俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか? 作:エノコノトラバサミ
皆さんは、森近霖ノ助という人物を知っているだろうか?
かつて幻想郷に巨悪が蔓延っていた時代、暗く閉ざされていたこの世界の未来をたった一人で切り開いた幻想郷の英雄である。はい、嘘です。
まあ少なくとも、彼の見た目位なら分かると思う。要は眼鏡かけた男だ。それ以外はどうでもいい。
今日の依頼は香林堂。その森近霖ノ助が経営している古道具店だ。繁盛してるのかは知らん。
「お届けものです」
店の扉を開けても、誰もいない。いくら普段は客来ないからって、まさか勝手に留守にしてる訳ないよな?
「霖ノ助さん」
返事がない。ただのしかばね……しかばね無ぇな。
「霖ノ助さぁん」
やはり返事がない。
……もう諦めるか、あの名前で呼ぶのを。
「はぁ……霖花さぁん」
「はぁい♥」
居たし、返事しろよコノヤロウ。
「あら、お届けもの。ありがとう」
「どういたしまして」
「あ、ついでにお茶でも飲まない? 話し相手がいなくて暇なのよ」
「え……それじゃ、お言葉に甘えて」
「はい。それじゃ、こっちにいらっしゃい」
一話二話三話とお誘いを断り続けた俺がどうして今回は誘いを受けたかって? 理由は単純だ。霖ノ助……違う、霖花さんは案外まともな人だからな。
会話も通じるし、面倒見もいいし、優しいし、更に意外とキレイ。正直言えば、女装舐めてたわ。まるで別人だよ。この人が本当に女だったらなぁって思うわ。
「少し散らかっててごめんね」
とか言いながらあるのはテーブルの上の本が数冊のみ。女子力高ぇ……
「いえいえ、お気遣いなく」
「今お茶を入れてくるから、少し待っててね」
そう言って調理場に消えた霖ノ……霖花さん。テーブルの近くに座り、近くの本を手に取る。
『mi○i 今流行りの原○風コーデ』
ファッション雑誌じゃねぇか……
「お待たせ~、この前焼いたクッキーも持ってきたわ♥」
何でも出来るんだな、霖さん。
「あ、そうだ、見てほしい物があるんだけど……」
そう言って取り出したのは……別のファッション雑誌かよ。
「あのね、この服とこの服、どっちが似合うと思う? 私はこっちの方がいいと思うんだけど、やっぱ自信無いのよね~」
そんなこと俺に聞かれても……
「それじゃ俺はそろそろ」
「ええ、また来てね」
霖さんのお茶やクッキーを堪能し、彼女?の話に付き合ってあげた後、キリのいい所で香林堂を後にした。
もう仕事はない。後は帰るだけ。あの変態が家に居なければいいのだが……
「見付けたぜ」
ん? その声は──
「オラァッ!」
「がぁッ!?」
ヤベェ、意識が……
……暗い。ここは、何処だ? 誰かの倉庫みたいだ。
体をぐるぐる巻きに縛られている。これでは動けそうにない。
「……お、目覚めた見てぇだな」
「お前……」
「久しぶりだぜ、お兄さん」
「魔理沙……」
ヤバイ。この状況は非常にヤバイ。
「会いたかったぜ……一向に私んところ来てくれないから、嫌われたのかと思ったよ……」
別に好んでも無いんだけどな。
「幾ら頼んでも私の物になってくれないからよぉ……もう待ちくたびれちまったよ……お前は誰にも渡さない。あの人形使いにもなぁ!!」
いつから俺がアイツの物になったんだよ。てか俺は物じゃねぇよ。物扱いすんなよ。
「覚悟しな……お前が私の物だという事を今からたっぷりその体に刻み込んでやるぜ……」
……人生詰んだかも。
「待ちなさい!!」
「誰だ!!」
「この世に悪があるかぎり、世界に平和は訪れない! 純愛の使者、アリス・マーガトロイド見参!」
「貴様、よくも邪魔したな!!」
……ん? アイツの自己紹介おかしくないか?
「待ちなさい!!」
「「誰だ!」」
「元気100倍! 勇気1000倍! 愛と勇気と触手の味方! パチュリー・ノーレッジ参上!」
「「き、貴様は、触手のパチュリー!?」」
アイツどうして来たんだ? ……触手!? 触手ってなんだよ、アレか? アレなのか?
「喰らいなさい! 触手乱舞!!」
「うわ、なんだこれ!! 気持ち悪ッ!!」
「イヤァァァ!! このままじゃ触手に○されてしまうんだわ! エロ同人みたいに!! ……え、ちょ、そこ耳!! その穴じゃないわ!! もっと下、下よ!!」
一人スゲーウルセェ。
「私の触手は相手の耳をキレイに掃除する事が出来るのよ!」
「え、何それ!! じゃあエロ同人みたいになんないの!? 酷い!! 訴えてやる!!」
「お、これ案外気持ちいいんだぜ」
……帰ろう。
「おかえりなさい、ア・ナ・タ♥」
なんで居るんだよテメェ……