タカコア×1
ライオンコア×1
クワガタコア×1
サイコア×1
シャチコア×1
トラコア×1
カマキリコア×1
ゴリラコア×1
ウナギコア×1
チーターコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×1
タココア×1
俺とグレイブが甲板上に着地すると、アリアを抱えた黄金の仮面戦士は甲板から突き出た建物のような艦橋へと歩いていた。
「シャーロック!!」
グレイブはグレイブライザーを右手に持つと黄金の仮面戦士に向かって鬼神のごとき勢いで斬りかかる。
『キィィィィィィィ!』
「くっ!?」
グレイブラウザーの剣先が黄金の仮面戦士に届く寸前、先ほどの不死鳥のようなモンスターがグレイブに体当たりをしてそれを妨害した。
「兄さんっ!」
「くっ・・・ゴルトフェニックスか」
ゴルトフェニックス・・・それがあの巨大な鳥の名前か。少なくとも契約モンスターとデッキからしてミラーライダーか、ベンタラのライダーのどちらかだな。
「・・・キンジ。シャーロックのライダーシステムは2つある。一つは先ほど変身していたカブトムシのような仮面戦士‘仮面ライダーコーカサス’に変身するマスクドライダーシステム。もう一つは現在、変身している不死鳥のような仮面戦士‘仮面ライダーラス’というベンタラのライダーシステムだ。どちらも本来は強力すぎるために使いこなせる者がおらず、廃棄されるはずだったが・・・2年ほど前に何者かに盗まれてしまった物だ」
廃棄されるはずだったライダーシステムか。・・・最近ではG4システムとか言うライダーシステムが廃棄されたらしいが、基本的にライダーシステムが廃棄される理由は2つ。あまりに強力すぎて使いこなせる人間がいないという理由と、使用者の人体に悪影響を与えてしまう作りのどちらかだ。・・・どうやらシャーロックの変身する仮面戦士はどちらも前者の方らしいが・・・使いこなせる人物がいなかった2つを当たり前のように使いこなしているあいつはやっぱりビックリ人間だな。
「ハァァァァッ!」
「・・・・・・・・」
俺はメダジャリバーでラスに斬りかかるが・・・・ラスはアリアを片手で抱えながら後ろを振り向かずに黄金の剣でジャリバーを止めていた。
「キンジ!」
「分かってる!」
俺はすぐさましゃがむと今度はゴルトフェニックスを振り切ったグレイブがラスに斬りかかろうとする。・・・これなら防ぐことはできないだろ。
「・・・・・・・」
「っ!?」
グレイブの剣先が届いたと思った瞬間、アリアを抱えたラスはその場所から消えていた。・・・その場所にあったのは宙を舞う黄金の羽だけ。・・・10メートルほど先には何事もなかったようにスタスタと歩いている。・・・瞬間移動でもしたって言うのか?
「・・・・最悪なことにその通りだキンジ。・・・あの仮面戦士は瞬間移動ですら可能にしてしまう。そんな常識外れのライダーシステムをシャーロックは使いこなすのだ」
「・・・こっちも常識外れの仮面戦士だ!!」
俺はメダルホルダーから青の3枚を取り出し、再びシャウタコンボに変身しようとするといきなり目の前に現れたラスに青の3枚のメダルを奪われた。
「申し訳ないが君のメダルを貸してくれないか?・・・アリア君が僕の後継者となったら君の元に届くように手配する」
「ふざけるな!!・・・・っ!?」
気がついた時にはメダルホルダーもラスの手元にあった。・・・おそらくは兄さんの『不可視の銃弾』とラスの瞬間移動を組み合わせて応用した方法で3枚のメダルを奪うのとほぼ同時に俺の手元から奪われたんだろうな。
「まだまだぁ!!」
「セイヤァァァァッ!!」
俺とグレイブは同時い剣を振りかざそうとすると・・・すぐさまその剣を止めた。・・・こちらを向いたラスの腕にはこっち向きにアリアが抱かれている。・・・このタイミングで剣を振り下ろしてしまえばアリアを傷つけてしまうため俺とグレイブは後ろに下がると、ラスはアリアの耳を塞いだ。・・・そして後ろに飛んでいるゴルトフェニックスの胸部が風船のように膨らんだのを見てすぐさま何をしようとしているかを理解した。あれはドラキュラ・ブラドが横浜で見せた『ワラキアの魔笛』・・・通称『ヒステリア破り』だ!
『キィィィィィィィ!!』
「くぅぅぅぅぅぅっ!?」
俺はオーズの仮面だが耳の辺りを押さえてヒステリアを解除されまいと耐える。
「いい加減・・・黙れぇぇぇぇ!!」
『キィィィィィ!?』
耳を押さえるのをやめたアンクは半透明な翼を羽ばたかせて、ゴルトフェニックスを怪人の腕で殴り飛ばして咆哮を中断させた。・・・おかげで俺はヒステリアを解除されずにすんだ。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「アンク!!・・・・っ!?」
未だに身体からセルメダルを落とすアンクに俺は駆け寄ろうとすると・・・そこでいつの間にか変身を解除されていることに気づいた。・・・後ろを振り返るとラスがタトバの3枚を持っている。
「チッ!・・・・何やってんだキンジ。・・・油断・・・しやがっ・・・て」
アンクはそう言って膝をつくと、俺の隣に立っていたグレイブが耳を塞がずに呆然と立ち尽くしていた。グレイブ・・・兄さんは『ワラキアの魔笛』を喰らったことがなかった。だからこの不意を突かれた一撃に兄さんは最後のヒステリアモードが解除されてしまった。さらにその身体はパトラによって少しは治っている傷口が開いたのか赤い血がスーツににじみ出ている。
「兄さん!!」
俺は立ち尽くしているグレイブに振り向いた瞬間・・・
「キ・・・キンジ!避けろ!!」
「っ!?」
『キィィィィィィ!!』
「ぐはっ!?」
俺に向かって体当たりをしてきたゴルドフェニックスの体当たりを・・・グレイブが庇って変身が解除された。
「・・・・・・!?」
ぶつかるように倒れてきた兄さんを俺は必死に支えた。兄さんは予測していたんだ。兄さんの傷に気を取られた俺が倒されてしまうことを・・・。だから兄さんは俺を庇ったんだ。・・・オーズの変身が解かれてしまった俺を・・・。
「・・・キンジ・・・追え・・・!奴は・・・艦内に・・・・逃がすなッ!」
俺に肩を貸されながらの兄さんが俺に命令してくる。
「兄さん!あんたを置いてなんか・・・・」
兄さんは俺の言葉を遮るように・・・笑った。
「俺がお前ごときに心配されるなど・・・・俺にもヤキが回ったな」
ポケットに手を入れた兄さんは・・・俺に1枚の赤いコアメダルを渡してくる。・・・これは・・・アンクのクジャクコア!!
「キンジ!・・・行けっ!攻めろ!!俺達はここまで来た。来て・・・しまったのだ!!」
兄さんは血を吐きながら俺の袖を掴む。
「俺はお前に初めて理屈で通らんことを言っているのかもしれん。・・・おそらく仮面戦士の中でも最強クラスの男に変身を封じられているお前を行かせるなどと・・・。だがキンジ、人生には理屈では通らない戦いをしないといけない時がある。・・・今がその時だ!!」
兄さんは半ば無理やり俺を艦橋へ反対させた。それでも振り返る俺に活を入れるように・・・
「振り返るなっ!」
先祖代々石頭の遠山家が最後に使う隠し技・・・頭突きで活を入れてきた。
「キンジ・・・もう振り返るな・・・とっとと行け!」
兄さん、分かった。・・・兄さんの任務、俺が達成する。
「アンク・・・この使えないバカを支えてやってくれ・・・」
「おい金一。一応言っておくが・・・コイツは使えないバカじゃない。・・・使えるバカだ。兄なら弟のことをもっと理解しろ」
アンクはふらふらしながらも立ち上がる。
「・・・それと・・・俺に無断で俺のクジャクのコアメダルを持っていたのは許せないな。・・・こんな場所で死なれると後でぶん殴れないから生きてろよ」
「・・・ふん。お前の方こそな」
兄さんはアンクの言葉に拍子抜けしたような顔をすると微かに笑った。
「兄さん!こんなところで死んだりしたらあんたの弟をやめるからな!!」
俺は振り返らずにそう告げると走り出した。
「だったらキンジ・・・お前はこれからも・・・俺の弟だ」
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「何だここは?」
「・・・・・・・」
俺とアンクはイ・ウーの玄関先ともいえる広大なホールに目を奪われた。おそらく最下層から最上階までをぶち抜いて作ったと思われる高い天井から、磨き上げられた天然石の床を大きなシャンデリアが照らしている。
「太古の翼竜プテラノドン。・・・角竜トリケラトプスに暴君竜ティラノサウルスか」
天然石の床にはそれらの恐竜の全体骨格標本が聳えている。さらに周囲を見渡すと鷹や孔雀やコンドルの鳥類。ライオン、虎、チーターの猫科動物。鍬形、螳螂、飛蝗の昆虫。コブラ、亀、ワニの爬虫類。さらにはサイ、ゴリラ、象といった重い動物や鯱、鰻、タコといった水の中で生きる生物などが剥製として展示されていた。・・・何だこれ?
「まるでクガ王の城みたいだな」
「クガ王?どんな奴だったんだ?」
俺は剥製を見ながら不快な顔をしていたアンクに聞いてみた。
「・・・世界を全て自分のものにしようとした最低な王だ。・・・自分の欲望のためなら平気で他人を殺せるほどのな・・・」
「・・・・・・・」
アンクの拳がぎりぎりと音が聞こえるほど強く握られていることに気づき・・・俺はそれ以上追及するのをやめた。
その後、アリアを探すために幾つもの部屋を当たって見て分かったが・・・イ・ウーは初め戦争のために作られたことが分かった。・・・超人兵士を育成し、敵軍に勝つために。その証拠におそらく艦長のための墓地と思われる場所には何人もの軍人の肖像画と石碑などが掲げられた部屋を先ほど発見した。そして右側に行くにつれて新しいものになっていたのだが・・・一番右側にあった肖像画はシャーロック本人だった。
「おそらくイ・ウーは戦後、潜水艦という特徴を生かして逃亡したんだろうな」
「・・・そして独自の価値観に基づいて秘密結社を作り上げ・・・艦長という言葉を『教授』という言葉に置き換えた」
俺達は直感的に感じた気配を辿って隠し通路を駆け抜けると・・・・そこには教会があった。そこには何かの儀式の準備のためか、壁際や側廊には生花を生けた白磁器壷が飾られていて、まさに神聖なムードと言ったところだ。そして奥のほうのステンドガラスのすぐ下に・・・・
「アリア・・・」
アリアはこちらに背を向けて膝をついていた。・・・懺悔の祈りを捧げるような姿勢をしていたアリアは、俺の声に振り返って立ち上がった。
「キンジ!」
ピンクブロンドのツインテールをなびかせたアリアに俺は駆け寄る。・・・アンクは空気を呼んだつもりか入り口手前のイスに腕を組んで座った。
「アリア!」
俺はすぐさまアリアを抱き寄せる。・・・どうやら傷つけられてはいないようだ。
「どうして来たのキンジ?」
「理由がいるのか?」
周囲を見渡すと・・・シャーロックらしい人影はない。
「シャーロックは紳士ぶってるつもりなのか?人質をこんなところに離すなんてな。だが、おかげで好都合だ。・・・一旦移動して体勢を・・・」
言いかけた俺からアリアは一歩引いた。
「どうしたんだ、アリア?」
「・・・キンジ・・・帰って。あたしはここで曾お爺さまと暮らすから」
アリアのその言葉に・・・俺はヒステリアになっているにも関わらず、一瞬思考を停止させた。
「おい・・・何でだよ?」
俺がアリアへと踏み出そうとすると・・・アリアは俺から後ずさる。
「あんたにはわかんないでしょうね。今のあたしの気持ちなんか・・・。あたし、あんたにホームズ家でのことを全然話してなかったもんね。あのねキンジ、貴族には・・・一族が果たすべき役割を果たすことが求められるの。そうでなければ存在することが許されない。いないように扱われる。・・・あたしは卓越した推理能力を持つホームズ家でたった1人、それをもってなかったの。だから馬鹿にされて・・・ママ以外からみんなに無視されて他の。あんたも何となく感づいてたでしょう?あたしはホームズ家にいないものとして扱われてたのよ!子供のときから!」
アリアのその話を聞き・・・俺は一学期に理子から聞いたアリアの情報を思い出す。・・・『アリアは「H」の家とうまくいってないらしい』・・・それはつまりこういうことだったのか。
「それでもあたしはずっと曾お爺さまの存在を支えにしてきたの。世間では名探偵として有名だけど武偵の始祖でもあるわ。だからあたしはその名誉の半分だけでもと思って武偵になったの。あたしにとって曾お爺さまは神様みたいなものなの。信仰といっても構わないわ。その彼があたしの前に現れてあたしを認めてくれた。一族のできそこないのあたしを後継者として認めてくれた!あんたに・・・あたしのこの気持ちが分かる?分かるわけないわ!」
シャーロックに捕らわれたアリアが無抵抗だった時から感づいてはいたが・・・どうやら俺の予想は正しかったようだ。シャーロック・ホームズは俺にとっての兄さんのように、アリアにとってのカリスマらしい。そんな絶対的存在らしい。・・・だがな・・
「アリア、冷静に考えろ。かなえさんに無実の罪を着せたのはイ・ウーなんだぞ。そしてシャーロックはそのリーダーだったんだぞ」
「ママのことも・・・もう解決するよ。曾お爺さまはイ・ウーをあたしに下さると言った。そうすればママは助かるの」
「それじゃ本末転倒だろ!イ・ウーはお前の敵だろ!その一員にお前がなるなんて・・・」
「それじゃ何!あんたはこのイ・ウーを力ずくで東京にしょっぴけると思ってんの!それは不可能よ!曾お爺さまがこの艦のリーダーだった時点で!」たとえあんたが裏の人格でも歴史上最強の曾お爺さまに勝てっこないの!」
言いたいことはそれで全部かアリア・・・。本気でそう思ってるならこっちからも言わせて貰うぜ。
「いいかアリア、俺もはっきり言ってやる。こいつらなんざただの海賊だ。お前の曾爺さんは長生きのしすぎでボケて、その大将なんかをやってんだよ。俺は見逃さないぞ・・・武偵として」
「いっ、今更武偵ぶらないで!あんたは元々嫌がってたくせに!辞めたがってたくせに!もうとっとと帰って辞めちゃいなさいよ!あんたもこの間あたしの背中に傷跡があるのを見たでしょ!あれは13歳のときに何者かに突然撃たれたの!あれはきっとホームズ家に恨みを持つ犯罪者の犯行で、その銃弾は手術でも取り出せない位置に埋まって未だあたしの身体の中よ!武偵はそういう危ない仕事なの!・・・だから早く帰って辞めちゃいなさいよ。あたしのことなんか忘れて・・・」
俺は涙をこぼすアリアに視線を送る。
「俺はたしかに武偵なんか辞めたい。だけど不本意ながら、俺はまだ武偵だ。俺とお前は武偵と武偵。パートナー同士だ。武偵にとってのパートナーの失策は自分の失策でもある。お前が敵に寝返るのをハイそうですか・・・なんて言えないんだよ。武偵が武偵をパートナーとして行動させるには双方の同意が必要だ。だが今のお前はそうじゃないらしい。・・・だからお前の同意を力ずくで取り付ける」
「力ずく?力ずくですって?あたしを力ずくでどうするつもり?」
「・・・奪う。お前のパートナーは俺だ。シャーロックから奪い返す」
頭に血が上ったのか、顔を赤くしたアリアは両手でスカートを伸ばして眉を吊り上げた。
「少しこうなる予感をしてたわ。だからこうなる予感をしてたわ。・・・あんたを傷つけたくなかった」
「ハッ!冗談はよせ。俺がお前に負けることが前提かよ。その辺、お前には教育が必要だなおチビさん。ここで超人になる前によ」
ため息を付きながら俺は・・・この女性にも優しくないベルセを制御しようと試みていた。これから何が起ころうとアリアを傷つけないように・・・な。
「言ったわね。あんたはあたしを侮辱した。もう取り消さないわよ!」
「取り消さないさ」
普通の一般高校生だったら口げんかで解決なんだろうが・・・そこは武偵高。アリアはさっき俺が渡したガバメントを手に握り、俺もべレッタに手を伸ばす。
「風穴開けるわよ。今度こそ本当に・・・」
「開けるのはこっちだ」
初めて会ったときから俺達はこうだった。武偵殺しのチャリジャックの後、アリアは俺に犯罪容疑をかけて、俺を撃ってきたんだったな。
「2回目ね、あんたとやるのは」
「あの時は逃げたが、今度は逃げないぜ」
武偵憲章1条・・・仲間を信じ、仲間を助けよ。・・・か。皮肉なことだが、今回の仲間割れでようやくその真意が分かった気がするぜ。仲間ってのは相手の言うことを聞いてやるだけの関係じゃ成り立たない。仲間が道を踏み外しそうな時には殴ってでも止めてやることが必要なんだ。
「先に抜けよアリア」
俺は・・・アリアを倒す。守るために倒す。
「あんたが先に抜きなさい」
「レディーファーストだ。抜け」
俺がそう言うと同時にアリアは目にも止まらない速さで発砲してきたべレッタの『銃弾撃ち』で応戦する。そして四方に弾けた銃弾が花瓶を撃ち抜き花びらが散るとアリアが駆け出してきた。アリアはまるで花びらの中を舞うように駆けるのを見て・・・アリアの長いツインテールがアリアの動きのヒントを与えていることに気づき、俺は銃撃の精度を上げた。そして動きが読まれていることに気づいたアリアは動きを止めスタンドガラスに背を向けながら銃撃戦を始めた。そして大理石のアリアが・・・おとなしくなった。
「惜しかったわねキンジ」
周囲が・・・赤、いや緋色になってる?
「っ!」
アリアはちょこまかと逃げ回りながら俺の射撃を誘導していたことに・・・ようやく気づいた。
「チッ!?」
俺が舌打ちをした次の瞬間、アリアは祭壇の陰から右に飛び出した。・・・しかしアリアのツインテールに注目しても緋色の光のせいで保護色になっているためうまく追いきれない。・・・するとアリアはこれまで曲線的に動いていたが、突如L字にターンし、一直線に飛び掛った。アリア・・・たしかにお前はSランク武偵だな。戦いながら自分に有利な環境を作って相手を混乱させ、最後は自分の得意な接近戦か。・・・だがな、仮面戦士である以上接近戦は俺も得意なんだよ!
「セヤッ!」
「っ!?」
俺はジャリバーで片手に握られていたガバメントを弾くと、アリアの掌底が俺のべレッタを叩き落す。
「くっ!?」
さらに回し蹴りを回避されたかと思うと、アリアの銃弾がジャリバーを持つ俺の防弾制服の袖に直撃し、それすらも落としてしまう。
「キンジ!どうして!」
片脚バック宙をしたアリアが、俺の顎に蹴りかかった。それを鼻先に掠めながらもギリギリでかわすと、アリアは回転を活かしてさらに2連続で蹴ってくる。
「ぐっ!?」
「どうしてあたしをバカにするの!?」
着地と同時に飛び掛ってきたアリアは俺の右肩を小さな右手をぶつけながら両脚を振り子のようにして俺の後ろに回り込んだ。・・・銃をアリアに向けるまではできる。だが・・・その後が無理だ。そんな無防備な俺をアリアは撃ってこない。・・・撃てないんだ。俺のべレッタの銃口がアリアのガバメントの銃口に重ねられているせいで・・・。どちらかが撃ったら暴発してしまう、まさに『千日手』のような状態だ。
「どうしてバカにするのキンジ。・・・あんたの攻撃は全部あたしの拳銃を狙っていた」
人間の黒い感情でもあるヒステリア・ベルセを制御し、口調は悪いが概ね通常のヒステリアモードだった俺は・・・女性を傷つけることなんてできない。・・・結局のところ誰かを傷つけることが嫌なんだよ。・・・俺という人間は。
「・・・・・・」
アンクはアリアを睨みつけるような表情をしながらも無言で俺達の戦いの行方を見ている。・・・それに気づいた俺はべレッカを持つ手から力を抜いて下に降ろした。
「撃てよ。・・・・俺はお前を話し合いでも、無理やり奪い返すことも敵わなかった。もう打つ手がない。お前は無法者になって『武偵 神崎・H・アリア』はいなくなる。そして『武偵憲章1条 仲間を信じ、仲間を助けよ』・・・俺もそれを守れなかった。・・・つまりおれには武偵としての資格がない。結局俺の手は届かなかった。・・・俺達のチームはアンクを残してたった今、全滅したんだ」
女のために何もかもを投げ打つ、ヒステリアの俺が命じた、行き過ぎた優しさだ。・・・だけどこれでいいんだ。
「撃てよアリア。まったく知らない奴に殺られちまうよりだったらお前にやられた方がいい」
「こ、殺さないわ。・・・そうよ。あなた達も私達と一緒に・・・」
「それ以上言うなアリア。俺は犯罪者の組織に加担するつもりはない。・・・あの世で先祖代々『正義の味方』をやっていたご先祖様達にボコられたくはないからな。構うことはない・・・撃て」
「・・・俺もこんな水の中に潜る乗り物なんかに乗っている気はないぞ。・・・水は苦手だからな」
俺の言葉に・・・奥の方にいるアンクも続ける。
「だから撃て。・・・俺を倒して、後は好きにしてくれ。・・・そしていつか思い出してくれ。全身全霊を持ってお前を連れ戻そうとした武偵がいたことを・・・そして、帰れ。無法者の世界から・・・日常の世界へ」
俺がそう告げるとアリアは再び熱い涙を浮かべる。・・・そんなことをされると決心がにぶるからやめてくれ。
「どうして・・・どうしてできないことを言うの?・・・曾お爺さまに銃を向けることはできない。・・・キンジに・・・パートナーに銃を向けることもできないわよ」
肉親とパートナーで両挟みになり、どうすれば分からなくなったアリアはとうとう泣き声をあげて飛び込んできた。・・・俺はそれをゆっくりと抱きしめる。
「アリア・・・一つ告白させてくれ。・・・俺はお前を『殺せ』と命じられていたんだ・・・カナに」
「っ!?」
「イ・ウーを殲滅するためにな。・・・俺の隣に立っていた金色の仮面戦士を見ただろ?あれがカナの正体・・・俺の兄さんが変身した姿だ。・・・兄さんは俺のたった1人の肉親だったから俺も葛藤した。・・・今のお前のようにな」
「キンジは血の繋がった肉親よりあたしを選んでくれたの?」
アリアの表情から先ほどまでの拒絶の意思は消え・・・普段のアリアに戻っていく。
「わ、悪いかよ!」
「あたしは裏切り者よ?あんたに銃も向けたのよ?」
「いつも向けられてる」
「俺も・・・そのとばっちりを喰らってるから気にするな」
俺達がそう告げると・・・アリアは何か言葉を待つように黙った。・・・何だよ。言わせるつもりかよ。
「・・・戻って来いアリア。・・・俺はお前を信じてる。・・・あとはお前しだいだ。少なくともさっきまでのお前は自分で自分を信じきれていなかった。・・・だから止めたんだ」
「あたしが・・・あたしを?」
「さっきのお前はこれで解決だなんて言っていたが違う、お前はただ安易な道に逃げようとしていただけだ。・・・逃げないで立ち向かってみろよ。・・・お前が望むなら・・・俺は全力でイ・ウーを潰す。だけどそのためにはお前の力が必要なんだ。・・・協力してくれ・・・俺にはお前が必要なんだ!」
俺のその言葉に・・・アリアはぎこちなく頷いた。
「いつの時代も・・・戦わないと気づけないことが多いってのは複雑な気分だな。俺も・・・感情を理解する時にリクと殴り合ったな。・・・その時にアイツが涙を流してたのを見て・・・俺も人間を理解しようと思ったんだったな・・・ぐわっ!?」
アンクが俺達を見ながらそう呟いた瞬間、教会の扉が吹き飛びアンクは俺達のところに転がってきた。
「アンク!大丈夫か!?」
「あぁ・・・問題ない・・・そんなことよりも・・・あいつだ」
「曾・・・お爺さま」
教会の入り口があった場所は吹き飛び、散らばる瓦礫の上をシャーロック・・・仮面ライダーラスが歩いてきた。
「キンジ・・・オーズに変身しろ」
「何言ってんだアンク。俺には今、クジャクのメダルしかないのにどうやって変身しろっていうんだよ?」
「・・・・バカか?・・・コアメダルなら・・・ここにあるだろ」
アンクはそういいながら右腕だけを怪人態にして左手でその腕を指刺した。