緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

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counttheMedal!現在オーズの使えるメダルは

タカコアメダル×1
ライオンコアメダル×1
クワガタコアメダル×1
トラコアメダル×1
カマキリコアメダル×1
ゴリラコアメダル×1
バッタコアメダル×2
タココアメダル×1


日本刀と師匠とライドベンダー

星伽白雪は大和撫子だ。炊事・洗濯が上手で、誰にも優しい・・・そんな人間なはずなんだ。・・・本来はな。

「天誅ぅぅぅぅぅぅ!!」

 

とか叫んで日本刀をアリアに振りかざす人間ではない・・・はず・・。

「あれ?・・・疲れで幻覚が見えてんのかな?」

 

「ア、アリアを殺して、私も死にますぅぅぅ!!」

 

いやいや・・・そんなこと言うはずが・・・

「いいかげん現実を見ろ。目の前で起きてること・・・それが真実だ」

 

アンクは呆れた眼でアリアと白雪の戦いを見ながら俺にそう言ってきた。・・・なんだろうな・・・アンクに正論言われると凄く悔しい。

「キンジ、なんとかしなさいよ!あんたのせいで変なのが沸いたじゃない!!」

 

「俺のせいじゃねぇよ!」

 

「そう!キンちゃんは悪くない!悪いのはアリア!・・・アリアに決まってるぅぅぅぅ!!」

 

 白雪はアリアの脳天目掛けて刀を振り下ろす。

「ふにゃ!?」

 

「おぉ!!」

 

 アリアは白雪の日本刀を左右の手で挟むように止めた。おお、真剣白羽取り!初めて生で見た!

「・・・いや、お前・・・驚く前に止めろよ」

 

「え?ああ、そうだな・・・おい2人ともいいかげん落ち着・・・」

 

またもやアンクに正論を言われつつも、俺は2人の間に割って入ろうとしたその時だった。

「えっ?」

 

「ん?」

 

 俺とアンクの耳元を銃弾が横切った。見るとアリアが二丁拳銃を握っている。

「キレた!も~~~キレた!風穴決定!!」

 

「・・・おいキンジ・・・あの桃色・・・何の冗談だ?」

 

「は、はは・・・」

 

できれば冗談でいてほしいな。

「喰らいなさい!」

 

 アリアは弾倉がカラになるまで銃を撃ち続けるが、白雪はそれを当たり前のように全部弾く。アリア室内で銃はやめてくれ。弾かれた弾が俺とアンクに飛んできてるから・・・

「こっの~~!」

 

 今度は2本の小太刀で白雪の平突きと切り結んだ。

「キンちゃん!この女を後ろから刺して!そうすれば見なかったことにしてあげるよ!」

 

「キンジ!あたしに援護しなさい!あんた、あたしのパートナーでしょ!」

 

もう2人の状況のわけが分からなくなってきたので・・・俺は・・・

「勝手にやってろ。・・・それよりアンク・・・さっきの『コアメダルの総取り』について、もう少し詳しく聞かせてくれ」

 

「ああ、分かった」

 

睨み合う2人から目を背けて俺とアンクはベランダに出て行った。なぜベランダなのかって?物置があるからさ。・・・防弾性のな。

 

「・・・それで?お前のコアメダルを総取りする目的は何なんだ?」

 

が 俺とアンクはロッカーのような物置に背中を預けながら話し合う。・・・部屋の中から色々と壊れる音が聞こえるが・・・考えないで置こう。

「その前に一つ聞かせろ。・・・もしかしてあの巫女・・・星伽の巫女か?」

 

俺はその言葉にコクンと頷く。星伽白雪は星伽神社に代々使える武装巫女の一族だ。武装巫女というのは長い歴史の中でどう間違えたかは知らんが名前の通り武装するようになった巫女のことだ。それにただ強いだけじゃなく‘鬼道術’と呼ばれる超能力を使うことができる。

「・・・まあいい。俺の計画について語らせてもらうぞ。・・・理由は簡単だ。俺達はグリード(欲望)。なにかを『ほしい』と思う欲望だって当然ある。・・・俺は絶対に壊れない完璧な身体がほしいんだ」

 

「完璧な・・・身体」

 

グリードはかつてオーズと‘究極の闇’によって倒され、星伽の巫女にメダルを封印されたと聞かされている。・・・つまりこいつは今みたいな不完全な身体じゃなく、バラバラにされない完全な身体がほしいってことか。

 

「コアメダルをすべて取り込めば・・・きっとそれが手に入るはずなんだ。だからオーズであるお前となら最もそれの成功に近づけると思ってやってきた」

 

「・・・すべてのメダルを手に入れて・・・人々を傷つける気は?」

 

「人間は欲望を生み出す貴重な餌だ。そんなことはしねぇ」

 

「・・・・もう少し・・・考えさせてくれ」

 

その計画に未だどこか不安な俺は答えを決められなかった。・・・こいつだってグリードだし、それに・・・俺を試すとはいえアリアからヤミーを作ったんだ。

「そうか。・・・それじゃ、俺は用事があるんで出かける。・・・答えは早めに決めてくれ」

 

アンクはベランダから飛び降りると人間体のまま真紅の翼を羽ばたかせて、夜の空を飛んで行った。つーか出かけるってここに帰って来る気かよ。

 

 

「そろそろいいか・・・」

 

 

 戦争映画みたいな音がようやく部屋から聞こえなくなったので俺は中に入る。俺の部屋の家具はほとんど破片となって散っている。で、その問題の2人は髪をぼさぼさ、服は乱れ、汗やほこりにまみれていた。・・・その後もしばらく2人の小競り合いが続き、当然俺も巻き込まれたりした。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・

 

「会長、ドクターから例の物が完成したとの報告がありました」

 

俺とアリアの口論が続く頃、鴻上ファウンデーションでは何やら動きがあったようだった。

「そうか。・・・それではそれをすぐさま工場のほうで大量生産させ、学園島中に配置するようにするように部下に指示したまえ」

 

里中さんは腕時計を確認する。

「すいません会長。私、もうあがりの時間なんで明日にさせてください」

 

「・・・・そうか。欲望に忠実なのはいいことだ。・・・いいぞ」

 

「それじゃ、お先に失礼しま~す」

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「何だ・・・これ?」

 

翌日、なんか校舎に入った俺は不思議なデザインの自動販売機を見かけた。売られているのは缶ジュースのようだがバリエーションが少ない・・・赤い缶と青い缶、そして緑の缶の三種類だけだ。

 

「メーカーは・・・鴻上ファウンデーション!?おっさんのヤツ何考えてんだ?こんなんじゃ商品買う人いないだろ」

 

「まったくだっちゅうの!しかもなんか小銭入れるところでかくね?」

 

「海堂・・・お前もそう思うか・・・」

 

俺の隣に立ってこの自動販売機の感想を言ったコイツは‘海堂直哉’(かいどう なおや)。草加が仮面戦士の決まり事をやぶったため新しくカイザになることになった2年B組の生徒だ。それにしても本当にコインの入れる投入口が大きい。・・・まるでコアメダルとかセルメダルが入りそうなぐらい・・・

「遠山!そろそろ教室いかねえとホームルーム間に合わないぜ」

 

「そうだな・・・急ぐか・・・」

 

まさかこの自動販売機に‘あんな機能’が備わっていたなんて・・・この時の俺は知らなかった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

 武偵高の運動会。アドシアードのことで周囲が盛り上がっていた昼休みが終わった。午後からの授業はおっさんのおかげで常に自由履修でどこの授業を受けていいのだが、今日は珍しく仮面戦士科の学科棟にいた。普段の授業は格闘技がメインの実戦訓練だが、今日はある人の講座と言うことで聞いているだけで良いものだったんで参加してみることにしたんだ。

「今日の講師は世界で始めて‘仮面ライダー’と呼ばれ、現在は警視庁総監の本郷猛先生だ。みんな、しっかり聞けよ」

 

仮面戦士科担当の教師にして仮面ライダー裁鬼の‘サバキ’先生が教室に入ってきていきなりそんなことを言ってきた。ふ~ん本郷先生ねぇ・・・って、え!?マジ!?

 

周りの生徒もそのことを聞いた途端にざわつき始める。

「‘本郷さん’と言ったら40年前にショッカーとゲルショッカーを倒した伝説の仮面戦士の1人じゃんか!マジで来るのかよ!?」

 

俺の親戚の明智正太郎‘あけち しょうたろう’は俺の隣でテンションが上がっている。まぁ、あの人は仮面戦士科の生徒・・・いや、仮面ライダーを志す人間にとって憧れの存在だからな。本当にすごい人だとは思う。・・・でも・・・

「・・・・・」

 

「ん?どうしたんだキンジ?」

 

「・・・トイレ行ってくる」

 

生憎、俺は‘仮面ライダー’を志す人間じゃないんでな。・・・この授業はやっぱりサボることにしよう。・・・こんな考えのヤツがここにいちゃ駄目だろ?

 

「・・・おう!とっとと戻れよ」

 

たぶん正太郎は俺の心境が読めたから何も言わなかったんだろうな。・・・こうゆうヤツだよな。お前のよく食っているコーヒー飴くらい甘いヤツだよ。

「はぁ、どうせ俺なんか・・・」

 

 俺は学科棟の外に出ながら前に出ると近くの木陰で矢車がの垂れかかっていた。

「・・・お前はあの人の講義に出ると思ってたぞ。・・・だってあの人ってたしか・・・お前に体術を教えた師匠じゃんか」

 

矢車はやさぐれる前は‘あの人’から体術を教わったことを誇りに思ってよく周りに自慢していたことがあった。やさぐれても‘あの人’の講義は聞きに行くと思っていたんだが・・・意外だな。

「今の俺は・・・あの人に会わせられる顔じゃねぇよ。・・・お前も似たようなカンジで出てきたんだろ?」

 

「まあ、間違いじゃねえな」

 

俺の場合はここに自分なんかがいるのは場違いだ。と思ったんだがな。

「ところで相棒・・・あの自販機は何だ?・・・形状が怪しすぎると思うんだが・・・」

 

矢車は朝の自販機と同じ物に視線を向ける。・・・ここにもあったのかよ。

「・・・この投入口・・・相棒のメダルを入れれるんじゃないか?」

 

「たしかに俺も今朝、そう思った。・・・・」

 

 い、いかん。ちょっと入れてみたくなってきた。

「セルメダルでも入れてみればいいんじゃねえか?」

 

「え?」

 

この声はまさか・・・振り返ると予想通り・・・

「ハッ!よう、キンジ!」

 

「アンクゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

アンクがいた。しかもなぜか片腕だけ赤い武偵高の制服を着ているし!?

「お前・・・誰だ・・・」

 

アンクと初対面の矢車は、少し警戒しながらアンクに質問する。

「通りすがりの転校生、泉・A・信吾だ・・・・覚えておけ!」

 

なんか偽名使ってるし・・・いったい何なんだよ!!

 

「今日からここに通うことにした・・・学科は強襲科、ランクはAだ」

 

まさか昨日の用事って・・・こうゆうことだったのかよ。こうして俺の学園ライフをさらに荒らすことになる暴風が満を持してなくとも降臨した。あれ、おかしいな?目から汗が出てるぞ?これからどうなるんだ?俺の学園生活は・・・。

 

 

 

 

・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・

 

「里中君。例のマシン『ライドベンダー』の学園島配置は順調かね?」

 

「はい。およそ250台の配置は終了しました。今日の夜には予定通り300台を配置することは可能です」

 

「素晴らしいっ!!これで新しい戦闘スタイルを生み出す武偵が続出するだろう!!」

 

俺がアンクに驚かされている頃、鴻上ファウンデーションの会長室・・・おっさんはやたらテンションが高かった。

「後は武偵高の生徒にセルメダルを支給し、『ライドベンダー』の使用方法を説明するだけだ!!里中君!明日は頼むよ!!」

 

「すいません会長。明日は私はOFFの日なんで別の社員に頼んでください」

 

会長室が一瞬にして静まり返った。

「そうか・・・では先導時君にでも頼もう」

 

「最初からそうしてください」

 

謎の自動販売機・・・『ライドベンダー』は翌日、武偵高の強襲科と仮面戦士科に大きな衝撃を与えることになった。

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

 翌日、結局アンクのせいで自動販売機の謎を突き止められなかった俺は学園島のハズレに位置する体育館裏、通称『看板裏』に来ていた。

「で、俺は何をするんだ?」

 

「ぉほん、」

 

チアガールの格好のアリア・・・チアリアは俺の特訓だけではなくチアとしてアドシアードに参加する自分の練習もする考えでそんな格好をしてるらしい。それは見て分かるので問題ない。・・・問題は・・・

「・・・・・ハッ!」

 

 アリアの少し後ろで笑いながらアリアの小太刀の1本を縦に振っているアンクだ。・・・なんだろう、すごく嫌な予感がするぞ。

「あんたはあたしの中でSランクに値する力を秘めてるわ。でもその力を自由には使えていない。だから必要なのはあんたを覚醒させる『鍵』だわ」

 

アリア教授は熱弁に語る。自分がその『鍵』ってことには気づかずに・・・

「ハイジャックの後、色々調べたんだけど・・・キンジ、あんたって二重人格ってヤツよね?」

 

残念だったなアリア。その推理はハズレだ。俺のヒステリアモードは心因的な獲得体質じゃなく、神経性の遺伝体質だ。

「・・・クッ・・ク・・」

 

 ほら、お前の後ろでアンクも笑っているぞ~。

「そんなわけだから、あんたを戦闘のストレスにさらしまくるわ!・・・アンク!!」

 

「やっと出番か」

 

 へぇ、アリアがアンクのことを名前で言うようになったとはな・・・って、それどころじゃないぞ!?アンクが刀を向けてきやがった!!

 

「ア、アンク!?な、なんだよそれ!?」

 

「刀だ。見てわからねぇのかよ?」

 

「見て分かるって!だからなんで俺に向けてんだよ!?」

 

「「レッツ、ゴー白羽取り」」

 

 アンクとアリアが声を揃えてそう言ってきた。いくら前に事件を一緒に解決したヤツで俺の知り合い同士だからって、昨日強襲科にアンクが入ってきたばっかなのに、なんでもうそんなにお前ら息ピッタリなんだよ!?もうお前らで組めよ!

「これはバカキンジモードのあんたにストレスを与えて覚醒させて、覚醒後の反撃の流れを掴む訓練なの。アンク、頼んだわよ」

 

「ク・・・クク。ああ、分かってる!」

 

こ、こいつ俺の状況を楽しんでやがる。そしてアリアは少し離れたところでチアの練習を始めるとアンクも笑うのをやめた。

 

「まあ、真実はどうあれ俺としてもオーズであるお前にもっと強くなって貰わないと困るんだよ」

 

どうやらアンクから言わせると俺の変身するオーズは未熟らしいな。・・・800年前のオーズって、いったいどんなヤツだったんだ?

「しっかり止めろよ・・・オラッァ!!」

 

「あぶねっ!?」

 

アンクはいきなり刀を振り下ろしてきたので俺は咄嗟に避けた。・・・峰打ちにしようとしていたらしいが、当たると痛そうだしな。

「避けんな!止めろっ!!」

 

「いきなりは無理だ!第一こんな練習が役に立つのかよ!」

 

「だったらあっちの練習は何なんだよ!!」

 

アンクはグラウンドの方を指差すと、武偵高指定の体育着を着た名護さんと、その他の生徒十数人が何かをしていた。

「イクササ~イズ。俺は正しい。ついて、来なさ~い。腕振りなさ~い、振りなさい!速くしなさい、振りなさい!」

 

すごく怪しいが体操のような行動だ。・・・・なんだ、あれ?

 

「あれは練習になっているって言えるのかよ?」

 

「・・・本人達はそう思ってるんじゃないか?」

 

よし、とりあえず白羽取りから話題がそれて・・・

「・・・どっちみち強くなって貰わないと困るから続けるぞ」

 

「・・・あ~やっぱり?」

 

・・・なかったようだ。・・・俺は朝練の間ずっとアンクの刀を避け続けた。

 

 

 

 

・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

「全校生徒は直ちに第一体育館に集合してください」

 

 遅刻ギリギリで校舎の中に入り席に着こうとするといきなり放送が聞こえた。

 

「武藤、いったいどうしたんだ?」

 

「おうキンジ!なんかよ、鴻上ファウンデーションの開発したマシンの使用方法の紹介だってよ!」

 

へぇ、いきなりだな。まあ、1時間目のめんどくさい古典が潰れてくれてうれしいが・・・おっさんのところの物だぜ?怪しすぎんだろ。

 

「はぁ・・・行くか」

 

俺はやや足取りが重いまま体育館に向かった。そして体育館に入ると、生徒達はステージの上に置かれているある物を見て驚いていた。

 

「え~、鴻上ファウンデーション宣伝部門担当の先導時です。今回はこの『ライドベンダー』の使用方法について説明させて貰います」

 

それもそのはずだ。・・・だってあれはあの‘自動販売機’だったからな。

「こちらのライドベンダーはこれから皆さんに支給する『セルメダル』を投入することにより機能を発揮するマシンとなっております」

 

『タカ・カン』

 

 先導時とかいう痩せ型の中年男性はセルメダルをライドベンダーに投入し一つの赤い缶を取り出すとプルタップを開けた。するといきなり赤い缶は鳥の形に変形した。

「「「ッ!!?」」」

 

 生徒達はそれを見て驚いている。もちろん俺もだ。

「こちらはタカカンドロイド、追跡行動に優れた小型ガジェットとなっております。他にもカンドロイドのタイプは幾つかありますが、平均稼動時間はおよそ80時間となっております」

 

 まさかあの変な自動販売機の中にすごいメカが入ってたなんて・・・おっさんの企業を舐めていたぜ。

そして極め付きの機能となっているのがこちらです」

 

先導時さんは再びセルメダルを入れて中央の黒いスイッチを押すと・・・自動販売機はバイクの形に変わった。

「「「ええ~~!?変わったぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」

 

リアンクションのいい生徒達は一斉にそう叫ぶ。俺ももちろん驚いているが叫んでないし、隣にいるアリアや矢車も驚いたような顔をしているけど叫んではいない。・・・まぁ、武藤と正太郎は叫んでいるけどな。

「こちらがライドベンダーのバイクモード。最大時速は600キロまで出すことができます」

 

600キロって・・・仮面ライダーに変身してないと耐えられないぐらいの風圧がかかるスピードじゃないか!?いったいなんでこんなスピードに・・・・いや、落ち着いて考えれば分かることだな。

「キンジ・・・もしかして会長からのコレはキンジのためなんじゃないの?」

 

いや、惜しいとは思うがおそらくは俺がグリードを倒す存在‘オーズ’ってことを前提にしてここに送られてきたんだろうな。学園・・・いや、世界で唯一のメダルを使う仮面戦士である俺にライドベンダーっていうメダルを使うマシンを使わせて、俺に手っ取り早くグリードを倒させるためにな。

「・・・以上です」

 

 やがてライドベンダーの説明が終わりいろんな所から「はやく使ってみたい」という声が聞こえてくるが・・・俺は世界に振り回されているような複雑な心境で体育館を出て行った。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・

「このバイクをうまく使えれば・・・僕なんかでも英雄になれるのかな?」

 

休み時間、俺が不機嫌のままアリア達に絡まれている頃、校舎裏のライドベンダーの前で1年生の仮面戦士科の生徒・・・‘東條悟’(とうじょう さとる)は考えこんでいた。

「昨日の本郷さんのような・・・ヒーローに・・・本物の英雄になりたいな」

 

「面白い欲望だね!その欲望、開放しなよ!」

 

 東條の後ろには黄色い服を着て灰色の髪に帽子をかぶっていた男がいた。

「えっ?君だれ?」

 

「うっ!?」

 

帽子をかぶっていた男は黒い猛獣のようなメダルの怪人・・・カザリへとその姿を変えると凍条に出てきた投入口にセルメダルを入れた。

「僕は、僕は英雄に・・・英雄になるんだ」

 

腕に包帯のようなものが張り付いているように見える東條は、そう呟くとどこかへ走って行ってしまった。

「ふふ、いったい彼の欲望ではどんなヤミーになるのかな?・・・できればオーズから僕のコアを取り返してくれそうな強さになってほしいんだけど・・・」

 

俺の知らない所で起こった出来事。これが俺にとって二回目の・・・人の願いを聞き入れたヤミーを倒さなければいけない戦いに繋がっちまうなんてな。

 

 


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