タカコアメダル×1
ライオンコアメダル×1
クワガタコアメダル×1
トラコアメダル×1
カマキリコアメダル×1
ゴリラコアメダル×1
バッタコアメダル×2
タココアメダル×1
「へックシュン!」
突然だが俺は現在、風邪を引いてしまっている。まぁ、あんな冷たい東京湾に落とされたんだから当然だけどな・・・
「あー頭痛がする~」
白雪は看病するために自分も休むと言っていたが、さすがにそれは悪いのでなんとか登校させた。・・・こんな時は‘特濃葛根湯’っていう薬品を俺は飲むんだが・・・生憎、現在は切らしているし・・・つーかこの前のアリアと白雪の喧嘩で家具とかと一緒にビンが割られちまってなくなったんだけどな。
「・・・・・・」
たぶん今は昼休みぐらいの時間帯だと思う頃、誰かが入ってきた気がした。・・・たぶん白雪だろうな。意識が朦朧としていて、声も出すのもダルかった俺は・・・そのまま寝に戻った。・・・そして俺は1度目覚めたときにおそらく白雪が買ってきてくれたであろう特濃葛根湯を飲んで再度寝ることにした。
・・・・・・
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「大丈夫かな・・・キンちゃん」
午後4時過ぎ、白雪は一人で歩いていた。本来なら俺が護衛をする時間帯だが、生憎俺は風邪で寝込んでいたので護衛ができないためアリアに頼んでいた・・・はずだったんだが・・・アリアの姿は見えない。アンクは・・・まぁ、白雪に一人で近づくことはしようとしなくなったのでたぶん今頃はクスクシエだ。
「まったくアリアったら私がキンちゃんと二人きりになる時間をジャマして・・・まあ、睡眠薬をお弁当に混ぜてるから今頃寝てるんでしょうけど・・・」
そんなこんなで急いで俺の部屋に向かっている白雪を後ろから見ていた青年がいた。
「ふふ、星伽の一族にもあんな欲望を持つ人間がいたんだ」
猫系グリードのカザリの人間態だ。
「さてと・・・オーズの人質になってもらうついでに・・・ヤミーを作らせてもらおうかな」
「うっ!?・・・・?」
白雪の後頭部に出現した投入口にセルメダルが入る。しかし白雪はなにか首に違和感を感じたと思っただけで首をさすっただけの反応だった。
「さてと・・・星伽の一族の子の欲望は・・・どんなヤミーになってくれるのかな?」
そう言い残したカザリは怪人の姿に変わって物凄いスピードで何処かへ走り去っていった。
・・・・・・
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さすが特濃葛根湯。次に目が覚めたときにはすっかり体調が良くなっていた。時刻はもう夕方で、おそらくちょうど帰ってきたであろう白雪と出くわした。
「あっキンちゃん。お体は大丈夫?」
「ああ、だいぶ熱も下がったし頭痛も取れた」
「よかったぁ、よかったよ・・・ぐす」
「だからすぐ泣くなって」
「はい」
白雪は涙を指で拭うと、嬉しさいっぱい、と言った感じの表情になる。
「お前の買ってきてくれた『特濃葛根湯』のおかげだ。ありがとな白雪!」
「えっ?」
白雪は一瞬だけ曇ったような顔をしたが・・・すぐにまた笑顔になった。
「どういたしまして!」
「っ!?」
その笑顔に正直・・・俺はどこか悪寒を感じた。・・・俺はこのときにでも気づいてやるべきだったんだと思う。・・・白雪もカザリのヤミーに寄生されてしまっていたことを・・・
・・・・・・
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風邪が治った翌日。天気は見事な五月晴れ。暖かい陽射し。まさに絶好の昼寝日和だ。
「いい風が吹くなぁ」
そんなわけで俺は校舎の屋上で仰向けになっていた。・・・一応言っておくが死にそうなわけじゃないぞ?
「何サボってるのよ!ちゃんと白雪のボディーガードをしなさいよ!」
「ん?」
いきなりの声に俺は薄目を開くとチアガール姿のアリアがいた。
「ア、アリアっ!?」
こんなところまで追ってきやがって!・・・俺は講義の視線を送りながら上半身を起こすと・・・。
「んっ!!」
アリアは明らかにチアとは異なる動作で右脚を高く振り上げた。そしてすぐさま理解した。・・・アリアは俺に白羽取りをさせようとしていることを。それに気づいた俺はすぐさまキャッチする構えをとろうとするが・・・アリアのカカトが俺の脳天を直撃した。・・・反応が遅かったようだ。もう勘弁してくれよアリアさん。
「もうっ!一回ぐらいは成功させなさいよ!」
「あのなぁ・・」
俺は蹴られたところを片手で抑えながら立ち上がる。
「お前もパートナーなら相方のコンディションも少しは考えてくれよ。こっちは病み上がりなんだぞ。たまには休ませろよ」
「そ、それは分かってるわよ!あたしも、ちょっとはやりすぎたって思ってるから・・・」
「・・・まぁ、風邪のことはもういい。白雪の買ってきてくれた特濃葛根湯のおかげで治ったからな」
「え?」
俺の言葉にアリアはいきなり振り向いた。あれ?そこは驚くところじゃないはずだろ?
「あ、あれは・・・あたしが・・・・前に・・・調べたと・・・・・んでる薬って言うから・・・」
アリアは何かごにょごにょと何か言っているがはっきりと聞こえない。
「・・・白雪がそう言ったの?」
「ん?ああ」
「・・・・・・」
おい、なんでそこで黙るんだよ。
「まぁ・・・いいわ。貴族は手柄を自慢しない。たとえ・・・」
「なんだよ?言いたいことがあるならはっきり言えよ。お前らしくないな」
「なによ!いいじゃない!いいたいことは言わなくていいの!」
アリアは俺に向かって‘べ~’とやってくる。
「おいっ!なにいきなり切れてんだよ!」
「切れてなんてないわ!」
あ~~!!なんだかこういうアリアはすっごいイライラすんだよ!!
「この際だからハッキリ言ってやるけどな、パートナーの方針で付き合ってやっていたけど真剣白羽取りの訓練なんてもうやめだ!あんなもん、達人技だろ!!」
なぜかアリアとアンクはできたけど!
「だめよっ!続けるわ!『魔剣』は鋼をも斬る剣を持っていてどんな盾でも防げないわ!白羽取りの訓練は今こそ重要な意味を持つのよ!」
「ここ数日見張ってたけど怪しいヤツなんて現れなかっただろ!敵なんて、『魔剣』なんていないんだよっ!!」
「っ!!」
俺の言葉にアリアは紅い眼を見開いた。
「お前は一刻もはやくかなえさんを助け出したいのは分かってる。でもお前は『魔剣』の名前を聞いたときに、そんないるはずのない敵を『いてほしい』って思ったんじゃないのか!」
「ちがう!『魔剣』は絶対にいる!あたしのカンじゃ、もうすぐそこまで迫っているわ!」
「なら証拠をみせろよ!」
「!?」
アリアは一歩、二歩と後ろに引き下がる。アリアらしくない力強さで後ろに引き下がる。
「あたしにはわかるのよ!白雪に敵が迫っていることが!でもあたしは『曾お爺様』みたいに論理的に説明できないからみんなあたしを‘ホームズ家の欠陥品って呼ぶ!なんでみんなあたしを信じてくれないの!?」
チアのポンポンを地面に投げつけたアリアは涙目だった。本来なら優しい言葉を言ってやるべきだったんだと思う。・・・でも口喧嘩中でイライラしていた俺は・・・
「ああ、わかんねぇよ。いもしない敵が迫ってるなんて信じられるかっ!!白雪の護衛は俺一人でする!お前はどっかで頭冷やしてろっ!!」
追い撃ちをかけるような言葉を言ってしまった。
「このバカ、バカ、バカ、バカ!!」
アリアはとうとう完全にぶち切れて俺に二丁拳銃を発砲してきた。
「キンジのバカ、バカ、ノーベルどバカ賞っ!!」
銃弾は俺の周囲スレスレを通りすぎた。
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
あの後、自分の部屋に戻り少し冷静になり、俺はそれとなくアリアに謝ろうと思ったが・・・アンクはベランダでたそがれているのに夜になってもアリアは帰ってこなかった。一応状況を白雪に説明すると・・・
「えっ?じゃあこれからはキンちゃんが一人で護衛してくれるの?」
「ああ。そうゆうことになった。教務科とアリアが勝手に決めちまったことだけど・・・約束は約束だしな」
「キンちゃんが私を守ってくれる」
白雪は少し俯きながら「うれしい」と続けた。
「お前、不安じゃないのか?俺なんかのEランク武偵がボディーガードで・・・」
「不安なんてはじめっからないよ。・・・改めて私を守ってください」
「あ、ああ」
白雪はそう言いながら頭を下げてきたので俺は反射的にそう答えた。つーか、アンクはいいかげん白雪にびびってないで部屋に入ってこいよ。・・・なんで俺もアンクも気づかなかったんだろうな。白雪の欲望がどんどん大きくなっていたことに。
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・・・・・・・・・・・・
アリアとの喧嘩の後、アリアは雲隠れしてしまっていたが・・・まぁ、予想通りレキの部屋に仮住まいをしていた。それについては安心した。そしてB組である白雪は授業中である現在、レキに見張らせいるから問題ない。・・・アリアは単位が足りてたから授業をサボって見張ってたけどな・・・。まぁ、ただこれは現実逃避をしたくて現状を振り返っているだけで・・・
「先輩!やきそばパン買ってきました!」
3時間目の休み時間。東條はそう言いながら俺の教室に入ってくると焼きそばパンを俺に渡してきた。
「遠山君が後輩をパシッてる!」
「そんなことはしなさそうなタイプだと思っていたのに!?」
「でも、顔的にはしてそうな顔よ!」
「それでも・・・嫌いじゃないわ!!」
「キラキラしてんなぁ・・」
・・・なんだこの状況?ほんと、何しにきたんだよ。さっきから悪い誤解が聞こえてくるぞ。
「先輩!英雄になるためにも、僕を鍛えてください!」
なるほど。焼きそばパンは献上品のつもりってことか・・・。まったくあれからコイツも何処かズレてるんだよな。・・・ズレてると言えば・・・ここ最近、白雪の様子が何か変な感じがするんだよな。なんていうか・・・一声一声が重いような・・・。
「どうしたんですか先輩?深刻な顔して・・・ま、まさか僕の練習メニューを考えてくれているんですね!!」
東條・・・悪いが俺はそんないい人間じゃないぞ。
「東條・・・頼みがあるんだが・・・・」
「はいっ!」
俺は東條にある事を頼んだ。
・・・・・・
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・・・・・・・・・・
「なあ、白雪。お前はゴールデンウィークはどうするつもりなんだ?」
白雪との下校中、明日からゴールデンウィークなので一応ボディーガードの俺は白雪にどう過ごすのかを質問した。
「私は・・・おうちでゆっくり勉強でもしてるよ」
「それじゃあヒキコモリじゃんか。もっとハネを伸ばさないと後で後悔するぞ?」
「で、でも・・・」
白雪は少しオドオドした反応をしたのを見て俺はピンときた。
「・・・星伽か?」
「・・・・・」
白雪は否定しなかった。星伽の人間は神社や学校から勝手に出ることを許されない。俺の頭の中に‘かごのとり’というフレーズが浮かんだ。はぁ、まったく・・・。
「ほらよ」
俺は学校で配られた一枚のチラシを白雪に見せる。
「東京ウォルトランド・花火大会・・・一足お先に浴衣でスターイリュージョンを見に行こう?」
一通り読み上げた白雪が「?」という感じで俺の方を見てくる。
「ああ。これを二人見に行こう」
「えっ!」
「そんなに驚くことじゃないだろ?」
「だ、だめだよ!こんなに人が多いところなんて私・・・」
「心配すんな。ウォルトランドに入らなくてもいい。少し遠くなるが、葛西臨海公園から見ればいいだろ。1日ぐらい、外出のトレーニングだと思って学校の外に出ようぜ?」
おかしな話だよな。外出をトレーニングだなんて・・・。でも白雪には‘かごのとり’であってほしくないんだよ。
「で・・・でも私・・・」
「俺ももちろん付いていってやるよ。俺はアドシアードが終わるまでお前のボディーガードだからな」
「き、キンちゃんが一緒に?」
「ああ。だから花火を見に行こうぜ?」
白雪はゆっくりコクンと頷くとまた怪しげな笑顔をした。・・・やっぱり何か違和感を感じるんだよな。
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
「・・・・!!」
俺は白雪の着ていた浴衣に目を見張った。柄は、清楚な白地に撫子の花雪輪。鴇色の帯は長さも完璧で見事に着こなしていた。さらに珍しく結った黒髪は花かんざしで留めていた。アリアを「かわいい」と表現するなら、白雪は「きれい」だ。
「き、キンちゃん。通販で買ったんだけど・・・どうかな?」
白雪はゆっくり1回転をして全体を見せてくる。
「あ、ああ。似合ってると思うぞ」
「ふふ、キンちゃんが似合ってるって言ってくれた」
「・・・・・」
やっぱり何かおかしい。普段の白雪ならそんな風に笑わないはずだ。本来なら照れるような仕草をするはず・・・アンクさえいれば俺のカンを確かめることができるんだが・・・あいつ昨日から帰ってきてないしな。ほんっとあのチキンはどこに行きやがった!
「・・・それじゃ、そろそろいくか!」
「はいっ!」
俺と白雪はモノレールに乗り、ゆりかもめ、りんかい線と乗り換えを続けて目的地の臨海公園駅へと到着した。
「き、キンちゃん・・・今、つまらなかったりしない?」
まだ見えない花火の音の中、俺と白雪は公園の道を歩いていると白雪がそんなことを言ってきた。
「別にそんなことねぇよ」
白雪はこんな性格上あまり男子と話をしたことがない。たぶんそのことで俺に話を合わせられないことを気にしてるんだな。
「ご、ごめんね・・・」
「そうすぐ謝んな。気を使いすぎなんだよ」
「ご、ごめんなさ・・・」
「ほら、また言ってるぞ」
「あっ、ごめ・・」
反射的に謝ってしまう白雪がおかしくて俺は小さく笑ってしまった。白雪は少し顔を赤くしながら俯いていたが、おかしそうに、うれしそうに、顔を緩めていた。そして白雪から・・・
「夢みたい」
と言う呟きが聞こえたような気がした。
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
「・・・終わっちまったな」
「・・・うん」
俺達がようやく人工なぎさに到着すると・・・・ちょうど最後の花火が空に輝いた。
「悪い。俺がちゃんと時間を確認しなかったせいで・・・」
「ううん、いいよ。キンちゃんと二人なら花火がなくてもいいの。月夜の海でもいいの。おうちでもいいの」
白雪はそう言いながら星空で輝く海を背に振り返って俺を見てきた。
「キンちゃんと・・・2人なら・・」
その笑顔は俺を心から思っているような表情で・・・。
俺は武偵にもなれない。普通の高校生にもなれない。仮面ライダーにもなりきれない中途半端なヤツなんだぞ?なんでそんなに優しくしてくれるんだよ。
「白雪・・・寒くないか?寒いだろ?これを着て待っててくれ」
「え?」
何かをせずにはいられない気持ちにさせられた俺は上着を脱ぐと、有無を言わせず白雪の肩にそれをかけた。
「あったかいものを買ってくるから少し待ってろ」
俺はそう言って近くの目先に見えるコンビニへと走り出した。・・・俺はこの時・・・本当に油断したと思う。
「あ・・・いっちゃった」
『ppp』
そう言いつつも笑顔で俺の向かったコンビニの方を見ている白雪に突然メールが来た。
「?・・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
白雪は携帯を開きメールを見ると目を見開き・・・悲鳴と共に白雪はセルメダルに包まれて黒い豹のようなヤミーになってしまった。
「白雪!!」
俺は悲鳴を聞きつけて急いで白雪の元へ向かうと・・・
「やぁ!はじめまして。女の子と一緒に待たせてもらったよ。この時代のオーズ・・・いや、遠山の一族と呼んだほうがいいかな?」
クロヒョウヤミーの隣には猛獣のようなグリードがいた。
「僕はカザリ。もちろん遠山家なら知ってるよね?」
「あぁ、知ってるよ・・・猫系グリードだろ?・・・白雪にヤミーを寄生させたのはお前か?」
「ふっ、当たり前じゃないか!」
「っ!!」
『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』
俺はすぐさまオーズに変身するとトラクローを展開して駆け寄る。
「待ちなよ。このヤミーの中にいる星伽の娘がどうなってもいいのかな?」
「くっ!?」
カザリは白雪が中にいる自分のヤミーに虎のような鋭い爪を向けたので俺は動きを止めた。
「さすが遠山の一族。理解が早いね!・・・それじゃあまず、変身を解いてくれないかな?」
「・・・・・」
俺はしぶしぶ従って変身を解除する。
「そしたら僕のコアメダル・・・ライオンとトラを僕に返してよ」
「っ!!?」
カザリの身体のセルメンの部分を見る限りここで2枚をカザリに渡したら確実に完全体になっちまう。そうしたら俺や白雪どころかみんなが・・・
「何迷ってんだ?とっとと渡してやれよ」
「えっ?」
いきなり現れたアンクに俺が握っていたトラのコアメダルが奪われた。
「おいアンク!何してんだよ!!」
「・・・いいから渡すぞ」
アンクはカザリに向かって黄色いメダルを投げつけた。