緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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counttheMedal!現在オーズの使えるメダルは

タカコア×1
ライオンコア×1
クワガタコア×1
サイコア×1
シャチコア×1
トラコア×1
カマキリコア×1
ゴリラコア×1
ウナギコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×1


約束の地と天下と消えないキズナ

俺が本能寺へと向かっていた頃、W・ファングジョーカーと鋼鉄参謀の戦いはクライマックスになっていた。

 

「これでも喰らえ!」

 

 鋼鉄参謀は自身の鉄球をWへと飛ばしてくると、Wはベルトのファングメモリの角を2回押した。

「「・・・・・」」

 

『SHOULDER FANG』

 

 右肩にショルダーファングを装備したWはそれを外してブーメランのように鋼鉄参謀へと投げた。

「むぅ!?」

 

 鋼鉄参謀はショルダーファングを鉄球で弾こうとすると・・・ショルダーファングは複雑な軌道で鉄球の周囲を回転し、鉄球をバラバラに切り裂いた。

「なんとっ!?」

 

「・・・どうやら今回はカンペキに制御できてるっぽいな」

 

「あの時正太郎が暴走を止めてくれたおかげで、ファングの過剰すぎる防衛機能をコントロールできるようになったんだよ」

 

『ARM FANG』

 

 ファングメモリをコントロールできるようになったWは再びファングメモリの角を1回押すと右腕にアームファングが装備された。

「さすがだな仮面ライダーW。そうでなくては面白くない」

 

 鉄球がなくなり、それを繋いでいた鎖を振り回した鋼鉄参謀はWへと駆け出してくると、Wはその機動力ですんなりと鎖を回避してアームファングで鋼鉄参謀の胴を斬り付けた。

「ぐおっ!?」

 

「諦めろ鋼鉄マッチョ。お前もエヴィルに改造されちまった人間なら人らしい魂が残ってんだろ」

 

「笑止!」

 

 エヴィルに改造されたとは言え、元々は人間である鋼鉄参謀を倒したくはないと思ったW(正太郎)は鋼鉄参謀を説得しようとするが・・・鋼鉄参謀はそれを鼻で笑った・

「人らしい魂?この俺にそんなものは残ってないわ。俺にあるものはエヴィル首領への忠義とこれまでに仮面ライダーに挑み、敗北してきた怪人達の負の記憶。ここでお前達を倒す。・・・それが武人である俺の生き様だ」

 

「そうかよ・・・それじゃ決めるぜ鋼鉄マッチョ。これがファングジョーカーの必殺技だ」

『FANG MAXIMUM DRIVE』

 

 鋼鉄参謀の説得を失敗したWはファングメモリの角を3回押してマキシマムを発動すると右足にファングの刃が装着される。そしてWは跳び上がって空中で何度も回転をした。

「さぁ来い仮面ライダーW!お前達の全力!全身全霊を持って打ち破ってやろう!」

 

「「ファングスライサー!!」」

 

 Wの跳び回し蹴りは鋼鉄参謀に直撃をすると牙のような鋭い‘F’の斬像が浮かんだ。

「ごふっ!?・・・さすがだな仮面ライダーW。完敗だ・・・だがエヴィルには俺程度の怪人は腐るようにいる。せいぜい生き残って・・・あの世で待つ俺にその勇姿・・・見せつけてみろ」

 

「・・・あぁ。生き残ってやるよ。じゃあな鋼鉄マッチョ」

 

「・・・俺の名前は・・・鋼鉄参謀だ」

 

 最後にそういい残した鋼鉄参謀はゆっくりとその場に倒れると、爆発して周囲にその鎧の破片が散らばった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

「約束の地・・・ここだな」

 

 本能寺に到着した俺はライドベンダーから降りると周囲を見渡してみる。この辺りにはまるで人影がなく、どうやら外にはノブナガはいないらしい。中へと突入しようとすると・・・

「ぐおっ!?」

 

「アンクッ!?」

 

 アンクがいきなり何処からか吹き飛ばされてきた。俺はアンクが吹き飛んできた方向を向くと・・・そこには数体のショッカーライダーが立っていた。

 

「・・・どうやらノブナガの件はエヴィルが絡んでいたらしいな」

 

 ノブナガの件にエヴィルが絡んでるだと?

 

「キンジ、ここは俺に任せてとっとと中に入ってノブナガを止めて来い」

 

「でもお前はほとんど戦う力を・・・」

 

「大丈夫だ・・・」

 

 そう発言したアンクは腰にバースドライバーを巻きつけた。

「アンク・・・それは?」

 

「プロトバースのベルト、ノブナガの忘れ物だ。忘れ物は本人に渡すべきだろ。・・・とっとと連れ戻して来い。変身ッ!」

 

 プロトバースに変身したアンクは右腕だけを怪人態にして、そこから2枚のコアメダル・・・クジャクとコンドルのコアメダルを俺に渡してきた。

「そいつを持っていけ!」

 

「それじゃアンクの身体が・・・」

 

 コアメダル1枚じゃ身体の維持すら危ういんじゃ・・・。

 

「正太郎や凍条からセルメダルを巻き上げてそれなりに維持ができるから問題ない!またメダルに戻したくないんだったら、とっととノブナガと戻って来い!」

 

「・・・すまないアンク!ここは任せた!」

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

 俺はその場をアンクに任せるとオーズに変身して本能寺の奥へと走り出す。そして俺が奥の部屋に辿り着くとノブナガは正面の掛け軸を向きながら正座をしていた。

「アンクはどうした?」

 

「表でエヴィルの作り出したショッカーライダー達と戦闘中だ。お前のバースドライバーを使ってな」

 

 俺の方を振り向いたノブナガはどこか苦しそうな表情だった。

「・・・・そうか。もうすでにここまでエヴィルの手が進んでいるのか。・・・つまりここで決着をつけようというのか」

 

「どういうことだ?」

 

 俺がそう言うとノブナガは立ち上がり鎧武者怪人へと姿を変えた。

「この身体はエヴィルによって製作された擬似的コアメダル・・・ギジメダルの1枚と大量のセルメダルで成り立っている。しかしまだこの身体は完全なものではない。だからこそエヴィルは完成させるために残りの2枚のギジメダルを投入しようとしている」

 

 ノブナガが・・・・エヴィルによって作られただと!?そんな話陽からも聞いてないぞ!?

「記憶が曖昧だった当初は無意識の内にこの姿となりながらも『明智』に所縁のありそうな人物を手当たりしだいに襲っていた。しかし天下統一の欲望を思い出した際に人間だった頃の記憶を取り戻し様々なものを手に入れてきた。少なからず満たされたつもりだ。だが一月もの間お前達と日々を過ごすうちに・・・・何処か俺を殺した明智に復讐するという感情が薄れていった。・・・・いや、虚しくなった。だからこそあの場で正太郎に天誅を下すことができなかった」

 

「そう思うのなら戻って来いよ。・・・・そしてお前も武偵高に入れよ。・・・・俺は来年の4月で辞めちまうが・・・きっと俺以外にも仲間はできるぞ」

 

「それはそれで素晴らしいと思うがそれは無理だ」

 

「どうしてだよ!?」

 

「・・・・残りの2枚が近づいているのを感じる。・・・・俺が日々を過ごすことによって欲望の結晶であるセルメダルが身体に蓄積され・・・・自分の力が自分でも抑えられなくなり始めている。おそらく残りの2枚を取り込んでしまうと俺の意識は完全に無くなってしまうだろうな。そうなる前に・・・お前の手で俺を倒してくれ」

 

 ノブナガからの頼みを俺は・・・・

「・・・・そんなのお断りだ!俺はお前を助けるために止めに来たんだ!」

 

 断った。・・・この答えはアンクや面識の少ないアリアだって同じように答えるはずだ。それにアリア達と約束したしな。『アンクとノブナガを連れて帰る』ってな。

「いい台詞ですね。だけど残念でした」

 

「なっ!?レイ!?」

 

 気がつくと後ろにはレイが立っていて振り返って攻撃しようとするも・・・・一般人が楯にされて俺は動きを止めてしまった。

「くっ!?」

 

「さぁノブナガ!完全な姿になってください!」

 

「ぐ、ぐあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!?」

 

レイによってノブナガに残りの2枚らしい黒いメダルが投入されてしまい・・・・のっぺらぼうのような頭部だった怪人姿のノブナガの頭部は何処となく蠍を思わせる鎧兜を纏い、黒いマントを羽織った。

「これが人造グリード‘ノブナガ’の完全体ですか。・・・・その力、拝見させて頂きますよ」

 

「ガアァァァァァァァァァ!!」

 

 完全体になってしまった怪人態のノブナガは我を失った様子で辺りを剣で切り裂く。その一撃一撃が物凄く強力な剣圧で本能寺が崩れ始めてしまった。

「・・・ノブナガ・・・・お前が何者かなんて俺達は誰もそんなこと気にするつもりはない。だから絶対に連れ戻す」

 

 そう約束したんだよ。アリアとな・・・。だからこそ俺はアンクに託されたこの2枚のコアメダルをもう一度使う。・・・・俺はトラとバッタのコアメダルを抜き取りクジャクとコンドルのコアメダルをベルトにセットしてオースキャナーでスキャンした。

『タカ!クジャク!コンドル!タ~ジャ~ドル~~!』

 

「ハァッ!」

 

 そしてオーズ・タジャドルコンボに変身した俺はノブナガにタジャスピナーを構えた。

「セイッ!」

 

 オーズ・タジャドルコンボに変身した俺はノブナガに向かってタジャスピナーから火球を放った。

「ガァァァァァ!!」

 

 しかしノブナガはその火球を剣で切り裂くと俺に剣を振りかざしてきた。

「くっ!?・・・・ノブナガ・・・」

 

「ガァァァアァァァ!!」

 

 俺は咄嗟にタジャスピナーを盾にして剣を防ぐも、ノブナガはさらに連続で剣を振りかざしてきた。

「くっ!?」

 

 翼を広げた俺は天井を突き破って一旦空に飛ぼうとすると・・・・

「ヴァァァァァァァァ!!」

 

「なっ!?」

 

 まるで磁石に引き付けられるかのように地面に叩き落されてしまった。

「ぐあっ!?・・・・いったい何が・・・・」

 

 重力操作か?・・・いや、あの能力はガメルの能力だからノブナガはおそらく使えないはずだ。それに今の感覚・・・無重力にされたような感覚じゃなく地面にくっつけられるような感覚だったぞ。

「くっ!?空中戦がお断りなら中距離戦だ!」

 

 立ち上がった俺はノブナガから距離を取ると羽手裏剣を放とうとするものの・・・

「ガァァァァァァッ!!」

 

 羽手裏剣はノブナガにあたる寸前に止まったかと思うと俺の方に向かってきた。

「・・・マジかよ・・・・ぐあぁぁぁぁ!?」

 

 跳ね返されてしまった羽手裏剣を喰らってしまった俺は壁を突き破って外まで飛ばされてしまった。

「ふふふ、さすがにイ・ウーのボスを倒した姿と言っても人造グリードには苦戦していますね。・・・あの人造グリードの能力は‘電磁力操作’たとえ金属でない物体。たとえば人間などの生命体ですら引き寄せたり遠ざけたりすることができるのですよ」

 

 電磁力操作だと!?・・・だから地面に引き寄せられたり、羽手裏剣が俺の方に飛んできたりしたのか。・・・ウヴァの電撃とガメルの重力操作を足して2で割った能力・・・いや、自然現象みたいな能力じゃなく科学によって発生する能力って感じだな。

「くっ!?・・・・なるほどな。少なくともお前に小細工は通用しないってことかよ」

 

 そもそも俺はノブナガを倒すために戦っているんじゃない。ノブナガを連れ戻すために俺はここに来たんだ。だったら・・・・

「暴走の原因のメダルをノブナガの身体から取り出せば正気に戻るかもしれないってことだろ?」

 

「たしかに暴走は止まってしまうかもしれませんが人格が戻るかどうかは分かりませんよ?」

 

「・・・・たしかにそうかもな」

 

 俺はノブナガに火球を放って一瞬だけ視界を遮ると空高く飛んだ。

「・・・・それでも・・・・俺はノブナガが戻ってくるのを信じるぜ」

 

 ベルトから3枚のコアメダルを抜き取った俺はそれをタジャスピナーの中に入れた。そしてさらにオースキャナーでそれをスキャンした。

『タカ!クジャク!コンドル!ギン!ギン!ギン!ギガスキャン!!』

 

「セイヤァァァァァァァァ!!」

 

 不死鳥を模した炎を纏った俺はノブナガに向かって急降下する。

 

ギガスキャン。・・・・クジャクアームのときにだけ使える専用武器のタジャスピナーに7枚のメダルを入れて発動する特別な技だ。

「がぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 ノブナガは電磁力を操って俺を寄せ付けないようにして攻撃を防ぐ。・・・だけどこんなのに負けてはいられないんだよ。アリアとの約束を守るためにも・・・・お前を連れ戻すためにもな。

「オリャァァァァ!!」」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 俺は根性で電磁力に逆らってノブナガにギガスキャンの一撃を決めた。・・・だけどこの一撃を持ってしても・・・・

「はぁ・・・はぁ・・・・メダルを奪うことは・・・・できなかったか」

 

 ノブナガからメダルを取り出すことはできなかった。

「さすが身体の丈夫なサソリ、カニ、エビのメダルで構築された強固な肉体をお持ちですね。さぁ、オーズにトドメを刺しなさい」

 

「・・・・・」

 

 レイは無言で立ち尽くすノブナガに近づいていくと・・・・

「・・・・この俺に命令をするな」

 

「何っ!?ぐあっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

 ノブナガは一般人の女性を掴んでいるレイの左腕を攻撃してその人を解放した。

「俺は天下人だ。お前達の軍門に下った覚えは一度もない」

 

「くっ!?まさか先ほどのオーズの一撃で再び意識が戻ったとでも言うのですか。・・・まさかそんなことがありえるはず・・・・」

 

「現にそうだからお前に攻撃しているのが分からないのか、たわけ者。・・・・キンジ。助かったぞ。この恩は必ず返す」

 

「そんなの返さなくていいぜ。俺達は友達だろ?」

 

「・・・・友か。久々に言われたが・・・悪くない気分だ」

 

 俺はタジャスピナーをレイに向けるとノブナガも剣をレイに向けた。するとアンクの変身してショッカーライダー達と戦っていたはずのプロトバースがあいつ等を何とかしたのか俺達のところに駆けつけた。

「大丈夫かキンジ!!・・・・ハッ!・・・どうやらノブナガはすでに何とかしたみたいだな」

 

「お前にも世話をかけたなアンク」

 

「・・・・そう思ってんならあとでアイス奢れよ」

 

 プロトバースの呟きにノブナガは「フッ!」と笑う。・・・・この様子ならもう暴走することはないだろうな。

「さぁ、観念して降参するんだな。仮面ライダーレイ」

 

「エヴィルのことを洗いざらい吐いてもらうぜ」

『ブレストキャノン』

 

「・・・・これは私の負けのようですね」

 

 そしてプロトバースもブレストキャノンを装備してレイに突きつけるとレイは両手を挙げて変身を解除した。

「これでひとまずは事件解決だな」

 

「ああ、これで俺の単位も大丈夫だろ。・・・・それはそれとして・・・お前何か隠してないか」

 

 プロトバースの変身を解除したアンクはベルトをノブナガに返しながら鋭い視線で睨みつける。

「・・・・俺が何を隠しているというんだ?」

 

「・・・・チッ!・・・・分かったよ。黙っておいてやる」

 

 アンクは人間の姿に戻ったノブナガにそう告げていたが、このときの俺はいつも通りの様子のノブナガだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 それから2時間後、白峰を京都武偵に引き渡した俺達は報告も含めて武偵高へと向かうとクスクシエに明かりがついているのに気づいたので入ってみると・・・・

「待っていたわよキンジ!」

 

「話は聞いているぞ相棒。・・・・大変だったな」

 

「先輩!お疲れです!」

 

 みんなが俺達を迎え入れてくれた。

「キンジ。・・・・俺がここにいていいのか?」

 

「何言ってんだノブナガ。ここにいるのはお前が戻ってきてくれるって信じていた奴らだぞ。お前がいないと駄目だろうが」

 

 何処か複雑そうな表情を浮かべたノブナガに俺はそう告げるとみんなはノブナガに向かって微笑んだ。・・・・ここには誰もノブナガを拒絶する奴なんかいない。一度は命を狙われていた正太郎ですら先ほどから成美さんに怯えてこそいるがノブナガに敵意を見せていないんだからな。

「・・・・いくら天下を取ったとしても・・・・これは手に入れることはできないだろうな」

 

「こういう人と人との繋がりを絆っていうんだぜ」

 

「・・・・キズナか。初めて聞いた言葉だが・・・・どこか満たされた気分になる言葉だな。覚えておこう」

 

 そんな会話をしているとさりげなく近づいてきた伊達さんが俺とノブナガの肩に腕を乗せてきた。

「はらほら!若い奴らがそんな辛気臭い会話してんじゃないって!ほら!お前らも飲めよ!」

 

「伊達さん。それはお酒です。俺達は飲むことはできません」

 

「後藤ちゃんは厳しいね~。別に酒ぐらい・・・・ちょっと待って後藤ちゃん耳を引っ張るのはやめてくれない?・・・・ねぇ・・・謝るから。ほらごめんなさいクロプス。・・・・ちょ!?痛いって後藤ちゃん!!後藤ちゃ~~~ん!!」

 

 俺達さんは後藤に耳を引っ張られて部屋の片隅に運ばれていくと教師が生徒に正座をさせられていた。

「・・・・まあいいか。それより俺達も食べようぜ?」

 

「すまないがキンジ。俺は少し夜風を浴びてくる」

 

 そう言ったノブナガは外に出て行った。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

「受け取れ。異なる者」

 

「・・・うん」

 

 俺達がクスクシエで騒いでいる頃、ノブナガは誰かに自身の刀を託し終えると、その人物が去っていくのを確認してからアンクはノブナガに近づく。

「・・・・お前・・・もうそろそろなんだろ?」

 

「・・・・さすがにオリジナルのグリードには気づかれてしまうか。・・・この身体はたしかに限りなくグリードに近い構造をしているがコアメダルに宿る意識で動いているんじゃない。生前の欲望が宿った大量のセルメダルと擬似的メダルで身体を構築されているだけだ。そして完全な姿となってこの欲望は失われてしまった。・・・今の俺はかすかな残留思念。・・・・言わば亡霊だな」

 

「ほう!それは好都合だな!」

 

「「っ!?」」

 

 突如その場に声が聞こえたかと思うと空間が歪みショッカーライダー達が数体現れた。

「チッ!あの時逃げられた色違いマフラー達か」

 

「・・・・我々はエヴィルを裏切った人造グリードを排除しにきた。そして排除を終了させ次第ギジメダルを回収しろと首領様からの命令だ。大人しく消えてもらうぞ人造グリード!」

 

「チッ!・・・・今、キンジ達を・・・・」

 

 アンクはバッタカンを取り出して俺達を呼ぼうとしたがいつの間にか怪人態となっていたノブナガがその行動を止めた。

「可能なかぎりこの姿をあの者達に見せたくはない。呼ばないでくれ」

 

「・・・・分かった」

 

 そしてその数分後。・・・・3~4回ほど教務科のほうから次々と爆音が響いた。

 

 

 

「おい!どうしたんだアンク!!」

 

「キンジ!あそこ!」

 

 爆音に気づいた俺とアンクが教務科の前まで駆けつけるとアリアは身体からセルメダルを次々と落とす人間の姿のノブナガを発見した。

「アンク!!いったい何があったんだ!!」

 

 俺とアリアはノブナガのところに駆け寄ってアンクに何があったかを聞いてみると・・・・アンクはやるせなさそうな表情で口を開いた。

「・・・・ノブナガは暴走したせいでセルメダルに宿っていた過去の欲望が失われていた。今のノブナガは人間でいう魂でメダルを繋ぎ合わせていたんだ。そしてそれすらももうすぐ身体から離れてしまう。そんな身体でノブナガはショッカーライダー達と戦ったんだ」

 

「なん・・・・だと?」

 

 それはつまり・・・・ノブナガは・・・・

「キンジ。つまりどういうことなの?」

 

「・・・・ノブナガは・・・・もうすぐ身体がメダルに変わっちまう」

 

 俺がアリアにそう説明するとアリアはバッグからあるだけのセルメダルを取り出した。

「それならこれでアンクのようにセルメダルを集めて復活・・・・」

 

「・・・・それができないんだよ。・・・・ノブナガには」

 

 ノブナガはコアメダルに意思が宿っている構造ではなく身体を構築するセルメダルに意識が宿っていた。その欲望が消えたということはセルメダルが核となるものを失ったことになって・・・・・意思のないメダルになるってことだ。

「・・・・すまないキンジ。お前達が俺を歓迎してくれたことは嬉しいが・・・・俺はそろそろ本来いるべき場所に帰らせてもらう」

 

「ふざけんな!!なに言ってんだよノブナガ!せっかく・・・・せっかくみんなが・・・・」

 

「キンジ・・・・」

 

 俺はボタボタと目から涙を流すと・・・・アリアはその光景を見てられないと思った様子で顔を背けた。

「クスクシエの者達には謝っておいてくれ。・・・・それとキンジ。・・・これはお前が受け取ってくれ」

 

「・・・・・?」

 

 ノブナガは俺の右手に3枚のメダルを握らせた。・・・・このメダルは・・・・ノブナガのメダル!?

「何やってんだよバカ!これじゃお前は・・・・」

 

「・・・・これでいい。お前がそれを持っていてくれるかぎり・・・・俺達のキズナは消えることはない。・・・・さらばだ・・・友よ・・・」

 

 ノブナガは俺に黒いメダルを3枚託すと最後にそう言い残してセルメダルとなって崩れ去ってしまった。

「こんなのって・・・・こんなの絶対おかしいだろ?・・・どうしてノブナガは消えないといけないんだよ!!ノブナガはたしかに生きて・・・・」

 

「・・・・それは違うぞキンジ。・・・・ノブナガは最初から死んでいたんだよ。エヴィルはその死をメダルの化け物にして冒涜したんだ」

 

「・・・・アンク。エヴィルはこれからも生きている人の心も・・・・死んでいる人の心も弄ぶのか?」

 

「・・・・たぶん。・・・・そうなんだろうな」

 

「だったら俺がエヴィルを潰す。これ以上・・・・あんな奴らのせいで誰かを泣かせないためにも・・・」

 

 俺はこの日この瞬間・・・・エヴィルを倒す決意を固めた。

 

 




名前:日高仁志

 東京武偵高仮面戦士科教諭。仮面ライダー響鬼に変身する。33歳独身。基本的にはコードネームであるヒビキで知れ渡っていて本名を覚えている人は少ない。2年A組の安達明日夢を弟子にしている。仮面戦士としてのその実力は全国の武偵教諭の中でも上位に食い込むレベルだが、重度の機械音痴ということもあり『武偵』としての評価は低めらしい。仮面ライダーの肩書きがあるにも関わらず車にもバイクにも乗れなく、今年の目標は免許取得とのこと。

名前:津上正一

 東京武偵高臨時講師にして第2食堂AGITΩの従業員。仮面ライダーアギトに変身する。21歳。明確な教諭でもなければ生徒でもないので正式な武偵免許はもっておらず、生徒の自主性のためもありよほどの事態にならないかぎり学園の管轄内で発生する戦闘には参戦しないように校長に言われている様子。いつか自分のレストランを経営するのが夢。

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