緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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counttheMedal!現在オーズの使えるメダルは

タカコア×1
ライオンコア×1
クワガタコア×1
サイコア×1
シャチコア×1
トラコア×1
カマキリコア×1
ゴリラコア×1
ウナギコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×1

サソリギジ×1
カニギジ×1
エビギジ×1



ラーメンと水投げとルール違反

銃やナイフを振り回す武偵高では、殺人未遂程度のことなんて軽く流されてしまうのが現実だ。しかも先生に「留学生の年下の女子にやられました」なんて言えるはずがない。・・・そんな訳で俺は誰にも言わずなかったことにしようと思っていると・・・

「どうしたんだ相棒?少し悔しそうだな」

 

 矢車がやってきた。・・・・なんだろう。矢車が黒いスーツを着ているとなんかあまりいいイメージが沸かない。

「・・・いや、別に何でもねぇよ」

 

「・・・・首に絞め跡があるな。もしかして黒いツインテールの留学生にやられたのか?」

 

「っ!?」

 

 なんで分かったんだ!?さすが元Sランク。

「俺もさっき襲撃を喰らいそうになった。・・・・まぁそうなる前にシャボン玉を蹴ったがな。しかし俺の前に後藤が被害に会っていて・・・同じ絞め跡があったからな」

「・・・・・」

 

 何だ・・・俺以外にも被害者がいるんだな。・・・つーかまさか後藤も被害者になっちまうなんてな。

「後藤だけじゃなく他に何人も被害にあっているらしいぞ。須藤や城戸も被害にあったらしいからな」

 

 やられ役の須藤はともかく、バカとはいえ仮面戦士科の信司ですら被害に会うなんて、どうやらココの格闘センスは並みの仮面戦士科の生徒以上ってことだな。・・・そういえば中国は強襲型武偵育成カリキュラムが日本とまったく違うって聞いたことがある。個人に何らかの素質を見出したのなら、武偵高ではそれだけを叩き込む。たとえば拳銃なら拳銃。ナイフならナイフ。剣術なら剣術。おそらくココは格闘技だけを幼い頃から学んだんだろうな。・・・・そんなこと考えながらも矢車と別れてレキと合流した俺は、こいつもそんな感じだったのかと考えた。

「さて・・・どこで昼を食べようか」

 

 現在、俺達は台場の街をブラブラ歩いていた。・・・今日は始業式だけで終わり、どこかで昼食を取ってから帰ろうと思ったんだが、武偵高の食堂ではレキの信者達が俺を張っていて水投げのルールに乗っ取って俺を揉みくちゃにしようとしてきたから昼飯を食べることができなかったからだ。せっかくなら光太郎さんのステーキ屋にも行こうかとも思ったが、あそこも見張られているかもしれないから止めておこう。

「レキ、お前何か食べたいものはあるか?」

 

 適当なデパートのフードコートにたどり着いた俺はペットを預かるコーナーに預けてきたハイマキを少し心配しながらもレキに食べたいものを聞いた。・・・どうせ『何でもいいです』っていいそうだがな。

「何でもいいです」

 

 やっぱりな。まぁ、ここまでは想定内だ。

「じゃあラーメンを食うぞ。ここの新都城って店がうまいらしいからな」

 

 ここの兄貴味噌ってラーメンがうまいってさっき矢車から聞いたし言ってみるか。会社・仲間・交友を意味する『Company』という英語の語源が『共にパンを食う』であるように、一緒に何かを食べることは人間関係を深めるらしいからな。そんな考えで俺はレキと一緒に新都城に向かった。そして小さいテーブルにレキと向かい合うようにして座った俺は、まずご機嫌をとろうと思って・・・

「今日はおごる」

 

 と、前置きをしてやってきたウェイトレスに・・・

「俺は兄貴味噌。こいつには一番高いメニューを出してやってください」

 

 と言った。まぁ・・・例のものを平賀さんに頼んだせいでせっかくのあんなにあったお金のほとんどが無くなっちまったが今日の財布には三千円は入っているから大丈夫だろうな。

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 俺とレキは無言で食事が来るのを待つ。武偵活動中に女子と組まされた時は・・・俺は性格上、無言になることがある。そういう沈黙には気疲れする。しかし今、俺の前にいるのは女子は女子でもレキだ。カカシを置いているようなものだから気を使わないで済む。そういう意味では俺にとってレキは希少な女子かもしれないな。

「お待たせしたでござる」

 

 聞き覚えのある声に振り向いてみると、エプロン付きのウェイトレス姿の風魔がいた。こいつ始業式サボってここでバイトしてやがったな。

 

「師匠、ご注文の品をお届けに参ったでござるよ。ささ、どうぞ」

 

 俺の頼んだはずの兄貴味噌のチャーシューはどういう訳か手裏剣の形に切られていて明らかに普通のチャーシューより面積が少なくなっている。風魔は「師匠、褒めてくだされ」とでも言いたげな表情でこちらを見ているが・・・・これは褒めるところじゃなく怒るところだぞ。普通の客はな。・・・まぁ、今回は許してやるが反応はしないことにしよう。

「・・・・なんだ・・・これ?」

 

 割り箸を割った途端、風魔は俺達のテーブルに大きな壺に入ったラーメン?を置いてきた。

「こちらはレキ殿がご所望なされた、当店でもっとも高い超壺麺でござる」

 

 マジかよ。・・・てか、人間が食べれるレベルじゃないぞこんなの。

「こんなのメニューに載ってなかったぞ?」

 

「今月からの新メニューでござる」

 

 風魔が開いたメニューには『新メニュー、超壺麺!5000円。ただし30分以内に食べ切れたらタダ』・・・と書かれていた。こんなの30分で食べきれるはずないだろ。・・・どうしよう俺の財布は残り3000円しかないのに。

「待て!俺は手持ちが三千・・・」

 

「それでは計測開始!スタートでござる!」

 

 こいつ!?問答無用で始めやがった!?

「・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

 俺は壺に顔が隠れてしまっているレキを振り向くと・・・箸を割って次々と麺を食べ始めた。しかも麺を食べてから次の麺を食べるまでの間断を無しにだ。

「・・・・・・!」

 

 ラーメンってこんな無駄のない動きで食べられるんだな。・・・そんなことを考えるうちにレキは麺を全て食べ終わってしまった。たった5分で。・・・・そしてものの10分ほどで麺や具をなくしてしまう。そして壺を持つことに苦戦していたので俺が壺を持つのを手伝ってあげると・・・・僅か数十秒で空になった。

「私の感覚ですが、風魔さんが計測を始めてから10分47秒です」

 

「夢でござる。これは悪い夢でござる・・・」

 

 このビックリ人間の光景は刺激が強すぎた様子の風魔はやや壊れ気味になっている。まぁ無理もないが・・・世の中にはもっとたくさんのビックリ人間がいるんだ。覚えておいたほうがいいぞ。そんなこんなで昼食を食べ終えた俺達は再びハイマキを連れて歩いていると・・・いきなりレキが立ち止まった。その視線は今、俺達が降りている階段の踊り場に上がってきつつある何者に向けられていた。

「っ!」

 

 俺はいきなりのレキの停止にでぶつかりそうになったので踏む留まろうとすると・・・ハイマキが俺の膝にぶつかって転倒しそうになってしまった。俺は咄嗟にそのせいで階段から落ちてしまいそうになったレキの手を掴んで引き寄せると・・・・近くで何かを踊り場の床に落とす音が聞こえた。視線を音源に向けてみると・・・そこにはクレープが落ちている。それもただのクレープではなく小さな桃型の饅頭・・・おそらくはももまんだと思われるものが入ったクレープだ。こんなものを好き好んで食べそうな人物を俺は知っているぞ。

「・・・・・・」

 

 ももまんクレープを食べながら・・・・ある意味石化をしてしまったアリアが立っていた。

「でもさでもさ、アリアと拳銃戦で互角に戦えるJCなんてホントにいるの~!」

 

 そしてさらに口の周りにクレープのクリームを付けまくりの理子までやってきてしまい・・・

「うををををもぐもぐもぐ!」

 

 俺達の光景を目撃してしまった理子は驚きながらも食べていたクレープを口の中に押し込んだ。・・・・食い意地が張っているな、こいつは。

「やるじゃんきーくん!レキュは2週目からじゃないとルートに入れない超無理ゲーキャラなのに!もうそこまで!」

 

 理子にそう言われて改めて自分とレキの状態を確認すると・・・俺はレキを抱き寄せる形で静止していた。そして理子が騒ぎながら「どーん!」といってアリアにぶつかってしまい2人とも倒れると・・・・アリアの石化は解除されてまるで鬼瓦のような形相で起き上がった。

「アリ・・・・」

 

「あんたはいい!」

 

アリアに弁解しようとした途端、犬歯をむき出しにしたアリアの怒鳴り声で俺の台詞が中断されてしまった。

「あ、ああ、あんたはいい!バカキンジはそういうやつだって分かっていたから!そうよそうよね!あんたはそういうおとなしい美人がだぁい好きだもんね!し、白雪とか!!」

 

 どうしてここで白雪の名前が出て来るんだよ?

「そんな奴・・・そんな奴を・・・・あんたは悪くない悪いのはあたし・・・」

 

 アリアは何かを呟いているがはっきりとは聞こえない。そしてアリアはギロリとこちらを睨んできた。

「そんなことよりもレキ!あんた・・・やってくれたわね。校内ネットで見たわよ。あんた、あたしに断りなく、キンジと2人チーム申請をするなんて・・・それは『パートナー横取り』!風穴モノのルール違反よ!」

 

 武偵高におけるチーム登録は通常9月下旬・・・・修学旅行Ⅰの後に申請する決まりだが、実際のところは生徒間でなんとなくチームが出来ているものだ。なので俺とアリア、ついでにアンクのように組んで戦っていた生徒達については勝手に誰かがチームのメンバーとして登録されているのは暗黙の禁則とされているのだが・・・・どうやらレキはそれをやったらしい。

「あたしは・・・キンジとレキの恋愛なんかホントにどうでもいい!ほんとにほんとにどうでもいいんだからね!けれどパートナーの横取りだけは許さない!キンジはあたしが調教したのよ!」

 

 調教って言うなよ。お前の後ろにいる理子の目が輝いているだろ。

「アリアさんは・・・・キンジさんの何なのですか?」

 

 レキは突然『宣戦布告』という雰囲気を放ちながらアリアにそう言った。

「なっなっなっなっ!?何って・・・これは、その・・・」

 

 今のレキの一言をどう捉えたかは知らないが、アリアは慌てた様子で俺を指差してきた。

「別にこれとは、その・・・・パートナーでバカよ!」

 

「私は婚約者です」

 

「なっ!?」

 

レキの『婚約者』の一言に理子は「うおおぉぉぉ!」とテンションを上げて、アリアはこども雑誌のおまけの工作でよくある谷折りのように腰を曲げてしまった。・・・身体、凄くやわらかいんだな。

「こ、・・・・高校生同士の婚約なんて・・・しょ、所詮ごっこ遊びよ!」

 

 含みのある目つきでそっぽを向きながら上半身を起こしたアリアは・・・・何だか無理に頑張ってる感じだった。

「ごっこ遊びではありません。本気です。アリアさん、あなたは今後、キンジさんに近づかないようにしてください。キンジさんには・・・・これからも昨夜のように私の部屋に泊まってもらい、昼もできるだけ私のそばで過ごし、夜も一緒に寝てもらいます」

 

 レキの明らかに誤解をされてしまいそうな言葉の連打にアリアはあわあわとしながら顔を赤くする。

 

「アリアさんとキンジさんが信頼しあっていることは知っています。・・・・しかし恋してはならない」

 

「こ、こ、こっ!?」

 

 さらにレキの放った追い打ちとも言える言葉にアリアはニワトリの鳴き声のような反応をする。

「キ、キンジ!あんたはどうなの!?レキと・・・組むの!?そのつもりなの!?」

 

「俺は・・・・」

 

 俺はアリアに「そのつもりはない」と言おうとしたそのタイミングで・・・・

「ウオォォォォォォォォォ!!」

 

「「「っ!?」」」

 

 踊り場の方でティラノサウルスのような顔がやたら大きい怪人が暴れながら叫んでいた。あの見た目から察するにおそらくはドーパント。・・・Tレックスドーパントだろうな。

「悪いな。俺はあっちの相手をしないといけないようだ。・・・変身!」

『タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

 俺はオーズに変身をすると階段の手すりから踊り場へと飛び降りていった。するとレキは俺が戦いに行くのを見送るとアリアの方を振り向く。

「・・・・つまりそういうことですアリアさん。キンジさんがあなたの質問に答えずに戦いに出向いたのが答えです」

 

「・・・キンジ・・・もう、何もかもどうでもいいわ。・・・レキ・・・・今日が『水投げ』の日でよかったわね。拳銃戦で戦ってあげる。それにさっき、通り魔の留学生に掟破りの拳銃戦を挑まれて・・・・結局負けちゃってイライラしていたところだしね」

 

 そう呟いたアリアは俺がタトバの時に構えているような威嚇するトラのような構えをすると鋭い目つきでレキを狙っていた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

 

 

「アンク・・・変な気配ってのはここら辺か?」

 

「あぁ。たしかにこの辺りの何処かで怪しい気配を感じたんだ」

 

 俺がTレックスドーパントと戦っている頃、アンクはタクミと見知らないもう1人を連れて空き地島周辺を歩いていた。すると突如アンク達から数メートル前の空間が歪んでそこから東條の変身するタイガと同じ姿だが放つ殺気がまるで違う仮面戦士が出てきた。

「これ以上この辺を探られんのは勘弁してや。あんま探られるとワイ等が困んねん」

 

「お前は何者だ?」

 

「ワイ?ワイはダニエル・チョウ。エヴィルの研究所の副主任で仮面ライダーアックスや」

 

 ダニエルと名乗ったタイガとそっくりな仮面戦士・・・仮面ライダーアックスはデストバイザーをアンク達に向けると歪んだ空間から、さらに2~3体の怪人が出現した。

「ちっ!・・・せっかくのバースドライバーは鴻上の野郎のところに回収されちまったしまともに戦うことはできないが・・・仕方ない」

 

「だったら下がってろ!・・・変身!」

『COMPIETE』

 

「オラァッ!」

 

 タクミは赤いラインが入ったギリシャ文字の‘φ’をイメージさせる仮面戦士‘仮面ライダーファイズに変身すると右手をスナップさせてアックスに殴りかかった。

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「おい!いい加減暴れんのはのはやめてこっちにメモリを渡せ!」

 

 可能な限り人間とは戦いたくない俺はTレックスドーパントにメモリを渡すように要求する。

「私は許さない!私がこけちゃって超壺麺用のお皿をほとんど割っちゃっただけでクビにしたこの場所を壊して復讐する!!」

 

 まぁ、俺の要求が無視されんのは分かっていたけど・・・・それは自分のせいだろ。つーかお前、さっきの店で働いていたのかよ。

「はぁ・・・・仕方ない。メモリブレイクさせてもらうぞ」

 

「ガァァァァァァァッ!!」

 

 右手のトラクローだけを展開して構えた途端にTレックスドーパントはこっちに向かって体当たりをしてきた。

「セヤッ!」

 

「ぐっ!?」

 

 それに対して俺はトラクローを展開していない左手で正面を殴りつけた。しかし殴りつけた頭部は俺の想像以上に硬く、一瞬だけ怯ませただけで大したダメージがない。

「硬さには硬さだ!」

『サイ!トラ!バッタ!』

 

「セヤァッ!」

 

 俺はタカヘッドから現在持っているメダルの中で最も強度のあるサイヘッドに変えると思いっきりTレックスドーパントに向かって頭を振り下ろして頭突きを決める。

「ぐっぅ!?・・・こんな程度で・・・・私の復讐は終わる訳にはいかないのよ」

 

 どちらかと言うとお前の復讐の復讐の理由の方がそんな程度で・・・って思うぞ。まぁ、怒る理由は人それぞれだな。

「復讐なんてしても、お前のように復讐に走る人々が増えるだけだ。そんなものを使って復讐しても後で後悔するのはお前だぞ。・・・・そうなる前にメモリをこっちに渡して再就職先を探せ。・・・これが最後の警告だぞ」

 

 復讐からは悲しみしか生まれない。・・・・ノブナガの時もそうだったしな。だからこそそんな悲しみを見るのが嫌だから俺はそんな奴らを止めるぞ。

「オォォォォォォォォ!!」

 

「っ!?」

 

 Tレックスドーパントは突然吠えると近くの金属を長く伸びる尻尾に集めてティラノザウルスのような姿へと変貌した。そしてその姿となったTレックスドーパントはメモリの毒素に呑まれてしまった様子で暴れ始めた。

「まったく・・・・どうして俺は巨大になっちまう怪人と戦うことが多いんだ?」

 

 こういうデカくなる怪人にはいつもコンボを使っているが・・・・今回はヤミーじゃなくドーパント・・・つまり人間だ。そんな相手にコンボを使うのはドーパントになった人間があぶないかもしれない。

「セヤッ!」

 

「ガァァァァァ!?」

 

 Tレックスドーパントは俺が思いきり脚に頭突きを叩き込むとバランスを崩してその場に倒れた。

「さぁ、悪いがこれで決めさせてもらうぜ」

『スキャニングチャージ!』

 

 俺はトラクローを両方展開させるとTレックスドーパントの周囲を駆け回る。

「ハァァァァァッ!」

 

 その移動をしながらトラクローで切りつけてダメージを与えると上に跳び上がって空中で一回転をしてサイヘッドの頭部を真下へと向けた俺は転倒しているTレックスドーパントへと降下する。

「っセイヤァァァァァァ!!」

 

 そしてそのままエネルギーを溜め込んだサイヘッドで突っ込んだ。

「ぐ、ぐぐ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「メモリブレイク成功っと・・・・」

 

 Tレックスドーパントが爆発してメモリが砕けたのを確認した俺は変身を解除してアリア達のところに戻るために急いで階段を駆け上った。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 俺がTレックスドーパントと戦っている頃、ファイズとアンクはエヴィルの仮面戦士アックスとそいつが率いる数体の怪人たちと戦っていた。

「フンッ!」

 

「っぐ!?」

 

 しかしさすがのファイズでもスカル魔を3体とアックスを1人で相手にするのは厳しいらしく、押され気味だった。

「ったく・・・・鬱陶しいな。いい加減にしろよ」

『COMPIETE』

 

 ファイズは左腕についているリストウォッチ型の強化アイテム‘ファイズアクセル’のミッションメモリーを腰のファイズギアのメモリと交換してセットすると胸の装甲が展開させると、その姿は黒が印象的な超音速形態である‘ファイズ・アクセルフォーム’へと変わった。

 

 

「・・・・いくぜ」

 

「「「っ!?」」」

 

『3、2、1、TIME OUT』

 

『REFORMATION』

 

 

 ファイズ・アクセルフォームは目にも止まらないスピードで移動をすると連続でファイズの必殺キック‘クリムゾンスマッシュ’を決めてわずか数秒でスカル魔達を倒すと通常フォームへと戻った。

「・・・・最後はお前だけだぞ。おとなしく降参したらどうだ」

 

「お~!あのスカル魔をこうも一瞬で蹴散らしおった。思った以上に強いのぅ。でも降参する気はないで」

 

 アックスはファイズにデストバイザーを構えるとすぐさま走り出して振りかざす。

「ったく・・・・面倒だな」

『EXCEED CHARGE』

 

「オラァッ!」

 

 それを綺麗に回避したファイズはデジタルカメラ型のパンチングユニットである‘ファイズショット’を右手に装着するとベルトのファイズフォンのENTERを押してフォトンを充電するとそのままアックスの腹部にカウンターを決め込んだ。

「ぐおっ!?・・・・や、やるやんか・・・」

 

 それを喰らったアックスはふらふらしながら後退し、膝をつく。

「ほら、これで懲りただろ?いい加減に・・・・」

 

 ファイズは膝をついたアックスにゆっくりと近づいた次の瞬間・・・・

「残念やったな・・・」

 

「ヒャッハァァァァ!」

 

「ぐぁぁぁぁっ!?・・・・な、何だ・・・と?」

 

 気が付くと後ろに立っていたドリルのような武器を持った茶色の仮面戦士とカメレオンのような黄緑色の仮面戦士に攻撃された。

「なっ!?・・・お前伏兵がいたのか!」

 

 アンクは驚きつつも、メダジャリバーを取り出して逆手に構える。

「せやで。誰もここに来た仮面戦士がワイ1人だなんて言ってなかったやんか。・・・・紹介したるわ。こっちのドリル持ってるのがワイの弟のアルハート・チョウ」

 

「この姿は仮面ライダースピアーや。兄ちゃんが世話になったのう」

 

「ぐっ!?」

 

 スピアーと名乗る仮面戦士は持っていたドリルのような武器で倒れているファイズにさらに追い討ちをかける。

「そしてそっちの世紀末みたいな掛け声を出してたんが使えない部下のグラント・ステウリーでその姿は仮面ライダーキャモや」

 

「俺は最強の仮面戦士だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「うっさいから黙っててや。・・・・まぁ、状況はこんな感じ。つまり不利な状況なのはお前さん達ってことや」

 

 

 倒れているファイズはスピアーに攻撃されていて、アンクはアックスとキャモに挟まれている状況に立たされてしまったアンクは・・・・

「ハッ!」

 

 勝ち誇ったような表情をした。

「・・・どうしてこの状況でそんな表情ができるんや?」

 

「・・・・お前こそ後ろを警戒しろよエセ関西。こっちも2人だけじゃないんだよ」

『FANG MAXIMUM DRIVE』

 

『RIDER KICK』

 

「「ぐわぁぁぁぁぁっぁ!?」」

 

「なっ!?」

 

 いきなりの悲鳴にアックスが振り返ると、スピアーとキャモはどさりとその場に倒れる。そこにはW・ファングジョーカーとバックのような物を持ったキックホッパーがいた。

「このっ!俺様が最強なんだぁぁぁ!!」

 

「ちょ!?止まるんやアホ!」

 

 

 アックスの静止も聞かずにキックホッパーに殴りかかるキャモは・・・・

「・・・五月蝿い」

 

「ぐおぉぉぉぉっ!?」

 

 

 キックホッパーの回し蹴りにあっさりと撃退された。

「兄ちゃん。ここは引いといた方がいいんちゃう?」

 

「せやな。・・・ミッションは終了したんやし・・・こんな結滞な奴らの相手なんてしたらグラントの二の舞になるしな」

 

 そう言ったアックスとスピアーは再び現れた空間の歪みの中に消えていくと、入れ違いで1体のショッカーライダーが現れた。

「・・・・逃げられたか。乾・・・とっととそいつを倒せ。そいつは本郷さんの偽者といっても戦闘力は本物だから持久戦は不利だぞ」

 

「言われなくても分かっている。・・・ん?」

 

 ファイズはバイクの後ろに置いていた追加装備を手に取ろうとすると、行動を共にしていた紫髪の転校生にその手を掴まれる。

「それは使っちゃ駄目。分かってるでしょ」

 

「・・・チッ。分かったよ。使わなきゃいいんだろ」

 

 舌打ちをしたファイズはバイクのハンドルにメモリーをセットしてハンドルを引き抜き剣にすると、それによる斬撃でライダーキックをしてきたショッカーライダーを空中で一閃して倒した。

「それにしても・・・・こいつ等は何をしようとしてきたんだ?」

 

 Wの変身を解除して意識が戻った正太郎は陽の隣に立つと先ほどまで歪んでいた空間を見つめた。

「分からないけど・・・・少なくとも彼らの行動はおそらく時間稼ぎだろうね。もしかしたら近くに何かあるかもしれないから手分けして探してみよう」

 

「ちっ!・・・たぶん仕掛けをしたのはここだけじゃないぜ。この場所だけじゃなく、この武偵高の周りに変な気配を感じる。アイツ等が空間を歪ませる時に感じるのと同じ気配をな」

 

「・・・・つまり近いうちにこの武偵高に何かが起きるかもしれないってことだな」

 

 矢車の呟きにその場の全員が深刻な表情を浮かべる。

「俺には詳しいことは分からないが・・・・簡単にまとめると何時攻めてくるか分からないってことだろ?・・・だったら俺達はそいつ等を迎え撃てばいいだけだろ」

 

 タクミの一言でアンク達はエヴィルに対しての警戒心をさらに強くした。・・・・しかしその警戒心すらも無駄になるほどに圧倒的な戦力がエヴィルにはあったことを・・・・このときの俺達は知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

「どうなってるんだ?」

 

 俺がアリア達が待っているはずの場所へと戻ると・・・仰向けに倒れているレキのマウントになったアリアが拳を震わせていた。

「ほれほれ~!」

 

『ガゥゥゥ』

 

 ついでに言うとその近くで理子は倒れてるハイマキの上にのしかかりながら起き上がれないようにしていた。・・・若干じゃれあっているようにも見えなくもないがハイマキの耳をトラくんが噛んでいるからたぶん喧嘩・・・水投げだろうな。

「・・・・・・」

 

 レキはアリアが殴ろうとしているのにも関わらず無抵抗だった。おそらくレキは遠距離射撃専門の狙撃科だからこそ徒手格闘の構えができない・・・いや、構えを知らないんだろうな。そもそも狙撃手は遠距離から相手を狙うからこそ格闘をする必要がない。だからそんなことは教わらないんだ。

 

「う、ううぅ・・・・・!」

 

 そんなレキのマウントにいるアリアは・・・拳を震わせるだけで殴らない。相手が無抵抗だからという理由だけではなく、数少ない友だからこそ殴れないんだと思う。

「アリ・・・・」

 

 その状況に俺が割り込んでそろそろお互いを落ち着かせようとしたその時だった。

「・・・・・」

 

 レキの銃剣の一突きがアリアの髪を掠めた。レキが銃剣を抜いたのだ。・・・この徒手格闘だけが無制限に開放される水投げの日に・・・。

「レキ・・・・」

 

 咄嗟に離れたアリアは水投げのルールを無視して銃剣を使ってきたレキに驚きに表情をみせる。そしてアリアも武器を手にしようとした途端にレキは華麗な銃剣さばきで喉や心臓などの人体の急所である部位を必要以上に狙ってアリアを壁まで追い詰めた。

「やめろ!レキ!」

 

「・・・・・・・」

 

 アリアにトドメを刺そうとしたギリギリのタイミングでレキは俺の声で制止をした。そして無言でレキはこちらに振り返ると・・・・

「レキ!あんたとなんかもう絶交よッ!絶交!もう2度と顔なんか見たくないわ!」

 

 そう言い残して走り去っていった。その後理子もアリアを追って立ち去り、停止命令を出されてロボットみたいに黙り込んだレキを連れて慌ててその場を移動し、人気のない公園にやってきた。

「お前、さっきのはアリアを殺す気だっただろ?」

 

「はい」

 

 俺の質問に対してレキはしれっと答える。

「はい。ってなんでだよ?」

 

「『風』が命じたからです。アリアさんとキンジさんを近づけてはならない。と」

 

 また『風』か。そう言えば屋上のときも言っていたよな。

「『風』ってなんだ?ヘッドフォンで聞いているなんかのことか?」

 

「違います。これは故郷の風の音を録音して聞いているだけです」

 

「故郷の風の音?」

 

「風と共に育った頃を忘れぬように聞いています」

 

 ますます分からなくなってきたな。あれか?テレパシーみたいな能力とかか?

「はぁ、とりあえずもういい。こんなことを言うのも何だがな。人を殺すな」

 

「何でですか?」

 

 『何でですか』・・・で返してきたか。普通の武偵は人を殺してはいけないはずなんだがな。

「何でですかって・・・駄目なもんは駄目なんだよ」

 

「それは命令ですか?」

 

「命令だ。武偵法でもそう決められている」

 

 怪人は例外なんだがな。

「分かりました。殺さないようにします」

 

 何だかまるで人を何人も殺してきたような言い回しにも聞こえるな。こんな感情がまるでないようなロボット娘にリマ症候群を狙えるのか?・・・少なくとも1人でどうこうできそうにはなさそうだ。アンクには別行動はもうしばらく続けることを連絡しとかないとな。・・・・そう思った俺は近くの鳩をぼんやりと見つめるレキを見て深いため息をついた。

 




名前:風見志郎

 仮面ライダーV3としてかつてデストロンと戦った戦士。老いたせいもあり26の秘密のいくつかは使えなくなっているがその強さは健在。40代後半まではレーサーとして活動していたが、現在は後輩育成のためレーシングコーチをしている。

名前:結城丈二

 ライダーマンとしてV3とともにデストロンと戦った科学者戦士。老いて使える力に制限がかかったV3に対して、年を重ねるごとに使えるカセットアームが増えて強化されている。現在も科学者としての活動を続けている。

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