緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

101 / 110
counttheMedal!現在オーズの使えるメダルは

タカコア×1
ライオンコア×1
コブラコア×1
プテラコア×2
クジャクコア×1
トラコア×2
トリケラコア×3
カメコア×1
コンドルコア×1
チーターコア×1
バッタコア×1
ティラノコア×2
ワニコア×1

サソリギジ×1


力と掴む腕と欲望の交差

「ガァァァッ!!」

 

「フンッ!!」

 

 紫のメダルの力で恐竜のようなグリードに姿を変えて暴走している俺とカザリのメダルで足りない力を補って擬似的に完全体になっているアンクは冷気と炎をぶつけ合う。そして互いの技が相殺られたと同時に俺とアンクは接近し・・・そのまま殴り合いとなる。

 

「くっ!?キンジのヤツ、完全に暴走してんのか!」

 

「ガァッ!」

 

両手でアンクの肩を押さえた俺はそのまま蹴り飛ばす。

「くっ!?」

 

すぐさま立ち上がったアンクを見ながら・・・意識が身体と直結していない俺はこれまでの戦いを思い出す。俺の・・・俺の力が足りなかったから無関係の人たちを巻き込んだ。傷つけた。死なせてしまった。

 

「・・・どんなに遠くでも届く腕。・・・力。もっと・・・もっと力を・・」

 

「馬鹿がッ!」

 

 アンクに両脚で蹴り飛ばされて転倒した俺は起き上がると同時に体から3枚のコアメダルを出す。そしてそれが腰の辺りに向かうと・・・俺の全身は瞬時に凍りつき、氷が砕けると同時にオーズ・プトティラコンボへと姿を変えた。

「ヴォォォォォ!!」

 

 そしてメダガブリューを取り出した俺はそのままアンクへと駆け出し・・・斬り付ける。

「ぐあっ!?・・・うぁっ!?」

 

 何度も斬り付けられ膝をついたアンクに・・・暴走している俺はさらに追い討ちをかける。

 

「・・・何が、何がありがとうだッ!お前は言う側じゃなく言われる側だろ!!」

 

 ガブリューの攻撃を避けたアンクはカウンターで俺を殴り飛ばしつつそう告げる。

「グオッ!?」

 

 

 その攻撃でガブリューを落としてしまった俺は・・・それでもアンクに立ち向かおうと起き上がると・・・アンクは右腕に炎を溜め込んでいた。

 

「そんなに力が欲しいなら・・・この程度で暴走してんなッ!!」

 

 炎の拳で殴り飛ばされた俺は変身が解けると同時に体内にある紫のコアメダルとサソリのメダル以外の全てのメダルが吹き飛んでしまう。

 

「・・・・」

 

「ちっ!」

 

 アンクは自身のコアメダルであるタカコアメダルだけは掴み取れたが・・・それ以外のコアメダルは全て真木博士に奪われてしまった。

 

「・・アンク・・・」

 

「・・・この馬鹿が・・」

 

 意識が朦朧としている俺はアンクが立っている方を向こうとすると・・・俺の中のコアメダルが真木博士に奪われそうになる。

 

「ぐっ!?うあぁぁぁぁっ!?」

 

「・・・まだ抗いますか。一思いに渡せば楽になれるものを・・・」

 

「さっきも言っただろ。・・渡せないって。・・・これは・・・俺に必要な力だ・・

 

何とか押さえ込んではいるが・・・もうそろそろ押さえ込むのが限界だ。

 

「やはり消しておくべきですね」

 

 人形を肩に乗せている左を変えずに、右腕だけを怪人の姿へと変えた真木博士は・・・俺にトドメを刺そうと近づいてくる。

 

「させるかよッ!」

 

 右腕を残して人間の姿へと戻ったアンクは炎弾を真木博士へと放つと・・・その炎は真木博士の肩の人形にかすり・・・燃え始める。

 

「う、うぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 それに動揺した真木博士は人形を海に向かって投げつける。

「駄目だからぁっ!投げちゃ駄目だからぁ!」

 

 自分で投げたのにも関わらずそれでさらに動揺した真木博士は・・・海へと駆け出すと人形を探し出す。

 

「ないっ!ないよっ!?」

 

「・・・今のうちに・・」

 

 そう言ったアンクは担いでその場を離れようとするところで俺の意識は途絶えてしまった。

 

「アンクさん!」

 

「・・・ちょうどいいところに来た。俺は行かなきゃいけないところがあるんでこいつを頼むぞ」

 

「・・・了解しました」

 

 そこに駆けつけた里中さんに俺を任せたアンクは翼を広げて何処かへと飛んでいった。

「まぁ・・・会長に頼まれていたコレは後で渡しましょうか」

 

 手に持っていた小箱をしまった里中さんはそれをしまうと・・・鴻上ファウンデーションの救護班に連絡を取って俺を搬送させた。

 

 

 

 

・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

 俺が搬送されている頃、伊達さんと行動を共にしていた後藤は里中さんから届いた連絡を確かめていた。

 

「里中さんが遠山を発見して・・・財団で保護をしたそうです」

 

「そっか。まずは一安心・・・ってワケにもいかないか。ったく・・・俺が日本を離れている間にここまで状況が悪くなってるなんてね」

 

「・・・黙っていてすみません。治療に専念してほしくて・・・」

 

「・・・サンキュ。だけどまずは世界の終末。これだけは阻止しないとな」

 

「ドクターの屋敷にも奇襲は掛けましたし・・・さすがにもうそこにはいないかと・・」

 

「・・・となると・・他にドクターの行きそうな場所は・・」

 

 伊達さんが適当に探索をしようとすると後藤がその前に立つ。

 

「それよりまた遠山を狙ってくる可能性の方が・・・世界の終末って言ってますけど・・・実際は大量のメダルで暴走させたグリードが世界を喰らうんです。すでに相当なメダルが集まっているはずですが・・・まだ全部じゃない」

 

「遠山のメダルと・・・俺らが持ってるガメルとメズールのメダルの数枚。それとあの虫のメダルか」

 

「・・・財団に向かいましょう。何か分かるかもしれません」

 

 伊達さんにそう告げた後藤は鴻上ファウンデーションへと足を動かす。

 

「・・・しばらく見ない間にすっかり逞しくなっちゃって・・・お父さん嬉しいっ!!」

 

「完全復活まで後1枚。・・・なんとしても・・・」

 

 そう言って後藤の後を追いかける伊達さん達を影から尾行していた相手がいることを2人は気づいてはいなかった。

 

 

 

 

 

「すみません。遠山さんに渡す暇がありませんでした」

 

 鴻上のおっさんに謝罪をした里中さんは持っていた小箱をおっさんへと渡す。

 

「結構・・。これは一旦保留だ」

 

 それを受け取ったおっさんはソファーの上に寝かされていてさらに別の場所へと移動させられそうになっている俺に視線を移す。

 

「遠山さんをどこへ?」

 

「彼に相応しい場所だ」

 

 小箱を見つめながら里中さんにそう告げたおっさんは・・・その場に里中さんを残すと自身も何処かへと移動した。

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

「くそっ!はやくウヴァを見つけ出して倒さねぇと真木の野郎が・・・」

 

 後藤と伊達さんが鴻上ファウンデーションに向かっている頃、アンクはたった一人で残るグリードであるウヴァを探していた。

 

「ガメルはあの時にメダルにヒビがでいていたから後藤と帰ってきた伊達で倒せたらしいし・・・消去法で奴が器にするのはあの虫頭だってのに・・・どこにいやがる」

 

「アンク君。これ以上余計な真似をしないでいただけますか」

 

 アンクがウヴァのいそうな森の中を探索していると・・・まだ服が乾いていない状態でやってきた真木博士が後ろからアンクに話しかけてきた。

 

「断る。てめぇの計画なんざ俺が1人で止めてやる。・・・そうすればキンジは・・」

 

 擬似完全体のグリードへと姿を変えたアンクは両腕に炎を燈しながら真木博士に殴りかかろうとすると、真木博士も怪人の姿になりつつその攻撃を回避する。

 

「オラァッ!」

 

「君1人でいったい何ができるというのです。紫の『無』の力を持つグリードとなった私にとって貴方達グリードのような存在は・・・」

 

 再び殴りかかろうとしてくるアンクの攻撃を回避した恐竜グリードはそのまま・・・

 

「がはっ!?」

 

「簡単に壊せます」

 

 アンクの核であるコアメダルにヒビを入れた上で腹部を右腕で貫いてかなりのコアメダルを奪った。

 

「ぐっ・・・」

 

「では・・・一足お先に終末を迎えてください」

 

「くそっ!」

 

 トドメを刺されそうになったアンクは寸前で炎弾を放って恐竜グリードを吹き飛ばすと・・・恐竜グリードは真木博士の姿に戻る。

 

「あくまでも抗いますか。まぁいいでしょう。では失礼・・」

 

 たった1人その場に取り残されたアンクは人間の姿に戻ると貫かれた腹部を押さえながら近くの木に寄りかかる。

 

「チッ・・・こいつはもう・・駄目だな」

 

「アンクっ!」

 

 タカカンに探索をさせていたアリアはたまたまアンクを発見して駆け寄ってくる。

 

「こんなに大量のメダルが・・・いったい何があったの!?」

 

「・・・別に・・。真木と遭遇して・・・負けちまっただけだ」

 

「その様子じゃそれだけじゃないわよね。・・・もしかして・・・」

 

 アリアはアンクの苦しそうな表情を見て核であるコアメダルにダメージがあることを直感する。

 

「キンジには・・・言うなよ。これからの戦闘がやりにくくなる」

 

「何言ってんのよ!!そんな状態で戦ったりしたら本当に死んじゃうわよ!!」

 

「死ぬ・・か。・・・ハハッ!」

 

 このままでは死んでしまうことをアリアに告げられたアンクは・・・嬉しさとも悲しさとも取れる苦笑いをする。

 

「何が可笑しいのよ!!」

 

「そりゃそうだろ。ただの『物』でしかなかった俺が『死ぬ』ところまで来たんだぜ?『壊れる』じゃなくてよぉ・・・それが笑わずにいられるか?」

 

 立ち上がったアンクはフラフラしながらも何処かへと歩き出す。

 

「どこに行くのよアンク!」

 

「・・・戻る。俺がついてないと相当ヤバイだろ。あの使える馬鹿は・・。せいぜい俺の『命』は明日の昼頃ぐらいまでか。だが一時的に取り込んでいたメダルの力がまだ残ってる。あと1度ぐらいは完全態に近い力で戦えるはずだ」

 

「でも・・・それでもあんたはこのままじゃ・・・っ!」

 

 去っていこうとするアンクの後ろ姿がどこか『満足』しているような風に見えたアリアはそれ以上の言葉を発しなかった。

 

 

 

 

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

 

 アンクがアリアと別れてまた別行動をしようとしている頃、伊達さんと後藤は中腰の状態でこっそりと鴻上ファウンデーションの会長室にいた里中さんから話を聞いていた。

 

「保管庫・・・」

 

「なんでそんなところに遠山を・・・」

 

「理由は聞かされていません」

 

「えぇい、とにかく行ってみるよ後藤ちゃん」

 

「あぁ、ロックされてますよ。出入り禁止だそうです」

 

「ったく、何を考えてるんだかあの会長は・・・」

 

「さぁ、私の業務ではないので失礼します」

 

 2人にそう告げた里中さんは会長室を立ち去ろうとすると・・・扉の前で足を止める。

 

「あぁ、後藤さんに先日の業務手伝いの報酬代を渡すのを忘れてましたね」

 

 そう言った里中さんは後藤に1枚のカードを投げ渡す。後藤がそれをキャッチして確認すると・・・それは保管庫のカードキーだった。

 

「保管庫のカードキーです。頼まれていた反動を軽減し、より連射に優れた改良型のバースバスターはそこに置いているので持っていってください。それでは・・・お疲れ様です」

 

「「っ!!」」

 

2人はすぐに気がついた。本来ならバースバスターは普通に渡せばいいのにわざわざそこに取りにいかせるのはどうしてなのかを・・・。そしてそれに感動した様子の伊達さんは両手を祈るように合わせると里中さんの方を向いた。

 

「ステキっ!!」

 

 それ以上何も言わずにその場を去っていった里中さんを見送った伊達さんと後藤は保管庫のカードキーで扉を開けて中に入る。そして中の光景を見た二人は驚いた表情を見せる。

 

「遠山・・・!」

 

 その正面、中央の玉座のような椅子に・・・俺は座っていたからだ。

 

「これはこれは・・・。招かれざる客だが、遠山君を説得してくれないかね」

 

「説得?」

 

「会長。俺、ブランクあるんで説明してもらえます?」

 

「遠山キンジ君はねぇ、ついにその欲望の器を開いたのだ」

 

「・・・伊達さん。久しぶりなのにすみません。俺、気づいた。・・・いや、思い出したんです。俺の欲・・・力です」

 

 俺が自身の欲・・・力のことを打ち明けると2人は怪訝な顔をする。

 

「どんな場所にも・・・どんな人にでも絶対に届く俺の腕・・・力。俺はそれが欲しい」

 

 そう言った俺は瞳を紫色に発効させる。・・・どうやら真木博士にさらに入れられた2枚の紫はだいぶ俺に馴染んできたっぽいな。

 

「できるともっ!!君の素晴らしい欲望の器に・・・この欲望の結晶!無限のセルメダルを入れることによってッ!!」

 

 おっさんがスイッチを押すと・・・俺の後ろにあるカーテンが開く。そこには数え切れないほど大量のセルメダルが積み重ねられていた。

 

「欲望こそ命の源、欲望こそ生命の進化をもたらす。君もまったく新しい進化を起こす。真のオーズとして!800年前に成しえなかった神に等しい力を手に入れる!・・・しかしそのためには紫のメダルがどうにも邪魔なのだ。このままでは真のオーズどころか・・・真のグリードだよ。でもどう言っても彼は紫のメダルを手放してくれないんだよ。伊達くんッ!!」

 

「・・・ふっ、冗談じゃねぇ。真のオーズも真のグリードも願い下げだ!」

 

「遠山、帰るぞ。お前はきっとグリード化のせいでおかしくなってるんだ」

 

 そう言った後藤は俺の腕を掴んで無理やりにでも帰らせようとするが・・・俺はそれを振り切ってセルメダルのところに足を進めようとする。

 

「俺なら大丈夫だって・・・。俺の器なら飲み込めるはずだ。俺は無限大の王・・・オーズだからな。・・・俺は欲しいんだよ!二度と掴み損ねたりしない力。そのためならグリードになってでも・・・」

 

「遠山っ!!」

 

 後藤はさらに何かを話そうとしていると・・・俺の中の紫のコアメダルが同じメダルの気配を感じ取る。

 

「真木博士だ・・・」

 

 真木博士の気配を感じ取った俺は鴻上ファウンデーションから数百メートルほど離れた場所へとやってくる。

 

「きましたか。今度こそ最後にしましょう。・・・君のメダルをもらいます」

 

「・・・もらうのはこっちだ。変身・・・」

 

『プテラ!トリケラ!ティラノ!プットッティラ~ノザウル~ス!』

 

 オーズ・プトティラコンボに変身した俺は恐竜グリードへと変化した真木博士に向かって走り出す。

 

「ハァァァッ!フンッ!ハッァ!」

 

 俺は何度も何度もサゴーゾ並みのプトティラのパワーで殴りつけようとするが・・・恐竜グリードはそれを完全に見切っているかのようにその攻撃を軽く受け流す。

 

「「変身ッ!!」」

 

 すると俺の後を追いかけてきた様子の伊達さんと後藤がダブルバースに変身して参戦してきた。

 

「遠山!お前は紫の力を・・・オーズの力を使うな!」

 

『ドリルアーム』

 

「俺達に任せとけって!」

 

 ドリルアームを装備したバースとそのまま殴りかかるプロトバースは俺に戦闘から外れるように言ってくるが・・・俺はそれに返答せずに恐竜グリードへと向かう。

 

「うおっ!?」

 

 あっさりと弾き飛ばされてしまった俺が壁に叩きつけられると・・・プロトバースが恐竜グリードに首を締め付けられていた。

「伊達君ですか・・。バースドライバーをお渡しした以来ですね。・・・人生の終わりを逃がしたそうで・・」

 

「おかげさまでねぇ。・・・あんたも随分と変わっちまって」

 

「・・・おかげさまで」

 

 恐竜グリードはプロトバースを放したかと思うと殺気とメダルのエネルギーを混ぜたような衝撃波で俺達3人を吹き飛ばす。その衝撃でダブルバースは倒したらしいガメルのコアメダルとガメルの持っていたメズールのメダルを落としてしまう。

 

「・・・・」

 

「ぐぅっ!?」

 

 ダブルバースが落としたメダルを回収した恐竜グリードは俺の紫のコアメダルを引き寄せようとしてきたので・・・俺はそれを何とかして堪える。

 

「このメダルは渡さない。・・・手に入れた・・・俺の力ッ!!」

 

 そう言った俺はオーズから恐竜グリードに似たグリード姿へと変わる。

 

「遠山ッ!!?」

 

「嘘だろ・・・?」

 

「・・・遠山君。完全な暴走も時間の問題ですね」

 

 グリード化した俺は再び恐竜グリードへと立ち向かおうとすると・・・ダブルバースが慌てて駆け寄ってくる。

 

「遠山ッ!メダルを博士に渡せ!」

 

「そうだ!そんなもん捨てろ!早くッ!!」

 

 捨てる?そんなことできるはずがない。

 

「・・・世界の終末を止めないと・・・俺が・・・この力で・・・」

 

「馬鹿ヤロウ!!その手を見てみろ・・・。そんな手で何を掴むってんだ?何を守る?何処に届く!」

 

「何でも1人でしようとするな!遠山ッ!!」

 

 2人は俺のことを説得しようとしてくれているのは分かる。だが俺はこの力が必要なんだ。

 

「俺は欲しい。・・・力がッ!!ウオォォォォッ!!」

 

「おい、よせッ!!」

 

 俺が2人を払いのけて恐竜グリードへと駆け出そうとすると・・・2人はすぐさま俺を押さえ込む。すると恐竜グリードは真木博士本来の姿へと戻り俺達から視界を逸らす。

 

「まったく・・・こそこそせずに君も動いたらどうです?欲しいのはこれでしょう?」

 

 真木博士はポケットから俺から奪ったバッタのコアメダルをちらつかせると・・・博士側の奥の柱の影からウヴァの人間態が姿を現した。

 

「お前が持っていたのか!」

 

「・・・・・」

 

 呆れた表情で真木博士がウヴァに向かってバッタのコアを投げつけると・・・ウヴァはそのメダルを取り込む。

 

「これで9枚・・・ウオォォォォっ!!」

 

「「「うわっぁぁぁっ!?」」」

 

 完全態グリードへと姿を変えたウヴァは変化すると同時に電撃を周囲に放ち俺達はその電撃が直撃してしまう。

 

「・・・800年ぶりだ。俺の本当の力・・・。もうこんなものは必要ない」

 

 力を完全に取り戻したウヴァはすでに用済みだと思ったマシーンメモリを投げ捨てるとゆっくりと俺達へと近づいてくる。

 

「くっ・・・これが完全復活ってやつか。けっこう効くねぇ」

 

「めんどくさい時に来てくれましたね・・」

 

「ウオォォォォォォっ!!」

 

 すでに真木博士がこの場にいなくなったのを確認した俺はグリード姿からプトティラへと切り替えると同時にガブリューを取り出してウヴァへと斬りかかる。

 

「フッ・・・」

 

「なっ!?」

 

 今までガブリューは・・・紫のメダルの力はメダルの力を無効化して砕くことができた。だが今回の相手・・・ウヴァの完全態にはこのガブリューの刃は通用していなかった。

 

「フンっ・・・完全復活を舐めるな!」

 

「ぐっ・・・くそっ・・」

 

 パンチ一発で先ほどの衝撃波よりも遠くへと吹き飛ばされてしまった俺は立ち上がろうにもこれ以上身体に力が入らなかった。

 

「後藤ちゃん・・・俺達も行くよ!」

 

「はいっ!」

 

「・・・まとめて地獄へ送ってやる」

 

 ダブルバースはウヴァへと立ち向かっていくが・・・その攻撃はまるで通用していなかった。

 

「虫けらが・・・」

 

「っ!!」

 

 このままじゃ2人がやられる。だけど今の俺があいつに立ち向かっても絶対に敵わない。・・・いったいどうすりゃいいんだ?

 

「・・・もっと、もっと力を!!」

 

 鴻上のおっさんのところに行ってあの大量のセルメダルをもらいに行くことにした俺はこの場を一端2人に任せて鴻上ファウンデーションへと走り出す。するとその入り口には普段は理子の影でコソコソしているはずのヒルダが日傘を差して誰かを待つように立っていた。

 

「待っていたわ王様。あなたが力を望むようになるその時をね・・・」

 

「・・・ヒルダ。お前に構っている暇なんかない。そんな話は後にしてくれ」

 

 変身を解除した俺がヒルダの横を通り過ぎようとすると・・・ヒルダは懐から灰色のコアメダルと水色のコアメダルの2枚のメダルを取り出した。

 

「ゴリラと・・・タコのコアメダルだと?」

 

 どうしてヒルダがそのメダルを持っているんだ?そのメダルはもう真木博士の手に全部あるはずなのに・・・。

 

「これは10枚目のコアメダルよ。とある経路で入手したものよ。本来は理子と一緒に王様も僕にしようかとも考えていたんだけど・・・もうその必要がなくなったからあなたにあげるわ」

 

「くれるってんならありがたくもらうぜ」

 

 俺がヒルダの手からそのメダルを受け取ろうとすると・・・ヒルダはワザと俺に空振りさせるように手を引く。

「ただしあげる代わりに約束しなさい。・・・これから先何があろうと絶対に理子を守りぬくと・・」

 

「・・・理子だけじゃない。俺は仲間を・・・みんなを絶対に守る。もちろんお前も守ってやるよ」

 

 そう言った俺はヒルダの手からメダルを奪い取るようにしてもらうとそのまま保管庫へと走り出す。

 

「・・・その約束。絶対に守ってよね」

 

 後ろからはそんなふうに囁くヒルダの声が聞こえた。・・・そうだったな。俺が力を必要とするのは敵を倒したいからじゃないんだ。みんなを守りたかったからなんだ。・・・ありがとなヒルダ。メダルに飲まれかかっていて忘れかかっていたこと・・・思い出させてくれて・・。

 

「鴻上のおっさん。そのセルメダル・・・もらうぜ。力が必要なんだ」

 

 保管庫に入った俺はそこにいた鴻上のおっさんにそう告げる。

 

「どけよおっさん!!邪魔するなら・・・」

 

 俺は自分が仮にも武偵だということすら忘れておっさんを脅そうと紫の衝撃波を放つ構えをする。

 

「素晴らしい。君の欲望がそれほどまでとは・・・・。いいだろう!持ってゆきたまえ!!」

 

「・・・ごめん。ありがとなおっさん」

 

 おっさんに許可を得た俺は大量のセルメダルがある奥へとその脚を進めた。

「どうしたバース共、はやくも逃げ出したか?」

 

「「・・・・・」」

 

 俺がセルメダルを取り込んでいる頃、半壊しているビルの中の駐車場、その物影にダブルバースは潜んでバスターにセルメダルを装填していた。

 

「後藤ちゃん、遠山のやつが財団の方に戻っていった」

 

「まずいじゃないですか!はやく止めないとっ!」

 

「・・・だな。ったく、あいつは何で勝手に・・・」

 

「・・・そこか・・」

 

「「っ!!」」

 

 ダブルバースの居場所に気がついたウヴァは電撃を放ち、その攻撃にダブルバースもすぐさまバースバスターのエネルギー弾で応戦する。

 

「「っ!?うわぁぁぁぁぁっ!?」」

 

 しかしパワー負けしてしまったダブルバースはウヴァの電撃により屋外まで吹き飛ばされてしまった。

「こっのっ!昆虫野郎っ!!」

 

「フンッ!」

 

「ぐおっ!?」

 

 プロトバースは地面を殴りつけてから起き上がるとウヴァへ向かって走り出し、殴りかかろうとするが逆に返り討ちにあってしまう。

 

「はぁぁっ!!」

『ショベルアーム』

 

「・・・ぐっ!?」

 

 バースもショベルアームを装備して攻めにいくがすぐさま返り討ちにあってしまった。

 

「まだまだぁっ!」

 

『クレーンアーム』

 

 クレーンアームを装備したプロトバースは再び殴りかかろうとするが・・・その先端のクレーン部分を掴まれ、そのままへし折られてしまった。

 

「「うわぁぁぁぁっ!?」」

 

 そしてさらに攻撃を喰らったダブルバースはとうとう倒れてしまい変身が解除されてしまった。

 

「今までこんなやつらに手こずっていたとはなぁ・・」

 

 ウヴァが勝ち誇った様子で近くのベンチに腰をかけようとした途端・・・鴻上ファウンデーションから爆発音のような音が響き渡った。

 

「っ!?」

 

 それに驚いた反応をしたウヴァは慌てて音が聞こえてきた鴻上ファウンデーションの方を振り向くと・・・

 

「・・・・・」

 コンクリートの足元を陥没させながら歩いていた俺の姿が見えた様子だった。

 

 

 

 

 そしてとき同じくして鴻上ファウンデーションの屋上ではその戦場の一部始終を眺めていた真木博士の後ろに鴻上のおっさんがやってきた。

 

「久しぶりだねドクター真木っ!」

 

「・・・・あれは?」

 

「オーズだよ!・・・本当のね・・」

 

「本当のオーズ?しかしメダルは紫以外すべてこちらに・・」

 

「君は忘れてないかね?800年前、コアメダルはそれぞれ十枚ずつ作られていたことを。さぁお見せしよう。これが800年前の変身に使用した姿・・・タトバコンボだ」

 

 そう言ったおっさんは小箱から3枚のコアメダルを取り出すと俺たちのいる場所へと投げつけた。

 

「後藤・・・それと伊達さん。離れていてくれ」

 

投げられたメダルをキャッチした俺は後藤と伊達さんにそう告げながら10枚目であるタカとトラ、そしてバッタのコアメダルをセットする。

 

「変身・・・」

 

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

10枚目のコアメダルを使ってオーズに変身した俺はゆっくりとウヴァへと歩き出す。

 

「なんだろうと・・・完全復活した俺に敵はない。フンッ!」

 

「・・・・・」

 

「ぐおっ!?」

 

 ウヴァの攻撃をタカの超視力で完全に見切った俺はそれをスッと避けると、右拳を叩き込む。ただのパンチのつもりなのに、必殺技を喰らったぐらい怯んだな。・・・・どうやら同じタトバなのに、普通のコアメダルと10枚目ではここまで力が違うらしいな。

「次はこいつだ・・」

 

『タカ!ゴリラ!タコ!』

 

 俺はヒルダからもらったゴリラとタコのコアメダルでタカゴリタへと変わりタコレッグの吸盤でウヴァを足に貼り付けるとそのままゴリラアームでウヴァを殴りつける。すると吸盤から剥がされたウヴァは数メートル先まで転がっていった。

 

「・・・・」

 

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

俺はタトバコンボに戻って殴り飛ばしたウヴァにゆっくりと歩み寄りながらメダジャリバーとメダガブリューを取り出して構える。

 

「フンッ!!」

 

そしてその刃を交互に振り下ろしてどんどんダメージを与えた。

 

「このぉ!」

 

 するとウヴァは反撃をしようと俺に向かって走ってきた。

 

「・・・・・」

『スキャニングチャージ!』

 

 それを空中に跳んでかわした俺は・・・そのまま急降下しながら右脚に力を溜める。

 

「セイヤァァァァっ!!!」

 

「ぐ、ぐおぉぉぉぉっ!」

 

 そして必殺技であるタトバキックでウヴァを倒した。・・・かに思った。

 

「・・・・っ」

 

 いきなり飛んできた恐竜グリードは爆発寸前のウヴァに5枚のコアメダルを投げつけると・・・爆発した瞬間にキャンセルされたかのように再びウヴァが怪人としての形に戻った。

「おおっ!ドクター!感謝するぞ!」

 

「・・・手段は美しいとは言えませんが・・・もたらす終末はきっと美しい」

 

「そうだ!きっと・・・うっ!?」

 

 たぶん意味も理解せずに恐竜グリードの発言に便上しようとしていたウヴァは背後からさらにコアメダルが投入された。

 

「よせっ!俺は暴走する気はないっ!」

 

「・・・・」

 

 恐竜グリードはウヴァがそう言ってもさらにコアメダルを投入する。

 

「よせと言って・・・うっ!?」

 

 コアメダルの投入をやめない恐竜グリードにウヴァは攻撃しようとすると・・・そこからさらにコアメダルを投入され身体に宿る力が抑えきれなくなり始めた。

 

「くっ!?」

 

 とうとうその場からウヴァが逃げ出そうとする。これ以上入れられたら間違いなくマズイ。

 

「ハァァァァッ!!」

 

 駆け出した俺は恐竜グリードへと殴りかかろうろすると・・・右腕で受け流すように弾かれた。その際に俺の腕から数枚のセルメダルが落ちてしまった。

 

「なるほど。ここまでセルメダルを・・・やはり君は危険すぎます」

 

「ぐわっ!?」

 

 恐竜グリードは俺を殴り飛ばすとトドメのエネルギー弾を放とうとしてきたので俺は咄嗟に身構えようとすると・・・・何処からともなく飛んできた火弾がその攻撃を阻んだ。

 

「アンクっ!」

 

 俺たちがこの場にアンクが来たことに驚くと・・・その隙をついたウヴァはその場から立ち去ろうとする。

「俺は・・・俺は嫌だっ!」

 

「・・・なんという見苦しさ」

 

 呆れた様子の恐竜グリードは俺たちよりも欲望の器の候補であるウヴァの方を優先してこの場を去っていった。

 

「ふぅ・・・うっ!?」

 

 ひとまず恐竜グリードたちが去っていって安心したのもつかの間・・・俺は紫のメダルが大量のセルメダルと反応したせいでタトバコンボのメダルのはずなのにプトティラの姿へと変わるとせっかくもらった10枚目のコアメダル5枚がはじけ飛び・・・砕け散ってしまった。

 

「力がでか過ぎたんだ。無理しすぎだ馬鹿が・・・」

 

「はぁ・・・はぁ・・」

 

 変身が解除された俺はその場に膝をついて呼吸を整えていると・・・俺達のところにアリア達が向かってくるのが見えた。

 

「キンジっ!?ちょっとしっかりしなさい!?」

 

「大丈夫キンちゃん!?」

 

「あ、あぁ・・・なんとか・・な・・」

 

「・・・きーくんもこんな状態だし・・深追いも危ないからとりあえずクスクシエで休んでから後のことを考えよう」

 

 アリアと白雪に支えられながらも立ち上がると俺達はひとまずクスクシエへと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 俺たちがクスクシエへと向かっている頃、真木博士から逃げていたウヴァは工場近くの駐輪場をふらつきながら歩いていた。

 

「俺はまだ・・・何も始まっていない。まだ・・・これからだ。これからが俺の本当の天下だ。・・・そうだ、完全体の状態でメモリを使ってさらなる力を手にすれば・・・そうと決まればあのメモリを回収しに・・・」

 

「それは無駄ですよ」

 

「なっ!?」

 

 ウヴァが後ろを振り向くと・・・そこにはウヴァが捨てたマシーンメモリを握りつぶして地面に捨てる恐竜グリードの姿があった。

 

「ひ、ひぃ!?」

 

 慌てて逃げようとするウヴァに人間の姿に戻った真木博士は呆れたような視線を送るとさらにコアメダルをウヴァへと投げつけて取りこませる。

 

「最初から君みたいなグリードを選ぶべきでした。器も小さく力に抗うよりも屈する方がはやい。暴走には打って付けです。・・・それでは良き終末を・・」

 

「誰か・・・助けてくれ・・」

 

 この約半日後、ウヴァは欲望の器として暴走してしまいその意志が消滅してしまうことを俺達は知るよしもなかった。

 

 

 

 

・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

 

 完全体のウヴァとの戦闘から数時間後、すっかり夜となっても真木博士は動きを見せなかったので今日のところは一度解散することにした俺達は帰宅経路を歩いていた。

 

「・・・・・」

 

 紫のメダルが10枚目のメダルを壊すほどの暴走をした後から俺の視界は時折灰色に物を写すようになった。・・・たぶん次ぐらいで俺の身体は限界だろうな。

 

「・・・あたしには・・・仮面戦士じゃないから怪人とまともに戦うことはできない。だから・・・これぐらいしか・・・」

 

 そう言ったアリアは右手で俺の左手を握ると左手でアンクの右手を握った。

 

「・・・これぐらいしかできない」

 

「「・・・・・・」」

 

 アリアは自分がこれぐらいしかできないということをできないということを悔しそうにしながらも俺とアンクの手をしばらく握っていた。

 

 

 

 

 

 

 そして夜が明けた早朝、とうとう事件が発生した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁっ」

 

 グリードとしての形を保てなくなったウヴァの身体が錆び付いて砕け散ると・・・その中から出てきた黄緑色の球体は空中へと浮かび8面体の巨大な物体・・・欲望の器へと変貌した。

 

「さぁ・・・終末の始まりです」

 

 空へ飛び上がって欲望の器のすぐ真下へと向かうと周囲のビルや車はガメルのときのようにセルメダルとなって器に取り込まれ始めた。そして欲望の器からはまるで余分な力を吐き出すかのように大量の屑ヤミーが雨のように空から降ってきた。

 

「誰か助けてくれぇぇ!」

 

「緋緋星伽神ッ!・・・はやく逃げてください!」

 

「は、はいっ。ありがとうございます」

 

 広場で屑ヤミーに捕まっていた一般人を助けた白雪は刀で次々と屑ヤミーを切り伏せる。

「雪ちゃん!下がって!」

 

「うんっ!」

 

 白雪が理子の射程から離れると・・・理子は磁力分裂弾入りのショットガンで屑ヤミーを複数打ち倒す。

 

「っ!?理子ちゃん後ろっ!」

 

「しまっ・・・!?」

 

 理子が背後から屑ヤミーに襲われそうになると・・・何処からかの狙撃が屑ヤミーを打ち倒す。・・・レキの弾丸だ。

 

「あんがとレキュ!」

 

 3人だけで屑ヤミーに応戦している中、ようやく俺とアンク、そしてアリアが広場へと到着した。

 

「遅れてすまない!変身ッ!」

 

 屑ヤミーの1体を殴り飛ばしながらも俺はオーズ・プトティラコンボへと変身すると冷気を全身から放って周囲の屑ヤミーを氷付けにした。

 

「邪魔だ屑共ッ!」

 

 同じく屑ヤミーを殴り飛ばしながら怪人態へと姿を変えたアンクは全身から炎を放つと周囲の屑ヤミーを焼き尽くす。

 

「アリア!周囲の人を逃がしたんならとっとと下がれ!お前らも吸収されちまうぞ!」

 

「でも屑ヤミーが多くてキンジ達があの変な物体のところにいけないじゃない!」

 

 アリアがそう言った途端、俺達のすぐ近くのビルがセルメダルになって吸収され始めた。

 

「アリア!!」

 

 俺は慌ててアリア達のところへと向かおうとすると・・・俺の前には14人の人影が通った。

 

「ライダーパワー全開だッ!!」

 

「「「応ッ!!」」」

 

 俺達の前に並び立ったレジェンドライダー達は一斉にライダーパワーを解放して、町のセルメダル化を押さえ込んだ。

 

「本郷さんッ!?」

 

「私達がセルメダル化を食い止めておく!その間に君達はドクター真木を・・・」

 

 1号が俺達にそう伝えてきた途端、セルメダル化を食い止めるのに手一杯のレジェンドライダー達に大量のヤミーが襲い掛かってきた。

 

「ライダーキック・・・」

 

「ライダーパンチ・・・」

 

『JOKER MAXIAMUM DRIVE』

 

「「ジョーカーエクストリーム!!」」

 

『『セルバースト』』

 

「ウェェェェイ!!」

 

「しゃぁっ!」

 

 するとキックホッパーやパンチホッパー、Wやバースなどの武偵高の仮面戦士達がレジェンドライダー達に近づくヤミーを一気に蹴散らした。

 

「相棒ッ!ヤミーの相手は俺達がしておく!はやく真木のところへ!」

 

「・・・助かるぜ。いくぞアンク!」

 

「あぁ!」

 

 俺とアンクは翼を広げて空に浮かんでいる欲望の器と真木博士だった恐竜グリードへと飛び立つ。

 

「キンジ・・・アンク・・絶対、絶対に戻ってきて」

 

 その姿を見届けたアリアは俺達の帰還を信じて手を合わせて祈っていた。

「来てしまいましたか。わざわざこなければ痛みなども感じずに、良き終わりを迎えられたものを・・・」

 

「悪いな。・・・俺達はまだ終わるつもりはないんだよ」

 

 恐竜グリードの囁きに返答した俺がガブリューで切りつけるとつかさずアンクが炎の拳で攻撃する。

 

「っ・・!」

 

 同時攻撃に怯んでバランスを崩したのでチャンスだと思った俺とアンクは2人がかりで恐竜グリードを押さえ込むとそのまま地上へと落下する。

 

「ぐっ・・・」

 

「・・・この終末の素晴らしさを見てもまだ邪魔するのですか」

 

 俺とアンクが立ち上がると恐竜グリードも立ち上がり空の欲望の器を見上げた。

 

「当たり前だ!こんなのが素晴らしいなんて思えないからな!」

 

「終わるのはお前だけにしておけ!」

 

 そう宣言した俺とアンクは2人がかりで恐竜グリードへと挑むが・・・恐竜グリードはまるで俺達の動きを完全に見切っているかのように攻撃を受け流す。

「ぐわぁぁぁぁぁっ」

 

「アンクっ!・・・ハァァァァァッ!!」

 

 アンクが吹き飛ばされて怪人体の姿から人間体に戻ると同時に俺はジャリバーとガブリューを再び取り出して恐竜グリードとの距離を詰める。

 

「・・・・」

 

「なっ!?」

 

 振り下ろしたジャリバーは砕かれ、ガブリューは恐竜グリードにあっさりと止められてしまうと・・・恐竜グリードは怪しげに左手を発光させる。

「メダル、頂きます」

 

「ぐっ!?」

 

 その左腕は俺の腹部に透き抜けるように入っていくと・・・俺の中にあるメダルが掴まれる感覚がした。

 

「この時を待ってたぜ!」

 

 恐竜グリードの腕を掴んだ俺は全身から冷気を放って俺ごと足元を凍らせて逃げられないようにする。

 

「何の真似ですか?」

 

「今の俺の中には・・・お前を絶対に倒せる‘力’がある!」

 

『ゴックン!』『ゴックン!』『ゴックン!』

 

 恐竜グリードにそう宣戦布告した俺は身体から鴻上ファウンデーションで取り込んだ大量のセルメダルを一気に身体の中から上空へと飛ばす。そのセルメダルは俺の構えているガブリューに吸い寄せられるように次々と吸い込まれていく。

「キンジ・・・まさかこのためにセルメダルを・・」

 

「ッ!」

 

 俺は刀身が砕けているジャリバーを恐竜グリードに突き刺してさらに動きを止める。これでこのとっておきの一撃は確実に決められるはずだ。

「バカな・・・君もただでは・・・」

 

「ハァァァァッ、セイヤァァァァァァッ!!」

 

俺はセルメダルを大量に飲み込んで力を最大限まで引き出したガブリューで恐竜グリードを一閃する。・・・これだけのセルメダルを取り込んでいるだけあって威力は相当なもので、斬撃の大きさが通常のガブリューの比なのではなく・・・間違いなく仕留めたほどの爆炎が周囲に広がった。

 

「はぁ・・・はぁ・・これで・・・」

 

これでケリがついた。・・・俺がそう思った瞬間・・・

 

「っ!?」

 

 上空に浮かんでいる器から謎の光が放たれて爆炎の中心に直撃した。

 

「・・・・」

 

そして爆炎の中からは全快となって復活した恐竜グリードが立っていた。・・・嘘だろ。俺の最大の・・・最後の一撃だったのに・・。

 

「私を倒すために放ったその一撃。・・・その力はたしかに強大でしたが・・・それほどの力を使ったということは・・・君も限界でしょう」

 

「なっ、ぐっ!?うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

恐竜グリードにそう告げられた俺はプトティラコンボの変身が俺の意思とは関係なく解除されるが矢先に紫のコアメダル7枚が本格的に俺の身体を支配しようとしてきた。

 

「馬鹿ヤロウっ!そんなものを使わないでこいつを使え!!」

 

 そう告げたアンクは俺に向かって自身の身体を構成していた3枚のコアメダルを俺へと飛ばしてきた。別のメダルが近づいたからか、紫のコアメダルの進行が一度治まると・・・ある意味死に掛けのおかげでヒステリアになっている俺はメダルの方を見ずにそれらをキャッチする。

 

「っ!?アンクっ!?またお前・・・・」

 

 そのメダルをキャッチした俺はすぐさまアンクの方を振り向くと・・・アンクは自身の意思を宿しているタカコアまで渡していたらしくセルメダルとなって崩れてしまった。

「・・・・・」

 

 俺は右手に納まっている3枚のコアメダルを見つめる。・・・グリード化の影響でほとんどが灰色に見えてしまっているが・・・手の感触からタカのコアメダルに亀裂が入っていることに気づいた。

 

「分かっているさアンク。これがお前の本当にやりたいと思うことなんだろ?」

 

世界を終末に・・・終わらせたりなんかしない。たとえこれが・・・自分の最後だとしても・・。

 

「いくぜ・・・アンク」

 

 一度3枚のメダルを握り締めた俺はベルトにその3枚をセットしてオースキャナーでスキャンをする。

 

「変身ッ!」

 

『タカ!クジャク!コンドル!』

 

 普段の音声とは違い、コアメダルの動物を叫ぶ声が・・・アンクの声で響き渡る。

『タ~~ジャ~~ドル~~!!』

 

「ハァァァッ!」

 

 オーズ・タジャドルコンボに変身を遂げた俺はタジャスピナーに炎の力を溜め込んで恐竜グリードに炎の拳をぶつけようとすると・・・

 

「・・・・・」

 

「っ!」

 

 一瞬・・・俺の隣にアンクが見えたような気がした。いや、気がしたんじゃない。たしかに俺はアンクを見た。そして俺と同時に恐竜グリードに拳をぶつけていた。

「ありがとなアンク」

 

 メダルの身体がなくても・・・俺と一緒に戦ってくれているんだな。

 

『プテラ!トリケラ!ティラノ!プテラ!トリケラ!ティラノ!』

 

『ギガスキャン!!』

 

 身体から出てきた紫の7枚をギガスキャンした俺は欲望の器の中へと突入した。

「フンッ!」

 

 欲望の器の中心にいる恐竜グリードはエネルギー弾を放ってきたので俺はガードしようとすると・・・その攻撃は俺にあたることなく何かに阻まれた。

 

「っ?・・・っ!?」

 

 俺はガードしようとしていた腕を避けて阻んだ何かに視線を向けると・・・そこには赤い翼を羽ばたかせる右腕だけ怪人となっているアンクがいた。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・分かった」

 

 そのアンクの視線で次にどうすればいいのかを直感した俺はタジャスピナーに溜め込まれた紫のメダルのエネルギーを・・・

 

「セイヤァァァァァっ!!」

 

「・・・・・・・・」

 

 右腕に炎を燈していたアンクと同時に放った。俺の紫色のエネルギー弾と炎弾は1つとなって飛んでいき恐竜グリードに直撃し小型のブラックホールのようなものが発生した。

「私が・・・終わる。終末を・・・迎えてしまう」

 

 恐竜グリードの身体はバラバラになりながらブラックホールへと吸い込まれていく。そしてさらにブラックホールは欲望の器を構築するメダルも吸い込みだし、コアメダルまでもが吸い込まれていく。

 

「・・・っ!」

 

 そしてタジャスピナーにセットされていた紫のコアメダルまでもが外れて吸い込まれそうになると・・・力が反発したのか紫のメダルは全て砕け散ってしまった。

 

「・・・アンクッ・・っ!」

 

 さらにはベルトの赤の3枚・・・アンクのメダルまでもが吸い込まれそうになってしまうと・・・アンクの意思が宿っているはずのタカのコアメダルが真っ二つに割れてしまった。

 

「くっ!うわぁぁぁぁっ!?」

 

 そしてトドメといわんばかりに欲望の器を構成するメダルがブラックホールに吸い込まれていくせいでどんどん圧縮されていき・・・それに耐えられなくなった器は爆発してしまい、中にいた俺は当然のように巻き込まれそのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

「おいキンジ!起きろっ!死ぬぞ!」

 

 アンクの声で意識を取り戻した俺は空から地上へと落下していた。目の前にいるアンクは右腕だけ・・・。どうして腕だけとなっているのかは・・・さっきメダルが割れたのを見て薄々は気がついてた。

「いや、もういい。もう無理だ。お前こそもう・・・」

 

「ハッ!俺はいい。・・・欲しかったもんは手に入った」

 

「・・・それって命だろ?死んだら終わりじゃんかよ」

 

 死に際のヒステリアになっていて頭の回転が速くなっている俺はアンクの欲しかったものを言い当てる。

 

「あぁ。ただのメダルだったものが死ぬところまで来た。こんなに面白い・・・満足できることがあるかよ。・・・だがまだお前は終わってないだろ!アリアの殻金集めはどうした!」

 

「・・・きっと玉藻や五代さんたちが何とかしてくれる」

 

「甘ったれんな!決めたんだろ!あいつを助けるって!だったら最後までやり遂げるために生きろ!」

 

「アンク・・・」

 

 アンクの言葉で本当の意味で目を覚ました俺はまだ生きる決意を固める。

 

「他の仮面戦士・・・他の人間じゃなくお前を協力者に選んだのは間違いなく得だった」

 

 そう言ったアンクは何処かに飛び去ろうとするので俺はそれを止めようと手を伸ばす。

「おい!まだ行くなよ!」

 

「・・・これからのお前の掴む腕は・・・俺じゃない。やっと・・・やっとあいつらのところにいける」

 

 俺は何とか手を伸ばしてアンクを掴んだかと思うと・・・俺の手はアンクを掴んではおらず、手の中には割れた半分のタカコアメダルが納まっていた。

「アンクぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 その割れたコアメダルを見た俺はただただ叫ぶことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 そして俺たちが先ほどまで戦っていた現場までやってきたアリアは人間体のアンクが目の前に立っていることに気がつく。

「アンク!無事だったのね!」

 

 アリアは安心した表情で近づこうとすると・・・アンクは目標が敵ったかのように少し笑う。

「・・・お別れだ。あの馬鹿をこれからも支えてやれよ」

 

 そう言い残したアンクは一瞬にしてアリアの視界から消え、その場には割れた片割れのタカコアメダルが落ちていた。

「アンク・・・・っ!?」

 

 アリアはアンクが消えてしまったことに悲しそうな表情をしていると・・・空から何かが降ってくるような影があることに気がつく。

「やばっ・・・」

 

 もちろん落ちようとしているのは俺だ。

「遠山!手を伸ばせ!」

 

 いきなり俺の上から聞こえてきた声に振り向いてみると・・・俺の上にはカッターウイングを装備して飛行しているバースがいた。

「キンジ!」

 

「はぁ・・・はぁ・・やっとつい・・ってキンちゃん!?」

 

「きーくん!!」

 

「キンジさん!」

 

「相棒ッ!」

 

 さらには白雪たち残りのバスカービルメンバーも集まってきて俺を支えてくれるかのように手を伸ばした。

「何でも1人で背負い込もうとするな!」

 

「別のチームといっても仲間だろ!俺達も頼れよ!」

 

「そうだ!俺達は仮面戦士である前に仲間だ!」

 

 さらには伊達さんや正太郎達テンペストのメンバー、剣崎などもメンツも集まってくる。・・・そうか。やっと気づいた。・・・どこまでも届く手。

「こうすれば・・・届くんだな」

 

 そう言った俺はバースの伸ばした手を掴んでゆっくりと地上に降り立つと・・・みんなの手が俺を支えてくれた。・・・みんなで手を繋げばどこまでも届く。そんな単純なことを忘れていたな。

 

 

 こうして俺が東京武偵高の仮面戦士として戦った数ヶ月の戦いは一旦終わりを告げた。アンクの意思を宿したメダルは割れてしまったが・・・俺は再びアンクに会えることを信じている。きっといつか・・・俺達の欲望が交差する場所で・・・。

 




次回からcounttheMedalは物語の展開的に書きません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。