タカコア×1
ライオンコア×1
サイコア×1
トラコア×1
ゴリラコア×1
チーターコア×1
バッタコア×1
ゾウコア×1
タココア×1
俺が意識を取り戻した翌日、俺とアンクは鴻上ファウンデーションの本社・・・その最上階である会長室に来ていた。
「非常に残念だ。まさかメダル輸送車がグリードに襲われるとは・・・。カザリというグリードらしいね。かなり狡猾だ。狙いは君達の潰し合い。そしてコアメダルの総取りだろう」
「お前が裏で手を貸したんじゃないだろうな?」
アンクは鋭い目つきで鴻上のおっさんを睨むと・・・おっさんは首を横に振った。
「そもそもメダルの輸送を依頼してきたのはドクター真木だよ。彼なら可能だ。・・・ガ、彼だというなら責める気はない」
「なんだと?」
おっさんは座っていた椅子から動くと赤ワインのボトル開けた。
「ドクター真木の目的は純粋にして1つ!欲望を叶えるための実験だ。いいかね?欲望は止めてはならない。欲望は世界を救う!」
「ふざけやがって!欲望が世界を救えるはずねぇだろ!!」
「落ち着けってアンク!」
アンクは拳を強く握っておっさんに殴りかかろうとしたので、俺はそれを制止させた。
「離せキンジ!あいつをブン殴らせろ!」
俺がアンクを押さえつけていると・・・里中さんが俺達の近くに歩いてきた。
「会長!定時なので帰ってよろしいでしょうか?」
「いつも言っているだろう。・・・したいようにしたまえ」
おっさんにそう言われた里中さんは「失礼しま~す」と告げながら会長室を去っていった。
「チッ!」
そのやりとりを見ていたアンクは興が冷めたかのように、舌打ちをして同じく会長室を後にした。
「ところで遠山君。君はグリードの誕生の秘密を知っているかね?」
「いや、ほとんど知らない」
「・・・800年前、当時の科学者が人口の命を作ろうとした。様々な生き物の力をメダルに凝縮してね。始めに作られた1体は特殊な環境で作られたために意識を持ったが・・・それ以外は持たなかった。しかし10枚のコアメダルから1枚を抜き取り、9という書けた数字にした途端、それを満たそうとする欲望が生まれた」
「それが・・・グリード」
俺が小さく呟いた言葉におっさんは頷く。
「そして彼らから抜き取ったコアメダルで戦う戦士・・・それこそがオーズだ。そのオーズとど同等の力を持っていたのが・・・レジェンドルガの王アーク、ファンガイアの王ダークキバ。そして・・・『究極の闇』と言われた凄まじき戦士だ」
この時はまだ・・・その『究極の闇』と言われた戦士が俺の知り合いだったなんて知るよしもなかった。
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
鴻上ファウンデーションを出てから数分後、たまたま近くを通りかかったからと言うアリアと遭遇した俺は、なんとなく一緒に帰っていた。
「で、そういえば昼間はどこに出かけていたの?」
「ああ、おっさんの所で輸送車の件について相談してきた。・・・あれを仕込んだ犯人にも心辺りがあったからな」
「えっ?それっていったい・・・・っ!?キンジ!!あそこ!」
アリアは突然左を指差すと、そこにはこの前現れたジャッカル男が水色の服を着た少女に襲い掛かろうとしていた。
「そこのあんた!はやく逃げなさい!」
アリアは少女に触れそうになっていたジャッカル男を狙撃して土に戻すと少女はどこかに走っていった。
「キンジ!」
「分かっている!変身!」
『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』
「セイヤッ!」
俺はすぐさまオーズに変身してトラクローを展開して金色に輝く斬撃を飛ばして残りのジャッカル男達を倒した。
「さっきの奴・・・なんでこいつ等に狙われていたんだろうな」
「何となくなんだけど・・・さっきの子はただの人じゃないと思うの。なんてゆうか・・・アンクに近いってゆうか・・・」
アンク近い?ってことはグリードだったってことか?・・・アリアの直感は説明不足すぎるがなんか信憑性があるんだよな。
「もし仮にさっきの奴がグリードだとする。そうだとして目的はなんだと思う?」
「やっぱりコアメダルじゃないの?・・・そもそもグリードに関してはあんたの方が詳しいでしょ」
正直言ってこの答えに関してはヒステリアモードにならなくても簡単に分かる。・・・どう考えても自分の、他のメダルを問わないコアメダルの奪い合いが始まっている。・・・俺はこれから何が起こるのか少し不安になりながらもアリアとともに部屋に帰っていった。
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
翌日、俺達は訳あって部屋に居たくなかったのでクスクシエにやってきていた。
「千代子さん。俺、コーラ」
「私、オレンジジュース」
「アイス!アイスを出せぇ!」
さすがに真夏だけあって外はかなり暑い。場所によっては36度を超えたところもあるらしい。クスクシエは節電を心がけてエアコンは止められているが場所の関係で日陰になっているのでそれほど暑くない。
「あっちぃ~焼き鳥になっちまう~」
「まったく!どうしてキンジの部屋のエアコンが壊れているのよ!」
『ガゥ~』
それはアリアと白雪が争って部屋をめちゃくちゃにしたせいだろ?刃物で斬られた後とか銃弾の後とかがあったじゃんか。
「はい。持ってきたわよ~」
俺達の頼んだものを千代子さんが運んできてくれると・・・長身で短髪の男が店に入ってきた。・・・どう見ても一般の人だよな。どうして武偵高の中に入ってきているんだ?
「メズールぅ。どこだぁ?」
「メズールだと?・・・お前、何もんだ?」
アンクは長身の男に掴みかかろうとすると・・・
「アンクだ。アンク!メズール!何処やった!!」
「お前、まさかガメ・・・・うわっ!?」
長身だった男はほぼ完全体のように見えるグリードのガメルの姿に変わってアンクを殴り飛ばした。
「アンク!大丈夫か!?」
「メズーーールゥゥゥゥ!!」
「くっ!?」
俺はアンクに駆け寄ろうとすると、ガメルは重力を操りクスクシエの中をめちゃくちゃにするとドアを破壊してどこかに立ち去って行った。
「追うわよキンジ!アンク!」
「ああ!」
俺はオーラインクロスに跨りアリアを後ろに乗せて、アンクはライドベンダーに乗ってガメルを追いかけると・・・空き地島へとやってきた。・・・そこには昨日の少女が立っていてふらふらしながらもガメルに近づいてきた。
「メズール!どこ行っていた!俺、メズール探した!」
ガメルもおそらくメズールの人間態と思われる少女にゆっくりと歩きだすと・・・メズールは両手を広げた。
「ガメル、いい子ね。こっちへいらっしゃい。・・・あなたが全部ほしいのよ!」
「うん」
ガメルはただその言葉だけ言いながら頷くと全身をメダル化して流れるようにメズールに吸収されていく。するとメズールは怪人態の姿に変わり苦しそうにしながら両手で胸を押さえた。
「ガメル。バカな子ねぇ。グリードのくせに欲がないなんて・・・だけどあなただけは裏切らない・・・好きよ・・・ガメル」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!?・・・・ガァァァァァ!!」
メズールの言葉と共に、大量のセルメダルが津波のようにメズールを包み込み、メズールの姿は巨大なタコに首長竜の首が生えたような化け物に変化した。
「な、なんだよこれ!?」
「おそらくはメダルの力の暴走だろうな。・・・キンジ!あんなのに暴れられたらここら辺がやばい。とっとと片付けるぞ」
アンクはひさびさに全身を怪人の姿に変えて俺にメダジャリバーを渡してくる。
「ああ。こんな化け物が暴れたらどうなるか分からないしな・・・変身!」
『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』
俺はオーズに変身してアンクからジャリバーを受け取ると、アンクの乗っていたライドベンダーに跨り暴走グリードに向かって飛び掛かった。
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
メズールが暴走グリードとなる1~2分ほど前。真木博士は空き地島の端のところからメズールとガメルのやり取りを観察していた。
「これはうれしい誤算ですね。メズール君がガメル君を吸収することにより1つのグリードの身体に2体分のグリードの力を宿し、暴走の可能性が上がりましたね。・・・それではそろそろこちらを使いますか」
真木博士はトラックの荷台の扉を開くと・・・その中に入っていた5000枚のセルメダルは一斉にメズールへと向かっていった。
「こちらも使ってみますか」
さらに真木博士はクワガタとカマキリのコアメダルをセルメダルの流れに乗せて流した。・・・真木博士のその行動がメズールを暴走グリードにしたことに、その時の俺達は気づいていなかった。
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・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「セイヤァァァァァ!!」
「なっ!?」
俺はライドベンダーで飛び上がり暴走グリードに向かってメダジャリバーを振りかざしたが思っていた以上に硬い身体に弾かれてしまった。
「ならこれでどうだっ!」
『シングル・スキャニングチャージ!』
ベンダーで暴走グリードの上を走りながら突き刺すように構えたジャリバーで暴走グリードの長い首に突っ込もうとするが・・・
「ギャォォォォォォ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
巨大なタコのような足に弾かれて地面に落下してしまった。その際に俺の乗ったベンダーは大破した。
「ちっ!何やってやがるキンジ!」
「ギャォォォォ!?」
アンクは火球を放ち暴走グリードを1度怯ませるが大してダメージがあるようには見えない。・・・やっぱり重量系のコアメダルを吸収してるだけあって防御力は高いようだ。
「どうするアンク?・・・やっぱりここはコンボか?」
「いや、使えるコンボはラトラーターだけだろ。ラトラーターはこんな大型の相手には戦いにくい。この場合は本来ガタキリバがいいんだが・・・」
「・・・クワガタとカマキリがないからな」
おそらくライオンのライオネルじゃ怯まない。サイは頭突きが強力になるが・・・こんなデカい相手に頭突きはしない。腕はトラしかないから変えられないし、チーターは回避には役に立つがジャンプ力が足りなくなる。・・・こうなったら奴の上に跳び上がってタコレッグで張り付くか。
「ハァッ!」
俺はバッタレッグのジャンプ力でもう1度暴走グリードの上に跳び乗ろうとしたが・・・
「ギャァァァァァァァ!!」
「うわっ!?ぐわぁぁぁぁぁぁ!?」
跳び乗る寸前で噛み付かれてしまい身動きが取れなくなってしまった。
「キンジ!こっの!キンジを離しなさい!」
アリアは暴走グリードを狙撃するが・・・怯むどころか振り向きもされていない。
「くそっ!全力の火力で攻撃すれば倒せるが・・・こんな場所では使えない。・・・それ以前にキンジが危ないから迂闊に攻撃できないな」
アンクは火球を放つのを止めて判断に迷っていると・・・・2人の仮面戦士がやってきた。
「いくよ。正太郎」
「ああ、仲間のピンチを見過ごす訳ないだろ」
『CYCLONE TRIGGER』
正太郎と陽・・・仮面ライダーWはサイクロントリガーに変わり暴走グリードの首元を狙撃する。
「・・・相棒を放してもらおうか。ライダー・・・スクリューキック」
『RIDER JUMP』
『RIDER KICK』
「ギャォォォォォォ!?」
矢車・・・仮面ライダーキックホッパーは身体を錐揉み状に回転させながら暴走グリードの首元に跳び蹴りをして怯ませた。・・・そして俺はその攻撃で暴走グリードが怯んだおかげで地上に落下すると・・・
「痛てぇ・・・・っ!?」
アリアの手前に落下して倒れてしまい・・・その時にアリアのスカートの中を見てしまい、一瞬でヒステリアモードになってしまった。
「ちょ!?あんたどこ見てんのよ!はやく起きないと風穴開けるわよ!」
「それはすまなかったねアリア」
ヒステリアモードとなった俺はこの状況を打破するための作戦を考え始めると・・・さらに銀と黄緑が目立つ仮面戦士がミルク缶を背負ってこちらに走ってくるのが見えた。
「さぁて・・・生徒達ががんばっているところを悪いけど・・・さすがにこんな化け物を生徒だけに任せるわけにも行かないんでね。助太刀させてもらうよ」
「その声・・・まさか伊達さん!?あんたも仮面戦士だったのかよ!?しかもその姿は!?」
「落ち着きたまえ正太郎。すぐにテンションを上げてしまうのは君の悪い所だよ」
「これ?この姿は仮面ライダーバース。・・・ちょっとした理由で俺が一時的に変身することになった仮面戦士だ。まぁ、詳しい説明は後で。今はこのイカちゃんを何とかしないとね」
伊達さんの変身しているバースはミルク缶から1枚のセルメダルを取り出してベルトに入れてレバーを回した。
「あ!ちょっと時間稼いどいて」
『ブレストキャノン』
『セルバースト』
『セルバースト』
『セルバースト』
胴体に大砲みたいな装備を装着したバースは2枚のセルメダルを入れてはレバーを回すという行動を繰り返す。その間、俺達は暴走グリードのタコ足を回避しながらもWとアンクが攻撃していたりしていた。
「よっしゃ!充電完了!ブレストキャノン、シュート!!」
バースの放ったエネルギー砲は暴走グリードの胴体に直撃してセルメダルが100枚ほど削り落とした。
「ほっ!・・・これって!?・・・キンジ!受け取りなさい!」
その落ちてきたメダルの中で2枚だけ緑色だったメダルをアリアがキャッチするとその2枚を俺に投げつけてきた。
「これは・・・クワガタとカマキリのコア!?」
「それでガタガタ・・・ガタキリバでしょ!」
「ああ!使わせてもらうよ!」
俺はタカとトラのコアメダルを外すとアリアから受け取ったクワガタとカマキリのコアメダルをベルトに入れてスキャンした。
『クワガタ!カマキリ!バッタ!ガ~タッ!ガッタガタッキリッバ ガタキリバッ!!』
「ギャオォォォォォォォ!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
オーズ・ガタキリバコンボに変身した俺は暴走グリードが振るってきた長い首をかわすとすぐさま50人に分身する。・・・・これ以上この戦いを長引かせる気はない。このまま決めてやる。
『スキャニングチャージ!』
『『『スキャニングチャージ!』』』
「「「「セイヤァァァァァァァァァ!!」」」」
「ギャオォォォォォォォ!?」
ガタキリバ50人のライダーキックを決めて1人に戻り変身を解除した俺は空中で爆発した暴走グリードを見つめた。・・・・ガメルやメズールもあんなに人間に近い感情を持っているのに・・・どうしてアンクのように人間と和解することができないんだろうな。
「っ!?・・・ぼさっとしてんなキンジ!!」
アンクはいきなり飛び上がるとそこにカザリとウヴァがどこからともなく現れ、暴走グリードとなっていたガメルとメズールのコアメダルを捕りあった。
「ちっ!・・・シャチとウナギのコアだけか」
「悪いけど僕達が実験で使っていたコアメダルなんだ。今は君達に譲るけど・・・いずれ回収させてもらうよ」
カザリはそう言い残してどこかに立ち去っていった。するとどこからともなく銃声が聞こえた。
「キンジ・・・第2射に注意しなさい・・・・」
するとアリアはそう言いながら俺に寄りかかってきた。
「撃たれた・・・らしいわ」
「なっ!?」
後ろを振り返ってみるとアリアの背中には赤い花のような鮮血が散っていた。・・・くそっ!ヒステリアモードの俺だったのに完全に油断していた!俺達の敵はグリードだけじゃなかったのに暴走グリードを倒して安心した瞬間を狙われた。・・・どうして気づけなかったんだ!
「アリア!?しっかりするんだ!!」
「キンジ!あぶねぇ!」
「なっ!?」
W(正太郎)の警告で後ろを振り返ろうとすると・・・・俺は蟻地獄のような昆虫の怪人にぶん殴られた。
「コイツは預かった」
突如として現れたアリジゴクヤミーはアリアを掴みあげると海に浮かんでいた異様な船に跳び乗った。・・・その船は明らかに現代の船じゃない。金銀で飾られた船体は細長く、L字に湾曲した船首と船尾は柱のように天を差している。その船の上には何人ものジャッカル男の中心には裸と見まごうほどに過激な衣装を着たおかっぱの美人がWA2000狙撃銃を俺の頭を狙うかのように構えていた。・・・下手に動いたら撃たれるな。俺は狙撃銃で狙われて動けないのに船はゆっくり動き出す。
「これはこれは面白い状況ですね」
そんな中、どこからともなく仮面ライダーレイがやってきた。
「せっかくなのでさらに面白くするために我々のメンバーも参加させてもらいますよ」
「お久しぶりですね矢車君」
レイの合図と共に真っ先にやってきたのはアンデットと呼ばれる怪人にそっくりなように見える怪人だった。
「お前・・・まさか鎌田か?」
「覚えていてくれて嬉しいですよ。・・・私を侮辱したあなたを殺すためにパラドキサアンデットの細胞を身体に埋め込んでもらいトライアルFとしてこちらに足を運ばせて頂きました」
トライアルFと名乗る怪人の後ろにはさらに2体の怪人がいた。・・・1体はかつて仮面ライダーストロンガーが戦ったデルザー軍団の改造魔人であり、体が鋼鉄でできていて防御力と攻撃力に優れた鉄球を持った怪人の鋼鉄参謀。さらにもう1体はV3とライダーマンが倒したデストロンの怪人で、両肩に大砲が付いた牛の怪人の大砲バッファローだった。・・・まさか矢車と因縁がありそうな怪人の他に、2体同時に仮面戦士科の教科書に載るほどの怪人が現れちまうなんてな。
「キンジ・・・怪人達は俺達に任せておけ」
『CYCLONE JOKER』
「君はアリアを連れ戻したまえ」
W、キックホッパーそしてバースはそれぞれ怪人達と対峙するように前に出た。
「・・・鎌田とのケリをつけたら俺も追いかける。・・・行け・・・相棒」
「あ~あ。今日は残業かぁ。このあとパチンコでバイトなのに・・・どう思う牛ちゃん?」
「どうもこうもない。貴様らはここで死ぬんだからな」
「あれ、お前そうゆう返しをしてくる?・・・まぁとりあえず・・・うちの生徒の妨害はさせないぜ」
『ドリルアーム』
バースは右手にドリルのような装備を装着して大砲バッファローと戦い始めた。
「・・・どうやら行くしかないようだなキンジ」
「当然だ。アリアはさっき撃たれたばっかなんだからまだ助かる!早く助けて病院に連れていくぞ!」
こんな悪夢・・・はやく覚めてほしい。そう思いながら俺はオーラインクロスに跨りアンクも紅い翼を羽ばたかせて船を追いかけると・・・・俺にとって最も見たくない悪夢がその船の船室から出てきた。
「に、兄さん・・・」
休眠から覚めたらしい兄さんは・・・カナの姿ではなく男の姿で立っていた。兄さんは黒いコートを羽織っていてまるで死神のような服装をしている。
「・・・夢を見た。深い眠りの中で『第2の可能性』が実現させるのをな。・・・だが・・・」
兄さんは長い髪を海風になびかせながら俺を睨む。
「キンジ・・・残念だ。・・・パトラごときに不覚を取られるようでは『第2の可能性』はない。・・・夢は所詮夏の夜の夢でしかなかったな」
「兄さん!『第2の可能性』って何だよ!!パトラって誰だ!どうして兄さんがアリアを撃った奴の船に乗っているんだよ!!」
「この船は『太陽の船』・・・当事海辺にあったファラオの棺をピラミッドまで運ぶのに用いた船を模したものだ。・・・それでアリアを迎えようと計らったんだろ。・・・パトラ」
兄さんは海に向かって語りかけると・・・先ほどまで俺を狙撃銃で狙っていた女が土になって崩れ、海の中から棺が出てきた。それもただの棺ではなく古代エジプトの王族を埋葬するための聖棺だ。・・・1トンはありそうな黄金の蓋を軽々持ち上げて出てきた人物は先ほどの土人形が化けていた過激な服装の女性そのものだった。
「気安くわらわの名を呼ぶでないトオヤマキンイチ」
当たり前のように水面の上に立つ女は手の甲を頬にあてて笑い始めた。
「わらわに呪われたものは必ず滅ぶ。イ・ウーの玉座を狙っていたブラドもわらわに呪われ1度滅び、メズールとか申すグリードも滅んだのぢゃ。くっくっくっ」
俺はヒステリアの頭でこれまでの状況を振り返る。・・・最近はなぜか砂が盗まれるという事件が多発していた。・・・ジャッカル男達は倒すと土になる。・・・間違いない。あいつは砂を操る能力を持っている。それに兄さんの方もだ。たしかに成美さんからの警告もあったのに・・・どうして気づけなかったんだ俺は!
「そういえばまだ1人も殺しておらぬ。祝いの贄がないのはちと寂しい。・・・ついでじゃ、お主らは滅びよ」
「フンッ!」
アリジゴクヤミーは先ほどまで女の姿になっていた砂を操り槍のような武器を作ると俺とアンクに向かって投げつけてきた。