俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか? 作:エノコノトラバサミ
「──!?」
突如襲いかかる息苦しさで、俺は目が覚めた。
俺の顔の上に何かが乗っている。
「──ぶはッ!? 何なんだよ……」
「ムニャァ……」
「小傘……」
苛立ちに任せて小傘のケツをひっぱたいた。
「痛ったぁ!?」
「よっ、おはよう」
「酷い! わちきまだ何もしてないよ!?」
「どうせそのうち何かするだろ」
「うん」
もう一発やっておくかな。
あれから数日。フランはこいしのお陰かすぐに家に慣れ、すっかり家族の一員に。
「何ですか、朝から?」
「文おねぇさん、お兄さんが襲ってくる~!」
「あやややや、とうとうやってしまいましたね……」
黙れ変態カラス。
「あらあら、そういう文さんもたまに私の事襲ってくるじゃないですか」
「お、お空さん……それは……そう、お空さんがそんなイヤらしいボディなのがいけないんですよ! ほら、このこの!」
「そ、そこはだめぇ♥」
外でやれテメェら。
「おい、そんなことしてないで、朝ごはん出来たから食べろ」
「お、ありがとう藍」
「いなり寿司に油揚げの味噌汁だ! いやぁ、料理っていいなぁ!」
お前いなりしか作らねぇけどな。
「とりあえず、他の皆も起こしてくれ」
「はいよ~」
俺は寝室へと戻り、こいしとフランの二人が寝ている布団へ近付く。
「お~い、起きろ」
「……んぁ、お兄さん……おはよ~」
「ほら、フラン!」
「……ふぁ~、おは……人間ッ!?」
「ぐぇッ!?」
いきなり腹部を蹴らないで……
「あ、お兄さんだった……」
「お、俺も人間……だけど、な……」
「でも私、もうお兄さんの事はそんなに怖くないの。なんでかなぁ」
加害者だからじゃないですかね……
「とりあえずお前ら……朝ごはんだ……」
「「は~い」」
くっそ……吐きそうだ……
皆が起きて朝ごはんが運ばれる。が、家の食事は平和には進まない。
いなり寿司には個数があるのだ。
「……均等に分けても三つ余ったな」
「今回はどうしますか?」
「……よし、くじ引きにしよう」
腕が入る程度の穴が空けられた木箱に星の描いてある紙を三枚、そして白紙を五枚入れる。ジャンケンで順番を決めて一枚ずつ紙を取った。
「いくぞ~」
「「「「「せ~の!!」」」」」
俺の紙には、見事に星マークが。
「よっしゃ! 後は誰だ!」
「やったぁ!」
「あらあら、ごめんなさいね」
こいしとお空さんが当たりを引いたみたいだ。
「あややや、最近運が悪いです……」
「いいなぁ、こいしちゃん」
「クッソオオオォォォォォォォォォォォォォ!?!?」
一人だけスッゲーうるせぇ。
「……やるよ、キツネ女」
「ほ、本当にいいのか!? ありがとう、愛してる!!」
お前の愛はいなりで左右されるのか。
朝食後は配達の仕事があるのだが、ここ最近皆で行くのはめんどくさいという事になり、一人ずつ当番を決めてやる事になった。
一昨日は俺、昨日は藍、そして今日は椛だ。明日は文になっている。
こいし、小傘、フランは除外だ。一人吸血鬼だしな。
「それじゃあご主人様……グスッ、必ず帰ってきますからね……」
なんで泣いてんだよ。
「いってらっしゃ~い」
「私の事……忘れないでくださいね」
はよ行け。
この後は特に何も予定はない。各々自由な時間を過ごす。俺とお空さんだけ家事に勤しんでいるのだが。
「お帰りなさいお父さん」
「ただいま明恵、遅くなってごめんよ」
こいしとフランは二人でおままごとをしている。
明恵って名前、何処から出てきたんだ?
「ご飯にする? お風呂にする? それとも……」
「明恵……君にしたいな」
「まあ、仁志さんったら♥」
ちょっと待て、何してんだよアイツら。
「ただいま~」
「お、彩佳、おかえり」
「部活で遅くなっちゃった」
そこに小傘が参加。どうやら二人の娘らしい。
「じゃあ、今日は二人とも頂こうかな」
「もう、お父さんったら♥」
待て待て待て待て、何だよこれ。
家族終わってんだろ。
「あら、おままごとですか。楽しそうでいいですねぇ」
「そう……ですかね?」
洗濯物を干し終えたお空さん。
「私たちもあんな家族みたいにに仲睦まじくなれればいいですね♥」
確かに仲睦まじいけどさぁ……あれオカシイだろ……
「私達も文さんや藍さん誘っておままごとします?♥」
しねぇよ。
「私は文さんが本命ですけど、お兄さんでも悪くないです♥」
聞いてねぇし聞きたくもねぇよ。
「お空さぁん!!」
「文さん!!」
文てめぇ何処から出てきた。
「私……文さんが一番大切ですけど……でも……お兄さんの事も、何だか心配なんです」
「お空さんは優しいですね……」
なんで俺が話に出てきてるんでしょうかね。
「でも大丈夫ですお空さん! 幻想郷に法はありません! お兄さんも入れて、三人で愛し合うのです!」
「流石ね、文さん!」
「さあ、お兄さん! 私達と三人で再びあの愛の巣を築き上げましょう!!」
「申し上げますが俺は鳥類ではないので巣は築きませんさようなら」
「あぁ、お兄さ──』
家に戻ると、そこには神妙な顔をして座り込んでる藍の姿が。
「どうしたんだ?」
「ああ、お兄さん。今お稲荷を使った新しい料理を考えてるんだ」
「へぇ、例えば?」
「お稲荷の炊き込みご飯とかどうだ?」
「それいなり寿司と大して変わらないと思うぞ」
「う~ん、難しい……」
まあ、頑張れ。応援はしないけど。
椛も帰って来て、里は夜を迎える。
「皆、ご飯出来たぞ!」
「待ってました!」
「今日はきつねうどんだ!」
そろそろ藍以外の奴が飯作ってくれないかな。
「頂きまぁす!」
「美味しいですね」
「ん~、少し味薄くない?」
「そうか?」
今宵は平和に終わりそうだな。
「ついでにいなりの炊き込みご飯も作ってみたんだが……」
本当に作ったのかよ。
「食べてみてくれないか?」
「それじゃ、頂きまぁす……味無い」
「え? ……確かに味無い」
「そんな筈は無い! ならば私が……な、なんで味無いんだ……」
「どれ、俺も……すげぇ、味無ぇ」
皆さんも作ってみて下さい、味の無い炊き込みご飯。
という事で夕食も終わり、寝る時間へ。
文とお空の烏コンビは未だあの外の小屋で寝てますが、残りはみんな家の中です。テーブルとか避けて布団を敷いてます。
この時、家では恒例のじゃんけんが。
「いくよぉ……最初はグー、じゃんけん──」
「「「ポン!」」」
結果、勝ったのはフラン。
何故じゃんけんをしてたのかと言うと……
「わぁい、ふっかふか~♪」
勝者はその日、藍の尻尾の上で眠れるからだ。
「私は迷惑この上ないのだがな……」
その通りだ。
「それじゃあお休みなさい」
「ああ、お休み」
後は各々布団に着き、眠るだけ。
俺の家の一日はこんな感じだ。
「──ぶはッ!?」
深夜、突如息苦しさを感じ起き上がる。
また顔の上に何か乗っている様だ。
「……おどろぇ……スゥ……」
小傘テメェ……
そのうち現代入り投稿します。