「変身ッ!」
『スーパータカ!スーパートラ!スーパーバッタ!スーパー!タトバ!タ!ト!バ!スゥゥゥパァァァ!』
いつも以上に五月蝿い音声と共に・・・俺は未来のコンボへと変身を遂げる。タジャドルコンボに変身した時と同じようなタカヘッド・ブレイブに、今まで以上に鋭利になったトラアーム。そして黒と緑が反転したバッタレッグ。
「スーパータトバコンボ。強力な性能を負担なく引き出せるようにしたタトバコンボの発展型だよ」
タトバコンボの発展型か。確かにタトバのメダルと似たような3枚だったが・・・メダルから感じる力はタトバの比じゃない。
「ハァァッ!」
強化されたトラクロー。トラクローソリッドを展開した俺はこのコンボの特性である時間停止を発動し・・・瞬時に緋緋神との距離を詰めて切りつける。レガルメンテの頭でこれができると直感したが・・・いきなり成功させれるとは思わなかった。今までのコンボはほとんど事前知識があったりしたから大概なんとかなったが・・・これに関しては未来のメダル。正直失敗したり、制御できない可能性も少し考えた。
「まぁ、使いこなせるに越したことはないな」
制御できないどころか・・・他のコンボよりも安定して力を使えている感覚だ。まるで身体に負荷を感じない。流石は未来のコアメダルだ。
「ハァァァァ・・・セヤヤヤヤっ!!」
緋緋神の懐へと跳び込んだ俺は、バタ足をするような連続蹴りで怯ませつつ、首元を足で挟んで体を捻り・・・地面へと叩きつける。
「くっ・・・なんて奴だ」
「・・・・っ」
いける。この力ならあの緋緋神を倒せる。
「行けキンジ!そのまま決めちまえ!」
正太郎の応援に頷いた俺はオースキャナーを手に握り、スキャニングチャージを発動しようとした・・・そのタイミングでだった。
「待ってキンちゃん!!」
「なっ・・・白雪・・?」
トドメを刺そうとした瞬間・・・白雪の声が聞こえてきた。声の聞こえてきた後ろを振り返ると息を切らすほど急いで駆けつけてきた様子の白雪がいた。
「小林さんから話はだいたい聞いたよ。その緋緋神グリードはただ倒しても駄目なの!」
「・・・どういうことだ?」
「今、倒しても緋緋色金はアリアの意識と一緒に、アリアの中に戻っちゃうの。かといってその緋緋神グリードを、800年前のグリードと同じように封印すると・・・アリアの意識も一緒に封印されちゃう」
そんな・・・。倒すのも封印も駄目なら・・・どうやってアリアを助ければいいんだ?
「今は。この戦いでアリアを救うことは諦めて、対処法を見つけるまで・・・待つしかないよ」
「待つ。・・・か。残念だけどこいつ等相手にそんなことはできそうにないな」
相手はいとも簡単に次元を超えることができる財団X。ここで逃がしてしまえばアリアの意識が入ったままの緋緋神グリードは別の次元へと送られ・・・二度と助ける手段がなくなってしまうかもしれない。
「そもそも・・・あの緋緋色金ってのはなんなんだ?」
コアメダルは純粋な色金で作られてたり・・・多くのライダーシステムにも色金が使われているが・・・超能力的な特殊な力が使える金属ってことぐらいしか知らない。たぶん多くの企業もその全貌までは把握してないまま色金を扱っているんだろう。
「緋緋色金は・・・私達の言葉でいうなら宇宙人・・かな?」
「宇宙人?金属なのにか?」
「金属の宇宙人・・・まるでなでしこみたいだな」
玄太郎がボソリと呟く。何か思い当たるフシがあるみたいだ。
「今から2000年ぐらい前だったかな?この地球に乗ってた船が墜落してきたんだよ。こう、ズドーンって・・」
緋緋神は思い出したかのように地球へと落下してきたときのことをおおざっぱに説明する。
「この地球上にいるたくさんの仮面の奴らがいるだろ。そいつ等が使ってる色金はその船の欠片か、それが変化して変わったもの。再現されて作られた偽物のどれかだな。お前のコアメダルってシロモノは欠片の中でも特に貴重な動力炉にあたる部分だったんだと思う」
緋緋色金が乗って来た宇宙船の動力炉。・・・なるほど。だからコアメダルってのはここまで力を引き出すことができるのか。
「おしゃべりはここまでにして・・・戦いを続けようキンジ。お前との戦いはとても楽しい」
「こっちは全然楽しくない」
戦うことが生きがいと言いたげな様子の緋緋神は右手に炎、左手に電撃を纏って俺に殴り掛かってくる。このまま倒すわけにもいかない俺は先ほどまでは優勢だったのに、今度は防戦一方になってしまう。
「・・・1つあなたにとって有益な情報を教えてあげるわ」
見ているだけで緋緋神グリードと俺の戦いに割り込もうとしていなかったキイマが口を開く。
「神崎・H・アリアの母親である神崎かなえは緋緋色金を危険視している日本政府によって圧力をかけられているため、捕えられているのよ」
そういう理由だったのか。だとしたら緋緋色金をアリアのもとへと戻すとかなえさんはこれからも捕えられたままになってしまう。
「いったいどうすれば・・・」
ただ倒すだけじゃ・・・緋緋色金がアリアのもとへと戻るだけ。何か・・・何か打開策を見つけないと。
「戦いの間に余計なことは考えちゃ駄目。この戦いに集中しなさい!」
打開策を考えている俺に対して緋緋神は告げてくる。・・・だんだんと頭の中で繋がり、疑問に思っていた1つの答えが導き出された。このゲーム、キイマは本当に怪人達の性能テストが目的でしかなかったんだ。奴らのあのアジトは支部でしかない。そして事あるごとにキイマは投資のことを気にしていた。考え方はまさに子会社に務める経営者だ。ユートピドーパントと超銀河王はそれぞれガイアメモリの投資とミュータミットの投資を打ち切り、切り捨てる判断を下した。岩石大首領はともかく、首領オーズと4号は自分達の対策不足を認めるかたちだった。
「そしてお前も・・・見定められているんだろうな」
「・・・?」
かなえさんのことを俺に教えてきたということは・・・既に緋緋神グリードの敗北の可能性を考え始めたということだ。そしてこの戦いをデータとして記録している辺り、次のへの抜かりもないように見える。
「勝ち負けよりも利益とデータってことか」
世界を容易く支配できる戦力を持ち合わせていながら・・・本当に金のことしか考えていないな。
「しかしまぁ・・・財団Xの連中はもういいとして・・・アリアはどうすれば助けられるんだ?」
レガルメンテの頭で考えても・・・・全然答えが見つからない。緋緋色金についての知識が乏しいっていうのもあるが、俺よりそれの知識がある白雪でさえも助ける手段に悩む状態。
「何をボサッとしてるのきーくん!前!前!」
「っ!?」
白雪から少し遅れて駆けつけてきた理子は緋緋神を指刺す。俺はそれに反応して正面をみるとカザリのような熱線を放とうとしていた。
「っと・・・。理子、ありがとう助かった」
考えすぎて反応が遅れてしまっていた。理子に注意されなければあの熱線が直撃していたな。
「流石だよキンジ。そうじゃなくちゃ・・・戦いは楽しくない」
少し前まで劣勢だったのに有利になるとすぐ強がる。そこもマジでアリアそっくりだ。・・・っと、そんな考えをしちまうと攻撃しにくくなっちまうな。
「・・・後藤。それと東條。30秒でいい。時間を稼いでくれ」
力を抜き・・・深呼吸をした俺は既に変身した状態で控えていた2人にそう告げる。矢車達はもう緋緋神と戦えるだけの気力は残っていない。俺は少し考える時間が欲しい。となれば後ろで控えていたあいつ等に頼るしかない。
「30秒だけでいいのか?」
「あぁ・・」
「30秒じゃ短いだろう。私達も手を貸そう」
バースとタイガの隣に・・・ジャンヌとかなめがそれぞれ剣を構えて並び立つ。狙撃科の屋上からはレンズの輝きが・・・レキのドラグノフのスコープの輝きも見えた。
「そゆことなら・・・くふふ。少し久々にアリアと戦りあっちゃおっか!」
テンションが上がった理子も剣を構えると・・・白雪もイロカネアヤメの刃を抜く。
「今まで緋緋神になってしまった人、限りなく近づいた人は歴史の中に何人かいた。結局その人達は・・・本来の『人』に戻ることは出来なかった。倒したり、力を封じたりしないといけない戦神になってたの。だけどキンちゃんなら・・・今まで不可能と思われたことを可能にしてきたキンちゃんならできるかもしれない。だから今は考えて」
「必ず答えを見つける」
緋緋神の足止めをみんなに任せた俺は・・・過去を振り返り何かヒントがなかったか考える。
『・・・キンジ』
父さんが呼ぶ声が聞こえた気がした。今はもうこの世にいない父さんの声が。
『HSSは最強なんかじゃない。最弱になってしまうものなんだ。世界の半分は俺達を容易く殺せる』
まるで走馬燈のように・・・亡霊のように、守護霊のように半透明で目の前見えた仮面ライダースカルは俺にそう告げてくる。
『それは女だ。女のためなら俺達は容易く命を投げ打ってしまう。そうならないようにするため・・・自分を殺しに来た女を惚れさせるんだ。愛してあげるんだ。それが出来れば・・・これは最弱から最強になれる』
スカルの言葉で・・・俺はようやく理解した。ヒステリアの致命的すぎる欠陥を・・。ヒステリアは様々な段階があり・・・段階が上がるごとに戦闘力も上がるが・・・女性に対して一途になる。その人のため・・・何処までも命を燃やす。最強であり、最弱であるHSSに欲望を重ねる俺は無限を更に超える可能性があるってことだ。
「・・・答えはここにあったんだな」
みんなが3分も時間を稼いでくれたおかげでアリアが助かる方法を・・・俺はようやく思いつく。
「アリアを諦めれば・・・楽になるかもしれない。だけどここで諦めちまうほど俺の欲望は小さくないんだよ」
緋緋神グリードはガメルのような重力操作で白雪達を吹き飛ばし、白雪達が傷つけられたことでレガルメンテの血が更に強化され、俺は更に女に弱くなる。アリア・・・結局俺にはお前を助けることはできない。だったらお前が自分で助かればいいんだ。俺はそのために・・・手を伸ばして、声を伝えよう。武の悪い賭けかもしれないが・・・そんなのはいつもの事だ。
「聞こえているんだろアリア。俺はお前を信じる。そんな宇宙から来た金属なんかに負けてないで、帰って来い」
俺は緋緋神へと手を伸ばしながら歩み寄る。
「キン・・ジ・・」
反応をした。きっとアリアが緋緋神に抵抗しているんだ。
「アリア・・。みんながいてくれたから、俺はお前の前にもう1度立つことができた」
俺は緋緋神の放ってくる緋弾をトラクローで切り裂きながら一歩、また一歩と前へと進む。
「来るな!来るなァァァ!!」
焦りを見せた緋緋神は更に緋弾を放ってきたので・・・俺はバッタレッグの脚力で跳び上がり、それらを避ける。
「俺の腕はまだ届く。アリア!お前のもとに今、手を伸ばす!」
『スキャニングチャージ!』
着地と同時にベルトを再スキャンした俺は背に赤いエネルギーを翼を出現させると、足をバッタ脚へと変化させ、跳び上がり・・・飛ぶ。
「セイヤァァァァァァ!!」
急降下から繰り出されたスーパータトバキックが緋緋神へと直撃する。そして緋緋神がふらつき、倒れようとするタイミングで・・・俺は変身を解除して緋緋神を受け止める。アリアを呼び戻す。本当に簡単な答えだったんだ。
「・・・目覚ましにしては・・・随分と荒っぽいやり方ね」
「いつも俺に銃を向けてる奴が言う台詞か?」
未来のコンボの性能をフルで発揮したうえ、ない知恵を絞り出して策を考えた俺はヒステリアの血が少しづつ落ち着き始めながら緋緋神から意識を奪い返したアリアに答える。
「まさか緋緋神グリードから意識を奪い取るなんて・・・緋緋神についてはまだ研究が 必要なようね」
予想外の行動に驚きをみせたキイマは部下たちとともに灰色のオーロラを潜り、この場から去っていく。
「・・・分かった。それじゃ私は自分の身体の方に戻るから・・」
まるで見えない誰かと会話をした緋緋神からオーズコアメダルが抜け出たかと思うと・・・アリアの肉体にアリアの意識が戻り、目が覚める。
「・・・おはようアリア。自分の身体での目覚めはどうだ?」
「そりゃあまぁ、メダルの身体よか生身よね」
お目覚めのアリアに軽い冗談を言いつつも・・・アリアに手を伸ばして起き上がらせる。
「すぐに動いて大丈夫なのか?」
「陽だってWの変身を解除したらすぐに動くじゃない。何度も見ていたから何となく用量は分かるわ」
たぶんアリアよりも見てるはずだが・・・正直全然分からないぞ俺。
「その様子じゃ平気そうだな」
とりあえず一安心した俺はオーズコアメダルを拾い上げ・・・緋緋神改め緋緋色金に視線を向ける。
「なぁアリア・・・。これはどうすればいいと思う?」
「ちょっと話してみるわ」
話すってのはどういうことだ?・・・そんなことを聞く前にアリアは緋緋色金の前へと立ち、それに話しかけ始める。正直俺達には何も聞き取れないが、未だ精神的なリンクが続いたままのアリアにはあれの声が聞こえているんだろう。
「だいたい分かったわ。つまりあんたは宇宙に帰りたいってとよね」
アリアにそう問われた緋緋色金は頷く。
「宇宙に行きたいのか?だったら俺に任せろ!」
宇宙という単語が出た途端、玄太郎が名乗り出る。そういえばフォーゼはスーパー1と同じく宇宙活動を想定して作られたものだったな。
「・・・安心しなさい。あたし達が送り届けてあげる。そのかわりにこっちからも要求するわ。あたしを曾お爺様が下さった名前の通り『緋弾のアリア』にすること」
緋弾のアリア。それは仮面ライダーラスことシャーロックホームズがアリアに継げた特別な名前。その意味は緋緋色金の力を引き出すことのできる超能力者だ。
「つまり一生あんたの力を無制限に使わせなさいってこと」
つまりあれですか。あの緋弾をアリアがバンバン撃てるようになるってことですかい?撃たれる側としては超怖いッスよアリアさん。
「アリア・・・」
「どうしたの白雪。止めるつもり?」
「ううん。それができるなら願ってもない話だよ。なんてったって前代未聞で誰も思いつかなかった手段だもん。だけどそれにはちゃんと自制が必要だよ」
力を持つものには責任がある。俺も・・・このオーズの力が強大過ぎて何度も暴走した。強い力を扱うには強い意志と信念が必要なんだ。
「よっぽどじゃないとこれの力を借りる気はないから大丈夫よ。キンジのように大きな力で周りに怖がられるのもあれだし」
確かに俺はかつてのオーズの事を知っている皆さまに『王様』って恐れられてはいるけどさ、怖がられてるって意味じゃアリアも大概だぞ。
「なぁ兄貴・・。はっきり言って兄貴も地味に超怖いことしてるんだぜ。次元を歪ませる緋弾をあの爪で何度もぶった切ってるんだからよ」
おいこら金三!!人がわざと気にしないようにしてたことを口に出すな!察しろよ!
「ともあれ・・・無事にアリア先輩も帰ってきて良かったですね」
変身を解除した東條も・・・緋緋神を足止めにかかったみんなも、みんなボロボロだけど確かに俺達は勝利を掴み取った。アリアを取り戻すことに成功したんだ。
「契約成立ってことで・・・いいわね」
その言葉に頷く緋緋色金にアリアは右手を前に出し握手を求めると・・・緋緋色金もその手に応じて握手を交わす。
「とりあえず・・・一件落着ってところか」
こうして俺達の・・・緋弾を巡る戦いに終止符がついた。
「粗削りな強さで・・・随分ヒヤヒヤさせてくれる生徒達だ。もう少し長引くようだったら流石に俺も動いていたぞ」
武偵高の屋上。そこから俺達の戦いを眺めていた手足に鎖がついている1号2号にも似た戦士はそんな独り言を呟く。
「君の生徒達は随分と逞しいな。3号」
「・・・お1人は貴方の弟子ですよね1号」
スッとその戦士の後ろに立った1号は・・・その戦士のことを3号と呼ぶ。
「そうだな。双君らが・・・彼らが新たな時代を築き上げていく。俺達仮面ライダーの魂は・・・こうして受け継がれていくんだ」
「未来に繋がる想い。魂・・・か。お歳にしては青臭いことをいいますね。でも・・・そういうの。なんかいいですね。歴史に記録されていない俺も・・・魂ぐらいは残してみるか」
そう言い残した3号は屋上から飛び降りて変身を解除すると・・・まるで透明になるように存在感を消していく。
「確かにV3が歴史的には3号だが・・・君も立派な3号だぞ」
存在感を消しながら去っていくその人物にそう告げた1号もその場を去ろうとする。
「財団Xか。今回は彼らが何とかしてくれたが・・・次はどうなるか分からない。こちらでも探りを入れなくてはな・・・」
「本郷さん。貴方は多くの仮面戦士に慕われていて、みんなを導く側にいる人です。だから旅に出るべきじゃないと思いますよ」
変身を解除して屋上から去ろうとしていた本郷さんの前に五代さんがやってくる。
「旅ならまた俺が行ってきますよ」
「エヴィルの時もそうだったが・・・また君に無理をさせてしまうな」
「大丈夫。俺は俺にできる無理をするだけですから」
サムズアップをした五代さんの笑顔は・・・いつもより少し暗い。それを本郷さんが見抜けないはずがなかった。
「・・・君にこんな冒険、させたくなかった。君にはもっと幸せな・・・平和な冒険をしていてほしかった」
「後悔はありません。気にしないでください。・・・たぶん今度は今まで以上の長旅になりそうなんで後のことはお願いします」
まるで今生のお別れに聞こえなくもな言葉を言い残した五代さんは屋上から立ち去っていくと・・・五代さんの乗ったバイクはすぐに見えなくなるまで遠くへと行ってしまった。
「ショッカー、ゲルショッカー・・・エヴィル。何十年経っても悪が途絶えることはなかった。だが正義の心も・・・仮面ライダーの魂もこうして受け継がれている。俺達の魂は未来の明日へと繋がっていく」
3号や五代さんに少し遅れた形で本郷さんも仮面戦士科の外へと出てサイクロン号へと跨る。
「人々の助けが聞こえる限り・・・俺達仮面ライダーは必ずそこへとたどり着く。俺達仮面ライダーは人々の自由を平和のために、これからも戦い続ける」
人々の自由と平和のために終わらない戦い続ける本郷さんはサイクロン号に乗って走り去っていった。
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
本郷さんがサイクロン号に乗って武偵高を後にした頃、鴻上のおっさんは鴻上ファウンデーションの会長室でケーキを作っていた。
「会長、今日は誰か社員の誕生日でしたか?」
「いいや、違うよ」
里中さんはタブレットに映し出される社員リストを確認しようとするとおっさんは首を横に振る。
「しかし新たな誕生を祝うのは事実だ」
おっさんは自身の前に置かれているノートパソコンに映し出される俺達の映像を見ながらケーキのスポンジにクリームを塗る。
「誰かを助けたい。何かを守りたい。・・・誕生の経緯はそれぞれ違う戦士達も、戦うキッカケとなった想いは同じ。その守りたいという想い、誕生の欲望が終えないかぎり、仮面ライダーは人々を助け続ける。これこそが更なる欲望に続く未来へと繋がっていく。どんな世界、どんな未来にも、たとえ武偵や仮面ライダーのいない世界だとしても・・・守りたいという純粋な欲望こそが世界を救う」
クリームを塗り終えたおっさんはイチゴやチョコレートなどのデコレーションを乗せ終えると完成したケーキを窓から見える外の景色へと掲げる。
「その欲望は日々誕生し続ける。欲望なくして明日はない。誕生なくして未来はない。世界は常に・・・欲望と誕生に満ちているのだよ」
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
あの戦いから3か月が過ぎ・・・今年度の武偵高が終了した。あの戦いの後、緋緋色金はフォーゼのワープドライブで宇宙へと飛ばし・・・金色金のもとへと届けた。俺も50人に分身したり時間止めたりと人外っぷりを発揮しまくってしまってるが、何かああもあっさりと宇宙にまでワープできるフォーゼも大概だと思う。
「フォーゼのコズミックエナジーって色金の力とは違うのよね?」
「緋緋色金が言うには家族じゃなく、親戚みたいなものらしいけど・・・詳しくはさっぱりだ」
玄太郎が財団Xと関わることとなった事件に色金の親戚みたいなものらしいソ・・
「そ・・・何だっけ?」
「SOLU。seeds of from the universeの略称よ。ケンゴからの報告だと液体金属状の生命体らしいわね」
液体金属の生命体か。確かに金属の生命体ってところは緋緋色金と似ているな。液体と固形って違いはあるけど。
「宇宙の神秘とも言えるコズミックエナジー。それが形となったものがアストロスイッチやそのSOLUだって聞いたわ」
「何だか良く分からないが宇宙ってすげぇってことは分かった」
・・・そんな雑談をしながら俺とアリアは指定された・・・というほど堅いことでもない、約束を取り付けた場所へと足を進める。
「もうすぐだなアリア」
「・・・っ!!」
少し離れたところから見えた人影に向かってアリアが駆け出す。
「ママっ!」
「アリア!」
その人影とはアリアの母親・・・かなめさんだ。リンクは途切れぬまま正真正銘『緋弾のアリア』となっているアリアには色金が入ってはいないため、星伽や本郷さん、そして匿名の『3号』が裁判所に圧力をかけたようで・・・無事にアリアの母親であるかなえさんが釈放される結果となった。
「無罪放免ってことでいいんですよね?仮釈じゃなくて」
「疑うんだったら最高裁判事の法規命令書でも確認してみる?すっごいよこれ。もっともらしく取ってつけた内容でさ。神崎・H・アリアの母親である神崎かなえさんは釈放。そんでアリアちゃんは強制送還も、お前の国外退去推奨も全部まるっと解除だってさ」
武偵弁護士志望の北岡先輩は面白いものを見てるかのようにそう説明してくる。・・・というか俺国外退去なんてもの言われてたのかよ。いやまぁ・・・色々とやりすぎたことは・・・あるかもしれないけどさ。
「良かったなアリア・・・。本当に良かった」
アリア。もうお前は独奏曲なんかでも俺とのデュエットなんかでもない。バスカービルのみんなや、チームは違っても俺達を手助けしてくれる沢山の仲間達が集まったコーラスになってる。
「1人では届かないこの手も・・・みんなで繋げばここまで届かせることができた」
俺は再開を喜ぶ親子から少し離れて青空を眺めながら割れたタカのコアメダルを取り出し、空に掲げる。見ているかアンク。これが俺の・・・明日への一歩だ。
俺達はこれからも未来の明日に向かい続ける。そしていつか・・・またお前と欲望が交差する場所にたどり着くからな。
遠山キンジの章・Fin
なろうサイトからTINAMI、そしてハーメルンへと移動し続けてきてようやくこの欲望の交差を完結させることができました。約2年間(なろうからだと5年間、TINAMIからだと4年間)ありがとうございました。