俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか? 作:エノコノトラバサミ
ただし来訪者あり。
「ねぇねぇ山本」
「誰が山本だお兄さんだよお兄さん」
「結局、あの異変は何だったの?」
「知らね」
お兄さんの家。
相変わらず、多くの住人達がひしめきあっている。
そんな中、日向で寝ているお兄さんとこいしの二人。
「しっかし暇だな」
「お兄さん、最後に配達行ったの何日前?」
「覚えてねぇよ」
「お兄さんの仕事って何だっけ?」
「……もう、俺ヒモ化してるな」
「ヒモだね」
「仕方ねぇだろ、俺が行くより文とかモミーとかお空さんとか藍が行った方が何倍も何十倍も速いんだから」
「……だね」
二人でダラダラと愚痴っていた。
「ただ今帰りました~」
そこに、文が配達から帰ってくる。
「おかえり、今日は十分もかかったな」
「安全第一ですから。それではまた行ってきますね」
「今日も『
「速いのが取り柄ですからねぇ。それに私、結構人気あるんですよぉ」
自慢げに鼻を鳴らす文。
最新型のカメラを買う為に、最近始めた駕籠の仕事。要は人を運ぶのだ。
天狗特有の力と速さであっという間に目的地へ運ぶ文の駕籠は、時間の無い者にとっては非常にありがたいものなのだ。
「それでは、行ってきまぁす!」
あっという間に、文の姿が空の彼方へ。
「行っちまったなぁ……」
「貴方の事は、ずっと……ずっと忘れない!」
何言ってんだお空さん。
「って、何時から居たの!?」
「さっき洗濯物を干し終わったから、今来たばっかよ」
「あ、そう」
「それにしても寂しいわ……最近文さん相手にしてくれなくて……疼いてきちゃう♥」
うるせぇよ百合女。
「お兄さん、たまには相手してよ♥」
「しねぇよ、てか心読むなって。狐でも誘ってろ百合女」
「お兄さん……はっきり言っておくけど……私はバイよ♥」
だからどうした。
「因みに文さんもバイよ♥」
もうどうだっていいわ。
「ねぇねぇ、お兄さんも一緒にカルタやろうよ!」
「カルタ?」
突然こいしに引っ張られる。
向かった先では、フランと小傘の二人が座って待っていた。
「それじゃ……犬も歩け──」
「とりゃ!!」
「うぉ、小傘早ッ」
「あ、来た来た、二人とも早く!」
仕方なく、俺も一緒に参加する事に。
読み上げるのは交替してやる様だ。
さっきはフランが読んでいたので、今度はこいし。
「いくよ……二階から目──」
「はい!」
「お、また小傘か……」
どうやら、皆の中では小傘が一番瞬発力が高いらしい。
次は小傘だ。
「言うよ……駆逐してや──」
「とぅ!」
「あ~、こいしちゃんにとられちゃった」
……ん? 駆逐?
「はい次、お兄さん読んで」
「あ、ああ」
そして、詠み札を渡される。
「いくぜ……夢じゃないあれもこ──」
「やッ!」
「おお、フランちゃん」
てかこれ、ことわざカルタじゃねぇの?
「じゃ、次は私ね」
こいしが札を詠み始めた。
「その手でドアを──」
「とりゃ!」
「あ、また小傘ちゃんに取られた~」
そして、次はフラン。
「祝福が欲しいのなら──」
「一人で──」
「泣きましょう──」
「そして~か~がや~く」
「「「ウルトラソ──」」」
「言わせねぇよバカ野郎ッ!!!」
「え~」
「え~じゃねぇよこういうのは言っちゃダメなんだよなんかもう色々な意味で!!」
「じゃあ何ならいいの?」
「何って……自分で作った歌とか」
「わきち歌います!」
何故か小傘がしゃしゃり出てくる。
「カッパッパッカッパッパッニーットリー♪」
「…………」
「…………」
「…………」
「え、何で皆無反応なの!? わきち寂しいよ!」
「色々と中途半端だし」
「にとりだし」
「きゅうりだし」
「間も悪い上にセンスも微妙だし」
「わきちわきち言ってキャラ付けようってのが見え見えだし」
「ヌメヌメしてるし」
「皆酷いよ! わちき……わちき、トイレ行ってくる!」
勝手に行け。
「皆、ご飯が出来たぞ!」
ふと、藍が皆を呼ぶ。
居間へ向かうと、エプロンを外している藍がいた。
「今日のご飯はキツネご飯にキツネ味噌汁、キツネの塩焼きにキツネの浅漬けだ」
油揚げと言え物騒だろ。
つーか毎食毎食油揚げ多いんだよ。
何だよキツネの浅漬けって、喰うまでもなく不味いだろ!
「また油揚げ~?」
「たまにはさつま揚げ食べたいよね、フランちゃん」
「私はこいしちゃんを食べたいな♥」
「お兄さん、フランちゃん壊れちゃったから、トンカチで頭叩いて治して~」
こいし、そりゃ無理だ。
「私、たまには焼き鳥がいいです」
お空さん、アンタがそれ言っちゃダメだよ。
「幻想郷で一番速い烏の焼き鳥なんて想像しただけでヨダレが……」
何ちょっと、対象が限定されてるよ、それ一人しかいないよ。
てかそれ本来の意味での食べたいじゃないよね? いつの間にSMプレイに目覚めたの?
「文句言わない! 家計が厳しいんですから!」
いやいやいや確かに余裕ある訳じゃないけど毎食油揚げにしなきゃいけない理由ないよ!?
つーか油揚げそんなに安い訳でもないよ!?
「……あれ、モミーどこ行った?」
「ホントだ、モミー居ないや」
文は駕籠の仕事で居ないから分かるが、気が付けばモミーが居なくなっていた。
一体、何処に行ったのか?
「誰かぁ、助けてぇ!」
突然、外から椛の叫び声が。
俺達は急いで玄関を開く。
「おうおうおう何だテメェはさっきからクンクン臭い嗅ぎやがって、ぶっ殺すぞコノヤロウ!」
「ご、ごめんなさい、もうしませんから!」
「なら言ってみろテメェ『申し訳ありませんでした橙様』ってな! 勿論土下座だぞ!!」
「も、申し訳ありませんでした、橙様……」
「声が小せぇ!!」
「申し訳ありませんでした橙様ぁ!!」
「うるせぇ!」
「なんで!?」
……グラサン掛けた猫耳少女とか萌えねぇ。
グラサン付けた猫耳は萌えないけど、猫耳付けたグラサンならどうよ?
吐き気がするね(  ̄▽ ̄)