タカコア×1
ライオンコア×1
サイコア×1
シャチコア×1
トラコア×1
カマキリコア×1
ゴリラコア×2
ウナギコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×2
サソリギジ×1
レキを寮に送ってから数時間経ち、夜の11時過ぎ・・・・現代文の課題図書を読んでいた俺は白雪が持ってきてくれた蟹で蟹グラタンを作り、アンクと共に食事をしていると・・・・アリアの弁護士から、かなえさんの裁判に向けた準備・・・準備日間整理手続が完了したという連絡が来た。ここからの証拠の追加は原則的にできない。つまりアリアにもしばらく時間が空くってことだ。
「・・・・・あと30分か」
俺は腕時計で時間を確認すると壁際のキャビネットから、あるものを取り出してポケットに入れる。
「アンク・・・ちょっと出かけてくる」
「今からか?・・・まぁ、別に構わんが・・・・帰りにコンビニでアイスを買ってきてくれ」
冷凍庫の中にアイスが入っていないことを確認した俺は「しょうがないな」と答えながら玄関を開けて外に出た。・・・最近のアリアは裁判の準備もあり、息をつく暇もなかった。それに加えてレキの騒動や、ココ3姉妹の事件とかもあった。きっと相当ストレスを溜め込んだんだろうな。その八つ当たりが俺の方に向いてしまう前に、俺はアリアのご機嫌を取る必要があった。先日ジャンヌから『女子は服とかアクセサリーとか、身に着けるものを男性から貰えば機嫌が直る』と聞いたので俺はレキにもそうしたようにプレゼントをあげることにした。かといっていきなりそれをやっても怪しまれるだけなので・・・・今日、9月23日。あと30分ぐらいしか時間はないがアリアの誕生日にプレゼントをすることにした。
「さてと・・・・」
深夜だけあって騒音を出すバイクに乗って向かうのは気が引けた俺は道路のガードレールに腰をかけてアリアに電話した。
『・・・・なっ、何?キンジ・・・』
なんか声がキョドってるな。・・・まあいいか。
「お前、今どこだ?」
『あ、え、ここ?ここは女子寮。今ちょうど弁護士のところから帰ってきた。・・・けど、な、何よキンジ。まさか部屋に来るとか言うんじゃないでしょうね?』
そんな危険地帯に行きたくはねぇよ。
「じゃあ女子寮の温室に来い。俺も・・・そうだな、10分ぐらいしたら行くから。分かったか?」
『はい』
はい。って・・・・アリアの口から俺に対する敬語に類する言葉を初めて聞いたぞ。大丈夫なのか?疲れてるんじゃないのか?・・・・俺はそんな心配をしながら温室へと向かった。温室に到着すると・・・・一番奥の満開の薔薇園の場所にアリアは立っていた。そして俺が片手を振りつつアリアの元へ向かうと・・・アリアは片手を胸の前で握り、焦るような表情をした。
「こ、こんな所に呼び出して・・・な、によ?」
「アリア・・・・お前調子でも悪いのか?『何よ?』ぐらいちゃんと言えよ」
「で、用事は何?こんな夜遅くにレディーを呼び出すからにはそれなりのご用件でしょうね?」
そう言われた俺は温室中央の樹木に掛けられている時計を指す。
「11時45分。これもかなりギリギリセーフだったな」
「だから・な・ん・で・す・か」
アリアはワクワクしているのを表に出すまいと必死に堪えている珍妙な表情をしていた。・・・・駄目だ、今笑ったら風穴だ。
「・・・今日、誕生日なんだろ」
あんまり勿体つけるのもアレなので早めにそう言うと・・・・アリアは目をまんまるに見開いて何度も頷いた。
「俺がスルーすると思ってただろ」
そして今度は一旦頷きかけてから否定の首振りをした。本当はスルーすると思われてたんだなぁ。信用ないなぁ俺。
「手、出せ。プレゼントやるから」
俺がそう言うと、アリアは両手をプルプルと震わせながら、胸の前で水を掬うように合わせた。
「あ、いや、片手だけでいいぞ」
適当にアリアの左手に掴んだ俺は・・・・ポケットの中に純銀の指輪を持ってきている。アリアが銃を握っても邪魔にならないような宝石のついてないリングをな。・・・・これは大阪でレキが試着室に入っていた時に、アリアの手に合うように小さいのを外の露店で買ったんだが・・・迂闊だった。どの指に合うサイズかまでは考えてなかった。
「も、貰ってあげるから・・・は、早く渡しなさいよ・・・!」
「何で固くなってんだよ。別に変なものは渡さないから指を見せろ」
「ゆ、指!?な、何で!?」
目を見開いたアリアの手を俺は観察する。・・・・親指、人差し指、中指は駄目そうだな。入らないっぽい。小指は・・・ズリ落ちそうだな。となると薬指か。
「ほら、誕生日おめでとう」
「~~~~~!!」
何だかアリアがビクビクしていて自分ではつけられなそうだったので、俺は仕方なしに左手の薬指に指輪を填めてやると、今まで蒼白だったアリアは1秒もしないうちに顔色を赤くしていた。
「言っておくが・・・そんなに高いもんじゃないぞ」
「い、いいよっ!で、でも、貰っちゃうわよ!ホントに貰っちゃうからね!」
「だからあげるって。あと、しばらく気軽に俺を撃つなよ」
「はい!」
また出たよ。アリアの「はい」が・・・・ここまで過剰に反応されると逆に薄気味悪いな。これ・・・ただのアクセサリーを貰った反応じゃないぞ。もしかして今の一連の行動に俺の知らない意味があったんじゃないのか?
まず1つ、誕生日の夜、温室に電話で呼び出した。
2つ、指輪をプレゼントしてアリアの左手薬指に填めてやった。
そして3つ、今後しばらく気軽に撃つなと頼んだ。
これのどれに行為以上のことがあるのかさっぱり分からんぞ?自慢じゃないが俺はヒステリアになるのを避けるために男女のやりとりの常識などはほとんど知らないんだからな。
「キンジ、これ・・・嬉しい。・・・凄く嬉しいけど・・・ちょっと早いよ。そ、その・・・意味っていうか・・・・どういう意味なの?」
まぁ・・・ここで「お前には八つ当たりで撃たれるのを抑止するため」なんて答えたら本当に風穴を開けられてしまいそうなので・・・・
「武偵憲章6条『自ら考え、自ら行動ぜよ』。武偵なら自分で考えるんだな」
ごまかしてやった。
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
それから数日の間は、嘘みたいな平穏な日々が続いた。学校を休みがちだったアリアも普通に通学し、戦徒という武偵高の制度に基づいて一年の‛間宮あかり‘という女子を指導しているらしい。怪人達も動きがないおかげでしばらくは羽を伸ばせたんだが・・・・アンクは‛戦姉妹(アミカ)’と聞くたびに表情を歪ませていた。・・・何となくだが・・・その名前にアンクは思い入れがあるような感じに見えた。
「そういえば新学科の導入が今月からだったな・・・・ん?」
外にある仮面戦士科の学科棟でオーラインクロス+ゾウカンを剣崎相手に試してきた俺は教室に戻ろうと下駄箱を開けると、俺の靴の上に手紙が置いてあった。手紙は純白の封筒の中に入っていて、映画とかで外国人のお金持ちとかが使う赤い蝋みたいなので封がされている。筆記体の署名は・・・・ジャンヌか。
「おいおいっ!そんなの妹の持ってる漫画でしか見たことねーぞ」
ちょうど車輌科の実習から帰ってきた武藤は右からいきなり俺の頭を掴んできた。
「あちゃー・・・!最近はアリアさんとうまくいってるかと思ったら、もうこれかぁ」
左側ではどこからともなくやってきた不知火が苦笑いしてる。
「・・・・『そんなの』とか『これ』って何だよ?ジャンヌが手紙を入れただけだろ。しかし古風な奴だな。今日日、手紙って。メールでもいいのにな」
「あのなぁメールじゃロマンスがねぇから手紙なんだろ。それはラブレターっていうんだよ。武士の情けだ。黙っててやるから見せろ!」
「神崎さん。星伽さん。峰さん。レキさんと来て今度はジャンヌさんかぁ。美人ぞろいだね、遠山君の女性遍歴。ラブレター、ちょっと見せてよ」
そう言うと武藤と不知火はラブレターと決めつけた手紙を左右から奪い取ろうとしてきた。内容が何であれ、人からの手紙を他人に見せちゃ駄目だろ。・・・・そう思った俺は武藤をライダーチョップで昏倒させ、不知火がその手当てをしてる間にその場を離れた。そして教室のバッグを回収してすぐさまオーラインクロスで近くの公園まで走り、ベンチに座って手紙を開けると・・・・字は綺麗なのにフランス語で何が書いているか分からなかった。よく見ると文末に日本語が書いてあった。
『どうせお前には読めないと思うから、裏に日本語でも書いておく』
なんかイラッと来た。だったら最初から日本語で書けよ。
『遠山キンジ殿 10月1日 0時 空き地島南端 曲がり風車の下で待つ 武装の上 アンクだけと共に来るように ジャンヌダルク』
なんだこれ?時刻は明日、というか今日だ。不審に思ってジャンヌに電話をしてみると・・・・
『遠山か、読んだようだな』
「ジャンヌ、どうしてわざわざ手紙なんだよ?おかげで武藤にライダーチョップを決めることになったんだぞ」
『あれは正式な書状。・・・・招待状だからだ。お前も男ならちゃんと来い』
そう言ってジャンヌは電話を切ってしまった。何一つ詳細を語らずに・・・。もう一度電話してみるが出てくれない。何と言うか・・・・ちゃんと語ると俺が来ないとでも思っているな。ますます怪しくなってきたぜ。
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
あまり気乗りはしなかったが・・・ジャンヌの態度に引っ掛かるものを感じた俺はアンクと共に空き地島の南端へとやってきた。暗いうえに濃い霧に覆われ、不明瞭な視界の左右には東西に並ぶ風車の柱が続いている。なんだか不気味な光景だな。
「突っ立ってないで行くぞ」
「あ、ああ・・・・」
その霧を掻き分けるようにして俺とアンクは‘曲がり風車’とアダ名されてしまった、4月に飛行機がぶつかってしまい曲がった風車へと足を進める。・・・それにしてもこの霧、自然発生したように見えないな。
「遠山、アンク・・・こっちだ」
声の聞こえた方向に振り向くと・・・白銀の鎧を着て魔剣・デュランダルの剣先を地面に突き刺して杖のように立てていたジャンヌがいた。
「何だ?こんな夜遅くに呼び出して?」
少し前にアリアに言われたような事を言いながらジャンヌに近づくと・・・・ジャンヌの西洋甲冑はかつて地下倉庫で戦ったときよりも重装だった。
「まるでどっかの騎士王だな」
「・・・・?」
アンクは何かを呟くとジャンヌは少し不思議そうな顔をする。・・・・俺もそれは知らないが、何となくアウトなのは理解した。
「まもなく0時です」
頭上から聞き慣れた声がしたので、顔を上げると・・・動かない風車のプロペラに制服姿のレキが腰を掛けていた。見れば、普段は背中で抱えているドラグノフを身体の前で抱えている。
「キンジ・・・気を抜くなよ」
アンクもいつの間にか右腕を怪人態にしていたので、俺も眉を寄せた時・・・・曲がり風車を大きな円形で囲むように複数のライトで照らされた。
「なっ!?」
光に照らされた霧には俺達以外にも幾つも人影がある。・・・その姿のほとんどが普通じゃない。怪人とまではいかないが、人間とも言い難い異形の集団だった。
「先日は蘭幇の曹操姉妹が、飛んだご迷惑を掛けてしまったようで、陳謝致します」
俺達の方にお辞儀をしてきたのは、糸のように細い目をし、色鮮やかな民族衣装を着た男だった。そいつから離れた地面では・・・なにやら黒い影がうずうずと蠢いている。
「お前がリュパン4世と共にお父様に打ち勝った‘王様’?・・・信じがたいわね」
理子の甘ロリとは違う白と黒基調とした不吉なゴシック&ロリータ衣装に全身を包んだ金髪ツインテールは夜なのに黒い日傘を持っていて、背中に蝙蝠のような形の大きな翼を生やしていた。
「仕掛けるでないぞ、遠山の。今宵はまだじゃ。儂もこのような大戦は86年ぶりで気は立つがの」
なぜか俺のことを知っているような口ぶりで話しかけてきたのは・・・・和服を着たアリアより小柄な少女だった。切れ長の目は日本人っぽいが、長い髪は金髪・・・というよりも狐色だ。しかもこいつの頭にはキツネのような耳がピンと立っていた。しかも本物っぽいし。
「久しいのぅアンク」
「・・・あぁ、久しぶりだな玉藻」
どうやらアンクとこの玉藻と呼ばれた狐少女は知り合いらしいが・・・どうなんだろうな?
「・・・・・・・!」
そして何やら赤と黒が印象的な服を着たいつもと雰囲気が違う渉も金色の蝙蝠がついたような剣を腰に納めてやってきていた。そしてその奥からは砂礫の魔女パトラとドレイクゼクターを持っていつでも変身ができる状態のカナ・・・兄さんがいた。
「・・・・・・・」
そんな様々な者達が集まる中、俺が何よりも気になったのは・・・・
「皆さん。そんな険悪ムードにならないで。ほら、笑顔、笑顔!」
「・・・五代さん」
俺に料理などの様々な技術を教えてくれた人物‘五代祐輔(ごだいゆうすけ)’さんがいたってことだ。どうして五代さんがここにいるのかも分からないが、あの人についてもう1つ気になるのが・・・・
「リク・・・嘘だろ?」
アンクが五代さんのことを‘リク’と呼んでいたことだった。
「・・・では始めようか。各地の機関や結社、組織の大使達よ。宣戦会議・・・・イ・ウー崩壊後、求めるものを巡り、戦い、奪い合う我らの世が次へ進むために」
そしてこの瞬間、俺たちの次の戦いは始まりの合図がなった。
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
俺が宣戦会議に参加してしまっている頃、エヴィルの幹部達は本部である場所に全員集まっていた。
「幹部の皆様。お集まり頂きありがとうございます。これより首領様が今回のミッションを発表します。皆様はそれを速やかに実行に移してください」
「・・・・・・」
エヴィル№2である影月は幹部達の中央に立つと・・・その奥からはショッカーマークがついたマントを羽織った銀髪の青年が出てきた。
「これはこれは・・・首領様が会議に直接出席なさるとは珍しいですね」
「無礼ですよドクター、口を慎んでください」
真木博士は青年に視線を送ると、影月は瞬時に銀色の戦士に姿を変えて赤い刀身の剣を真木博士に向けた。
「気にするな影月。そんなことよりこいつ等にもだいたい分かるように話を進めろ」
首領は玉座に座ると真木博士以外の幹部達は一斉に姿を変えた。
「「「「・・・・・・」」」」
紫色の電王、宇宙人のような怪人やケルベロスのような怪人にさらにはライダーの仮面が10個身体についたような怪人までいる。そして銀色の戦士は中央のモニターに東京武偵高の仮面戦士科の学科棟を映し出した。
「この組織の基礎を作り上げたショッカー首領様の形見・・・・ショッカーコアメダルが東京武偵高に封印されていることが判明しました。これより皆さんはそこを襲撃して、コアメダルを回収してください」
「「「「・・・・・・・」」」」
見知らぬ場所・・・世界を破壊する悪はいよいよ本格的に動き始めていた。
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「『宣戦会議』に集いし組織・機関・結社の大使達よ。まずはイ・ウー研鑽派残党のジャンヌ・ダルクが敬意を持って奉迎する」
霧の中に照らし出された異形の集団に、甲冑姿のジャンヌが語りかける。歓迎するとは言っているが・・・・ここに集う一同からは一触即発のムードだぞ。正体不明の武装集団と出くわしたケースでは、まず敵戦力の把握がセオリーだ。しかし今の俺にはそれができない。誰が敵で誰が味方かも分からないからだ。
「・・・・・・」
アンク、ジャンヌ、レキ、渉、そしてさっき話しかけてきた狐少女・・・玉藻とかいう奴は大丈夫だろうな。
「・・・リク・・・どうして」
たぶん味方だろうが・・・・正体不明なのが五代さんだ。リクと言う人物は800年前の人間だから生きているはずはない。だからといって‘人間’という前提じゃなければありえない話でもない。たとえばファンガイアとかも長生きだしな。
「初顔の者もいるので、序言しておこう。かつての我々は諸国の闇に自分達を秘しつつ、各々の武術・知略を伝承し、求めるものを巡り、奪い合ってきた。イ・ウーの降盛と共にその争いは休止されたが・・・・イ・ウーの崩壊と共に今また、砲火を開こうとしてる」
イ・ウー・・・・忘れもしない戦いだったな。アリアの曽祖父であるシャーロック・ホームズが変身した仮面ライダーラスとの戦って・・・その結果あの組織は壊滅したはずだった。
「皆さん。あの戦乱の時代に戻らない道はないのですか?」
青く潤んだ瞳の泣きボクロが印象的なシスターのような服装の女性は一歩前に出てくる。その手には冗談みたいにデカイ剣が握られている。
「バチカンはイ・ウーを必要悪として許容しておりました。高い戦力を有するイ・ウーがどの組織と同盟するか最後まで沈黙を守り続けた事で、誰もが『イ・ウーの加勢を恐れた敵』を恐れてお互い手出しができず・・・・あのエヴィルですら長きに渡る休戦を実現できたのです。その尊い平和を、保ちたいとは思いませんか?」
シスターは手を合わせて十字架を握り締める。だれだか知らんがあんたいいこと言ってるぜ。こっちとしても敵はエヴィルとグリードだけで充分なんだからな。余計な争いはしたくない。
「私はバチカンが戦乱を望まない事を伝えに、今夜、ここに参ったのです。平和の体験に学び、皆さんの英知を以て和平を成し、無益な争いを避けることは・・・・」
「できるワケねぇだろ、メーヤ、この偽善者がっ!!」
彼女の斜め後ろから口を挟んだのは・・・・最初からメーヤというシスターを睨んでいた黒いローブの魔女だった。小柄な身体を真っ黒なローブに包み、黒のとんがり帽子もかぶり、ご丁寧に大きなカラスまで肩に乗せている。
「お前等ちっとも休戦してなかっただろーが。デュッセルドルフじゃ、あたしの使い魔を襲いやがったくせに何が平和だぁ?どの口でほざいてやがる」
「黙りなさいカツェ=グラッセ。この汚らわしい不快害虫。お前たち魔性の者どもは別です。存在そのものが地上の害悪。殲滅し、絶滅させることに何の躊躇いもありません。ここ数百年のファンガイア族は貴方とは違い害悪ではありませんが、初代の王は滅びるべき絶対悪でした。しかしもう彼らは神の許しを得ている。だがあなたはどうです?生存させておく理由が旧約・新約・外典も含めてまったく見当たりません。しかるべき祭日に聖火で黒焼きにし、屍を八つに折り、それを別々の川に流す予定を立てているのですから!ほら、言いなさい!ありがとうと、ありがとうと!!」
先ほどの穏やかなムードとは打って変わって、魔女の首を絞めて叫ぶメーヤは・・・異常な感じだった。・・・・ぜ、前言撤回だ。全然いい人そうじゃない。・・・・ていうか相当タチの悪い二重人格だ。
「ぎゃはははは!おぅよ戦争だ!待ちに待ったお前らとの戦争だぜ!こんな絶好のチャンス逃せるかってんだ!なぁヒルダ!」
首を絞められながらもゲラゲラと笑う魔女は別の人物へと話しかける。それは先ほど俺を『王様』と呼んでいた蝙蝠の翼を生やす金髪のツインテールの少女だった。
「そうねぇ。私も戦争、大好きよ。いい血が飲み放題だし」
「気軽に戦争が好きなんて言うもんじゃないよ。争うことで残るのは・・・・虚しさだけだ」
そのヒルダと呼ばれてた金髪蝙蝠に口を開いたのは・・・・五代さんだった。
「これはこれは‘究極の闇’やはりそれは自分より強い存在がいないからという虚しさですか?」
「命ってのは平等に大切なんだ。それを奪い合うことを気軽にはやらせたくないだけだよ。俺としては和平で収めて欲しいんだけど・・・・」
五代さんは争うことはやめろと、この場の全員に告げるが・・・・
「リク様は口を出さないでください。たしかに貴方様はあのクガ王を倒した英雄ですが、やはり不快害虫は滅びるできなのです!」
メーヤはヒルダと魔女を睨みつけた。
「・・・・今の俺はリクじゃないし、そもそも英雄でも何でもないよ。・・・・そもそも俺はあくまで‘リク’の記憶と力があるだけの別人だし」
「それでも‘リク’があなたと同化して、その力を持っている以上はあなたが‘究極の闇’じゃない」
五代さんが・・・リクと同化?
「アンク・・・たしかリクっていうのは・・・・」
「あぁ、俺の仲間だったヤツで・・・・戦士クウガとして戦っていた。オトヤからクウガの目撃証言を聞いていてもしかしたらと思っていたが・・・」
どういう訳かは知らないが五代さんと同化してクガ王から世界を救った英雄として周りに認知されているってことか。
「和平・・・と仰りましたが・・・それは非現実的というものでしょう。元々われわれには長江のように長きに渡り、黄河のように入り込んだ因縁や同盟のよしみがあったのですから。ねぇ」
のんきな感じで声を挟んできたのは細めの民族衣装の男だった。細め男はそこまで言うと、風力発電機の翼でドラグノフを抱えているレキを見上げた。
「私も・・・できれば戦いたくない。しかし、いつかこうなる事は前から分かっていたことだ。シャーロックの薨去と共にイ・ウーが崩壊し、我々が再び乱戦に陥ることはな。だからこの『宣戦会議』の開催も彼の存命中から決められていた。大使達よ。我々は戦いを避けられない。我々はそういう風にできているのだ」
今にして思えば・・・シャーロックって存在は本当に世界にとって大きな存在だったんだなと思う。あのエヴィルですら大きな動きを可能な限り控えて行動してたらしいんだからな。・・・・だけど俺達がそれを倒して瓶の蓋が開いちまったってことか。
「では古の作法に則り、まず三つの協定を復唱する。第一項。いつ何時、誰が誰に挑戦することも許される。戦いは決闘に準するものとするが、不意打ち、闇討ち、密偵、奇術の使用、侮辱は許される。第二項。際限なき戦いを避けるため、決闘に値せぬ雑兵の戦用を禁ずる。これは第一項より優先される」
時代がかかった台詞だが・・・・分からなくはないぞ。この2つはセットで考えるべきルールだろうな。組織同士で戦うが総力戦にはしない。それぞれの組織がゲームみたいに代表を決めて戦うってことか。少なくとも皆殺しにはしないようで少しは安心したぜ。・・・・それでも争うことは気に入らないがな。
「第三項。戦いは主に『師団』と『眷属』の双方の連盟に別れて行う。この往古も盟名は、歴代の烈士達に敬うため、永代、改めぬものとする。それぞれの組織がどちらに所属するかはこの場での宣言によって定めるが、黙秘・無所属も許される。宣言後の鞍替えは禁じないが、誇り高き各位によりそれに応じた扱いをされることを心得よ。続いて宣言をするが、まず私たちイ・ウー研鑽派残党は『師団』となることを宣言させてもらう。バチカンの聖女メーヤは『師団』。魔女連隊のカツェ=グラッセ、それとドラキュラのヒルダは『眷属』。よもや鞍替えはないな?」
ルールを言い終えたらしいジャンヌが先ほどの3人の女を名指しする。
「ああ・・・神様。再び剣を取る私をお許しください。・・・・はい。バチカンは元よりこの、汚らわしい眷属共を討つ『師団』。殲滅師団の始祖です」
メーヤは白いレースの長手袋をした手で魔女と吸血鬼を指差した。
「ああ、アタシも当然『眷属』だ。メーヤと仲間になんてなれるかよ」
そう答えた魔女の向こうからは・・・・
「聞くまでもないでしょうジャンヌ。私は生まれながらにして闇の眷属・・・『眷属』よ。玉藻、あなたもそうでしょう?」
今度は金髪蝙蝠のヒルダが俺の隣にいる狐少女の玉藻の方を向いた。
「すまんのぅヒルダ。儂は今回は『師団』じゃ。未だ仄聞のみじゃが、今日の星伽は基督との盟約があるようじゃからの。それに今回はリク兄様がおるのじゃからな」
おい待て狐っ!?お前、アンクだけじゃなく五代さん・・・いや、リクとまで面識があるのかよ!
「だから俺・・・リクじゃないって。今は五代祐輔だって」
「姿や性格まで完全に同じなのじゃ。そして同化したとはいえ、記憶があるのじゃから兄様であるに変わりないのじゃ」
その理論は・・・たしかに間違ってないかもしれないが・・・どうなんだろ?
「・・・・父さんがエヴィルの何者かの襲撃を受けて深手を負ったので息子である僕、紅渉がキング・紅音矢の代わりに宣言します。我々ファンガイア族は『師団』として行動させてもらいます」
渉も『師団』として宣言した。・・・・いや、そんなことよりも、あれだけ圧倒的な強さを見せた音矢さんが深手を負っただと!?
「どういう事だ?」
800年前はオーズ、ダークキバ、アーク、そしてクウガの4強だったと聞いたことがある。そしてあのアーク戦のときにアークの力を嫌と言えるほど味わった。そして意識が飛びかけていたんではっきり見た訳じゃないが、ダークキバの力も目撃した。たしかに圧倒的だった。その力を持つ音矢さんが深手を負うなんて信じられないぞ。
「・・・・・・・」
その後、パトラ含むイ・ウー主戦派は『眷属』。カナ・・・・兄さんは『無所属』と宣言した。
「遠山。『バスカビール』はどっちにつくのだ?」
いきなりジャンヌが俺に話題を振ってきたので・・・・俺は思考が追いつかなかった。
「な、なんで俺に振るんだよ!?」
「お前はシャーロックを倒した張本人だろう。それにこの『宣戦会議』にはお前の一味・・・・最近『バスカービル』という組織名ができた訳だが・・・そのリーダーの連盟が不可欠だ。お前はイ・ウーを壊滅させ、私たちを再び戦わせる口火を切ったのだからな。・・・いや、それ以前にお前は‘最凶の王’オーズの力を持つのだから、こうなる事は必然だったのかもな。・・・・『師団』と『眷属』生き残れそうな方につけ」
「・・・・お・・いっ・・・」
有無を言わせないような口調のジャンヌに、俺は言葉を言い返せない。・・・俺には関係ない。と言ってこの場を去りたい気持ちもあるが、周りの視線がこちらに集まっていてそんなことは言えない。
「新人は皆、そう無様に慌てるものよねぇ。ジャンヌ、あんまりいじめちゃ可哀想よ。聞くまでもないでしょう。遠山キンジ、お前たちは『師団』それしかありえないわ。お前は『眷属』の偉大なる古豪、ドラキュラ・ブラド・・・・お父様のカタキなのだから。・・・・まぁ、あなたが真の‘王様’なら話は別だったけどね」
あいつ、同じ種族だろうなとは思っていたが、あのブラドの娘だったのか。つーかいい加減俺を「王様」って呼ぶのはやめて欲しい。俺はかつての王じゃないんだからな。
「それでは、ウルスが『師団』に付くことを、代理宣言させてもらいます。私個人は『バスカービル』の一員ですが、同じ『師団』になるのですから問題ないでしょう。私が大使代理になることは、すでにウルスの承諾を得てます」
「蘭幇の大使、諸葛静幻が宣言しましょう。私たちは『眷属』。ウルスの蕾姫には、先日ビジネスを妨害された借りがありますからねぇ。・・・さて、残りは貴方だけですが?」
参戦するとも言っていないのに、俺の件はもう済んだかのような流れで細め男は霧の奥のピエロみたいに派手な格好の男に話しかけた。
「ケッ!バカバカしいぜっ!強ぇやつが集まったと思って来て見りゃ、何だこりゃ?使いっぱしりの集いってワケかよ。どいつもこいつも取るに足りねぇ無駄足だったぜ」
どうやらこいつも『帰りたい派』だったらしいな。・・・・俺とは正反対の理由だけど。
「GⅢ、このまま帰れば『無所属』となるぞ。それでもいいのか?」
「構わねぇな。最近てめぇらに強い奴らが出てきたみたいだから様子見に来ただけだ。次は一番強い奴を連れて来い。それを皆殺しにしてやる」
GⅢと呼ばれていた男は透明になり消えてしまった。
「・・・アンク、見えるか?」
「見えてるに決まってんだろ。まぁ、追いかけるなよ。めんどくさいぞ」
タカの目を持つアンクにはどうやら透明になったGⅢが見えているらしいが・・・追いかけるなと言ってきた。・・・まぁ、元より追う気はないけどな。
「下賎な男、殺す気も失せるわ。・・・でも、これで全員用事が済んだみたいね。そうよね、ジャンヌ?」
「・・・その通りだ。最後にこの闘争は宣戦会議の地域名を名づける習慣に従い『極東戦役』・・・・FEWと呼ぶことを定める。各位の参加に感謝と、武運の祈りを・・・・」
「それじゃあ・・・いいのね?」
「もう・・・か?」
「いいでしょ別に、もう始まったんだもの折角だし・・・ちょっとね・・・」
ジャンヌとヒルダは2人してこちらを見てくる。・・・何だか嫌な予感がするぞ。
「血を見なかった宣戦会議なんて・・・過去なかったというしねぇ・・・」
にやりと笑って牙を見せたヒルダに、ジャンヌは慌てた表情でマバタキ信号『逃げろ』を送ってくる。ここからは誰が誰と戦ってもいいってことかよ。
「アンク、ジャリバー!」
「・・・ほらよっ!」
俺はアンクからジャリバーを受け取った途端、ヒルダは自分の影に潜り込んで行く。・・・・これじゃあジャリバーを当てることができないな。
「遠山先輩・・・。50・・・いや、30秒・・・あ、いえ、15秒は凌ぎます」
いつの間にか後ろに立っていた渉は金色の剣を抜いて・・・構える。てか、時間がどんどん減っているぞ。もう少し自分に自信を持てよ。
「くそっ・・・・」
いくら人外とはいえ、見た目が人間だと変身するのも気が引ける。・・・・俺は変身せずに何とかする方法を考えているとこの場の異形達は学園島の方を振り向いていた。モーターボートで走ってくるあれは・・・!
「SSRに網を張らせといて正解だったわね!そこにいるんでしょ。パトラ!ヒルダ!」
空き地島にやってきたのは・・・・アリアだった。
「アリア!?・・・まずい!今、ここには・・・!?」
自分のことはさておき、俺はアリアが火に油を注がないように叫ぼうとした途端・・・・
「オーズ!死ねい!」
ライオンとクラゲが混ざったような怪人が現れた。
「っ!?・・・変身!!」
『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』
俺は後ろに跳び下がりながら変身をするとジャリバーを構える。
「チッ!カザリの合成ヤミーか。中には中身はいないらしいな。・・・・気を抜くなよキンジ!!」
「ああ、分かってる。アンクは金髪蝙蝠を何とかしててくれよ!」
「ガオッ!」
カザリのヤミー・・・ライオンクラゲヤミーの爪を右手のジャリバーで受け止めた俺は、左のトラクローで切りつける。
「ガァっ!?」
「セイヤッ!」
俺がライオンクラゲヤミーをキックで蹴り飛ばすと・・・アリアが俺の傍までかけてきた。
「キンジ!・・・ジャンヌもいるの!?どういうこと!?」
「アリア!説明は後だ!ここは撤退するぞ!」
周りを見渡すと・・・『師団』と『眷属』がそれぞれ戦っていた。玉藻は・・・姿が見えないがアンクの足元に絹手毬が落ちている。しかも狐の尻尾のようなものが生えたのが。
「・・・・バカか?」
「・・・・・」
アンクの視線に気づいた手毬は尻尾を内側に引っ込めた。・・・防御モードなのか?
「・・・結局こうなっちゃうのか」
戦いに参加していない・・・というよりも『師団』からも『眷属』からも避けられている五代さんは悔しそうに俯いて拳を握っていた。
「なぜ来た!アリア!・・・・気をつけろ、ヒルダはまだいる。それも近くに・・・・!?逃げるぞ!ヤツはイ・ウーから『緋弾の研究』を盗んでいる!」
そう言ったジャンヌは氷の結晶を空気中に漂わせて俺達の姿を隠そうとする。しかしその時・・・・・
「・・・・!」
アリア自身の影から、プールの水面から上がってくるように半笑いのヒルダが出てきて、アリアの首を掴んだ。
「愚かな武偵娘にお仕置きよ」
「っ!?」
ヒルダは真っ赤な口を開くと、先端に緋色の金属を被せた牙がアリアの首元に噛みついた。
「嬉しい誤算だわ!私は第一形態のまま、もう殻を外せるなんて。おほほっ。おーっほっほっほ!!」
「アリア!!」
「ガァァァァ!!」
ヒルダが離れて膝をついたアリアに俺は駆け寄ろうとすると再びライオンクラゲヤミーが襲い掛かってくる。
「邪魔だから退いてろ!」
『シャチ!カマキリ!バッタ!』
「ガアッ!?」
ライオンクラゲヤミーに効くはずのない水を噴射して目くらましをした俺は、2本のカマキリソードで攻撃して退けるとアリアのもとへ走ろうとした途端・・・
「な、なんだ!?」
いきなり紫のメダルが3枚俺のところに飛んできた。
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俺が宣戦会議に参加し始めた頃、エヴィルの研究所に戻ってきた真木博士は恐竜や幻獣が彫られている円型の石版を眺めていた。
「・・・驚きだよねぇ・・・まさか人間がグリードになっちゃうなんて」
「これも首領がファンガイアのキングの城に乗り込んで手に入れてくださった戦利品のおかげですね。・・・・そんなことよりもカザリ君。まもなく予定の時間です。そろそろ私達も出向きますよ」
「「せやな」」
真木博士は両目を紫色に輝かせると、カザリとチョウ兄弟は研究室を出ようとする。その瞬間だった。
「おや?」
石版がカタカタと揺れたかと思うと・・・・中に入っていた紫色のコアメダルが3枚、どこかに飛んでいってしまった。
「マッキー。いいんか?あのメダル、どこかへ飛んでいったで?」
「その呼び方は止めてください・・・良いわけがありません。・・・しかし、何かと共鳴してしまったみたいですし、仕方ないでしょう。それにすぐに取り戻せばいいだけの話ですから」
「まったく・・・・せっかくワイの欲望から作ったヤミーをさっくりやられるようなことは勘弁な。KAMEN RIDER!!」
「・・・・・・」
真木博士はアックスに変身したダニエルに言葉を返さない。
「・・・あの、何か返事してや。それじゃワイのヤミーが『絶対負ける』って宣言されたようなもんやで?」
「・・・・・・」
真木博士はまたもや返事をしない。
「返事せいっ!」
その態度にイライラしたアックスは真木博士の肩に乗っていた人形を奪い取った。
「アァァァァァア!?」
「ハッハッハッ!シカトしてるからや!」
アックスはそのまま真木博士の人形を持ったまま目的地へ向かった。・・・その後ろには奇声を発して走る怪しいおじさんがいたらしい。