・・

「と、遠山ッ・・・」

 

 空気を読んだらしいジャンヌは無声音で返してくる。

 

「ぶ、武偵が男女の逢い引きを盗聴した程度で劣情を催すなっ。と、隣には中空知もいるのだぞ。私は知らないから確証はないが、お、お前を落ち着かせようにも、おそらく声を出さないほど器用ではないっ。い、いや、それ以前にお前はHSS・・・」

 

「その通りだ」

 

 そこまで言ったジャンヌに・・・俺は再び囁く。

「ど、どっちの通りだッ」

 

「今の俺はHSS・・・ヒステリアモード。だがこれは変わり種らしくてな。少し外出したくなった。携帯はこのまま借りるぞ」

 

「外出・・・?」

 

「中空知には通信で状況を伝えさせ続けろ」

 

 そう言った俺はジャンヌを解放してべレッタの弾倉を確かめると、腰にベルトをつけてメダルホルダーから3枚のメダルを取り出す。ジャンヌは1つ頷くと、ベルセで紫色の瞳の俺がよっぽどショッキングだったのか、へなへなとその場に座り込んでしまった。これは絶対後で「あれは何だったのだ!」とか怒られそうだな。というか今更知ったが、ベルセの俺は通常のヒステリアとは対照的だな。女子に対して獰猛だ。乱暴とも言える。まるで肉食動物・・・紫のことも考慮すると恐竜みたいだな。

「アリアの前でこういう動きが出ないことを祈るぜ」

 

 肉食獣同士が噛み合ったらお互いにボロボロになるからな。

「変身・・・っ」

 

『タカ!トラ!チーター!』

 

 玄関から外へ出てそのまま女子寮を出て行った俺はオーズ・タカトラーターへと変身して、すぐさま目的地である台場へと走り出す。

『ワトソン、続いてアリア、移動。アリアの歩き方に変化。若干、いわゆる千鳥足のようです。エレベーターに移動。下り。扉が閉まります。音声途絶・・』

 

 もう盗聴音は素人の俺には雑音だけに聞こえる。中空知はその中から僅かな音を拾ってアリア達の動きを教えてくれているんだ。時刻は午後22時・・このペースでいけば台場までなら、あと4~5分あれば充分だろうな。

『音声、建造物の反射音にて再補足。ワトソン、アリア、車内にいます。車種はポルシェ911・カレラ・カブリオレ。閉幌状態。都道482号線を北東に走行中』

 

 チーターレッグだと余裕で追いつけると思っていたが・・・ワトソンの野郎、車で出やがったのか。北東・・・武偵高に戻らずにアリアを連れ去るつもりだな。

 

『ワトソン、アリアに話しかけています。アリア、回答無し。眠っている模様』

 

 眠っている?

「不自然だ。どんな眠り方か教えてくれ、中空知。難しいかもしれないが・・・できるか?」

 

『・・・聴音中・・・意識レベルJCSⅡ-10以下。呼吸音・心音等のバイタルサインは投薬、麻酔等による清明度の低下に酷似。熟睡と昏睡の中間辺りに思えます』

 

 あの野郎、レストランでアリアに催眠剤か何かを盛りやがったな。何をするつもりか分からないが、アリアを傷つけてみやがれ。俺ができる一番乱暴なやり方でお前に同じ傷をつけてやるからな。だがワトソンはどこにいくつもりだ?それが分からなきゃいくらチーターレッグでも追いつくことはできないぞ。

『車内にてカーナビゲーション、入力者。ナビゲーションの音声あり。目的地は東京都墨田区押上1-1-2』

 

「ナイスアシストだ中空知。後でキスしてやるよ!」

 

『・・・不規則発言は控えてください』

 

 ははっ、素で返されちまった。ベルセの俺と通信の向こうの中空知、どっちも普段とはまるで別人だな。

『ワトソン、アリア、音声捕捉の限界距離に到達しました。首都高速汐留JCTにてボイスロスト。状況から見てここからは聴音不能と判断します。・・・お気をつけて』

 

 中空知の耳も、もう限界か。だが十分だ。おかげでかなり助かった。行き先さえ分かれば追いかけるなんて余裕だからな。待ってろよワトソン。アリアを起こして、代わりにお前を眠らせてやるぜ。

「病院の・・・ベッドでな!」

 

 俺はチータレッグをトップスピードまで加速させて目的の場所へと急いだ。スタッグフォンで地図を確認しつつ押上1-1-2・・・たどり着いた場所は・・・

「東京スカイツリー・・」

 

 その建設現場だった。本当にここかと思って周囲を探ると・・・近くの駐車場にワトソンのポルシェがあった。車内には誰もいない・・・だいたい停車してから5分ぐらいってところだな。

「・・・・あそこか」

 

 タカヘッドの超視力を発動しながらスカイツリーを見上げると・・・最上部には人影2人ほど見えた。おそらくはワトソンとアリアだろうな。

「待ってろよアリア・・」

 

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

 タトバへと変わった俺はエレベーターなどは面倒だからバッタレッグに力を込めて最上部へと跳んでいこうとすると・・・

「遠山キンジ君」

 

 塔内部から青鬼・・・テディが出てきた。どうやら1人のようだ。

「どうしたんだテディ?」

 

 

 こいつからは殺気を感じなかったので少し緊張感を解きながら話しかけると・・・テディはいきなり俺に頭を下げてきた。

「頼むっ!間違った方法を選ぼうとしているエルを止めてやってくれ!」

 

 俺はあまりにも意外な発言に少し拍子抜けする。・・・テディはワトソンの執事のような感じでワトソンについて行くと思っていたが、ちゃんとワトソンのことを考えて、間違った道に進めば正しい方向へと進ませようとしてくれるらしい。・・・あいつ、ちゃんと良いパートナーがいるじゃんか。

 

「少しボコボコにするが・・・構わないか?」

 

「・・・半殺しまでなら許そう」

 

 さすがテディ、やっぱりお前は話の分かる奴だな。

 

「1つ確認させてくれ。日本に出現しているグリードと呼ばれる怪人が人間の欲望を利用して作り出す怪人・・・それがヤミーなのだな?」

 

「あぁ、そうだ」

 

「・・・もしかしたらエルは・・・アリアへの執着心を利用されて、ヤミーを作り出されてしまったかもしれない。姿は見えないのだが先ほどからエルの近くで怪しい気配を感じているんだ。・・・私ではエルを止められないのでここから先へは進まないが・・・ヤミーがいる可能性があるのでくれぐれも注意してくれ」

 

 ワトソンからヤミーが作られた可能性があるってことか。上等だ、そいつもまとめてブッ倒してやるよ。

「忠告感謝するぜ。・・・それじゃ・・・行くわ」

 

 俺はバッタレッグで勢いよくジャンプして、そのまま柱を蹴り上げるようにしながら最上部へと足を運ぶと・・・

 

「・・・やるじゃねぇかワトソン」

 

何本もある柱の影・・・その暗闇へと話しかけた。今はタカヘッドの能力を発揮させていないからはっきりと見えている訳じゃないが・・・奴は確かにあそこにいる。

 

「お前が武偵高で俺の外堀を埋めた訳が分かったぜ。アリアを攫った後、いずれこうなる事、俺と直接対決することを想定していたんだな」

 

 そう暗闇へと言いながら、俺はゆっくりと前へ進む。

「俺は今まで仲間と協力して物事を乗り越えてきたフシがある。イ・ウーとの戦いのときも・・・それにエヴィルとの戦いも・・・仲間がいなかったら切り抜けられなかっただろうな。お前はそこに目をつけて・・・まず俺を孤立させたわけだ。随分と薄汚いマネをしてくれたじゃないか」

 

 セルメダルを切らしてしまった俺はチーターレッグで走ってくるしかなかったが・・・ロクな栄養を取れてないし、ここまで走ってきたせいでかなりフラフラする。武藤の支援を受けられればこんなに体力を消費しないで済んだかもしれないが・・・随分と不利な状況から勝負がスタートさせられちまったな。

「いい加減出て来いよ。俺は朝までお前とかくれんぼをする気はないぞ」

 

 空気が張り詰める感じがする。やっぱりワトソンは頭に血が上りやすいタイプらしいな。挑発に乗ってくれたようだ。

「・・・何をしに来た」

 

 暗闇の中からワトソンの声がする。・・・ようやくしゃべりやがったか。

「聞かなくても分かるだろ。・・・アリアを奪い返しに来た」

 

「アリアは渡さない。トオヤマ、今なら殺さないでやる。・・・帰れ」

 

 物陰からはうっすらと人影らしきものが動いた。

「そうもいかねぇんだよ。俺はバスカービルのリーダーってことになっちまってる。チームメンバーがやられたら内申が下がるからな。お前、アリアをどうした?」

 

「薬で眠らせてある」

 

「いいのか?婚約者にそんなことをして?」

 

「婚約?あぁ、あれは形だけのゴッコ遊びのようなものだ」

 

「『ゴッコ遊び』・・・か」

 

 アリアを騙そうとしていた訳か。・・・俺の中でドス黒いベルセの血流がより一層強くなっているのが分かる。そしてそれに比例して紫のメダルも主張しまくっているのもな。

「正式にボクのパートナーになるには、アリアは頭が悪すぎるしな。教育が必要だ」

 

「それなら俺もお前を教育してやるよ」

 

 まるで俺のベルセと紫のメダルの力に呼応するかのように遥か遠くの上空で遠雷が鳴り響く。

「トオヤマ、先に言っておくがイギリスでは武偵に自衛のための殺人が認められている。そしてボクは治外法権を認められた王室付きの武偵でもある。つまりボクがキミを殺しても罪には問われることはない」

 

 そうかよ。・・・まぁ、日本にもいるけどな。コロシ有りの公務員は。俺の父さんがそうだったよ。骸骨のような仮面戦士に変身して・・・何十体もの怪人と戦っていたらしいけど、怪人以外の命を奪うことは生涯なかったらしいがな。

「安い脅しだなワトソン。口ばかり達者なわりにはよ」

 

「その言葉、決闘の申し込みと取るぞ」

 

「取りたきゃ取れ」

 

 俺がそう履き捨てるように言うと・・・ワトソンの方からカシュッという小さな音が聞こえた。今のは無針式注射器の音だ。ここで使うってことは恐らく『ネビュラ』・・・武偵用の中枢神経刺激薬だ。日本では禁止されているが、一時的に集中力が増し、夜目が利くようになる強襲戦用のドラッグだ。痛みや恐怖心にも強くなるからこいつは手強いぞ。

「教えてやろう・・・ボクがアリアをキミから遠ざけたのは、アリアを保護するためだ」

 

 薬が回るまでの時間稼ぎか、ワトソンは話を切り出してくる。

「保護?」

 

「『師団』にいれば、アリアは確実に殺されるからな」

 

 極東戦役の話か。・・・最近忙しかったから忘れかけてたぜ。

「実際、アリアを守っていた殻金をいま所有している数も『眷属』が5つで、『師団』が2つだ。早くも彼女の身は危険に晒されている。ボクは彼女の安全を守るために、まずバスカービルのリーダー・・・キミから取り上げる。キミ達は判断を見誤った。そう考えてもアリアは『眷属』につくべきだった。いや、今からでもつかなくてはならない」

 

『STRIKE FORM』

 

 暗闇の中からワトソンが電王に変身する変身音が響いてくる。

「『西欧忍者』さんよ。宣戦会議じゃ、お前らリバティー・メイソンの大使は『中立』と言ってたぞ」

 

「現状を見てボクが『眷属』への帰属を進言した。今、本部グランド・ロッジで審議中だよ。来週には可決されるだろう」

 

「それなら敵の芽は早めに摘ませてもらうぜ」

 

 そう言いながら俺は自分から間合いを詰め始める。・・・奥のほうからはワトソンの電王がデンガッシャーを組み立てる音が聞こえてくる。これ以上しゃべってるとあいつが『ネビュラ』で有利になるからな。それに紫の力を自制するのもだいぶ辛くなってきた。あれを使えば勝てるとは思うが・・・下手をすると殺しかねないからな。目指すは紫の力を使わずに早期決着だ。

「勝てると思っているのか?自分を過信する武偵は早死するぞ」

 

「そんな事ないだろ。お前が生きてるんだからな。・・・ところでお前が変身してる電王・・・後輩にも電王がいて被っちまうんだが、どう呼べばいい?」

 

「一応リバティー・メイソンが製作した最新型の電王だからね。NEW電王とでも呼ぶといい」

 

 なるほど、新しい電王だからNEW電王か。分かりやすいから、亮太郎の電王と区別しやすいな。

「・・・ん?」

 

 俺がNEW電王の呼び名について考えていると・・・俺の十数メートル上空でヘリコプターが旋回したり不規則に動いているのが見えた。ヘリコプターが武偵高所属のヘリだということは分かったが・・・中に乗っている人物まで確認するとNEW電王に対して隙を作ってしまうので今はヘリのことを考えることはやめた。

「・・・・っ!」

 

 次の瞬間、NEW電王はデンガッシャーをモモタロスの時の電王と同じソードモードにして駆け出してくる。低い姿勢で走ってきたNEW電王は俺の手首を狙うように切り掛かって来る。・・・まずは手を封じるつもりだな。

「っ!」

 

 俺はNEW電王の刃が手首にあたる寸前にトラクローを展開して、その刃を弾く。・・・今の動きで分かったがどうやらワトソンは俊敏な動きができて狙いも正確だが、力があまりないらしい。足りないブンの力をNEW電王の変身で補っているような感じがする。

「さっき俺に『逃げてもいい』って言ったよな?・・・お前こそ逃げてもいいんだぜワトソンっ!!」

 

 ワトソンが力不足なことに気づいた俺はデンガッシャーを破壊しようと力任せにトラクローを振るう。

「くっ!?」

 

 俺のトラクローが直撃したNEW電王の剣はフリーエネルギーで構成されていた刀身が砕けて、デンガッシャーの連結も解除された。

「今はボクも東京武偵高の生徒だ。敵前逃亡は校則違反だろ」

 

 デンガッシャーのパーツを回収したNEW電王は片足バック宙で後ろへと下がった瞬間・・・遠くで光ったら雷が重なりNEW電王が輝いた。

「・・・っ!」

 

 そしてデンガッシャーを銃のように組み替えたNEW電王は着地とほど同時にエネルギー弾を連射してくる。

『クワガタ!トラ!バッタ!』

 

「ハァァァァァッ!」

 

 そのエネルギー弾をクワガタヘッドから放った電撃で相殺した俺は次に使うコアメダルをベルトにセットしてスキャンする。

『クワガタ!トラ!チーター!』

 

 オーズ・ガタトラーターへと姿を変えた俺はすぐさまNEW電王へと走り出して、真後ろに回りこんでほぼゼロ距離といっていい距離から電撃を浴びせた。

「あっ・・・・!」

 

 その攻撃を喰らったNEW電王は前へと倒れこんで動かなくなった。・・・おい、一発でダウンかよ。

「立てよ・・・」

 

 ベルセの獰猛な血が俺にNEW電王のすぐ横の床に電撃を放たせる。しかしNEW電王・・・ワトソンはピクリともしなかった。・・・あたり所が悪かったのか?このまま死なれたら武偵3倍刑で俺も死刑だぞ。

「・・・はぁ・・」

 

「・・・っ!」

 

 変身を解除した俺はスーツの中のワトソンが無事かを確かめようと近づいていくと・・・いきなり複眼を赤く輝かせたNEW電王が指パッチンをしてきた。

「ぐっ!?」

 

左目に激痛を感じた俺はNEW電王からすぐさま離れて瞼に刺さった針を抜いた。・・・眼球はやられなかったが、瞼のふちからこめかみにかけてが痺れ始めている。死んだフリからの、毒針かよ。さすが『西欧忍者』さんだな。やり方が汚いぜ。

「フンっ!」

 

「ぐはっ!?」

 

 目を押さえていた俺はNEW電王に腹を蹴られてしまい、さらに後退する。するとデンガッシャーを小さな斧とブーメランに組み替えたNEW電王は再び距離を詰めてきた。

「認めてあげるよトオヤマ。キミはやはり逸材だ。メダルの組み合わせを状況を判断して的確に変更し、その組み合わせでボクをここまで追い詰めた。アリアが夢中になるのも分からなくはない。キミならリバティー・メイソンの一流エージェントとも互角以上に戦えるだろう。だが残念だったね。ボクはその上を行く超一流なのさ」

 

 またペラペラしゃべってやがる。今度は俺に打った毒が廻るのを待ってるのか?いや、さっき自分に打ったのも含めて2つの理由でしゃべってるんだろうな。

 

「キミの情報はマイナーあったから高価だったが、資料の通りだよ。東京武偵高の問題児だが、戦闘技術・・・とりわけ近接戦にズバ抜けた資質を持ってる。育ち次第ではカナ級のエキスパートになる。と書いてあったのも納得がつくよ。オーズのことも名前以外はほぼ非公式だから知らないかもしれないが、キミはアジアのSDAランク・・・日本では超人ランクといったかな?あれにも100位以内に載っている」

 

 誰だよそんなランキングをつけた奴は?速攻で圏外に戻してくれよ。俺はしょせんEランクだぞ。

「・・・さて、そろそろ効いてきたかいトオヤマ?ボクも利いてきたよ。ワトソン家は代々医師の家計だ。薬を使って戦いを有利に運ぶのがボク等の手でね」

 

「くそっ・・・」

 

「させないよっ!」

 

 俺は再びオースキャナーを手にとってオーズへと変身し直そうとすると・・・NEW電王はブーメランを俺へと投げつけてスキャナーを弾いた。

「・・・ついでだ」

 

 さらに追撃を掛けようとNEW電王はハンドアックスを俺へと投げると、そのハンドアックスは俺の防刃ネクタイに直撃した。

 

「っ!?」

 

 その攻撃を喰らった俺は展望台の縁を踏み外してしまい、俺は何とかその縁を両手で掴んで耐え抜いた。それを弄ぶように俺の右手を蹴って外したNEW電王は見下しながら、さらに左手も蹴ってきた。

「っ!?」

 

 俺は何とか痛みを堪えて耐え抜くが・・・あと何回も持たないぞ。

 

「1つ教育してあげよう。今のキミは攻撃しか頭になかったから、実に読みやすかったよ。・・・トオヤマ、もう楽になれ。アリアの今後は心配するな。アリアはボクが幸せにするよ」

 

 アリア・・・その言葉を聞いた瞬間、俺の中のベルセとは違う力を押さえ込む考えはなくなった。

「最後に質問させてくれワトソン・・・」

 

「なんだい?最後だから何でも答えてあげるよ?」

 

「・・・俺の全力・・・押さえ込まずに出していいか?」

 

 俺がそう言った途端・・・瞳の色を紫色に輝かせた俺の身体の中からは紫のコアメダルが3枚飛び出てきて、ベルトに収まると紫の力で引き付けられて戻ってきたオースキャナーを右手に持って一気にベルトをスキャンする。

「・・・変身っ!」

 

『プテラ!トリケラ!ティラノ!プットッティラ~ノザウル~ス!』

 

「ガァァァァァァァッ!!」

 

 紫のコンボ・・・オーズプトティラコンボに変身した俺は翼を広げて、NEW電王の遥か上空まで飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 俺がワトソンといるスカイツリーの最上部へとやってきた頃、矢車を乗せたヘリコプターはスカイツリーへと近づいていた。

「なるほど・・・つまりヤミーが出現したことは分かっていたが、俺達の中でちょうど手が空いていたのが俺だったというわけか」

 

 矢車はデンデンセンサーでスカイツリーを覗き見ると・・・最上部の柱には柱の色に擬態した白ヤミーが張り付いていた。

「ジャマモノ・・・チカヅケナイ」

 

 白ヤミーはいきなり包帯のような部分が弾けてたかと思うと、右腕がボウガンになっているナナフシのような怪人の姿になった。

「・・・ナナフシ・・・木の葉などに擬態をする昆虫か。それにボウガンを組み合わせてるってなると・・・ヤミーの親は諜報科みたいな裏の仕事をしてる奴だろうな」

 

 矢車はそう言いながらホッパーゼクターをベルトにセットしようとしていると・・・・ボウガンナナフシヤミーはヘリに向けて矢を放ってきた。

 

「今すぐ右に旋廻しろ」

 

「了解っ!」

 

 ヘリは大きく右に旋廻してボウガンナナフシヤミーの放った矢を回避する。するとボウガンナナフシヤミーは次々と矢を放ってきた。ヘリはその矢を何とか回避しようと動くも・・・数が多く回避が間に合わない矢が数本直撃コースで飛んでくる。

「・・・チッ!」

 

『CHANGE KICK HOPPER』

 

 それをキックホッパーに変身した矢車はドアを開けてヘリが避けきれなかった矢を蹴って弾いた。するとキックホッパー矢を蹴った右脚の装甲が少し溶けてしまっていることに気づいた。

 

「猛毒の矢か。面倒な相手だ。・・・ん?あれは・・・」

 

 矢を蹴り弾いたキックホッパーは何かに気づいた様子でヘリの下を眺めると・・・俺がオーズになってNEW電王と対峙しているのが見えた。

 

「・・・相棒が知らない仮面戦士と戦っているな邪魔させるわけには行かない。白い宇宙飛行士みたいな仮面戦士じゃないが・・・相棒がタイマンで戦ってるんだ。ここからは俺とサシで戦ってもらうぞ」

 

「邪魔者!!倒すッ!!」

 

 キックホッパーはヘリから飛び出し、ボウガンナナフシヤミーに向かってキックを決め込み地上へと突き落とすと・・・棒ガンナナフシヤミーは周囲の暗闇に擬態をして姿を消した。

「・・・さっきのように姿を隠しやがったか。・・・あぶり出してやる」

 

『GORIRA~』

『DENDEN』

 

 最近新発売されたゴリラカンドロイドとデンデンセンサーをそれぞれ起動させたキックホッパーは周囲を警戒しながらも前に歩き出した。

 


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