緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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ウナギコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×2

サソリギジ×1
カニギジ×1
エビギジ×1



銃弾と音撃と勝利のコーナー

「伊達・・・さん?」

 

 伊達さんが倒れた。・・・・ケガをして救護科に行くと治療をした後、いっつも給湯室で作ったおでんを生徒達に食べさせているマニュアル嫌いの伊達さんがだぞ。信じられねぇよ。

「・・・・伊達さんは・・・頭に銃弾が埋まっている状態で戦い続けていたんだ」

 

 

「どういうことだ?」

 

「伊達さんは武偵高に来る前は戦場で医師をしていたらしい。・・・その時に銃弾を喰らってしまったらしい。・・・・このことをお前たち・・・特に遠山とアンクに伝えることを禁じられていたんだ。お前たちに伝えると戦いに支障が出ると言ってな」

 

 伊達さん・・・・そりゃ確かに俺達がそのことを知ったら止めていたが・・・。

「・・・・とりあえずまだ息はある。ここはあぶないから室内に運ぶぞ」

 

「あ、ああ」

 

 まだオーズ・サゴーゾコンボの変身を解除していない俺は伊達さんを抱えると穴から車内に入って静かに座席に下ろす。

「後藤もここにいてくれ。俺はまだアリア達が戦っているから上に戻る」

 

「す、すまない」

 

「別に謝る必要なんかねぇよ。俺達は仲間だろ」

 

 俺は後藤にそう言い残して新幹線の上に出て行くと・・・

「アリアさん。車内に戻ってください。キンジさんに近づかないようにと言ったはずです」

 

「・・・っ!怪我人こそ、病院に戻りなさいよ」

 

 アリアとレキがお互いに背を向けたまま言いあっていた。

「アリアさんが退がるべきです」

 

「あんたでしょ!」

 

こんな所で喧嘩すんなよ。しかし今、2人が現場に居合わせているのは現実だ。だが共闘するならするで協力しないと大変なことになるぞ。武偵と武偵はうまく連携すると1+1が3にも4にもなる。しかし仲違いするようでは1+1が1にもならないことだってある。過去、白雪や理子は・・・・アリアと対立してもイザとなれば連携して戦えていた。非常時まで意地を張る奴らじゃなかったからだ。だがレキは駄目そうだ。・・・・背中越しに敵が1人増えたような殺気を出しているし。

「お前等・・・伊達さんのことを少しは心配しろよ・・・」

 

「心配する必要はないと思います」

 

「だってあの人死にそうにないじゃない。なんとなくだけど・・・」

 

 どうしてだろう。・・・何故か説得力があるな。つーか何でそこはかみ合っているんだよ。俺が変身を解除した途端、新幹線は再びトンネルの中に入る。だがそのトンネルは短く、数秒ほどで外に出た。トンネルを抜けた先では・・・眩いばかりの光が車両に降り注いでいる。

「・・・相棒・・・報道のヘリの光だ」

 

 矢車の言葉で俺は空を見上げると、そこには何機もの報道のヘリが上空を舞っていた。どうやらこののぞみ245号をここで待っていたらしいな。この明るさはヘリ達から照射されるサーチライトの光が集中したものだった。マスコミめ・・・爆発の被害を受けない距離から高みの見物かよ。

「ココ、もうおしまいだ。武器を捨てて手を挙げろ」

 

 サーチライトの直線光の中、俺はバースバスターをサブマシンガンのココ・・・炮娘に向ける。矢車も何時でも蹴りこめるような雰囲気だ。しかしそれでも炮娘の目には未だに闘志は失われていない。ウナギカンに縛られている猛妹も同様だ。

「・・・・・」

 

 なぜだ?どうして白旗を上げない?・・・・そういえば恐らくはココ達の欲望から作られたと思われるヤミーは同種個体だが3体いた。・・・・そういうことか!・・・・ヒステリアの頭脳がその理由に気づくと同時に響き渡る報道ヘリの音が僅かに変化する。

「っアリア、レキ!敵機だ!」

 

 叫ぶ寸前、俺はヒステリアモードの目でその操縦者の姿を捉えていた。そこにいたのは狙撃銃を背負った3人目のココだった。

「やっぱり3つ子だったか」

 

 これはある種の人海戦術だな。倒しても追い詰めても、また次のココが現れやがる。

「あっ」

 

「・・・・っ」

 

 ヘリの作る下降気流に会わせてアリアとレキは俺のそばまで後退してくる。アリアもレキもそのヘリに銃を向けるが発砲はしない。ヘリを狙撃すれば中のココを殺すことになるし、新幹線に衝突する可能性があるからだ。レキも『人を殺すな』の命令を守っているのか狙撃しない。しかし2人を嘲笑うかのように、ヘリは新幹線を後ろから前に舐めるように飛んだ。

 

「・・・鬱陶しい風だな・・・」

 

 矢車はヘリの風をまるで気にしないで駆け出すと、生身で数メートルほど跳び上がってヘリにキックを決めた。・・・アリアも数メートルジャンプなどをやったことがあったが、Sランクの武偵達はどういう身体の構造をしているんだ?蹴られた衝撃でヘリは多少揺れたが、操縦席の上空で併走し始めた。そして本来は救助係だったらしいそのヘリから新幹線の先端に3人目のココが飛び降りてきた。

「炮娘、待たせたネ。猛妹の所へ行くよい」

 

「是、狙姐」

 

 新手のココ・・・狙姐は炮娘に命令をすると、炮娘は車両の右側面にダイブをしながら民族衣装をパラシュートのように開いて着地すると折れた青竜刀を回収してレキにそれを向ける。・・・銃剣がないと接近戦ができないレキに近接戦をする気か。そしてその反対側には狙姐がM700狙撃銃をアリアに向けている。その距離はおよそ20メートルはあり、拳銃の精度では狙うことは難しい。そう考えても狙撃銃の方が有利だ。

「・・・相棒・・・どうする?仕掛けるか?」

 

「何なら殴りかかるぞ?」

 

 矢車なら接近戦の方は何とかなるかもしれないが・・・戦いの最中に狙撃銃で狙われる可能性が高い。かといってアンクは人間体でそれほど強いわけではないから接近戦は向かない。・・・・だとすると・・・答えは1つだ。

「アリア、レキ。・・・俺は信じる。2人が心の奥では、お互いを信じているを信じる」

 

狙姐が引き金を絞り、炮娘が斬り込んできた瞬間・・・・

「さぁ、仲直りの握手だ」

 

 俺はジャリバーとバースバスターを空中に放り投げた。そしてそれらが滞空している間にアリアとレキの腕を背後から掴み、半ば強引にその腕と腕をガッチリと組ませた。

「っ!?」

 

「?」

 

 そしてさらに俺は右腕と左腕をアリアとレキの腰に回すと、まるでコマのように俺を軸に半回転する。『キャスニングターン』2駒を一手で入れ替えるチェスの特殊手のように。いい子だ2人とも。アリアは俺を信じて動くもレキを信じた。レキも俺を信じて動くアリアを信じた。敵が攻撃のターンとなり、防御や回避がなくなったタイミングで2人は俺を中継にして信じあい、チームワークを働かせてくれたのだ。そして俺の思惑通りにレキVS狙姐。アリアVS炮娘といった対戦カードになってくれた。

「っ!」

 

「おっと!」

 

「・・・・」

 

 咄嗟に発砲をキャンセルできなかった狙姐の弾丸はアンクが火球を放って防いでくれた。そしてレキは反撃のドラグノフで狙撃手のココ、狙姐の足元を撃った。

 

「阿っ!?」

 

 足払いを喰らった狙姐は新幹線の前面へと滑り落ちていく。

「ココ!」

 

 車両後方ではアリアが両手のガバメントを連射しながら炮娘目掛けて駆け寄った。しかし炮娘は青竜刀で銃弾を防ぐとアリアをそのまま斬りつけようとしてきた。

「・・・はぁ・・・・」

 

「阿ぅ!?」

 

 するとため息をついた矢車は有名な下駄を飛ばす妖怪のように自分の靴を炮娘に向かって飛ばして青竜刀を弾いた。そして丸腰どころかパラシュートとなった民族衣装もどこかへ飛んでいってしまって下着姿の炮娘に・・・・

「逮捕よっ!」

 

『ガゥ!』

 

 アリアは遠慮なく飛び掛って取り押さえた。いつの間にか飛び出ていたトラくんも炮娘の髪の毛に噛み付いている。先ほどの矢車の靴が痛かったのかほとんど抵抗もできずにあっさりと捕まったな。ひとまずこれで猛妹と炮娘ので車両の前方の方を振り向くと・・・・

「・・・・・」

 

新幹線の先端に続く斜面のフチにレキが無言でしゃがんでいた。

「炮娘!猛妹!救命!滑滑!我倒下!」

 

「少しうるさいですよ。あなたも姫ならわきまえなさい」

 

 レキがドラグノフを担ぐように構え、その銃を見るともなく上空のヘリに向けた。

「うぐぅ・・・」

 

 それを撃ち落されては堪らないと思ったのか、それっきり狙姐は黙り込む。・・・ひとまずこれで3人とも戦闘不能にできたな。

 

「お前ら、まだいたりするのか?」

 

 ウナギカンに縛られたココ3姉妹にアンクが右腕を向けると・・・3姉妹は揃って首を横に振る。そして銃を収めて上を向いたアリアと立ち上がったレキが同時に振り向く。

「・・・かっ、勘違いしないでよねレキ!さ、さっきのは身体が勝手に動いただけよ!」

 

「・・・私も身体が勝手に動いただけです」

 

 2人ともまだ意地を張るようなことを言っていたが・・・2人が交わした視線はさっきまでの敵対の目とは違った。お互いを認め合った武偵と武偵の目だった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

 ココ達を協力して車両に運び込んで、俺達も車内に戻ると・・・車両のドアはすでに武藤によって開け放たれており、真横の線路をまったく同じ速度で走る救護新幹線の扉からは直径1メートルほどのチューブがすでに延び、フックが引っ掛けられていた。

「あやっ!あややややっ」

 

 そのチューブの中を滑り台のように滑り降りてきた平賀さんはロープを引っ張って様々な工具や消火器みたいな何かをこちらに引き込む。

「悪いな平賀さん。こんな所まで・・・」

 

「なんのなんの。お得意様のピンチならあややはどこにでも駆けつけるのだ!」

 

 事故を防ぐためにチューブが切り離されて退路を絶たれたというのに平賀さんはやたら上機嫌で機材を組み立てていく。

「気体爆弾は酸素と混ざると爆発するって理子ちゃんから聞いたのだ。だから窒素で膨らますシリコンの風船を隅々まで広げて、気体爆弾をこっちの真空ボンベに移すのだ!」

 

 そして数分後・・・すでに400キロ以上の速度となった時、気体爆弾は完全に真空ボンベに移った。

「いよっし!完了なのだ!」

 

「ブレーキだ武藤!」

 

「うっしゃぁ!ブレーキ・・・あれ?」

 

 運転席の武藤はレバーを捻ってブレーキをかけようとするが・・・どこか様子が変だ。

「大変だキンジ!さっきの戦闘でブレーキをかけるストッパーが壊されちまって止められねぇ!」

 

「なっ!?」

 

 それじゃ結果的に事故になっちまう可能性があるじゃんかよ!?・・・しかしそんなピンチでも平賀さんからは笑顔が失われていなかった。

「大丈夫なのだ!こんなこともあろうかと秘密兵器を準備あったのだ!」

 

 秘密兵器だと?

「キンジ!あそこっ!」

 

運転席の武藤が正面を指差していたのでそちらを振り向いてみると・・・そこには真紅の姿をした鬼の仮面戦士・・・・仮面ライダー響鬼・紅が立っていた。

「あだちくんなのだ!」

 

「えっ!?あれが明日夢か!?」

 

 武藤は響鬼・紅に変身した明日夢に驚きつつも、彼の「下がって」という合図で俺達のところまで下がってくる。すると響鬼・紅は腰のディスクを空へと投げると、それは5メートルはありそうな緑の猿へと変化する。音式神のリョクオウザルだ。一瞬、車輪が空転するような音に続いて・・・耳に響く急ブレーキ音。そして今までで最も激しい衝撃が新幹線を襲った。

「おおおおおおぉぉぉ!!」

 

 響鬼・紅は音式神リョクオウザルを操り必死にブレーキをかけようとする。そしてブレーキをかけて1キロ以上走り・・・

 東京駅のホームでようやくストップした。

「やったわねキンジ!」

 

 アリアは安心のあまり少し足を震えさせながらも笑顔でこちらにやってくる。

「ああ、これで一段落・・・・」

 

「「「っ!?」」」

 

 俺が「一段落着いた」と言い終える直前・・・東京駅に爆音が響き渡った。俺達が慌てて新幹線を降りると・・・ホームの方からは銃声や爆音が今も続いていた。

「後藤と武藤と不知火は伊達さんを運んでくれ!アンク!」

 

「ああ、分かってる!」

 

「・・・・俺も行くぜ相棒・・・平賀、ゼクターの修理を頼む」

 

「ぼ、僕も・・・」

 

 爆発音が響いた場所に俺とアンク、そして平賀さんにゼクターを預けた矢車と響鬼・紅が駆けつけると・・・・そこでは教員であるサバキさんの変身した裁鬼と橘さんのギャレンや名護さんのイクサといった3年の仮面戦士科の何人かが青い怪人と戦っていた。

「・・・グランザイラス」

 

 響鬼・紅は悔しそうにその名を呟く。・・・そう、そこで仮面戦士達が戦っているのは、東京武偵高で最強だったヒビキさんを倒したグランザイラスだった。

「はぁぁぁっ!!」

 

「どけろ屑っ!」

 

 裁鬼は黒い音撃弦をグランザイラスに振り下ろすが・・・あっさりと折られて頭を掴まれて投げ飛ばされてしまい、頭が壁に突き刺さる。

「うおぉっ!!」

 

「その命、神に返しなさい!」

 

「てめぇらも邪魔だ!」

 

 ギャレンやイクサもグランザイラスの破壊弾で吹き飛ばされて変身が解除されてしまう。

「オーズにグリードのアンク、ついでに響鬼か。・・・オーズは生かしたまま連れて来いって命令されているからそれ以外は殺すぞ」

 

「・・・アンク、アリアとレキを下がらせてくれ。行くぞ明日夢・・・変身!」

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

「・・・うん。あいつにはヒビキさんをやられた借りがあるしね・・・」

 

 俺はオーズに変身するとアンクからメダジャリバーを受け取って構え、響鬼・紅も2本の音撃棒を構えた。

「やぐるまさん!バッタさんが直ったのだ!」

 

「・・・・・・」

 

 遠くから聞こえた平賀さんの声と共にホッパーゼクターが矢車のところにやってくると、矢車はすぐさまベルトを腰につけてゼクターを掴む。

 

 

「はぁ・・・変身・・・」

 

『CHANGE KICK HOPPER』

 

 そしてキックホッパーに変身した矢車は俺達のところに並び立った。

「たった3人の仮面ライダーで俺様に勝てると思っているのか?」

 

「くっ?」

 

 悔しいが・・・・たしかにグランザイラスの言うとおりだ。11人ライダーでも敵わなかった相手に俺達3人で勝てるとは思えないぞ。

「・・・・3人だけじゃないぞ」

 

「っ!」

 

 突然聞こえた声に俺達は改札の方を振り返ると・・・そこにはバースドライバーを持った後藤がいた。そしてゆっくりと歩きながらバースドライバーを腰に巻きつけた後藤は、セルメダルをベルトに入れてレバーを握る。

「伊達さん・・・・一緒に戦ってください。・・・変身っ」

 

 レバーを回した後藤は黄緑色の光に包まれるとこれまで伊達さんが変身していたバースに変身した。

「黙って見ているだけでは伊達さんに怒られてしまうと思ってな。・・・俺も戦わせてもらうぞ」

 

 こうしてグランザイラスの前には・・・・俺が変身するオーズ。明日夢が変身する響鬼。矢車が変身するキックホッパー。そして後藤が変身するバースが並び立った。

 

 

 

 

・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 俺達4人が変身して並んだ頃、アリアとレキは俺達の方に走って向かっていた。

 

「どうしてレキも来るのよ!たぶん怪人相手よ!下がりなさい!」

 

「むしろその場合アリアさんこそ下がるべきですよ」

 

 先ほどの協力のおかげでお互いに敵意を向けることはなくなっているのに、張り合ってしまっているアリアとレキの2人は改札を出て俺達を視界に捉えた途端・・・・

「!」

 

「「っ!?」」

 

 2人の死角となっていた右の曲がり角から片手で剣を握った仮面戦士は現れた。その仮面戦士は亮太郎が変身する電王のソードフォームに似ているが、赤く輝いているはずのアーマーは禍々しい紫色になっている。

「強い殺気ですね」

 

「・・・雰囲気からして味方って訳ではなさそうね。・・・あんた、何者?」

 

「俺か?俺様の名前はネガタロス。エヴィル6幹部の1人にして最強のイマジンだ。・・・・そしてこの姿は‘ネガ電王’だ」

 

 ネガ電王と名乗った仮面戦士はアリアとレキに向けて剣を向ける。

「お前たちには恨みなんてないが・・・・生かしておく意味もない。世界最悪の秘密結社が生み出したグランザイラスがゲームをしているからな。邪魔になる前にお前たちを殺すことにするぜ」

 

「レキっ!」

 

「・・・分かってます」

 

アリアとレキはネガ電王に銃口を向ける。

「そんなんで俺様に勝てると思ってるのか?滑稽だな」

 

「言ってなさい!風穴を開けてあげる!」

 

 ネガ電王に向かってアリアはガバメントで銃弾を嵐のように連射するが・・・・仮面戦士の姿であるネガ電王はそんな攻撃には動じない。

「言っておくが・・・・俺様の強さは別格だぞ」

 

 ネガ電王は銃弾を避けることもせずに駆け出すと、アリアに向かって剣を振り下ろす。

「お前ら!何してやがる!」

 

「アンク!?」

 

 その刃がアリアの首筋に触れてしまう寸前、丁度平賀さんや理子を避難させ終えたアンクはネガ電王の刃を怪人態にしている右腕で受け止めた。しかし止めた右腕からは強力な攻撃のあまりに10枚ほどセルメダルが落ちていた。

「お前らも早くこの場所から離れろ!矢車の話だとあの怪人は倒しても大爆発を引き起こすらしい!ここにいたら被害を喰らうぞ!」

 

「安心しろ。お前たちは爆発の被害は喰らわない。・・・・お前たちはここで死ぬからな」

 

「ぐあっ!?」

 

 ネガ電王が剣を振り払ってアンクを弾くと・・・・アンクはそのまま改札口に叩きつけられてしまう。

「アンク!?・・・っ!」

 

「アンクさん・・・・」

 

 アリアとレキはアンクの避難指示を無視してネガ電王に再び銃口を向ける。すると2人の銃口は後ろからやってきた人物にゆっくりと降ろされた。

「君達は下がっていていいよ。ここからは俺が相手をするから」

 

「あんた・・・誰?」

 

 2人の後ろに立っていた人物は・・・・どういう訳かインディアンな仮面を被っていた。アンクやアリア達に素顔を隠している人物はアンクにサムズアップをするとネガ電王に殴りかかる。

「ただの冒険家だよ!」

 

 仮面の男がネガ電王を殴りつけた途端、仮面の男の右腕は赤い鎧を纏ったような姿に変わる。そしてインディアンな仮面を投げ捨てて連続で殴ると、その姿は赤いクワガタのような仮面戦士に変わった。

「なっ?・・・クウガだと!?」

 

「うおりゃぁぁぁ!」

 

 アンクに‘クウガ’と呼ばれた仮面戦士はネガ電王の剣を回避しながらパンチやキックを繰り出す。

「お前・・・まさかリクなのか?」

 

「・・・・・」

 

 アンクのその質問に・・・クウガは答えない。

「アンク!はやくその2人を・・・」

 

「お前!やっぱりリクだろ!」

 

 自分の名前を知っていたクウガを800年前の仲間のリクだと確信したアンクは彼を呼び止めようとするが・・・・

「ぐおっ!?なかなかやるな!最近は骨がない者ばかり相手だったから面白いぞ!」

 

「こっちは全然楽しくないよ。悪いけど早くライダーシステムを置いて帰ってくれない?」

 

 クウガとネガ電王は戦いながら外へと出て行ってしまった。

「・・・リク・・・・」

 

「アンク!800年前の人が生きている訳ないでしょ!あの口の悪い紫はあの仮面戦士に任せましょう!私達はキンジ達のところに向かうわよ!」

 

「おい!だから避難しろって・・・・」

 

 アンクとアリア、そしてレキは俺達が戦っている場所へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

「・・・・はぁ・・・」

 

 真っ先に先陣を切ったのはキックホッパーこと矢車だった。グランザイラスの懐に誰よりも先に跳び込んだキックホッパーは頭部に蹴りを入れると・・・・

「・・・後藤・・・・」

 

「ああっ!」

『ドリルアーム』

『キャタピラレッグ』

 

 バースがドリルアームとキャタピラレッグを装備をして突っ込んだ。

「フンっ!」

 

「・・・・ぐはっ!?」

 

左手でキックホッパーの右脚を払いのけて地面に叩きつけたグランザイラスはその勢いで西口から外まで押されながらもバースのドリルアームを左手で受け止める。

 

「さぁて・・・まずはこの腕をもらうぜ」

 

「くっ!?」

 

 グランザイラスは右手に握ったドリルアームを砕こうとする。まずいっ!?あのままじゃドリルどころか後藤の腕まで壊されるぞ!

「ごと・・・・」

 

「灼熱真紅の型っ!」

 

 

 俺が叫ぼうとした途端に・・・・響鬼・紅はすぐさま‘音撃打、灼熱真紅の型’を叩き込んでその手を払いのける。

「ぐおっ!?・・・ちょっと効いたぞ。少しは相手になるな」

 

「お前ら!下がれ!」

 

『トリプル・スキャニングチャージ!』

 

 セルメダルを3枚入れたジャリバーをスキャンする。そして響鬼・紅の音撃に怯んだグランザイラスに向かってそれを振りかざした。

「セイヤァァァァァッ!」

 

「フンっ!」

 

 ジャリバーの次元斬とグランザイラスの破壊弾がぶつかり合って辺りには激しい土煙と強い風が舞う。

「やったの?」

 

 どういう訳かこちらにやってきてしまったアリアはそう呟く。しかしその瞬間、一瞬にしてその土煙は吹き飛んで、グランザイラスは響鬼・紅に襲い掛かった。

「うわっ!?」

 

 グランザイラスの突然の奇襲を喰らった響鬼・紅は2本の音撃棒を弾き飛ばされてしまう。

「まずはお前からトドメだっ!」

 

「くっ!?鳴刀・・・音叉剣っ!」

 

 トドメを刺そうとしたグランザイラスの攻撃を響鬼・紅は咄嗟に音叉を刀のような武器に変化させて受け止める。

「っ鬼火!」

 

そしてその至近距離から響鬼・紅はマスク部分から炎を放って目くらましをすると、音撃棒を回収して距離を取る。

「ならこれだっ!」

 

『サソリ!エビ!カニ!サッカッエ!サッカッエ!サッカエ~~ロ~!』

 

 オーズ・サカエコンボに変身した俺は右手に長刀、左手に短刀を持ってグランザイラスに斬り込むが・・・・・

「フンッ!」

 

 やはりその刃もグランザイラスの身体には傷をつけられなかった。・・・・俺達の攻撃がまるで通用していないぞ?・・・・俺はグランザイラスの攻撃を2本の刀で受け止めるも壁まで吹き飛ばされてしまう。

 

 

「ぐはっ!?・・・・・」

 

このままじゃ本当に負けちまう。いや、それどころか本当に殺させちまうぞ。必勝法を考えろ。ヒステリアモードの俺の頭脳・・・・ここまでの戦闘を振り返るんだ。あいつの外装の強度はマシーン・ウヴァ以上で俺達の攻撃はまるで効かない。かつて本郷さんや光太郎さんが戦った時はどうやって倒した?

「そういえば・・・バイオライダーになった光太郎さんが内側から攻撃したんだったな」

 

 バイオライダー・・・ってことはシャウタコンボで内側に潜り込めればよかったかもしれないが・・・

「くっ?・・・やっぱりヒビキさんでも倒せなかった怪人だから僕たちが束になっても無理ってことか」

 

 

 そういえばヒビキさんはグランザイラスにやられて大怪我したんだったな。たしか鬼系仮面戦士、通称‘音撃戦士’の特徴は清めの音である音撃を奏でて相手を浄化するんだったな。・・・・俺はその時、響鬼・紅の灼熱真紅を喰らったグランザイラスが「ちょっと効いた」と言っていたことを思い出す。

 

「っ!?」

 

 そうか!・・・見えたぞ。勝利への道が・・・。

「明日夢、お前もヒビキさんのように装甲に変身できるのか?」

 

「えっ?う、うん。試したことはないけど、できると思うよ」

 

「おそらくだが・・・・以前ヒビキさんがグランザイラスとの戦闘・・・ヒビキさんは確実にダメージを与えている。そしてその部分を突くことができるのは・・・・明日夢。お前だけだ」

 

 この戦いの勝利への最終コーナーを導くのは他でもないヒビキさんの弟子の明日夢だ。

「アンク!タジャドルで行く!」

 

 アリア達と戻ってきたアンクに俺はタジャドルの変身を要求すると、アンクは苦しそうな表情をしながらも自身の右腕から2枚のコアメダルを取り出す。

 

「仕方ないな。・・・受け取れっ!」

 

「ありがとなアンク!」

 

 俺はアンクが飛ばしてきた2枚の赤いコアメダルをチャッチすると黒いメダルをベルトから外して鳥系の赤いコアメダルを3枚ベルトに入れてスキャンする。

 

「さぁ、派手にいかせてもらうぜ!」

 

『タカ!クジャク!コンドル!タ~ジャ~ドル~~!!』

 

 オーズ・タジャドルコンボに変身した俺はジャリバーを右手に持って中段に構える。すると隣ではアカネタカが持ってきたアームドセイバーで響鬼・紅がディスクアニマル達を纏って装甲響鬼に強化変身した。

「何だ、何だ?フォームチェンジをしただけで俺様に勝てると思ってんのか?」

 

「あぁ、思ってるさ」

 

「俺達は諦めが悪いからな。倒れても何度でも立ち上がるぞ」

 

『カッターウイング』

 

 バースは背中に飛行機の翼のようなユニットを装備すると低空飛行をしながらグランザイラスに突っ込んでいく。

「っ!」

 

 グランザイラスはバースの体当たりを回避すると・・・・その隙を狙って今度はキックホッパーが駆けた。

「ライダー・・・反転キック」

 

『RIDER KICK』

 

 キックホッパーの反転キックでグランザイラスが少し引き下がると・・・その後ろからはカッターウイングで飛行しているバースがさらにショベルアームとキャタピラレッグを装備して突撃してきた。

「フンっ!」

 

 グランザイラスは破壊弾を低空飛行しているバースに向かって放つ。それに対してバースはベルトにさらにセルメダルを入れてレバーを回した。

『ドリルアーム』

『クレーンアーム』

『ブレストキャノン』

 

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

 ドリル・クレーンアームとブレストキャノンをさらに装着して、バースユニットをフル装備したバースは右腕のドリル・クレーンアームで破壊弾を貫いた。そしてそのままグランザイラスに突進するとクレーンアームのワイヤーで動きを封じた。

「今だ!明日夢!」

 

「うん!爆裂真紅の型!」

 

 装甲響鬼はアームドセイバーを腰の後ろに納めるとベルトの音撃鼓をグランザイラスに埋め込み、それから発せられた炎で模られた音撃鼓を2本の音撃棒で叩く。

「そんな音なんかでこの俺様が・・・ぐおっ!?」

 

 グランザイラスの予想とは裏腹に、装甲響鬼の奏でる音撃はたしかにその身体に効いていた。

「な、なぜこの最強の身体がダメージを受けるんだ!?この身体は11人ライダーでも傷をつけることができないほどの最強の身体のはずだぞ!!」

 

「・・・・お前は知らなかったんだよ。様々な仮面戦士・・・・僕やヒビキさん達の変身する音撃戦士の特徴をね」

 

 音撃の最大の特徴は‘音撃’・・・それは清めの音で相手を内側から清めることだ。そもそも‘音’っていうのは空気に振動して辺りに響き、振動が人にぶつかることで‘音’がしたと認識される。音撃は音の攻撃であって外装などを気にせずに内側からダメージを与えるんだ。だからこそ外側が強固な身体なら内側からダメージを与えればいい話。ヒビキさんの最後の攻撃も証言によると音撃という話。ヒビキさんは気づいてたか、気づいていないかは分からないが・・・・ヒビキさんの攻撃は確かにグランザイラスに効いていたんだ。

「ぐあぁぁぁ!?」

 

 どんなに硬くて外側から攻撃が通じなくても、内側から外側へと響く攻撃を防ぐ手段はない。それにヒビキさんの音撃による蓄積ダメージもあるはずだからダメージは相当なはずだ。

「相棒・・・あの怪人は倒したとしても大爆発を起こすんだぞ?」

 

「ああ、だからドドメは・・・・」

 

 キックホッパーに質問された俺はだいぶ日が暮れて、月明かりが輝く夜空を見上げる。

「空で決める!・・・後藤!」

 

「・・・なるほどな。それじゃ後は、任せたぞ」

 

 もう身体が限界だった様子のキックホッパーはその場に倒れて変身を解除してしまう。・・・そうとうウヴァとの時にダメージを受けてたらしいな。・・・翼を広げた俺はグランザイラスに体当たりをすると、そのまま空へと飛び上がる。するとクレーンアームのワイヤーでグランザイラスを押さえていたフル装備のバースも、空へと飛び上がった。

「あれだけ音撃を喰らったんだ。さすがに次の技は耐え切れないだろ?」

 

『サソリ!カニ!エビ!ギン!ギン!ギン!ギガスキャン!』

 

 俺はグランザイラスから離れるとタジャスピナーにサソリ、カニ、エビのメダルをセットしてオースキャナーでスキャンする。

「伊達さん・・・あなたの魂、俺が受け継ぎます!」

 

『セルバースト』

 

 クレーンアームのワイヤーを解いたフル装備のバースはブレストキャノンにエネルギーを溜めるとその狙いをグランザイラスに定める。

「ヒビキさん・・・・僕はもう諦めませんよ。・・・・鬼神覚声!ハァァァァァ・・・」

 

 装甲響鬼はアームドセイバーで自身の声を音撃として空へと放つように構える。

「っセイヤァァァァァァ!!」

 

「ブレストキャノン!シュゥゥゥゥゥゥト!!」

 

「覇ぁぁぁぁっ!!」

 

 俺はタジャスピナーで上空から黒く輝くメダル状のエネルギー弾を放つと、同じく上空にいるバースも特大のエネルギー砲をブレストキャノンから放つ。そして地上の装甲響鬼は鬼神覚声による炎の斬撃を放つ。そして上と下からの攻撃は完全にグランザイラスを挟んだ。

「ま、まさか最強の身体を持つはずの、この俺様がぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 空からの必殺と地上からの必殺が直撃したグランザイラスは・・・・おそらくは東京ドームをまるごと1つの飲み込んでしまうような爆発をした。

 

 




名前:麻生勝

 仮面ライダーZOとしてネオ生命体と戦った戦士。海外活動組の1人で真、瀬川と共に世界各地で今も戦っている。変身後はJと見た目が非常に似ていることで仮面戦士科にもよく間違われることを少し気にしてる。

名前:瀬川耕司

 仮面ライダーJとして宇宙からの侵略者フォッグと戦った戦士。麻生、真と共に世界各地で今も戦っている。変身後はZOに見た目が似ているせいでよく間違われるがこちらはあまり気にしていない。しかしフォッグマザーとの戦いのせいもあり「巨大化して」と頼まれたりして対応に困らされる時もある。

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