緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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counttheMedal!現在オーズの使えるメダルは

タカコア×1
ライオンコア×1
サイコア×1
プテラコア×1
トラコア×1
ゴリラコア×2
ウナギコア×1
トリケラコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×2
ティラノコア×1

サソリギジ×1



800年前とエヴィルとショッカーグリード

「俺は800年前・・・正確に言うと809年前に‘赤の錬金術師’という二つ名を持っていた‘アミカ’から作られたグリードだ」

 

「そのアミカって人はどんな人だったの?」

 

 アリアはアンクに『アミカ』のことを聞くと、口ごもるアンクの代わりに五代さんが口を動かす。

「アリアちゃんにそっくりな顔立ちで、長い金髪を右側にまとめた感じ・・・今で言うサイドテールって言ったかな?・・・いつもみんなが幸せに暮らせるようになることを考えていて、そのために錬金術師になった優しくも熱心な人だったよ。・・・リクもベルトの霊石の力で不老不死みたいな身体になっていてね。数百年もたった1人でグロンギと戦い続けていたから心が枯れかけていたんだ。けれど彼女の優しさのおかげで・・・リクは枯れずに済んだんだよ。五代裕輔になった今でも本当に彼女には感謝してる」

 

 数百年も1人でグロンギと戦っていた?

「あの・・・どう聞けばいいのか分からないですけど‘リク’って人はどのくらい生きてたんですか?」

 

「えっと・・・だいたい1300年ぐらいは生きていたかな?」

 

 それはつまりリクは紀元前から生きていたってことかよ。・・・そんな長い間生きていると戦わなくても枯れちまうと思うのに戦って・・・その枯れを癒すことのできたアミカって人は本当にすごい人だったんだな。・・・そう俺達が関心してるとアンクはようやく口を動かし始めた。

「・・・・アミカは色金・・・特に緋緋色金の研究をしていて、それを人々のために使おうとしていたんだ。そしてその過程で俺のコアメダルが10枚作られた。・・・その頃は自我も無ければ欲望もない置物程度だったんだが・・・」

 

 アンクのメダルを作った人が色金の研究をしてて・・・アンクを作ったのか。

「今からちょうど800年前にオーズとなった人物・・・クガ王がアミカの評判を聞きつけてやってきたんだよ。世界を支配するのにコアメダルを利用しようとするためにな。そしてほぼ強制的にクガ王の城に連れて行かれたアミカは他にも連れてこられた・・・いや、あいつ等は本人の意思で来ていたと思うが・・・・そいつ等にアミカはコアメダルの作り方を伝えることになったらしい」

 

 どうやらアンクもそこら辺は詳しくは分からないようだな。

「そしてその錬金術師達によって4種類のコアメダル・・・カザリやウヴァ達のコアメダルが作られた。そしてクガ王はそれぞれ10枚あるコアメダルから1枚づつ抜き取ったことにより・・・俺たちグリードはメダルの化け物になりクガ王はオーズに変身した」

 

 要するにアンク以外のグリードのコアが作られる原因になったのはクガ王で、グリードとして覚醒するようになったのもクガ王のせいってことか。

 

「最初は1つの王国の王様程度だったクガ王は・・・オーズの力で次々と国を滅ぼして世界を支配しようとしていた。そしてそれと同時期にウヴァ達はその満たされることのない欲望を少しでも満たすために欲深い人間達を襲った」

 

 そのことは前に鴻上のおっさんから聞いたな。そんで初代ファンガイアの王やらレジェンドルガの王も賛同して暴れたって・・・・。

「その頃の俺はそのことを何も知らなかった上に『今の自分を維持したい』程度にしか欲望がなかったからほとんど外に出ないヒキコ・・・籠の鳥みたいに城から出ないで、ただ壁にボールを投げつけるだけの日々を過ごしていた。そんな満たされもどうもしない日々を変えてくれたのが・・・俺のコアメダルを作った錬金術師であるアミカと、その妹で助手のアミコ・・・そしておまけのリクだった。3人は城の中では自由に行動できる権利を持っていて、俺のところにやってきては人間っていうのは何なのかを・・・チェスとかトランプの娯楽を教えてくれた」

 

「アミカと接してたおかげでアンクは根は優しくなったんだけどね。研究熱心な錬金術師だったアミカはどんどんアンクと会う時間が減って、リクもアミカの手伝いをしていたから時間が取れなくてね・・・・アンクに1月ぶりに会うと言動がアミコっぽくなっていたんだ。昔は『僕』って言っていて純粋な子だったのに・・・・教育って難しいよね」

 

 五代さんはちょっと横目でため息をつく。・・・そのアミコって人は口が悪かったんだなぁ。それにアリアそっくりのアミカの妹ってことは顔もそっくりってことだよな?・・・それってある意味まんまアリアじゃね?

「あんた・・・なんか失礼なこと考えてない?」

 

「・・・べ、別にそんなことはないぞっ」

 

 ジト目で睨んできたアリアから俺は顔を背けると・・・アンクは右腕を怪人の姿へと変えて自分の腕を見る。

「そんな日々が続くある日・・・アミコは俺に食い物を持ってきたんだ。だけど俺は所詮‘メダルの化け物’で生き物じゃない。味覚が・・・五感がまともに機能しているはずもなく反応をしなかった。・・・それがきっかけでアミカは『俺に五感を与える』っての目的に『緋色の研究』を再開して・・・やがて世界で最初の色金の銃弾・・・『緋弾』を作ったんだ。そしてアミカは特別な『緋弾』を俺に撃ち込んで・・・俺は人間のように五感を感じることができるようになった」

 

最近はあまりにも人間らしくて忘れていたがアンクはグリード。メダルの塊であって生き物ではないから五感が濁っていてもおかしくはなかった。・・・だけどアンクは味覚などを感じていた。まさかその理由がアンクの身体に『緋弾』が入っていたからだったとはな。

「俺たちは当然喜んださ。・・・・だけどその時だった。グリードやファンガイアのキング、レジェンドルガの王を倒したクガ王は、さらなる力を求めて俺のコアメダルを奪いに俺に襲い掛かってきた。そしてその時に・・・・アミカはメダルの化け物でしかない俺なんかを庇って・・・トラの爪に腹を刺されてしまった」

 

 アンクは怪人態になっている右の拳をセルメダルが落ちてしまうほど強く握ると・・・五代さんも辛そうな表情で語り始めた。

「リクが駆けつけた頃にはもうアミカは息をしていなくて・・・アンクは怒りに身を任せてクガ王のオーズと戦っていたんだ。リクもすぐにクウガに変身して戦おうとしたけど・・・アミコを人質にされてしまって変身できなかったんだ。アンクは何とかしてアミコを助けたけれど・・・今度はアンクがアミコを庇って爆発したんだ。そんでリクはなりたくなかった‘黒の4本角’にまで変身して・・・目から光を失うほどがむしゃらに戦ったよ。そして何とかオーズを倒したけど、リクの力の源だった霊石アマダムに亀裂ができちゃっていて・・・相当なダメージを受けていたリクはそのまま亡くなったんだよ」

 

「元から‘命’なんてない俺はメダルに戻っても死んだ訳じゃなかったが・・・ダメージのせいで意識を失ってしまった。・・・そして気がつくと・・・」

 

「・・・今の時代だったってワケね」

 

 アンクはアリアの言葉に頷くと複雑そうな表情をする。

「・・・キンジ、これで分かっただろ?オーズの力は‘正義の味方’みたいな力なんかじゃなく、もっとドス黒い・・・神をも殺そうとする力なんだよ。欲望の力なんて人間が使っていること自体がおかしいんだよ!このままじゃお前・・・紫のメダルに完全に飲み込まれて心を失って・・・いずれグリードになる可能性もあるぞ」

 

「「「「っ!?」」」」

 

 アンクのその言葉に五代さん以外の病室にいる全員が驚いた表情になる。

「キンジ!これ以上変身をするのはやめなさい!」

 

「そうだよキンちゃん!もしキンちゃんが暴走して完全にグリードなんかになっちゃったら・・・・」

 

 アリアは焦った様子で、白雪は涙目でオーズの変身をやめるように言ってくる。すると理子はアリアの左肩に手を置いて首を横に振る。

「無駄だよアリア。どうせきーくんはオーズの力を手放そうとしないよ。・・・そうでしょ?きーくん」

 

「あぁ、心配してくれるのはありがたいが・・・・エヴィルのことも・・・それにグリードのことも何も解決してない。だから俺はまだ変身するぞ」

 

 オーズのベルトを懐にしまった俺は、メダルホルダーを上着の内ポケットにしまう。矢車も後藤は「・・・やっぱりな」といった表情で何も言おうとはしなかった。たぶんこいつ等は俺がこう言うことを感づいていたんだろうな。

 

「レキ・・・もし俺がまた暴走してお前達に襲い掛かるようなことがあったら俺を撃ってく・・・」

 

「お断りします。・・・私達は誰もあなたの死を望んでいません。望みたくありません。私の銃弾はキンジさんを殺す弾ではなく、キンジさん達を守るための弾ですから。あなたが死んでしまえばあなたにこのメダルを返すこともできませんし、人の心を失いグリードとなってしまったあなたにメダルを渡すつもりもありません。・・・ですからしっかりと人間として生きることを考えてください」

 

「・・・・そうか」

 

 俺が以前渡した黒いメダルを2枚握っていた感情初心者のレキですら俺を撃つのは嫌だと言ってくれた。

 

「大丈夫だ。俺はグリードになるつもりはない」

 

 みんなのためにも・・・紫のコアメダルの力を俺の中で押さえ込んでいないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 俺達が800年前の話を聞いていた頃、エヴィル本部で首領はショッカーグリードが生け捕りにしてきた人間の頭を掴んでいるのを面白そうに見ていた。

 

「何をしてるんですか首領?」

 

「おお、影月!丁度いいところに来たな!まぁ見ていけよ・・・今からショッカーグリードがヤミーを作るぜ!」

 

 影月は首領に言われるがままにショッカーグリードの方を見てみる。

「ひぃぃぃぃっ!?た、助けてくれぇ・・・」

 

「ショオォォォォォカァァァァァァ!!」

 

 怯えきっている生け捕りの男の額にショッカーグリードはセルメダルを入れると・・・・

「うわぁぁぁっ!」

 

 男は2~30枚のセルメダルになってしまった。

 

「・・・これは・・・失敗ということですか?」

 

「いや、よく見てろ影月」

 

 セルメダルはまるで人間に戻ろうとするかのように人型に集まると・・・そのセルメダルはまるでかつて一号と二号が倒したショッカー怪人である死神カメレオンのような姿になった。

「どうやら成功のようだな。ショッカーグリード!手始めにそいつを遊ばせてこい!」

 

「ショォォォォカァァァァァ!!」

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

富士の樹海では3人の仮面戦士が辺りを探索していた。かつてネオ生命体と戦った金色のラインに緑色のボディをした仮面戦士である‘仮面ライダーZO’の麻生勝(あそうまさる)さん。そしてZOと容姿が似ていて噂だと巨大化もできるらしい‘仮面ライダーJ’の瀬川耕司(せがわこうじ)さん。もう1人は仮面戦士・・・というよりは怪人のような印象が強い感じがする意味では他の仮面戦士よりもちょっと有名な仮面戦士‘仮面ライダーシン’に変身している風祭真(かざまつりしん)さんだ。

「・・・Jそっちどうだ?」

 

 集まった3人はそれぞれ結果を聞く。

 

「こちらにはもう既にいなかった。・・・シンの方は・・・」

 

「・・・・・」

 

 シンは首を横に振るとZOは「そうか」と呟きながら周囲をもう一度見渡す。

「もうあいつの気配はない。少なくともこの場で再び戦闘になることはないだろうな」

 

「しかしあいつの狙いは何なんだ?俺達を倒そうとしていたことは、まるでついでのようだったぞ」

 

「・・・おそらくあいつの狙いは例の仮面ライダーオーズと行動を共にしている少女だろうな」

 

「つまり東京武偵高に向かう可能性が高いということか?」

 

「タブン・・・ソウダロウナ」

 

 シンが片言を言うと・・・辺りを見渡していたJはZOとシンの方を振り向く。

 

「・・・東京はその場にいる仮面ライダーに任せて俺達は本郷先輩達に言われた通り怪人と戦える人達がいない場所を守るぞ」

 

「しかし現在の東京はただでさえ先日の東京武偵高襲撃で傷ついた仮面戦士が多い上にガスーパー1とスカイライダーが‘世界の破壊者’を探して世界各地を転々としているから守りが手薄になっているんだぞ」

 

「まだ戦える仮面ライダーの中には本郷先輩と一文字先輩が鍛えた矢車兄弟や、風見先輩が戦い方を教えた明智君とそのパートナーがいる。それに噂のオーズとなる少年もだ。それに近くには光太郎先輩もいるんだから大抵の敵は凌げると思う。・・・・しかし世界の破壊者か。ほとんどの情報がないがいったいどんな仮面ライダーなんだ?」

 

 JはZOに世界の破壊者とはどんな仮面ライダーかを聞くと・・・ZOは無言で首を横に振った。どうやらZOもほとんどのことが分かっていないらしい。

 

「俺もほとんどのことが分からないままだが・・・少なくとも1つだけ分かっていることがある」

 

「ソレハナンダ?」

 

「・・・それは‘この世界’にはまだ来ていないということだ」

 

 ZOの言い放った言葉にJとシンは首を傾げてしまう。

 

「・・・どうゆうことだ?」

 

「言葉どおりの意味だ。世界の破壊者はいくつもの並行世界を移動する力があるらしい。本郷先輩が言うには・・・『彼がこの世界に来るかこないかでエヴィルとの戦況は大きく変わる』らしい」

 

「・・・なるほどな」

 

 Jとシンは「本郷さんが言うなら真実だろう」と言った感じにそのことを信じ始めた。

「それともう1つ。・・・・本郷さんはその仮面ライダーにあったことがあるのか?」

 

「・・・詳しくは聞かされていないから分からないが・・・おそらくあの口ぶりからして出会ったことがあるんだろうな」

 

 本郷さんが勝利の鍵となる人物のことを知っている可能性があるかもしれないと思った3人はあらゆる可能性を考えながら少しの間沈黙をする。

「・・・とりあえず俺達は世界の破壊者がこの世界にやってくるのを信じていながら、戦えない人々を守ろう」

 

 ZOの言葉にJとシンは頷く。そして3人は変身を解除するとそれぞれのバイクに乗って何処かへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 800年前の説明から3日後、俺は病室を出るとその外にはパッと見40代後半で眼鏡を掛けた怪しい服装のおっさんが立っていた。

 

「・・・君が仮面ライダーオーズ。遠山キンジ君だね?」

 

「・・・確かに間違いないが・・・誰だおっさん?」

 

 はっきり言って不審者にしか見えないぞ。

「私は鳴滝・・・預言者だ」

 

 預言者?・・・ってことはあれか?超能力者か?

 

「そんで?・・・その預言者が俺なんかに何のようだよ?」

 

「いずれこの世界にはすべてを破壊する存在・・・ディケイドがやってくる。君はそいつを倒して欲しい」

 

 鳴滝のおっさんが言っていることはワケが分からないが・・・どっちみち俺の答えは1つだ。

「断る」

 

 初対面の変なおっさんがいきなり言ってきたことなんか信じられるかよ。

「では頼んだ・・・・っな!?」

 

「初対面のおっさんがそんなこと言ってきても普通信用できないだろ」

 

「そ、そうだったな。では順を追って話そう。君は平行世界というものを知ってるかね?」

 

「・・・そんなん知るかよ。じゃあな」

 

 鳴滝のおっさんが何かを言おうとしていたが、面倒なことに巻き込まれそうだったので俺は聞く耳を持たずに走り出した。あの後・・・病院の廊下を走ったことで看護士に注意を喰らってしまい、数十分ほど色々言われた後に退院の手続きを終えて外を出て行くと・・・病院の手前にある公園のベンチにはアリアが座っていた。

「・・・キンジ」

 

「アリア・・・隣・・・いいか?」

 

 アリアが頷いてくれたので俺はゆっくりとその隣に座る。

 

「そういえば猫探しの時もこんな風に座ってたよな。そういえばあの時俺達は始めて一緒にヤミーと戦ったんだったな」

「そうね。・・・あれから色んなことがあったわね」

 

飛行機を止めるために初めて3枚同色のコンボ・・・ガタキリバに変身したり。・・・アドシアードの時にやってきたメズールとガメルにラトラーターになったり。アークに変身したブラドを倒すためにサゴーゾを使ったりもしたな。そんでパトラの時にはシャウタに変身したりもした。・・・俺達はそんなことを思い出して語った。

「曾お爺様との勝負の時には・・・始めてアンクのメダルを3枚使った姿になって戦ったわよね」

 

「ああ、あの戦いは本当にきつかったぜ」

 

 未だにあいつ以上にやばい相手と戦ってない気がするしな。・・・・グランザイラスはたしかに強力な相手だったけど、それは破壊力とかパワーだけで、しかも4人で闘っていたから未来予知みたいな推理をするシャーロックとタイマン勝負をした時と比べると無理ゲーじゃなかった。もしかしたらプテラヤミーは相当やばかったのかもしれないが・・・暴走したせいで戦ったって感覚がないしな。・・・俺がそんなことを思い出しているとアリアは何かを決意したように口を開いた。

「曾お爺様に連れて行かれた時・・・あたしがホームズ家としては失敗作って呼ばれてたことを言ってたでしょ?」

 

「・・・・・」

 

 その言葉に・・・俺はどう答えてやればいいのか少し迷ってから無言で頷いた。

「今は気にしてない言ったら嘘になっちゃうけど今は大丈夫よ。それよりもキンジの方こそ大丈夫なの?あんたの中にはコアメダルが3枚も入っちゃってるのよ!」

 

 アリアは俺の身体に入ってしまっている紫の恐竜系コアメダル3枚のことを聞いてきた。・・・とりあえず今のところは問題ないな。

「平気だって。少なくともあの姿にならない限りは暴走することもないんだし・・・」

 

「もっと自分を大切にしなさいって言ったでしょ!あんたの身体はあんた1人のものじゃないのよ!」

 

「えっ!?」

 

 その言葉に俺はどういう訳かヒステリアの血流を感じたような気がした。

「べ、別にそんな意味で言っているんじゃないわよっ!あんたとあたしはパートナーだからそう言っているわけであって・・・・深い意味は・・・」

 

 パートナーとしてじゃなかったらどういう意味で言っていたんだ?

「それとねっ!言い忘れてたけど・・・これ。あんたの気持ちは嬉しかったけど・・・」

 

 アリアは左手を突き出して指を見せてくる。

「指輪。まだしないから」

 

 ああ。誕生日のときにあげた指輪のことか。別につけるつけないはアリアの勝手だと思うんだが。

「・・・気に入らなかったか?だったら悪かったな。俺、センスなくて」

 

「ちっちがう!ちがうちがう!」

 

 アリアは阿修羅像のように顔がいくつも見えてしまうようなスピードで首を横に振った。そしてもう一度俺の方を向きなおす。

 

「そ、そうじゃなくてっ。まだ、しないってだけよっ!かっ返さないからね!もうスイス銀行貸金庫に送ってしまっちゃったから。厳重に!」

 

「返さなくてもいいよ」

 

 苦笑した俺に・・・どういう訳かアリアは顔を急速に赤面し始めた。・・・相変わらず赤面する速さが物凄いな。

「相変わらずステップを飛ばしまくるわね」

 

 何を言ってるんだ?声が小さすぎてはっきり聞こえないぞ。

 

「と、とにかくっ!やっぱりあたし達には早すぎるの!だから・・・まだしない。でも、その、それにしても・・・・あんた、あたしの誕生日を覚えてたのね」

 

「それは・・・一応、バスカービルのリーダーだしな。メンバーのことを知っておくのは任務の1つだろ」

 

「『任務』かぁ。それじゃ他のメンバーの誕生日も知ってるの?白雪とか・・・理子とかレキの」

 

「あー・・・正確には知らん」

 

 何月かまでは覚えているんだが・・・日にちまでは覚えていないな。・・・そう正直に言うと、アリアは『勝った』という表情をする。・・・何でだ?

 

「ねぇ。・・・じゃあもう1つ。あんたのこと聞いていい?」

 

「いいよ。別に隠すようなことはない」

 

 ヒステリアモード以外はな。

「その・・・えっと。キンジってさ・・・い、今まで何人カノジョがいたの?」

 

「いたことねーよ」

 

「ウソだわ。だってあんたモテるでしょ」

 

「んなワケねーだろ。俺はネクラで昼行灯って周りから言われているような人間だぞ。0人だ0人。聞くまでもないことを聞くなよ」

 

 そう答えると・・・アリアはデレデレしたようなだらしない笑顔になった。・・ここまで元気になられるとどういう反応をすればいいのかちょっと困るぞ。

「そういうお前はどうなんだよ?」

 

「えっ?」

 

 一発、同じ質問で逆襲してみると・・・・アリアはアリアで口をへの字にした。

 

「・・・最初から言ってるでしょ。あたしは恋愛なんかしたことがない。なかった。いつもママのことでいっぱいだったから・・・」

 

 何か・・・悪いこと聞いちゃったみたいだな。

 

「悪い・・・売り言葉に買い言葉で・・」

 

「い、いいのよ。ママの裁判は2週間後だし、無罪なのは間違いないし。無罪になったら検察も上告はしないって言ってた。日本も即日判決を言い渡すように法改正してるから、ママは再来週自由になれるのよ」

 

「その前に・・・色々と解決しておきたいことはあるがな」

 

 アリアどころか、かなえさんを狙ってくる可能性だってある。・・・刑務所はある意味安全な環境だからこそ・・・かなえさんが刑務所から出てくるまでにエヴィルをぶっ潰さないとな。

「とりあえず・・・今まで頑張った甲斐があったな。・・・アリア」

 

「うん。だから・・・これからはその、少しそういう事・・・それ的な事を考える余裕ができたかな・・・ってちょっと思って。そしたらキンジがちょ、ちょうどあんなゆ・・・ゆび、指輪を・・・」

 

 母親の話からボソボソと恋愛トークに移ろうとするので・・・俺は先ほどから少しいつもと様子が違うアリアに・・・

「なんか・・・・お前いつもと違うな」

 

「これからあたしはキンジと・・・ってあれ?どうしてあたしはこんな話ばっかをしているの?」

 

「俺に聞くなよ。さてと、もう帰るか。寒くなってきたし・・・」

 

「そ、そうね・・・」

 

 ベンチから立ち上がって歩き出そうとすると・・・アリアは俺の制服の背を小さい手で掴んできた。そして俺が振り返る前に・・・おでこをコツンと背につける。

「じゃあ・・・これで少しステップを上がったことにするわ」

 

「ステップ?」

 

「うん。たった数分間。ただ2人きりの公園で話していただけだったけど・・・・これはあたしの人生初めてのデート。そのステップを上がった。そういうことにしておくわ」

 

 まぁ、何といおうとアリアの勝手だけどな。

「ほら・・・帰るぞ」

 

 俺は「そうだな」とは言わないで置こう。何となくだが・・・今のアリアは少しおかしいからな。いや、おかしいというか・・・俺は直感は優れてないタイプだが・・・公園でのアリアは心の深いところから出てきた感じがしたからな。・・・それに何よりも怪しいと思えるのは・・・・

「・・・くっ・・」

 

 アリアがこんな反応をし始めてからずっと俺の中にある紫のメダルが反応してるってことだ。最初はいつもと違うアリアに反応したのかとも思った。・・・いや、最初は反応していたのかもしれないが・・・アリアの様子がどんどんおかしくなり始めるにつれてヒステリアの感覚よりも、メダルの感覚の方が強くなりやがった。

「どうしたのキンジ?さっきから恐い顔して・・・」

 

「い、いや何でもない」

 

 さっきよりは紫の力が収まってきたので俺はどうして紫のメダルが反応したのかを少し考えてみる。・・・もしかしてアリアの緋緋色金に紫のメダルが反応しているのか?だけどアリアのそれは戦と恋に反応するものであって今の状況で出てくるはずのものじゃないはずだぞ?

「・・・アリア駐車場にバイクを止めてるからそれに乗ってけよ」

 

「分かったわ!」

 

 とりあえず紫のコアメダルも緋緋色金も俺にはよく分からないので、深く考える止めて病院の駐車場に停めてあったオーラインクロスに跨ってアリアを後ろに乗せようとした途端・・・・

 

「っ!?」

 

 俺は紫のメダルを通じて何処かから感じたヤミーの気配に気づいた。

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 俺がアリアの話しこんでいる頃、アンクは空き地島の片隅で渉と話をしていた。

「それで・・・・ファンガイア族はエヴィルについての情報はどれぐらい集まっているんだ?」

 

「・・・ビショップさん達にそれらしいフリをしてもらって支部の数箇所を偵察してもらいました。それで分かったのが・・・これです」

 

 渉はアンクに数枚の用紙にまとめた資料のようなものを渡すと・・・アンクはすぐさまその資料に目を通した。

 

「なるほど。幹部は7人ほどいるが、襲撃の時に矢車達が倒したケルベロスアンデットとかいう幹部は倒しているんだな」

 

 アンクが資料を返すと渉はさらに別の資料を取り出す。

 

「つい先日・・・アメリカのニューヨークに出現した‘ゼイビアックス’と名乗っていた幹部はアメリカ武偵の仮面戦士‘ドラゴンナイト’と‘ウイングナイト’の2人によって撃破に成功したらしいです。」

 

「そうか。別の国でもエヴィルが活動しているんだな。・・・そういえば・・・」

 

 それにも目を通したアンクはふと思い出したように尋ねる。

「現在のキング・・・オトヤの具合はどうだ?」

 

「正直・・・あまり容態はよくありませんね。父さんは純潔のファンガイア王家なのでハーフの僕よりも回復力は早いはずなんですが・・・・エヴィル首領から受けたダメージは、まるでファンガイアの再生力自体を破壊されてしまったかのように回復する兆しがないんです。一応現在の外交政治は僕の兄が行ってくれているので問題ありませんが・・・こっちに住んでいる次郎さん達アームズモンスターと襲撃の際たまたま留守にしていたビショップさん以外も相当なダメージを受けていて・・・・」

 

「ファンガイア族の協力は仰げないってことか」

 

 その言葉に頷いた渉の後ろにはいつの間にやら城のようなドラゴン・・・キャッスルドランが舞い降りていた。

「もう時間か。・・・・アンクさん。僕はこれからファンガイア王家としての仕事があるので失礼させて頂きます」

 

「ああ、オトヤもだが・・・絶対に死ぬなよ」

 

 その言葉に頷いた渉はキャッスルドランに乗ると・・・そのままキャッスルドランは飛び去っていってしまった。するとアンクは何処からかヤミーの気配を感じた。

「っ!・・・この気配はヤミーか!・・・だけどこの感じは何だ?まるで大きな欲望で元々あった欲望を塗りつぶしたような感じは?」

 

 アンクはヤミーの気配に少し違和感を感じながらも、気配を感じた武偵高駅前へと向かって行った。

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

「キシェェェェェエ!!」

 

 俺とアリアが爆発音の聞こえた武偵高駅前に到着すると・・・そこでは死神カメレオンのような怪人が暴れていた。見た目はたしかに死神カメレオンそのものっぽく見えるが、所々をみるとヤミーのような特徴があるし、おそらくはヤミーだな。だけど爬虫類のヤミーを作り出せるグリードなんて存在しないはずだぞ。

「・・・確かに前に星伽から盗まれたコアメダルは爬虫類系コアメダルだったが・・・」

 

 あれはアンクと五代さんの話によるとたった3枚しか作られていないからグリードになっていない。3枚ではいわゆる『置き物』程度で怪人にはならないはずだ。ってことはやっぱりカザリがあのメダルを吸収して作り出したのか?

「・・・どっちみち倒さないといけないのは変わらないか。変身っ!」

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

 オーズに変身した俺はトラクローを構えながらカメレオンヤミーへと歩み寄る。

「・・・なっ!?」

 

 

 するとカメレオンヤミーは透明になってしまい、トラクローを空振りさせてしまった。だけど俺には透視もできるほどの超視力を持つタカヘッドがあるんだ。そう思った俺は複眼を紅くしながら辺りを見渡そうとすると・・・・

「キシェェェェェエ!」

 

「うわっ!?」

 

 突如伸びてきた舌に攻撃されてしまった。

「くっ!?ならこれだ!」

『サイ!ゴリラ!ゾウ!サッゴーゾ!サッゴーーゾォォ!!』

 

「フンッ!」

 

 サゴーゾコンボとなった俺はカメレオンヤミーの舌を掴んで引き寄せると、力いっぱい殴りつけた。

「キシェっ!?」

 

 次の一撃で終わらせてもらうぞ。

『スキャニングチャージ!』

 

「ハァァァァッ!」

 

 俺はサゴーゾコンボとなって重力操作でカメレオンヤミーの動きを封じようとすると・・・

「ショォォォオォォカァァァァァ!!」

 

 謎の声と共に怪しげに光る無数の光弾が俺に飛んできた。

「なっ!?ぐわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 その光弾を喰らってしまった俺はベルトから重量系メダルが3枚吹き飛んでしまい、変身が解除されてしまった。

「キンジ!」

 

「来るな!!」

 

 

 こちらに駆け寄ろうとしたのを止めると蛇のついた鷲のような怪人に姿を変えると翼を広げた。

「お前・・・何しに来た?」

 

「ショォォォカァァァ!」

 

「・・・・・」

 

 何だこいつ?まるで話が通じるように感じられないぞ。・・・だけどさっきの攻撃と独特の雰囲気で俺なんかでもすぐに分かる。・・・下手な動きをしたら一瞬であの世行き決定だってことがな。

 

「くそっ!異常なまでの欲望を感じて嫌な予感をしていたが遅かったか。・・・・キンジ!そいつから離れろ!そいつはショッカーグリードとかいう完全体のグリードに限りなく近い化け物だ!」

 

 アリアの近くまでやってきたアンクは俺に向かってそのように叫んでくる。・・・完全体のグリードに限りなく近い化け物か。・・・こいつは予想以上にやばそうだな。

「ショォォォカァァァ!!」

 

「「なっ!?」」

 

 ショッカーグリードは先ほどの攻撃で吹き飛ばされた重量系コアメダル3枚を、その身体に吸収してしまった。・・・あんな風にメダルを吸収したってことはまさか、カザリのように他のグリードの能力を自分のものにする気か?

「そうはさせるかっ!」

 

『ライオン!トラ!バッタ!』

 

 再びオーズに変身した俺はライオネルフィッシャーの光で一瞬だけでも視界を奪ってコアメダルを取り返そうとするが・・・

「ッ!!」

 

 ショッカーグリードは本来は鳥系グリードのアンクの技である火球を放ってきた。

「ぐわぁぁぁぁ!?」

 

 その攻撃をまともに喰らってしまった俺は数メートル吹き飛ばされてまたもや変身を解除されてしまうと・・・・すぐさまトラとバッタのコアメダルを回収する。しかしライオンのコアメダルだけは俺から離れた場所だったせいで回収ができずにそのまま奪われてしまう。

「チッ!何やってやがる!」

 

 右腕を怪人の姿に変えたアンクは俺の前に立つとショッカーグリードに向かって火球を放つも・・・ショッカーグリードは怯みもせずにこちらとの距離を詰めてきた。

「ショォォォッカァァ!」

 

 ショッカーグリードはアンクの首と右腕を掴み動けないようにすると、頭部から生えている蛇が動き出しアンクの右腕を貫いた。

「ぐっ!?」

 

 そして蛇の口には赤いコアメダル・・・コンドルメダルが加えられていた。

「アン・・・ク・・・」

 

 起き上がった俺は投げ捨てられたアンクのところに駆け寄ろうとするも・・・ダメージが思っていた以上に大きくその場に倒れてしまう。そしてショッカーグリードは今度こそトドメと言わんばかりに光弾を放とうとすると・・・・

 

「させないわ!」

 

 アリアはガバメントでショッカーグリードの腹部を撃った。・・・するとショッカーグリードはダメージこそないはずだが自分を攻撃したという理由からか、攻撃対象をアンクからアリアに移してしまった。

「ショォォォォォカァァァァ!!」

 

「っ!?」

 

 ショッカーグリードは複数の蛇をアリアに向かって差し向ける。・・・怪人の姿になっているアンクの腕を簡単に貫いてしまうほどの蛇だ。生身の人間であるアリアにそれが複数も襲い掛かったとしたら・・・アリアの口癖通り、本当に風穴になっちまうぞ。

「アリアァァァァァ!!」

 

 俺がアリアを守るためにショッカーグリードの前に出ようとした途端・・・俺はカメレオンヤミーの舌に巻きつけられて身動きが取れなくなってしまった。・・・このままじゃアンクもアリアもヤバイ。・・・だけど並大抵の力じゃこいつには敵わない。こうなったらあれしかないな。・・・俺は左胸に右拳をあてると・・・強く念じる。

「・・・頼む。俺に力を貸してくれ!!」

 

 身体から飛び出てきた紫のコアメダルを3枚掴み取った俺はその力に飲み込まれないように耐えながらベルトにセットする。

「駄目よキンジ!そんなことをしたら、またあんたが・・・・」

 

「また暴走するぞ!」

 

「・・・その時はまた何とかしてくれよ。・・・変身!」

 

『プテラ!トリケラ!ティラノ!プットッティラ~ノザウル~ス!』

 

「ガァァァァァッ!」

 

 オーズ・プトティラコンボに変身した俺は冷気でショッカーグリードの蛇を氷付けにすると、そのまま蛇を殴って砕く。・・・俺はそこでメダルの力に飲み込まれてしまい、俺の身体は俺の意思に反応せずに動き出した。

「ガァァァッァ!」

 

 地面から恐竜の頭部のような斧・・・メダガブリューを取り出した『俺』はカメレオンヤミーを叩き割るかのように斬り付ける。

「キシェェェェエ!?」

 

「ガァァァァウッ!!」

 

 斬り付けて怯ませた所に『俺』は追い撃ちで殴りつける。そしてそのままメダガブリューでカメレオンヤミーにトドメを刺そうとした所を・・・・

「ショォォォォッカァァァァァ!!」

 

 ショッカーグリードの翼に止められてしまった。

 

 


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