緋弾のアリア 欲望の交差   作:彩花乃茶

100 / 110
counttheMedal!現在オーズの使えるメダルは

タカコア×1
ライオンコア×1
コブラコア×1
プテラコア×!
クジャクコア×1
トラコア×2
トリケラコア×2
カメコア×1
コンドルコア×1
チーターコア×1
バッタコア×1
ティラノコア×1
ワニコア×1

サソリギジ×1


マイナスとリターンとダブルバース

アンクが帰ってきてから2日が過ぎた放課後、俺はクスクシエでアンクと向かい合っていた。

 

「・・・これでケリをつけてやるぜキンジ」

 

「ハッ!寝言は寝てから言えよ」

 

 お互いが次の手段を決めて・・・動く。

「リザードン!ブラストバーン!」

 

「ハピナス!守る!」

 

「・・・あんた等、グリードが2体も完全復活したってのに何をやってんのよ」

 

 俺とアンクのポケモンバトル中に割って入って来たアリアは俺たちを呆れ顔で見ている。

「・・・やっぱり虫パじゃ駄目なのか。・・・どうせ俺なんて・・」

 

「くっ!?なぜ鋼パじゃ勝てないんだ!」

 

 すでにアンクの炎パーティーに負けた矢車と後藤は自分達のDSを片手に悔しそうにしていた。

 

「この2人まで・・・確かに完全復活したグリードが動いていないのは事実だけどもっと警戒心を強く持つべきじゃないの!」

 

「・・・ずっと警戒してても無駄に気力を減らすだけだ。事実今の俺達でまともにグリードとやり合えるのは相棒と後藤だけだしな」

 

 矢車は入院こそしてはいないが・・・まだまともに戦える状態じゃない。しかもライダーパワーを一点集中までしたせいで体の負担・・・とくに右脚が酷く、医師からもしばらく変身は控えるようにまで言われたらしい。

 

「・・・まぁ遊びもここら辺にしといてマジな話をするか」

 

 アンクがそう告げると後藤はリュックの中からノートパソコンを取り出して電源を入れる。すると丁度いいタイミングで白雪と理子、そしてレキもクスクシエに入ってきた。

 

「丁度メンバーが揃ったし・・・それじゃあまず現状を確認するぞ。・・・現段階で残っているグリードはアンクを除くとメズールとガメルそして姿を晦ませているウヴァの3体。そしてドクター真木もほとんどグリード化していると考えると実質4体のグリードが残っていることとなる。その内、完全体が2体でどちらも本来の力に上乗せしているものがあるから・・・戦闘力はこれまでの比ではないだろうな。あっ、ハピナスやられた」

 

「核のコアを砕けば復活しないんでしょ!だったらそれを砕いてはやく完全体になった2体を倒さないと!」

 

「・・・それがそう簡単じゃないんだ」

 

 後藤はタカのコアメダルとプテラのコアメダルが映し出されているパソコンの画面を見せてくる。

 

「紫以外のコアメダルがプラスの欲望で成り立っているとすると、紫のコアメダルはマイナスの性質を持っている。核であるコアを砕くにはプラスとマイナスをぶつけるしかないんだ」

 

「・・・つまり事実上、グリードを完全に倒すことができるのはキンジだけだってことね」

 

 そうだ。グリードの件は元々俺が何とかしなくちゃいけないものだし・・・倒せるのが俺しかいないんだから俺が戦うしかない。

 

「・・・相棒、確かにお前しかグリードは倒せないが・・・1人で突っ走ろうとはするなよ」

 

「分かってるって。ところで理子、なんか情報は入ったか?」

 

「グリードに関わることかどうかは分からないけど・・・気になる情報を手に入れてきたよ」

 

 気になる情報?

「何だか一昨日ぐらいから・・・11地区あたりに出るらしいんだよね」

 

「出る?何が?」

 

「水のお化け」

 

「は?」

 

 水のお化け?なんだそりゃ?

 

「夜に水の塊が浮いているかと思うとねぇ、近くを通りすがった親子連れを見かけるとその親子を取り込んで何処かに連れて行っちゃう。っていう報告があったって情報科から聞いてきたよ」

 

「・・・そりゃ確かに怪しいな。・・・アンク、何か分かるか?」

 

 俺はアンクに尋ねてみると・・・アンクは確信的な表情をする。

 

「水の塊、親子の取り込み・・・間違いない。それが完全体のメズールだ」

 

「「「っ!?」」」

 

 思いがけないタイミングで完全体のグリードが見つかり・・・俺達は一瞬硬直する。まさかメズールの完全体がバイオライダーみたいな能力を持ってるなんて・・。いや、よくよく考えると俺もシャウタコンボの時に液状化していたな。

 

「完全体のメズールは自身の身体を液状化して自身の求める欲望を持つ人間を襲う。メズールの欲望の本質は『愛』。つまり今のメズールは家族愛の関係・・・親子を襲っているってことだ」

 

 欲望の本質か・・・。たしかウヴァの本質が『奪う』ことで、ガメルが『がめる』。カザリが『飾る』といった風に本質が名前の由来になっているらしいが・・・アンクだけメダルが王のところで作られてないから名前=本質じゃない。それにしても相手はバイオライダーみたいな相手。ラトラーターの熱線が効くはずなんだが・・・それじゃメダルを砕くことはできないな。

 

「・・・なぁ後藤、紫のマイナスの欲望さえあればプトティラにならなくてもいいんだよな?」

 

「ん?あぁ、理論上はそのはずだが・・・」

 

 だとすると・・・あの2つで何とかできるな。

 

「悪いが完全体のグリードからアリア達を守りきれる保障はない。すまないが今回は・・・」

 

「何言ってんのキンジ!あたし達はチームでしょ!ただでさえボロボロなんだから2人だけで戦うのは無理でしょ!・・・前線に出れなくてもできることはあるわ」

 

「「「・・・・・」」」

 

 そう言ったアリアは鞄の中からカンドロイドを取り出す。すると白雪と理子も同じくカンドロイドを取り出してレキはライフルを手に握った。4人とも自分達のできる範囲で援護をしてくれるつもりらしい。

 

「・・・無茶はしないでくれ。やばくなったら下がれよ」

 

「分かってるわよ。悔しいけどあたし達じゃグリードには対処できないしね」

 

 そう言ったアリアはさっそくタカカンを3つ起動して探索を始めた。

「捜査は足で!って言うしあたし達も動こう!あたしとやっきー、それと雪ちゃんとレキュが北寄りからでいいよね?」

 

「分かった。それじゃ俺達は南から探る」

 

 こうしてクスクシエを後にした俺達は2手に別れて探索を始めた。

 

 

・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

 探索を始めて数十分が立ち夕日が落ち始めた頃、俺達は11地区で一番目撃例が多いポイントを歩いていた。

「なぁアンク・・・お前を助けるためとはいえ・・・お前のメダルを3枚も砕いちまって悪かったな」

 

「・・・別にお前が気にすることじゃない。お前はお前なりに最善の策を取ったんだろ?」

 

 俺はアンクの言葉に頷くと・・・アンクは右腕を怪人の姿に変える。

 

「もう完全体になることはできないが・・・ある程度の力は戻った。・・いや、補う手段があるって言うほうが正しいか」

 

「それってどういうこと?」

 

「・・・・まぁ、また後でな」

 

 アリアはアンクの言葉の意味を尋ねようとするが・・・アンクはそれとなくはぐらかして俺達よりも数歩だけ先へと進む。俺はそんなアンクを少し不安に思っていると・・・

 

「っ!」

 

 一瞬だけだったが左腕に違和感を感じた。・・・本当に一瞬だけだったが確かに見えた。俺の左腕が・・・怪人のような姿になっているのを・・。

 

「ん?どうかしたのキンジ?」

 

「あ、あぁ・・。何でもない」

 

 幸いにもアリア達には見られなかったので余計な心配をかけずに済んだが・・もうそろそろ俺も限界っぽいな。

 

「・・・・・」

 

 正直・・・怖い。自分が人間じゃないものになろうとしているのが・・怖い。タクミとか木場は自分がオルフェノクだとしても人間として生きる道を選んでいると言ってはいたが・・・人間としての感覚を失いつつある俺は大丈夫なのか?正気を保っていられるのか?

 

「・・・いや、今は考えるのはやめよう」

 

 これ以上このことを考えていたら本当に潰れかねない。・・・そう考えていると俺の中の紫のメダルがグリードの気配を感じ取った。

 

「キンジっ!」

 

「分かってる!近くにメズールがいるんだろ!場所は・・・ここだ!」

 

 俺は近くの使われているかどうか分からない古びた建物に突入してみると・・・そこには大量の風船のようなものがあった。

 

「何これ?風船?・・・っ!」

 

 アリアは近づいてそれを確認してみると・・・風船のようなものの正体に気づいた様子だった。俺も近づいて確認すると・・・その風船の中には攫われた人たちがまるで卵の中の生き物のように入っていた。

 

「くそっ!メズール!!ここにいるのは分かってるんだ!出てきやがれ!」

 

「あらあら、ずいぶんと気が立っているわね」

 

 奥の方から上機嫌な様子でやってきたメズールを俺は睨みつける。

 

「あの中の人達を解放しやがれ」

 

「それはできないわね。それはもう私の欲望を形にした『物』であって『人』じゃないわ」

 

「・・・残念だが本当みたいぞ。もうこの状態から助け出すことは・・・できそうにない」

 

 メズールの発言に続きアンクが風船の中の人達のことを伝えてくる。

 

「アリアはアンクと下がってろ!後藤ッ!」

 

「分かってる!変身ッ!」

 

「変身ッ!」

 

『ライオン!トラ!チーター!ラッタラタ~ラトラ~タ~!』

 

 バースに変身した後藤と、オーズ・ラトラーターコンボに変身した俺は同時にメズールへと駆け出す。するとメズールは強化アダプタを装備したガイアメモリを取り出した。

 

「ふふ、遊んであげる」

 

『N///』

 

「っ?」

 

 起動音がはっきりと聞こえてこないメモリを取り込んだメズールは・・・水色の部分がまるで血のような赤みがかった黒い色になり黒いマントが赤く染まった。

 

「セヤァァァッ!」

 

「ハァァァァッ!」

 

『ドリルアーム・ショベルアーム』

 

 俺は両腕のトラクローを展開し、バースはドリルとショベルを装備した状態で攻撃をしようとすると・・・メズールは液状化して俺達2人の攻撃を回避する。

 

「このっ・・・だったらこれで!」

 

 ラトラーターの熱線放射をピンポイントに放ち液状化したメズールにダメージを与えようとするが・・・どういう訳かまるでダメージが無い様子だった。

 

「どういうことだ?」

 

「おそらく完全体になった力とメモリの力で完全に光と熱を克服したんだろうな。だが・・・だとすると・・さっきのエラーは・・・」

 

 何かに気がついた様子のバースは両腕の装備を解除してバースバスターを手に取る。

 

「遠山・・・俺の考えが正しければこの戦い・・・。勝機はあるぞ」

 

「え?」

 

 勝利を確信した様子のバースはメズールに向けてエネルギー弾を連射する。それもやたらとピンポイントにメモリを挿した右腕だけを狙って・・。

 

「くっ?調子に乗らないで欲しいわね!」

 

「ぐわぁっ!?」

 

 液状化からの体当たりを喰らったバースは吹き飛ばされて壁に叩きつけられるが・・・再びバースバスターを構える。

 

「俺の予想が正しければ・・・もう少しなはずだ・・」

 

『セルバースト』

 

 バースはバースバスターのセルバーストを放つと・・・そのエネルギー弾はメズールの右腕に直撃する。やっぱり物理攻撃は液状化で回避できるが、エネルギー弾とかは当たるらしいな。

 

「その程度で・・・うっ!?」

 

 それでもあまりダメージがない様子のメズールは再び俺達を攻撃しようとすると・・・メズールは突如として苦しみ出し、純粋な完全体としての姿に戻った。

 

「えっ?どうして・・・」

 

「・・・いくら強化アダプタを装備していようとそれは1つのデータしか入ってないガイアメモリ。それにグリードの力を・・・それも完全体の力も合わせたんだ。データの質量オーバーになるのは当然だろ?あとは攻撃を続けてオーバーヒートするのを待つだけだった。・・・それだけだ」

 

「何っ!?くっ?」

 

 メズールの右腕から抜け出たメモリは煙を出しながら地面に落ちるとそのまま割れてしまった。

 

「くっ?確かにメモリはなくなったけどまだ私は完全体の力が・・・」

 

「ハァァァァっ!!」

 

「ぐぅぅう!?」

 

 メズールだけを狙った熱線で外まで吹き飛ばした俺はスキャナーを手に取る。

 

「これで・・・」

 

「させないわよ!」

 

「ぐわぁっ!?」

 

 トドメを決めようとした俺はメズールの水のムチでスキャンに失敗し、ライドベンダーが置いてあったところまで吹き飛ばされる。

 

「ッ!」

 

『トラカン』

 

「まだまだぁぁぁっ!!」

 

「なっ!?」

 

 トラカンを確保し、ベンダーをトラカンと合体させてトライドベンダーに乗った俺はメダガブリューを地面から取り出して冷気を放ち・・・メズールの下半身を凍らせる。これでもうバイオライダーみたいなことはできないな。

 

「これで決めるッ!」

 

『ゴックン!ラトラーター!』

 

 ガブリューにメダルを投入するとメロディと共にガブリューの刃先にエネルギーが集まり・・・紫色に輝く。

 

「セイヤァァァァァァァっ!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!?」

 

 トライドベンダーからの加速とガブリューのマイナス。この一撃なら間違いなくコアメダルにダメージを与えただろうな。

 

「うぅ・・・そんな・・・私にはまだ・・・」

 

「メズールぅぅぅ!」

 

 腹部を押さえながらフラフラとしているメズールのところに人間に姿を変えたガメルが駆けつけてくる。

 

「メズール!やっと見つけた!・・・メズール?」

 

「ガメル・・・来たのね。だけどもう・・・お別れよ・・」

 

「お別れ?どうしてなんだ?俺、もっとメズールといたい。お別れなんてやだ!どうして1人でこんなことを・・」

 

「・・・グリード・・だから・・やりたいように・・」

 

 そうガメルに言い残したメズールは・・・爆発することなく静かにコアメダルとセルメダルになった。

 

「メズールぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「・・・・・・」

 

 前にも思ったことはあるが・・・グリードにも感情はある。だからガメルがメズールのことで嘆くのは分かるが・・・これ以上グリードに好き勝手やらせるわけにはいかない。

 

「・・・別れは悲しいとは思うが情けなんかかけないぜ」

 

 グリードはオーズである俺が背負うべき問題なんだ。そんな問題にこれ以上他人を巻き込んで・・・この前のショッカーアンク戦や今回のメズールのように命が奪われるようなことがあっちゃいけないんだ。

 

「メズール・・・メズール・・メズゥゥゥゥルゥゥゥゥ!!」

 

「「っ!?」」

 

 人間の姿から完全体としてのグリードへと姿を変えたガメルは悲しみからの勢いからか周囲に重力・・・いや、威圧的オーラのような波動を放ってきた。

 

「うおっ!?」

 

「キンジっ!?」

 

 その勢いに負けてしまった俺とバースは背後の川に吹き飛ばされてしまい・・・俺の意識はそこで途切れてしまった。

「うぅ・・メズールぅ・・」

 

 俺と後藤を吹き飛ばしたガメルはその場に残ったメズールのコアメダルを拾い集めようとする。

 

「・・・何をしているのですかガメル君。そんなことをしても無意味ですよ」

 

 戦闘の一部始終を眺めていた様子の真木博士はガメルの近くへとやってきてそのように告げてきた。それでもガメルはメダルを集め続ける。

 

「無意味じゃない。メズール、俺が復活させる」

 

「それは不可能です。もうそのメダルには・・・」

 

「うるさい!お前、嫌いだ!」

 

 真木博士の言動に耐えられなかったガメルはキレて襲いかかろうとすると・・・真木博士は瞬時に怪人としての姿へと変わり、カウンターでガメルの腹部に攻撃をしつつ、攻撃から身を守った。

 

「・・・まぁいいでしょう。ならば気の済むようにしてください。・・・よき終末が訪れんことを・・」

 

 怪人態から人間の姿へと戻った真木博士はそうガメルに告げるとその場を立ち去っていった。

 

「・・・メズール。俺が絶対に復活させる」

 

 

 そしてメズールのコアメダルを握り締めたガメルもその場を立ち去っていくと・・・一部始終を見ていたアリアとアンクが物陰から出てきた。

 

「まずいことになったわね」

 

「アリアは矢車達と合流してこのことを伝えておけ。だが絶対にガメルに挑もうとしたりはすんなよ」

 

「・・・どういうこと?」

 

 ガメルに挑む気満々だった様子のアリアはアンクに不満そうな表情を向けると・・・アンクは呆れ顔でため息をつく。

「完全体のグリードはただでさえ仮面戦士でもやばいのに無理に決まってんだろ。それに完全体のガメルには重力以外にも能力がある。・・・触れたものをセルメダルに変えちまう能力だ。ガガの腕輪で起動力が上がってるガメルに挑むってのが無謀ってことが分かったか?」

 

「・・・それでもメダルの戦士である俺や遠山にはその能力は効かない。・・・そうだろ?」

 

 少し離れたところから自力で這い上がってきてびしょ濡れな後藤はアンク達の話を後半から聞いていたらしく、それを踏まえた上でアンクに質問をする。

 

「・・・たしかにオーズやバーズはメダルの力で変身しているから変身中は触れられても問題はないだろうが・・・倒すとまでは・・・」

 

「だからお前は早く遠山を探してきてくれ。お前の眼なら探すことも可能だろ?」

 

「・・・無理はするなよ」

 

 後藤にそう告げたアンクは近くのライドベンダーをバイクモードにすると海へ向かって走り出した。

 

「それじゃ神崎、矢車達と合流したらガメルのいる地点の人払いを頼む」

 

「分かったわ」

 

 矢車達と合流しようと走り出したアリアを見届けた後藤も近くのライドベンダーをバイクモードにしてガメルの向かった方角へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろですね・・・」

 

 アンクがアリア達と別れて俺を探そうとし始めた頃、里中さんは空港で時計を確認しながら誰かを待っていた。

「ふぅ、ようやく帰ったぜ」

 

「お疲れ様です。・・・さっそくで申し訳ありませんがお仕事です」

 

 里中さんはようやく日本に帰ってきたその人物にバースとほぼ同じベルト・・・プロトタイプバースドライバーとバースバスターを手渡す。

 

「・・・これだけじゃダメでしょ里中ちゃん。俺と言ったら?」

 

「例のアレは車の方に詰んであります」

 

「さっすが里中ちゃん」

 

 俺達もよく知っているその人物を乗せた里中さんの車は『仕事』の場所へと向かっていった。

 

 

 

 

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

 

 俺以外のバスカービルのメンバーがそれぞれ行動を開始した頃、ガメルは街中を堂々と歩いて周囲の人や車などを次々とセルメダルに変えてしまっていた。

 

「これでどうだぁ?」

 

 山済みにしたセルメダルに青いカーテンをかけたガメルは手にしていたメズールのコアメダルをその上に置いてしばらく待ってみるが・・・何も反応しない。

 

「あれぇ~?これじゃ足りないのか~?」

 

「・・・ふんバカなヤツだ。もうあのメダルはメズールの意思が無いただのコアメダルに過ぎないというのに何をやっているんだか・・・。まぁいい、最後に生き残るのは・・・この俺だ」

 

 ガメルの行動を近くの橋の上から呆れながら眺めていた人間態のウヴァはそう独り言を囁くと何処かへ立ち去っていった。

 

「変身ッ!」

 

 バイクを運転しながらバースに変身した後藤はそのままガメルに向かって突撃するが・・・ガメルはバイクを受け止めたので瞬時にバースはバイクから飛び降りる。するとバイクはセルメダルとなって崩れてしまった。

 

「くっ!?」

 

 バースはバースバスターを手にとってゆっくりと近づいてくるガメルにエネルギー弾を連射するが・・・あまり通用しない。

 

「これでは駄目か・・・」

 

「お前!邪魔、するなッ!」

 

 自分の邪魔をしてきたバースにキレたガメルは左腕にガガの腕輪をつけると完全体の姿で各部に鋭いヒレがつき、僅かながらに緑色になった姿へと変わる。

 

「・・・ここからが正念場だな・・」

 

 近くに落ちていたセルメダルをバースバスターのポッドでザッと拾ったバースはそのままそれをバースバスターの次弾として装填する。

 

「これならどうだ!」

 

『セルバースト』

 

 バースはガメルにバースバスターでのセルバーストを放つが・・・その攻撃はガガの腕輪の力で機動力が上がったガメルにあっさり回避されてしまう。

 

「くっ!?あの図体であの機動力だと・・・ぐわっ!?」

 

機動力のあるガメルの攻撃を何度も喰らったバースは各部がどんどんボロボロになっていく。

 

「・・・もうダメージがレッドラインか。あと2~3回耐えるのが限界だろうな」

 

 バースは残りのゲージのことも考えると・・・1つの戦法を思いつく。

 

「・・・こうなったら至近距離からブレストキャノンを・・・」

 

「ちょっと後藤ちゃん。俺、そんなことを教えた覚えはないよ」

 

「えっ?」

 

 いきなり後ろから聞こえてきた声にバースは振り向くと・・・そこには俺達がよく知ってる人物が立っていた。

 

「伊達昭・・・リターン」

 

 手術のために海外に行っていた伊達さんだ。

 

「さてと・・・それじゃ久々のお仕事だ」

 

 ガメルをチラリと眺めた伊達さんはミルク缶の中からバースドライバーを取り出すとそれを腰に巻きつける。

 

「変身!」

 

 試作型バース・・・バースプロトタイプに変身した伊達さんはバースバスターを構えるとバースの隣に並ぶ。

 

「・・・お久しぶりです伊達さん」

 

「うん。久しぶりぃ!だけど積もる話は後でね」

 

「了解です」

 

 後藤のバース、そして伊達さんのプロトバースのダブルバースは突進してこようとするガメルにバースバスターからエネルギー弾を連射する。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

 しかしそれでもガメルは止まらずに向かってきて、その突進を喰らったダブルバースは数メートルほど吹き飛ばされてしまう。

 

「うおっ!?・・・後藤ちゃん、大丈夫?」

 

「えぇ、何とか・・・」

 

「こうなったら至近距離でブレストキャノンを決めるしかないね」

 

「・・・それはさっき俺がやろうとしていたことですよ」

 

「・・・邪魔してすみませんでした」

 

『『ブレストキャノン』』

 

 ブレストキャノンを装備したダブルバースはその砲身を再び突撃してこようとするガメルへと向ける。

 

「「ブレストキャノン・・・」」

 

「ウオォォォォォォォッ!!」

 

「「シュゥゥゥゥトッ!!」」

 

 ほぼゼロ距離でブレストキャノンをガメルに浴びせたダブルバースは、至近距離なために自分達もダメージを食らって飛ばされてしまう。

「やったか!?」

 

 プロトバースはガメルを倒したかどうかを確認すると・・・ガメルはブレストキャノンを喰らっても倒れずにいた。

 

「やってないか・・・」

 

「う・・・うぅ・・・」

 

「「っ!?」」

 

 ガメルが突如として苦しみ出したかのような動作をすると・・・真木博士の変わった恐竜グリードに殴られていた場所が紫色に発光し・・・そこからはメダルが割れるような音が響いた。するとガメルは人間態へと姿を変えながらその場に倒れこむ。

 

「・・・メズール・・これ・・あげる・・」

 

 自身が落としたメズールのコアメダルにたまたま持っていた飴玉を差し出す動作をしたガメルは・・・何が見えたのかは定かではないが笑顔で消滅した。

 

 

 

 

・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・ここは・・どこだ?」

 

 ガメルに吹き飛ばされて川に落ちてしまい、意識を取り戻した俺は戦っていた場所とはまったく違う場所に流れついていた。・・・ここは海か?

 

「あれ?ベルトはどこだ?」

 

 俺の腰にはベルトがついてはいなかった。どうやら流された時に外れてしまったようだ。俺はとりあえず周囲を見渡してみて探してみると・・・数十メートル離れた場所にそれらしいものが落ちているのが見えた。

「近くに流されてて安心したぜ・・」

 

 まったく別の場所に流されていたらどうしようかと思っていたが近くにあったので安心した俺はベルトを取りに行こうとすると左腕に違和感を感じた。

 

「ぐっ!?」

 

 気がつくと俺の左腕はまた怪人の腕になっていた。その瞬間、俺は自分がもう人間に戻れないような予感がして恐怖を感じた。

 

「くそっ!戻れ!戻れっ!」

 

 俺ははやく戻るように力を込めるが・・・中々戻らない。・・いや、そもそも俺は本当に戻りたいと思ってるのか?もしかすると俺は・・・本当はこの力を・・・。

 

「ん?」

 

 そんなことを考えていると・・・気がついたら俺の腕はもとの姿に戻っていた。

 

「・・・そうか、そういうことだったのか」

 

 何となく・・・何となくだが分かった気がする。俺がどうしてオーズなのかを・・。

 

「・・・ようやく見つけたぞキンジ」

 

 俺がどうしてオーズになれたのかを分かった気がしていると・・・オーズのベルトを持ったアンクがこちらに歩いてきた。

 

「・・・なぁアンク、俺・・ようやく気がついたぜ。俺がどうしてオーズになれたのか・・」

 

「・・・・・」

 

「封印を解いたときは単純に兄さんのように強くなりたいと思うだけの気持ちだったんだ。でも事件のせいで兄さんが死んだと思ってから俺のその気持ちは『みんなを助けたい』っていうデカイ欲望に変わったんだ。でも欲望の器だけデカイのになっても肝心のそれは満たされない。満たされるはずがない。満たされない欲望・・・それがオーズの本質なんだな」

 

 無限を超えた欲望の王・・・。決して満たされることがない欲望がある奴だけがオーズになれる。

 

「キンジ・・・もういい加減、紫の力を使うな。戻れなくなるぞ」

 

「・・・いや、この力はグリードを・・・真木博士の計画を阻止するためにも必要な力だ。だから俺はこの力をまだ使う。グリードのことだけじゃない。俺はこの力でみんなを守るために戦う」

 

「はぁ・・・なぁキンジ。俺が前に言った『力』の話を覚えているか?」

 

 あぁ、半年ぐらい前のあの話のことか。

 

「覚えているぜ。別に俺は間違った使い方をしようとなんてしてない。気がついたんだよ。この紫のメダルの力が・・・俺には必要なんだ。だからベルトを渡してくれ」

 

 そう言った俺は自分の意思で左腕を怪人の姿へと変えると、アンクも右腕を怪人の姿に変える。

 

「断るぜ。そういうのを間違った『力』の使い方っていうんだよ。・・・こいよキンジ。俺がいない間に鍛えたお前の本当の『力』を見せてみろ」

 

「ッ!!」

 

 アンクの言葉の意味は分からなかったが・・・アンクを納得させる『力』を見せないかぎりは渡す気がないらしい。そう思った俺は力づくでも奪い取るためにアンクへと駆け出した。

 

「バカがッ!」

 

 俺を近づけないようにとアンクは右腕から火弾をはなってきたが・・・俺は左腕でその攻撃を叩き落として近づく。・・・そういえば懐かしいな。俺とアンクが始めて出会ったときも戦いになってたな。

 

「ベルトを寄越せッ!」

 

「今のお前なんかに渡せるかよッ!!」

 

 距離が縮まり俺はベルトをアンクの手から奪い取ろうとすると・・・俺とアンクはそのまま取っ組み合いになってしまう。

 

「・・・なぁアンク・・お前に1つ言いたいことがあったんだった」

 

「っ?」

 

 アンクは「こんな時に何を?」とでも言いたげな視線を送ってくるが・・・俺は気にせず続ける。

 

「お前と出会えたおかげで・・・俺は本当の意味でオーズの力を手に入れることができた。お前がいてくれたから俺はオーズの力を自分の力として思えるようになったんだ。・・・アンク、本当に・・・ありがとう」

 

「・・・馬鹿が・・だったら本当の『力』ぐらい理解しやがれ!!」

 

 そう怒鳴りつけてきたアンクは俺を力強く殴り飛ばす。

 

「うおっ!?」

 

 倒れて再び海水に浸かってしまった俺はすぐさま立ち上がりアンクの方を見ようとすると・・・アンクの十数メートル後ろに真木博士が立っているのが見えた。

 

「遠山くん。いい加減私に紫のコアメダルを渡してもらえませんか?」

 

「・・・誰が渡すかよ。・・・これは・・・俺の力だ」

 

「そうですか。・・・ここまで頑固だともう仕方がありませんね」

 

 

 そう言った真木博士は自身の身体から3枚の紫のコアメダルを抜き取るとそれを俺に向かって飛ばしてきた。

 

「うっ!?」

 

 その3枚のコアメダルが身体の中へと入ってしまった俺は・・・だんだんと意識が遠のきかかるとアンクの持っていたベルトが勝手に飛んできて腰に装着された。

「う、うぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

『タカ!トラ!バッタ!タットッバッ!タトバ、タッ!トッ!バッ!』

 

 ほとんど自我を保っていない俺はタトバへと変身すると・・・黄緑色のはずの複眼が紫色に染まった。

「真木!てめぇ!!何のつもりだ!!」

 

「手っ取り早く一度暴走させてメダルを手放す気にさせようと思いましてね」

 

「ウオォォォォォッ!!」

 

 メダルの力が抑えきれずに暴走してしまった俺は完全に倒す気でアンクへと襲い掛かる。

 

「馬鹿が・・・力に飲まれやがって・・オラァッ!」

 

 ギリギリで俺の攻撃を回避したアンクはカウンターで俺のベルトを奪おうとしてくる。

「ガァァァァァッ!!」

 

「何っ!?」

 

しかしその拳は俺に届くことはなかった。俺の身体から発せられた黒いオーラにアンクが弾きとばされていたからだ。そしてそのオーラとともに出現したセルメダルは俺の全身を包み込むと・・・俺の身体は恐竜の怪人のような姿へと変貌してしまっていた。

 

「・・・キンジ。ウオォォォォォォ!!」

 

 

その変貌してしまった俺に悲しそうな視線を向けたアンクはカザリの割れたコアメダル以外のコアメダルを取り込むと・・・その姿は左右のところどころが僅かながらに違う姿になった。

 




 とうとう100話まで到達してしまいました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。