タカコアメダル×1
ライオンコアメダル×1
クワガタコアメダル×1
トラコアメダル×1
カマキリコアメダル×1
ゴリラコアメダル×1
バッタコアメダル×2
タココアメダル×1
結局アリアとは・・・ケンカ別れ・・・という形になってしまった。・・・これでよかったんだろうか?たしかにこれはかつて俺の望んだ結末だ。
「でもな・・・」
このモヤモヤした気持ちは何だ?俺は何もすることができなかったからか?・・・それもあるだろうが・・・たぶんそれだけじゃない。そんな気がする。
「ん?・・・あれは」
俺は適当に外をぶらついていると、昼過ぎにアリアを意外な所で見かけてしまった。・・・学園島の片隅にある美容院でだ。少し暗い感じのアリアは、ツインテールはそのままに前髪だけを変えていた。・・・額にできてしまった傷を隠すために・・・。
「にしても・・・」
今までアリアの服は制服だけしかみたことなかったから私服のアリアは新鮮だ。薄いピンク色の柄が入った清楚なワンピース。・・・しかしあんな格好をしてどこにいくんだ?俺はなんとなくアリアを尾け始めてしまっていた。電車を乗り継いでしばらく歩いていると、ようやくアリアは足を止める。どうやら目的地は新宿警察署だったようだ。・・・いったいなんでアリアはこんな所に?
「下っ手な尾行ね。もう少しちゃんとできないの?」
「気づいてたならなんで言わなかったんだよ?」
「迷ってたのよ。教えるべきかどうか。あんたも『武偵殺し』の被害者の1人だから。まあ、もう着いちゃったし。どうせ追い払ってもついてくるんでしょ」
アリアがはき捨てるようにいったその言葉にはいつものような覇気はない。俺はアリアとともに留置人面会室にやってくると、2人の管理官が後ろに立ちながらもアクリルの板越しにアリアに優しく手を振る美人がいた。
「まぁ、アリア。この方・・・彼氏さん?」
「ち、違うわよママ」
え?ママだと?どちらかと言うと年の離れたアリアの姉さんって言うほうがしっくりくるぞ。
「じゃあ大切なお友達さんかしら?アリアもボーイフレンドを作るお年頃になったのねぇ。お友達を作ることさえ下手だったアリアが・・・うふふ」
「違うの。こいつは遠山キンジ。武偵高の生徒で・・・そうゆうのじゃないわ」
「・・・キンジさん、始めまして。私はアリアの母で神崎かなえと申します。娘がお世話になってるみたいですね」
こんな部屋にいるのにかなえさんは、場の空気を和ませてくれるような人だった。
「ママ。面会時間が3分しかないから、手短に話すけど・・・コイツはあの『武偵殺し』の3人目の被害者なのよ。先週自転車に仕掛けられたの」
「まぁ・・・」
「さらに一昨日もバスジャック事件が起きているの。ヤツの行動は急激に活発になっているから、もうすぐ尻尾も出すはずだわ。だから狙い通りまずは『武偵殺し』を捕まえる」
アリアは・・・この人ために頑張っていたのか。
「そしてママをこんなところに入れたイ・ウーを絶対に捕まえてあげる」
「アリア・・・気持ちは嬉しいけどまずは『パートナー』を見つけなさい。イ・ウーに挑むにはまだ早すぎるわ」
パートナー?どうゆうことだ?
「神崎、時間だ」
管理官は時計を見ながら告げてきた。
「ママ、待ってて。公判までに真犯人を全員捕まえるから」
「アリア焦っては駄目よ。1人で先走っては危ないわ」
「やだ!あたしは早くママを助けたいの!」
「アリアちゃんとパートナーを見つけてから行動しなさい。額の傷はあなたが1人で対処しきれない危険に足を踏み入れてる証拠よ」
「やだやだやだ!」
「ほら、行くぞ神崎」
かなえさんは管理官の2人に掴まれて出て行く。 アリアは何度もアクリル板を叩くが・・・かなえさんは結局連れて行かれてしまった。
「アリア・・・」
帰り道、アリアは道の真ん中で立ち止まった。すると地面に水滴がボタボタと落ちる。・・・アリアの涙だ。
「泣いてなんか・・・・」
「泣いてなんかないわぁぁぁぁぁ」
悔しそうに歯を食いしばるアリアの瞳からは大粒の涙が流れ落ちている。俺は泣き続けるアリアをただ見続けることしかできない。・・・・自分がこんなにも無力だったとわな。
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「うっ、うっう・・・・」
アリアは俺と別れた後、半泣きのまま女子寮へと帰還しようとしていた。
「ママ・・・絶対にあんな檻から出してあげるから」
「ハッ!いい欲望だ!」
「えっ?」
アリアが何者かの声に振り返ると彼女の額にセルメダルが投入される。その途端アリアから白ヤミーが何かを求めるように出てきた。
「こいつ、ヤミー・・・よね」
アリアは2丁拳銃を構えるが・・・
「あ、あれ?なんで撃てないのよ・・・あたし」
銃を白ヤミーに撃つことができずに固まってしまっていた。本能的に自分の欲望の怪人だと理解していたため、頭では撃たなければいけないと考えているが、身体は動かないからだ。
「ハッ!それはお前の欲望なんだからな。撃てないよな!」
「っ!!」
アリアは1つの銃を向けながらも、もう1つの銃を声の人物に向ける。そこに立っていたのは真紅の鳥の怪人・・・アンクだった。
「俺の計画には邪魔だな・・・寝てろ」
「っ!?・・・マ、ママ・・・」
アリアはアンクに首の後ろを叩かれ意識を失ってその場に倒れてしまった。そしてアンクは真紅の翼を広げて飛び上がる。
「さて・・・次は遠山の血族のところに行かないとな」
この時の俺は知っていなかった話だった。
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
「あれ?」
俺は自室へと帰ってくると、部屋の鍵はなぜか開いていた。たしかに戸締りはちゃんとした。アリアはさっき別れたばかりだし、あんな状態でくるはずもない。俺は念のために右手に拳銃を持ちながら、左手でドアを開ける。
「遅かったな。待ちくたびれたぞ」
俺の部屋には見慣れない金髪の男がいた。
「・・・誰だ、お前」
俺は金髪に銃を構える。
「この姿じゃあ分からないか?・・・なら」
金髪は一瞬だけだったが紅い鳥怪人に変わってすぐ人間の姿に戻る。あの真紅の鳥のような見た目の怪人・・・まさかコイツ・・・。
「お前が鳥のグリード‘アンク’か?」
「やっと分かったか遠山の血族!ハッ!それにしても遠山はそれを滅ぼす者だったのになぁ、まさかこの時代のオーズがその血の奴だとわな」
アンクは皮肉のような笑いを俺にしてくる。・・・たしかに話の内容も気になるが・・・今はそれよりも・・。
「アンク、目的はなんだ?コアメダルか?」
俺はアンクを睨みつつもオーズドライバーをつける。
「今回はその目的じゃない。・・・その前に・・・試させてもらう」
「どうゆうことだ?」
「そろそろ俺のヤミーが成長し終わった頃だろ。TVをつけてみろ」
「・・・・・」
言われるがままにTVをつけると・・・
『大変です!東京中の警察署が次々に怪人に襲撃を受け、犯人たちがどんどん脱獄していきます!』
「な、なんだと!?」
映像を見ると逃走する犯人たちを警察だけじゃなく武偵たちも追っている。
「ハッ!さっきまでお前と一緒にいた女の欲望から生まれたヤミーだ。欲望は『檻の中から出したい』あたりだな。・・・巣になっている場所は・・・外ならどこでもいいみたいだな」
アンクは映像を見て笑いながらそう話している。・・・ちょっと待て!さっきまで一緒にいたヤミーの『親』ってまさか!?・・・俺はアンクの着ている服の襟元を掴んで壁に叩きつける。
「お前・・・アリアからヤミーを・・・」
「いいから行け。とっとと行って倒さないと被害が増えるぞ」
「くそっ!」
「・・・・・ハッ!」
アンクに背を向けた俺は急いで外に出てオーラインクロスに跨って、ここから一番近くてまだ被害を受けていない警察署へと向かった。
「どこまで・・・俺に平穏はないんだ」
悪天候の中・・・俺はアンクのヤミーを倒すためにバイクを加速させた。
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・
先ほど来ていた新宿警察署 俺はようやくヤミーを見つけた。
「こいつは・・・・」
「こんな、こんな、檻から・・・出してあげたい」
赤い鷹のような姿のヤミー‘タカヤミー’は刑務所を襲おうとする真っ只中だった。俺はただ、このヤミーがアリアの欲望から生まれたことをアリアが知らないことを祈りながら・・・俺はオーズドライバーにコアメダルを入れながらタカヤミーに向かって走る。
「・・・変身」
『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』
「ハァァァァァ!!」
オーズに変身した俺はトラクローを展開して、一人戦いに挑む。
「うおっぉぉぉ!」
正面にいるタカヤミーへとトラクローを突き刺すように振るう。・・・どんな勝ち方でもいい。アリアがこのヤミーと出会う前に倒さないと!・・・幸い他の武偵が周りの人々を避難させてくれたおかげで派手に暴れられるしな。
「出さないといけないんだ。・・・ジャマ・・・しないでっ!!」
「くっ!」
タカヤミーはトラクローを左翼で弾くと空に飛び上がる。くそ!それならこの手だ!俺はトラのコアメダルを抜き取り、ゴリラのコアメダルを入れる。
『タカ!ゴリラ!バッタ!』
この‘ゴリラアーム’の‘ゴリバゴーン’はガントレットとして使う以外にもロケットパンチのように発射することもできるんだよ!
「テリャアァァァァ!」
俺はタカヤミーにゴリバゴーンを発射するが・・・この大雨っていう悪天候だ。いくら‘タカヘッド’の超視力でもうまく狙えないな。
「下手くそ!どこ狙ってる!」
タカヤミーは俺にそんなことを言ってくる。・・・草加のときもそうだったがヤミーの性格は『親』の性格を真似られるのか?
「風穴開けてやる!!」
そんなことを一瞬考えていたらタカヤミーは両手から炎の弾を次々と俺に飛ばしてくる。
「くそっ!空から攻撃なんてセコイことしやがって」
アリアでもたぶんそこまではせこくないぞ!・・・それにしてもヤバイ。今はなんとか防げているが、たぶんこの攻撃力は今まで戦った怪人の中で・・・一番かもしれないな。気を抜くと今の俺だと確実に・・・死ぬ。
「ん?・・・」
タカヤミーの攻撃に備えようとメダルを変えようとする最中、俺の後ろに生えている大きな木の上にアンクがいたことに気づいた。
「思ったより手こずっているな。俺はお前の全力を見てみたいんだが・・・」
「ざけんなっ!だからってアリアの母親を助けたいって思う願いを利用しやがって!!」
俺は思わずタカヤミーから視線を外し、アンクの方を睨んでしまう。するとそこに・・・
「風穴!デストロイっ!!」
「うわっ!?」
空から急降下してきたタカヤミーは右手に炎を灯して俺を殴ってきた。・・・しかも・・・重い・・・。
「遠山!!これで全力になれんだろ!!」
「っ!?」
俺が近くのビルに直撃する前に、俺の顔にアンクから投げ飛ばされた‘何か’が覆いかぶさった。その中身が見えて俺の血が騒ぎだす。こ、この肌色が多めの写真がついているこの本はまさか!・・・・俺にとっての禁断のアイテム・・・え、エロぼ・・・。 俺はビルの壁にぶつかり瓦礫に埋もれた。まぁ‘今の俺’にはこんなもの造作もないがな。俺はこの前のウヴァとの戦いで手に入れたメダルを使う。
『クワガタ!ゴリラ!バッタ!』
俺の周りに出現したメダル状のエネルギーが俺の上にある瓦礫を吹き飛ばす。
「ハッ!ようやくお前の‘全力’を見られるか!」
「・・・・あぁ、全力で戦ってやる。・・・この‘ヒステリア’の俺でな」
俺は緑色のクワガタムシを思わせるオレンジの複眼のヘッド‘クワガタヘッド’にさらに変えたオーズの亜種形態‘ガタゴリバ’に変わるとすぐさま・・・
「え?消え・・・?」
タカヤミーすら反応できないような速さでジャンプをしてタカヤミーの正面にいく。今から使う技はこの大雨だから・・・地面では使えない技だからな。
「ハアァァァァッァァ!!」
「ビリビリ~するぅ~!?」
空中で至近距離からの‘クワガタヘッド’の‘クワガタホーン’からの電撃だ。それもこの大雨だけあってダメージは少なくないだろう。
「ハアァァァ!!」
俺はゴリラアームの強力な腕力でタカヤミーを思い切り地面に向かって叩きつける。
「ごっ!?」
タカヤミーは今の一撃でかなりのセルメダルを外に出した。・・・次の一撃で決めてやる。
『スキャニングチャージ!』
「はあァッァァァ!」
俺は地面に落下をしながら全身にコアメダルの力を溜める。
「はあっ!」
そして地面に着地するとすぐさま倒れているタカヤミーを背負い投げのようにして上に投げ飛ばし・・・
「セイヤァッァァ!!」
クワガタホーンの電撃を浴びせながらとび蹴りを決めた。
「・・・外に・・・出し・・・て・・・あ」
「・・・・・・すまない、アリア」
タカヤミーの最後の言葉は・・・アリアの願いそのもののような気がして・・・どこかやるせない気持ちにさせられた。
「・・・次はお前だ・・・アンク」
『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』
『スキャニングチャージ!』
俺は基本のタトバに戻るとすぐさまコアメダルのエネルギーを再び全身に溜め込む。
「いいぞ。来てみろっ!」
アンクは俺を挑発するように両腕と翼を広げた。
「セイヤァァァァァァァ!!」
タカ、トラ、バッタそれぞれのコアのエネルギーを纏いながら放つ両足キック‘タトバキック’を俺は・・・
「・・・・どうゆうつもりだ?」
「・・・・・」
・・・・わざと外した。
「・・・お前はたしかにアリアの母を外に出してあげたい願いをヤミーを作るための欲望として利用した。それは許せない。・・・でもお前を倒すことは俺にはできない。今回のヤミーの襲撃箇所はすべて・・・武偵高の生徒が近くにいるところで起きている」
ここに来る前に見ていたニュースの襲撃箇所にも、ここにも武偵高の生徒がちゃんといた。
「・・・・で?」
「それにこんな派手な襲撃なのに怪我人の話を1度も聞いてない」
TVでも怪我人の話は1度も聞いていない。それにここに来てからも1度もそのような言葉を聞いてはいない。
「お前はヤミーに何か人間を傷つけないようにする指示でも出したんじゃないのか?」
ヒステリアの俺となったことで思考が高まっている俺だからこそ、たどり着いた答え。それはこの「アンクには人間を傷つける気はない」という答えだった。・・俺はたとえ怪人でも・・・人間の心をもつヤツは倒したくはない。・・・だからアンクにキックを当てられなかった。
「人間は欲望を持つ餌だ。そんな餌がなくなるのは俺としても不愉快でな。それに・・・」
「それに?」
本来は数十分はなっていられるはずのヒステリアモードの血が薄れていくのを感じる。たぶんあんな無茶な戦いをしてたからだろうな。
「もし俺が誰かを殺していれば・・・お前は俺の計画の邪魔者になると思ってな」
「計画?」
俺がアンクから‘計画’を聞きだそうとすると・・・
「キンジ!」
「なっ!?アリア!!」
アリアがやってきたことによりそちらに反応している間にアンクに逃げられてしまった。そしてアリアは地面に散らばったセルメダルを見つめる。
「・・・・この銀のメダル・・・ヤミーよね」
「・・・ああ・・・」
俺はその言葉に頷く。ヒステリアじゃなくなった俺には・・・うまくこいつに対しての言葉が見つけられない。
「このヤミーの欲望の主って・・・あたしよね?」
「・・・・」
俺は黙り込んでしまう。・・・気づかれないようにと祈ってたんだが・・・やっぱり無理だったか。
「これがママの言ってた・・・一人で対処しきれないこと・・・よね・・」
「・・・・アリア言っておくが悪いのはヤミーであってアリアに罪はない」
「・・・・・」
アリアはかなえさんへの思いがこのようになってしまったのがかなり辛かったようで・・・この事件からしばらく何もしゃべらなかった。