緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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メールと幽霊と最悪の再開

「はぁ・・・はぁ・・・アンデット細胞を取り込んでいなければ、間違いなく死んでいましたね」

 

 Wの目の前でアークが倒されてから数時間後、小夜鳴の姿に戻ったブラドは近くの川原からボロボロになりながらも出てきた。

 

「しかしアークの鎧が壊れてしまいましたか・・・」

 

「ならば我々の組織で修復してあげましょうか?」

 

 その言葉の聞こえる方向に小夜鳴が振り向くと、そこには仮面ライダーレイが立っていた。

「その代わり・・・我々の組織の一員になってもらいますがね・・・どうです?それほど悪くない条件でしょう?」

 

「ハハハ!」

 

 小夜鳴はレイの言葉で一瞬目を丸くすると声を上げて笑った。

 

「なるほど!たしかにあなた達の組織ならできそうだ!了解しました。私もぜひあなた達の組織に連れていってください」

 

 俺の知らないところで・・・小夜鳴はイ・ウーとは違う第3勢力と手を組んだ。これから俺達が対立することとなる仮面戦士の力を悪用する組織に・・・。

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

「今度は丸3日寝込んでたか」

 

 ブラドからの戦闘から2日が立った。今回はあんな無茶な戦いをした後にコンボを使った上に無理をして変身をしたせいで3日も目が覚めなかったらしい。・・・そろそろコンボに身体をならしていかないと1週間目が覚めないなんてことも有り得そうだ。

「そんでアリア・・・結局ブラドはどうなったんだ?」

 

 エターナルとか名乗った謎の仮面戦士にアークがやられたってことは正太郎達から聞かされたが、その周辺にはブラドの遺体らしいものは無かったらしい。つまりブラドは生きている可能性が極めて高いってことだ。

「ブラドのことは永久に他言無用それはライト達から聞かされたわよね?」

 

「ああ、だいたいの内容はな・・・」

 

 今回の泥棒のことを教務科に知らせると神奈川県警やら警視庁などから大量に書類が届いたらしい。とりあえず簡単にまとめると、今回の窃盗については不問にするかわりに誰にもこのことを言うなってことらしい。・・・加えて俺達の戦闘はTVでも報道されずに落雷事故という扱いにされたらしい。・・・・この国でブラドのことがどれだけタブーなことなのか思い知らされた気分だよ。

 

「ブラド・・・正確には小夜鳴先生の目撃証言があったわ。・・・どうやら白峰と歩いていたらしいの」

 

「白峰って・・・たしかこの前の・・・・」

 

 白峰貴斗(しらみね たかと)・・・仮面ライダーレイとしてドーパントに操られいると思っていたら実際はカザリとグルで、俺の隙を突いてクワガタとチーターのメダルを奪っていった仮面戦士だ。・・・本来はイギリス武偵だったらしいのだが、半年前に行方を晦ませていたらしい。

「まぁ、分かったのはそれだけね。・・・とりあえずそろそろ学校にいきましょ?」

 

「ああ、そうだな」

 

 俺はオーラインクロスに跨りアリアを後ろに乗せて武偵高に向かい教室に入ると、理子が俺達の後ろにいきなりやってきた。

「たっだいまぁ~!理子りん!月の都から帰って参りましたぁ~!」

 

 まるで何事もなかったかのような感じの理子に一部の男子生徒や女子生徒が集まった。

「「「理子り~ん!」」」

 

「3週間もどこに行ってたの理子ちゃん?」

 

「寂しかったよ~」

 

「あはは、ごめんねぇ~」

 

 ほんと・・・理子は相変わらず学校では表の理子でみんなに接しているよな。アリアも頬杖を立てているが怒っているようには見えない。とりあえず理子に話しかけてみようかとも思ったのだが俺なんかがついていけない話題になっているな。

 

「どうやって理子に兄さんのことを聞けばいいと思う・・・矢車・・・」

 

「・・・・・・・」

 

矢車は携帯を見つめたまま無反応だった。

「おい、矢車?」

 

「ん?・・・ああ、すまん」

 

どうやらまた仮面戦士に関係するメールでも届いたんだろうな。矢車は1人で仮面戦士絡みの事件に首を突っ込むことが多いし・・・・

 

「みなさん席についてくださ~い。小夜鳴先生が転勤したかわりに新しく衛生科の先生になった先生を紹介しますよ~」

 

「伊達昭(だて あきら)。こんだけ稼ぐために勤務することなったからよろしく!」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「あれ?ちょっとキザだったか?」

 

 新しい衛生科の先生は・・・人差し指を立てながらそう言ってきた。・・・なんか豪快そうな人だけど悪い人ではなさそうだな。そして授業が終わり放課後。俺は理子に誘われたので一緒に帰ることになった。アリアはとっくに先に帰ったらしく一緒ではない。アンクは・・・授業が終わってからは見ていないな。どうしたんだ?

「もうすぐ梅雨明けだな」

 

「・・・そ、そうだね・・・あ」

 

 俺が横を向いた瞬間、理子がこちらの顔を窺がおうとしてたらしく目が合ってしまった。すると理子はまるで緊張したように赤くなりながら顔を背けた。・・・どうしたっていうんだ?・・・俺も少し気まずくなりレインボーブリッチのほうを向いた。

「か、勘違いは無しだよ!理子は別にそっちの味方になったわけじゃないんだから!」

 

「あ、ああ、そりゃ分かっているが・・・」

 

 

「でも・・・帰ったらPCのメールはチェックしておいて」

 

「は?・・・PCのメール?」

 

「送っといた。お兄さんのこと。・・・理子は・・・約束を守る」

 

 兄さんのことだと!?・・・俺は再び理子のほうを振り向くが、そこにはすでに誰もいなかった。・・・校舎と校舎の間に・・・派手好きな理子が描いたような虹が空に見えた。

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

部屋に帰るとアリアはなにやら外出の準備をしていた。

「キンジ!」

 

 するとアリアは指ピストルで俺を撃つようなポーズをしながらウインクしてきた。なんだいきなり?何かあったのか?

「あたしも昨日理子からメールが来た時は疑ってたんだけどね!今、理子がママの弁護士に会っているんだって!さっき連絡が来たの!」

 

 アリアは制服を着替えずに狭い玄関で俺と押し合うようにして靴を履く。

「理子の証言を使えば差戻審は確実になるんだって!」

 

 差戻審は証拠に問題があれば、最高裁から高等裁判所にもう1度裁判をやり直しさせれる制度だ。理子が証言してくれるおかげでそれができるようになったらしい。・・・どうやら理子は本当に約束を守ったらしいな。

「やったなアリア!」

 

「やった。やったわ!」

 

 アリアはその子供のような体格で俺に抱きついてきた。・・・そしてすぐさま自分のしていることを理解したアリアの顔は赤くなり、同じく顔を赤くしている俺からすぐに離れた。

「そ、それじゃ、あたしも弁護士のところに行ってくるね!」

 

「あ、ああ。気をつけてな」

 

 2人して噛み噛みの会話をすると、アリアは何度かこちらをちらちら見ながら出て行った。

「・・・とりあえず・・・一息つけるな。・・・メールを確認してみるか」

 

 俺はPCを起動させてメールをチェックすると確かにメールが来ていた。なにやらデカいFLASHファイルも添付されたメールは・・・

『キーくんは大変なものを盗んでいきました』

 

 というタイトルになっていて本文はなかった。しかし添付のFLASHファイルを見てみると音楽にのせて俺を追い掛け回す理子のアニメーションが画面に映った。

「ったく・・・回りくどいことをしてくれる」

 

 動画の背景には時間と場所を示す文字が見え隠れしている。・・・つまりこれは招待状ってことだ。そしてアニメの最後にはカナのようなキャラクターが理子のキャラに向かって語っていた。

『キンジは大変なものを盗んで行きました。・・・あなたの心です』

 

無駄に凝っているな。・・・ほんと。

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

 たしかにこれは『幽霊』だな。・・・俺は指定された場所、レインボーブリッチと学園島の間の人口浮島で目の前の人を見てそう思った。

『狼と鬼と幽霊に会う』

 

 それが白雪の言っていた占いだった。レキの手懐けた『狼』にブラドという吸血鬼という『鬼』・・・そして出たよ・・・『幽霊』が・・・・

『キィィィィィ!』

 

 カナの後ろには白鳥のような契約モンスター『ブランウイング』が飛んでいる。・・・最初は理子の変装かと思っていたがそうではなかったらしいな。・・・間違いない。どうやら本物のカナのようだ。ヒステリアモードのトリガーは性的興奮。ご先祖様である遠山の金さんは肌をさらすことで性的興奮ができた人だったらしい。つまり彼は自分の意思でヒステリアモードになれたんだ。そして兄さんも、いつでもヒステリアモードになれる方法を見つけた。・・・・それは絶世の美人に化けること。

「キンジ・・・ごめんね。・・・イ・ウーは遠かったわ」

 

 驚きは・・・思ったよりも少なかった。心の中では信じていたのかもしれない。遠山家でも最強と言われた兄さんが理子なんかに殺されるはずがないからな。それからふつふつと俺はカナに対しての怒りを感じた。

「どういうことなんだ!教えてくれ、カナ!・・・いや・・・兄さん!」

 

 俺の質問にカナ・・・兄さんは答えない。かわりに唐突な質問をしてきた。

「キンジ、神崎・H・アリアとは仲良しなの?」

 

 俺はその質問に眉を細めた。

「・・・好きなの?」

 

「そ、そんなこと今は関係ないだろ!!」

 

 先ほどのこともあったせいで俺は顔を赤くしながらも答える。

「キンジが肯定したら1人でやろうと思っていたんだけどな。しなかったわね」

 

 カナ・・・兄さんは一瞬で白鳥のような仮面戦士‘仮面ライダーファム’に変身すると信じられない言葉を告げた。

「これから一緒にアリアを殺しましょう」

『キィィィィィィィ!』

 

 俺達の周りには・・・ブランウイングの白い羽が散らばった。

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

 

「待っていたよ・・・兄貴」

 

「シュン・・・」

 

 俺がカナと再開した頃・・・矢車は夜の東京ウォルトランドに来て、灰色の仮面戦士‘仮面ライダーパンチホッパー’・・・弟の矢車俊(やぐるま しゅん)と数メートル離れながら向き合っていた。

「ごめんね兄貴・・・俺はもう・・・兄貴の知らない地獄の世界を知ってしまったんだ。だから今から・・・兄貴を殺す」

『RIDER JUMP』

 

パンチホッパーは俯きながら跳び上がる。

「シュン!それはどうゆうことだ!答えろシュン!」

 

「じゃあね。・・・兄貴」

『RIDER PUNCH』

 

 パンチホッパーの拳は・・・生身である矢車に向かって降りてきた。

 

 

 俺達は今日・・・・最悪の形で兄弟と再会してしまった。

 


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