緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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ライオンコア×1
クワガタコア×1
サイコア×1
シャチコア×1
トラコア×1
カマキリコア×1
ゴリラコア×1
ウナギコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×1

サソリギジ×1
カニギジ×1
エビギジ×1



尾行者と無機質と知らない感情

「尾行者がいます」

 

「「えっ?」」

 

 金閣寺などの社寺の見学を終えて制服しか服は持っていないらしいレキのためにノースリーブの白いワンピースを買ってやって店から出ようとした途端、レキがいきなり告げてきた。

「視線を不自然に動かさないでください。誰かは分かりませんが、おそらくはSランク級のプロです。始めは攻撃的ではなかったのですが、今ハッキリと敵対的になりました。店外・・・・入り口付近から監視されています」

 

「い、いつから?」

 

「キンジさん、さっき店外に出ましたか?」

 

「あ、ああ」

 

 さっき俺はレキが試着室に籠っている時に外に出て、露天商でちょっと買い物をしている。

「その時からだと思います。私が試着室から出た時には、すでに視線を感じていました。この街に来たとき、すでに追跡されている感覚はあったのですが・・・・その後、撒いたつもりでした」

 

 俺達に尾行?・・・・最初は敵対的ではなかった時点でエヴィルではないことは確実だが一体誰が・・・何のために?そう思った俺は服の置いている棚へと移動すると、さりげなくバッタカンを取り出して偵察に行かせる。するとスタッグフォンに写った映像には燕尾色のスカートにピンク色のツインテールの人物が写っていた。

「っ!」

 

 驚いて振り返ってしまった俺は、入り口からこっそり覗いていたアリアと目が合ってしまった。

「・・・・・っ!」

 

 そしてなぜか俺とレキの方を見てこの世の終わりのような表情をしたアリアは脱兎のごとく逃げ出した。

「待てよアリア!!」

 

 俺はレキと明日夢をその場に残してアリアを追いかける。若者達でごった返す道は走りづらかったらしく俺はすぐにアリアに追いついた。

「~~~~~~~!!」

 

 何とかして俺が掴んだ手を振り払おうとするアリアは、声も出ないぐらいに興奮している。・・・たぶん誤解をされているから何とかして誤解を解かないとな。

「あ、あんたはいい!あたしもはっきり言ってなかったから!でも、あたし、レキにはちゃんと話していたのに!あの子は知っているはずなのに!レキ!・・・レキなんか!・・・・あんたもいい加減離しなさいよ!あたしは忙しいの!呉に行く前に、ちょっと大阪武偵高に寄っただけなんだから!呉に理子と武藤を待たせているだから!」

 

 アリアが興奮状態せいで前半はよく分からなかったが・・・たぶん呉っていうのは広島だと考えるとかなえさんの裁判関連か?俺はそう問いかけようとした時・・・・

「あたしが忙しい間!」

 

 アリアは平拳で俺の眉間を叩き・・・

「レキとアベックで!」

 

 さらに足払いをかけて・・・・

「お幸せにね!!」

 

 トドメに倒れている俺の顔面を踏みつけて走り去ってしまった。・・・・俺、まだ何もやってないのに。

「おい!俺の話を・・・・!」

 

 俺が叫んでアリアを呼び止めようとすると、ようやくハイマキが追いついてきた。アリアが素早く退散したのはこいつが来たからか。・・・いや、それだけじゃないな。何となく感じたが、近くでレキがこちらを見ているな。あのドラグヌフの殺気でまたもやアリアを追っ払ってしまったんだ。ああ、修学旅行Ⅰはチームを作るためのはずのものなのにアリアとレキ、そしてその間に挟まれている俺は逆に険悪になっちまったな。・・・・そう思った俺は深いため息をつきながらレキや明日夢と合流するために先ほどの店へと戻った。

「・・・・アンク、俺達が相棒達の仲介人にならなくていいのか?」

 

「・・・・いや、俺達がキンジ達の間に入っても逆に溝が深まっちまうだけだ。ああいうのは当事者達で解決させたほうが綺麗に纏まるんだよ。下手に第3者が介入すると、その時だけは解決したような感じになるが内側では何も解決しないからな。・・・・俺達はこのままアイツ等と別行動で動くぞ。京都に出現したらしい青い怪人の情報を集めるんだ。・・・・最悪な展開にならない前にな」

 

「・・・分かった」

 

 俺は気づいていなかったが・・・アンクと矢車は俺達の様子を確認して何処かに立ち去っていった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 武偵憲章第4条の『武偵は自立せよ』に従い、修学旅行Ⅰの武偵高生徒は宿泊先も自分で手配するのがルールだ。明日夢はヒビキさんと合流してキャンプをするといって別れてしまい、俺達は京都の北東、比叡山の山の方にある鄙びた民宿を手配していたんだが・・・・

「すいませんわぁ。お客はん達の予約していた部屋の一つが2日前にのぅ、宇宙飛行士のような白い見た目で右腕にロケットをつけた仮面戦士が突っ込んできたせいでボロボロになってしまったんよ。当然部屋代は安くしたるから一部屋にしてくれんか?せっかくやから彼女さんと相部屋って感じで」

 

 どうやら予約していた部屋が一つ駄目になったらしい。・・・・ロケット野郎、見つけたらサゴーゾコンボのゲンコツしてやるからな。・・・おっと!?今はレキが彼女であることを否定しないとな。

「いや、これは彼女とかじゃないんでっ!」

 

「彼女ですよ」

 

 レキめ。何余計なことを口ずさんでいるんだ。

「民宿の方が発言が主体で、それ以外でここにいる女性は私だけです。従って、三人称は彼女ですから」

 

 先生みたいな口調でズレたことを言っているレキに俺は反論しようとすると・・・・

「んもぉ~!若い子は初々しくてええわぁ~。沙織あてられちゃいますわ~」

 

「あ、いえ、こいつは少しアレな子でして・・・」

 

 妙に乙女チックな動作でいやんいやんと動く女将さん・・・沙織さんに俺はレキの誤解を解こうとするが・・・

「今日は他のお客さんがおらんさかい、ええ部屋を使ってくださいな」

 

 沙織さんはこっちに背を向けて完全に接客モードになってしまうのだった。・・・つーか人がいないならどっかの部屋に変更させろよ。・・・・もしかしてだけど俺・・・はめられたのか?いや、あの様子を見ると確実にはめられたんだろうな。案内された『西陣の間』は畳も真新しい豪華な場所だった。部屋名の通り、壁には色彩豊かな西陣織の反物が飾られていて、絹布の前には人が入れそうなくらいの大きな壺があり、部屋の高級感を高めていた。そして食事を終えて温泉に入ったんだが『男湯』や『女湯』の表示すらなく危ないと思っていたのでレキに「絶対ついてくるなよ」と言ったのにレキ曰く「危険を感じた」と言われて入ってきた時は本気でヒスるんじゃないかと心配した。そして部屋に戻ってくると、とても大きな布団が一つだけしかしかれていなかった。そしてそこには枕が2つ仲良く並べられている状態だ。さすがにいくらそういうのに疎い俺でもこの意味は分かってしまい気が気でならなくなってしまう。・・・・沙織さん・・・人がいないからって俺達で遊んでいないか?

「そ、そういえばハイマキはどうしたんだ?」

 

 このまま考えているだけでもヒスってしまいそうな俺は考えをそらすためにも先ほどから見かけないハイマキの話題を出す。その一方、レキはマイペースで狙撃銃を抱えると、壁際に移動して体育座りをした。

「室内にいます」

 

「室内?」

 

 いないから聞いたのに。まぁ・・・いいか。レキが布団から離れてくれたおかげで、色々と心配する必要はなくなったんだし。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 き、気まずい。気まず過ぎるぞ。これじゃまるで逆に布団を意識してるみたいじゃないかよ。

「レ、レキ・・・お前は・・・・ここでも銃を抱えて、座って寝るのか?」

 

 沈黙に耐えかねて自分から切り出した俺は・・・・いきなり切り出し方を間違えたことに気づいた。今の台詞は逆に俺から誘っているようにも聞き取れるぞ。・・・しかし俺のそんな心配は取り越し苦労だったらしく・・・・

「はい。常に備えよと・・・・風が命じていますから」

 

 レキは斜め下の畳を見ながらそう答えた。と、いうことは座って寝るんだな。寝ないんだったらこっちが気分悪いから安心したぞ。

「風の命令か。・・・完遂してくれよ、それも」

 

「はい。ただ・・・・風は他に2つのことを命じています。私はその1つを実行できていません」

 

「何だそれ?」

 

 俺が眉を寄せるとレキは音も無く立ち上がった。

「風を守る、ウルスの子孫を作ることです」

 

「ウルスの子孫・・・・?」

 

「キンジさんと私の子供です」

 

「っ!」

 

 せっかく考えないようにしていたことを蒸し返されかけた時、大きな壺が倒れたかと思うとハイマキがその中から出てきた。・・・お前、そこに隠れていたのか。そして部屋の電気を消したレキは・・・・

「それと・・・もう1つ命じられています」

 

 急に声を潜めて屈んできた。

「キンジさんを守れ・・・と」

 

 そう俺に告げたレキは普段のこいつとは思えないほどの力で俺を押し倒した。

「っ!?」

 

 あまりに突然のことに俺は真っ赤になった途端・・・事件は起こった。何かが風を裂く音が聞こえたかと思うと、廊下側の方から窓ガラスが割れる音が聞こえた。そして次々と窓ガラスが割られた音が聞こえたかと思うと・・・俺達の部屋のTVの上に置いていた俺とレキの携帯が精密に狙撃された。そして部屋の装飾は次々と破壊されていく。

「狙撃です・・・レミントンM700。距離は2180メートル。山岳方面から撃ってきました」

 

 発砲音から銃の形式や距離を見抜いたらしいレキが淡々と告げる。東京武偵高でも最も長大な射撃距離を持っているSランク武偵のレキが絶対半径は2051メートルもあるのに、相手はそれをさらに上回っているだと!?・・・しかもレミントンM700は世界で最も信頼度の高い狙撃銃、つまり俺達を狙う相手は超一流だってことだ。

「ここは危険です。敵から私たちの場所が分かりすぎている。野外に移動しましょう」

 

「敵って誰だよっ!」

 

 おそらく狙撃銃を使っている時点で敵はエヴィルの連中ではないことはたしかだ。だとするとやっぱりイ・ウーの残党か?・・・・俺達は警察に連絡している沙織さんを背に勝手口から外へと出た途端、どこからともなく・・・・

『遠山キンジ レキ 2人とも投降しやがれ です』

 

「・・・・・」

 

 ネットで話題なボーカロイドのような人工音声が聞こえてきた。そしてそれに気づく俺の横でレキはドラグノフを上に構え空に発砲した。そして漆黒の夜空にちいさな花火のようなものが弾けたかと思うと、黒く着色されたラジコンのヘリが墜落していくのが見えた。だがレキの発砲に応戦するかのように、次の瞬間、何発もの銃弾が俺達に降り注いだ。

「ちっ!?まだいるのかよ!・・・沙織さん!外に出ちゃ駄目だ!」

 

「えっ!?」

 

 携帯を片手に外に出てきた沙織さんを、俺は慌てて中に押し戻す。外からの銃撃は精度が悪い上に、音を抑えるためか軽量のラジコンを使っているだめ狙いが定まりにくいので何とか俺達は当たらずに済んだ。しかし「下手な鉄砲数撃ちゃあたる」ということわざがあるように、地面からの兆弾だってこれだけ乱射されたら危険だ。そしてただでさえそんな危険な状況なのに・・・・

「オマエタチ、覚悟スルネ!」

 

 身体の各部にTVなどのリモコンのようなものが張り付いているトンボのような怪人が空から降りてきた。

「・・・何だこの怪人は!?」

 

 エヴィルは過去にレジェンドライダー達が戦った怪人を作り出す傾向にある。だけどこんな怪人は仮面戦士科の教科書でも見たことがないぞ。・・・となると可能性があるのはドーパントかヤミーだよな。だけどドーパントは1つの記憶から怪人を作り上げるから、こんな合成怪人なんてありえないし、ヤミーにしたって無機質と昆虫が混ざった怪人なんて無理なはずだ。

「サァ、邪魔者ハ死ンデモラウネ!」

 

 リモコントンボが羽根を振動させた途端、どこからともなく大型トラックが俺達・・・いや、沙織さんを狙って突進してきた。

「まずいッ!?変身ッ!」

 

『タカ!カマキリ!バッタ!』

 

「セイヤッ!」

 

 俺は咄嗟にオーズ・タカキリバに変身してカマキリアームの刃でトラックを切り裂くとトラックは他のラジコンを巻き込んで爆発する。

「チッ!失敗シタネ!ダケド次、外サナイ!」

 

 リモコントンボが再び羽根を振動させた途端、先ほどのサブマシンガン付きのラジコンが再び大量に集まってきた。

「逃げると そこと沙織さんを 破壊す・・・・」

 

「私は一発の銃弾」

 

 レキはこちらに語りかけようとしていたラジコンを狙撃して次々と破壊する。・・・・この手口、忘れもしないぞ。4月に俺を狙った『武偵殺し』・・・理子と同じような手口だ。そんな相手が俺達を狙っているのにリモコンとトンボが混ざったような怪人に狙われることになるなんてな。

「・・・まったく・・・どうすりゃいいんだよっ!!」

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

 俺はそうキレ気味に告げながらタトバへと姿を変えて展開したトラクローをリモコントンボに振りかざした。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 俺が謎のリモコントンボと戦い始めた頃、マシーンのメモリを左手で握っているウヴァがその戦いを見ていた。

「あれが俺の新たな力で誕生したヤミーか。・・・・フン!人間の作った力に頼るのは癪だが・・・背に腹は変えられんからな。そのブンの働きは見せてもらうぞ」

『MACHINE』

 

 この時の俺はリモコントンボがまさかガイアメモリを使った無機質合成ヤミーであることなど知るよしもなかった。

「ハァァァッ!」

 

「ハイヤッ!」

 

 俺の振り下ろしたトラクローはリモコントンボの右腕のリモコンに止められてしまった。この強度・・・リモコンのくせに鋼みたいに硬いなんておかしいだろ。

「セイヤッ!」

 

 ひとまずリモコントンボから離れた俺はメダルホルダーからクワガタのコアメダルを取り出す。

「くっ!?・・・だったら電撃で機械をショートさせてやる!」

 

『クワガタ!トラ!バッタ!』

 

「ハァァァァァッ!」

 

 オーズ・ガタトラバに変わった俺はクワガタヘッドから電撃を放つがどういう訳か機械の怪人のはずなのにあまり効いていない。

「ちっ!・・・頑丈にもほどがあるだろ」

 

 やっぱりコンボを使うか?だけど今できるのは一番体力の消費が激しいガタキリバコンボと‘あのコンボ’だけだ。・・・・そもそもここでコンボを使えばレキや沙織さんなどの旅館の人を巻き込んじまう可能性だってあるし、コンボを使った後の反動で動けなくなったら狙撃手の餌食だ。

「・・・・しばらくは亜種で凌ぐか」

 

 そういえば前にヒビキさんの授業で聞いたことがあるな。・・・「戦闘で最も難しい戦い方は守りながらの戦い」って。守りながらの戦いで一瞬でも隙を見せたりしたら自分だけじゃなく守っている人達にも被害が及ぶ。もしそんな戦闘になった場合優先するのは・・・・

「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「掴マレタ!?セクハラネ!」

 

 相手と守っている人を引き離すことだ。・・・・そう判断した俺はリモコントンボに突進してこの場所から力ずくで戦っている環境を変更させた。

 

「セイヤッァ!」

 

駐車場を駆け抜け森の中に移動するとすぐさま回し蹴りでわずかに気を逸らすと、その隙に電撃を目くらましにして暗闇の中に目を潜める。・・・・クワガタヘッドはタカヘッドの超視力もなければライオンヘッドの暗視もある訳ではないので生身よりは見えるがオーズの変身の中では見えにくい。かといってメダルを変えようにも変身の際の発光によって狙撃手に気づかれる可能性もあるので下手にメダルを変えることはできない。

「レキ、もう少し・・・」

 

もう少し明るいところに移動しよう、と言おうとするとレキはジェスチャーで「静かに」とやってくる。

「声を潜めてください。敵の狙撃手は集音機を持っていると思われます。さっきキンジさんが旅館の女性を名前で呼んで警告した直後・・・敵も名前を呼んでいました」

 

 そういえば・・・・リモコントンボの方にだいぶ気を取られていて聞き流す感じだったがたしかに沙織さんがボーカロイドの声に名前を呼ばれていたな。

「キンジさん。私を使ってHSS・・・ヒステリアモードになってください」

 

 な、何だって?・・・ヒステリアにだと?

「この戦いの結果がどうであれ、今のあなたではこの森から逃げられない」

 

「だ、だけどヒステリアになるためには・・・・・」

 

 あまりに突拍子のない作戦を告げられた俺は言葉を詰まらせる。アンクがいた場合は俺の血流を加速させる本とかと投げつけてくるが・・・・ここにはアンクはいない。目の前にいる人はレキだけだ。

「私なら何をされても構いません。あなたなら・・・・時間はあまりないですけどできますか?」

 

「時間?」

 

「私はこれから狙撃手と撃ち合います。私が即死あるいは負傷したりしたら、その場に放置していってください。その際、この銃からスコープを外して持っていってください。このスコープにはカメラが内臓されていて、狙撃の瞬間、私が見ていた画像を記録できるようになっていますから・・・・敵の姿を確認できます」

 

「お、おい」

 

 自分が死ぬようなことを事務的に告げてくるレキに俺は戸惑いを隠せない。

「キンジさん、はやくHSS・・・ヒステリアになってください」

 

「そんなこと、この状況で・・・」

 

「無理ニ決マッテルネ!」

 

 声の聞こえた方向を振り返ってみると・・・・先ほど振り切ったつもりだったリモコントンボがすでに数メートル後ろに立っていた。

「・・・・キンジさんはそちらの怪人の相手をお願いします。その間に私は狙撃手と撃ち合います」

 

「ああ、分かった。・・・・ハアァァァァッ!!」

 

 俺は両腕のトラクローを展開してリモコントンボに切りかかるが先ほどのようにあっさり止められる。

「こっのぉ!」

 

 その反動を利用してリモコントンボの上を一回転した俺は後ろから右腕のトラクローを振りかざす。・・・・これなら避けることはできないだろ!

「甘イネ!」

 

「なっ!?」

 

 リモコントンボの背中の外装は想像以上に硬くトラクローはあっさりと弾かれてしまった。リモコン以外の部分でもこんなに硬いのかよ!?

「ハイヤッ!」

 

「ぐあっ!?」

 

 まるでこの前襲ってきた留学生のような体術で俺を地面に張り倒すと、その反動でクワガタのコアメダルがベルトから吹き飛び変身が解除されてしまった。俺はすぐさま吹き飛んだクワガタを回収しようと立ち上がるが・・・・

「よくやったぞ!」

 

「なっ!?ウヴァだと!?」

 

 そこに突如ウヴァが現れクワガタのコアメダルが奪われてしまった。

「オオ、ウヴァ様ネ!サッキマデコソコソシテイタノニ何デ出テキタネ?正直言ッテ邪魔ネ」

 

「・・・・口は悪いが戦闘力は確かなようだな。・・・どうだオーズ!これが俺が新たな力を使って作り出したヤミーだ!」

 

 ウヴァはクワガタのコアメダルを吸収する時、左手には何かが握られているのが見えた。メモリのイニシャルは『M』・・・Mのイニシャルでリモコン?・・・そうか!機械の記憶!『MACHINE』のMか!

「さぁ・・・残りの俺のメダルも貰っていくぞ」

 

 そう言いながら俺がさっき落としてしまったメダルホルダーを拾いあげたウヴァはそれを開こうとした途端・・・・

「っ!?」

 

 ところどころを負傷しているレキがウヴァの手からメダルホルダーを弾いた。俺はすぐさまメダルホルダーを回収した途端、ウヴァはレキの方を睨みつける。

「人間ごときが・・・まあいい。オーズとともに、ここで死んでもらう」

 

 ウヴァがボロボロのレキにトドメを刺そうとしたその時、その攻撃をキックホッパーの右脚が止めていた。

「・・・・久しぶりだなミドリムシ。・・・いつぞやのお返しをさせてもらうぞ」

 

「・・・ふん。あの時の飛蝗の戦士か。・・・・いいだろう。オーズにトドメを刺す前に相手になってやる」

 

 キックホッパーとウヴァは暗い森の中に走り去っていくと機械の記憶を使って強化されたヤミーだと分かったリモコントンボヤミーは「アチャ~。ウヴァ様行ッテシマッタネ」と呟きながらボケッとしていたので、俺はその隙にレキのところへと駆け寄る。

 

「レキ!」

 

「・・・キンジさん。これを・・・・」

 

 ぽた、ぽた、と膝や額から血を流しながらもレキは俺にドラグヌフと銃剣を渡してくる。それとともに辺りから2~30匹はいる犬の遠吠えが聞こえた。

「残念ですが・・・私は負傷してしまいました。おそらくは狙撃手のと思われる猟犬を追い払いつつも、あなたを庇う力はもうありません。あなただけでも逃げてください。先ほど少しだけダメージを与えましたが、敵はきっとすぐに体勢を立て直し・・・私にトドメを刺しにきます」

 

「何言ってんだ!それならなおさらお前を丸腰にできるかよ!」

 

「まだ炸裂弾があります。・・・これは銃がなくても起爆できる」

 

 こいつ・・・自爆するつもりかよ!

「馬鹿をいうな!・・・・こんなところで・・・・訳の分からない奴を相手に死ぬなんて・・・・お前、それじゃ犬死にじゃないか!!『風』の言うことばっかり聞いて、いっぺん笑ったことも泣いたこともなく・・・・何の感情も持たないまま死ぬなんてあんまりだろ!!」

 

 俺がそのように告げると・・・レキは首を横に振った。

「キンジさん・・・私は先日『感情を抱いたことがない』とあなたにいいましたね。でも本当は・・・なぜか、あの時、あなたに言えなかった。・・・私は・・・一度だけ明確に感情を持ったことがあるのです。・・・・私は『風』に男性を、強い男性をウルスに入れることを命じられていました。・・・・そして『風』が・・・キンジさんのものになれ・・・と告げたとき・・・私は初めて、自分自身の思いが生じたのです。・・・・『相手がキンジさんで良かった』と・・・」

 

 レキは・・・仕草や態度で表現できないながらも、心の中に自分自身の思いを芽生えさせていたのか。

「だからキンジさん、私は感情を持たないまま死ぬ訳ではありません。・・・あなたが気に病むこともないのです。・・・ウルスを永続させるための使命は私の姉妹の誰かが改めて負うことになるでしょう。・・・私は・・・もういいのです。私に初めて想いを生じさせてくれた人。一緒に食事をしたり服も買ってくれた。僅かな時間でしたが、その時も私は感情を表現することができなませんでしたが・・・・きっと感情・・・・私は嬉しかったのです。あなたと過ごした日々・・・楽しかったです」

 

この時・・・今、初めてレキの表情が笑顔になっていた。そのぎこちない笑顔を見た時、俺はようやく気づいた。・・・・レキは感情が無い訳じゃない。感情を知らないだけだったんだ。

「話ハ終ワッタ?ナラ、ソロソロ死ンデモラウネ!」

 

 今まで黙って立っていたリモコントンボヤミーはゆっくりとこちらに近づいてくる。

「キンジさん・・・・行ってください・・・」

 

「レキ・・・確かに2人死ぬよりも1人生き残るほうがいいだろうな。・・・・だけど俺は目の前で消えそうな命を見過ごせない人間なんだよ」

 

 俺は内ポケットから黒い3枚のメダルを取り出す。

「・・・・こんな状況で馬鹿な答えかもしれないが・・・・2人とも生き残る方がいいに決まっているだろ!」

 

 その3枚のメダルをベルトに入れた俺は目を瞑って思い出す。・・・俺にこの黒いメダルを託してくれた。・・・・夏休みに出会い・・・救いきれずに去って行った友達を・・・。

「・・・・ノブナガ、お前の力・・・俺に貸してくれ・・・・・・変身ッ!!」

『サソリ!カニ!エビ!サッカッエッ!サッカッエッ!サッカエ~~ロ~!!』

 

 オースキャナーでベルトをスキャンした途端、俺は金属光沢に近い銀色の光に包まれる。そして俺の頭部は剣の変身するサソードにも似た黒い形に、銀色の複眼へと変わり、胴体は漆黒のクジャクアームの両肩にそれぞれ大きさの違う刀を装備させたものに、足はオーガのような布みたいなアーマーがついたライトブラックのバッタレッグへと変わった。

「・・・・そのような姿は報告にはありませんし、『風』すらそのメダルの存在を知りません。・・・・その姿はいったい?」

 

「・・・・最終的に一番大切なものを手に入れた・・・・かつて天下人でもあった奴から受け取ったメダルが起こした天下の姿。・・・・‘オーズ・サカエコンボ’だ。初陣させてもらうぞ!」

 

 右肩から長刀を抜いた俺はそれを両手で握ってリモコントンボヤミーに中段の構えを取った。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

 俺がサカエコンボに変身してリモコントンボヤミーに長刀を構えた頃、アンクは俺達が泊まっていた旅館の玄関の前に立ってスタッグフォンの画面を見ていた。

「キンジはアイツのメダルを使ってウヴァのヤミーと交戦中、矢車もウヴァと戦闘中らしいな。・・・・さてと、俺も少しは手伝ってやるか。・・・オラァッ!」

 

 アンクは右腕を怪人の姿に変えると旅館に向かってくる猟犬達を次々と殴り飛ばす。そこに1人の少女がやってきた。・・・・あの時俺を襲った留学生のココだ。

「へぇ、お前なかなかやるネ!80点やるネ!名前を言うネ!」

 

「アンクだ。・・・・言動から察するに・・・・お前が今回の事件を起こした犯人か。探す手間が省けたな。・・・・他の犯行メンバーの居場所を教えてもらうぞ」

 

「・・・アンク、覚えたネ!お前も貰って帰るヨ!」

 

「貰う?何のことだ?」

 

 ココを睨み付けたアンクはスタッグフォンをしまう。

「これから超能力者、みんな滅びる。お前らみたいな『ただの人間だけど強い駒』早く手に入れておくの、良いネ!」

 

「・・・俺は人間じゃなく怪人だぞ。その証拠に・・・」

 

 アンクは自分の右腕をココへと見せるが、ココは「何言っているの?」と言いたげな表情をする。

 

 

「お前、怪人のようにも見えるけど、怪人達が放っている気力がないネ。お前は特別、確かに『ただの人間』ではないけど怪人でも超能力者でもないネ!お前のような怪人、聞いたことあるネ!たしか『アミ・・・・』」

 

 ココが何かを言おうとした途端、アンクは右腕から火球を顔面あたってしまうスレスレへと放つ。

「・・・・軽々しくそのことを口にするな。次は当てるぞ」

 

 アンクは鷹が獲物を狙うかのような雰囲気でココを鋭く睨み付けた。

 

 




名前:城茂

 仮面ライダーストロンガーとしてブラックサタンやデルザー軍団と戦った戦士。現在はかつて立花藤兵衛が営んでいたオートバイショップを継いでいる。

名前:筑波洋

 スカイライダーとしてネオショッカーと戦った戦士。海外活動組の1人でノルウェーを知り合いのところを拠点に人々を守るため今日も空を飛ぶ。

 サカエコンボの説明は次回の後書きで行います。

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