俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか?   作:エノコノトラバサミ

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 三人称で書くとなんか変態度も面白さも微妙なんでこれからずっと一人称で書きますわ。


八雲藍、顔面蒼白

 紅魔館、地下。とある一室。

 フランドールの部屋はそこにあった。

 紅く染められたベット、柔らかな絨毯、整理されたお人形。そこはどこかのお金持ちの幼いお嬢様の部屋の様だった。とても彼女が生物の血を吸って生きる吸血鬼だとは思えない。

 

 彼女はいい子なのだ。

 何の比喩表現でもなく、本当にいい子なのだ。

 

 お姉さまの言う事はしっかり守るし、好き嫌いもしない。お手伝い等もきちんとする。

 そんな純粋な性格だからこそ、こんなに傷付いても何も出来ない。

 いっそ、狂ってしまった方が、幸せなのかもしれない。

 

「ねぇねぇエリちゃん、今日は何して遊ぶ?」

 

 彼女は両手にお人形を持っていた。

 

「そうねリンちゃん、一緒にかくれんぼしましょう」

「それは楽しそうね」

 

 金髪でロングの少女の人形と、頭にリボンを付けた茶髪の人形。

 過去にお姉さまから貰ったプレゼント。

 

「それじゃ、私が鬼ね」

 

 フランはこの人形遊びを、とても楽しいと思っている。

 長きに渡り館に引きこもっていた彼女にとっては、人形とお姉さまだけが心を許せる存在。けれど、お姉さまはこの館の主としてやるべき事がたくさんある。だから、フランはここで待っている。お姉さまが私と遊んでくれる数少ない時間を。

 

「キャー……」

 

 上で微かな悲鳴が聞こえた。それが誰のかはフランには分からないし、本当に悲鳴なのか確証もない。

 無視しようと、したその時だった。

 

「フラン様! 大変です! 開けてください!」

 

 メイドの一人が切羽詰まった声で呼び掛けてくる。明らかに普通ではない様子を察し、すんなりと扉を開けた。

 扉の前にいた妖精メイドは、頭から血を流していた。

 

「敵襲です! お嬢様含め総力を挙げて抵抗していますが、状況は劣悪! フラン様、どうかお嬢様の元へ!」

 

 さあ、劇の始まりです──

 

 

 

 という訳で始まりました紅魔館一大イベント、フランドールの人間嫌いを治す茶番劇。実況解説はこの私変態がお送り致します。

 早速現れた妖精メイドは言われずとも仕掛人Aです。頭の血も勿論ただのトマトジュースですよ。

 

「う、うん、分かった!」

 

 突然の事で戸惑いながらもとりあえず走り出すフラン。怖がって部屋に閉じ籠もるという最悪の選択は回避でき、とりあえず一安心ですね。

 

「……フラン様、無事にスタート。健闘を祈る。どうぞ」

「了解、作戦を実行する、オーバー」

 

 この人達本当にメイドなんでしょうかね。

 

 紅魔館はとても広い造りになっていますが、所々通路は瓦礫やら何ならで程よく通行止めにしているので、フランが無駄な寄り道をする確率は大分低く収められています。

 更に、争いの後というリアリティを追求する為に館をある程度壊したり、通路によっては真っ暗だったりとただ移動するだけでも困難だったりします。すんなり過ぎると怪しまれるかもしれませんから、これぐらいが丁度良いでしょう。

 道端で倒れている妖精達も無論フリです。中にはわざと折った剣を胸の辺りにくっつけて白目を剥いたり、咲夜の空間操作を利用して首が体からポロッてなってる物まで。平気で断面図とか見えちゃってますから、これが漫画だったらグロ規制確実です。

 

 とりあえず地下から出たフラン。そこで突如壁が崩落し、そこから二つの影が。

 

「わっはっは、貴様の力もこの程度かー」

「く、なんて強いのかしらー」

 

 謎の仮面を付けた烏と触手魔女パチュリーです。

 

「おぉフラン、貴方は無事だったのねー」

「え、う、うん……」

「レミィが上で戦ってるわ、貴方も早く上へ──」

「隙ありー」

「ぐはぁー(棒)」

 

 (棒)とか付いちゃってます。

 

「パチュリー!?」

「私に構わず行きなさいー」

「分かった」

 

 意外と薄情なフランちゃんですね。

 

「……それと、フラン」

「何?」

「貴方と過ごした時間……悪くなかったわ」

 

 あえて死亡フラグを立てるパチュリーさん。

 

「あ、え……う、うん、私も……えっと……楽しかった、かな?」

 

 思い出無いの、バレバレです。

 

 パチュリーとの過酷な……別れに心を痛め……たと仮定して、フランは進み続けます。幾多の亡骸を飛び越え、やっとお姉さまのいる部屋へとたどり着きました。

 

「お姉さま!?」

「ふ、フラン……」

『ワッハッハー、コノヤカタハワタシガシハイシター』

 

 時すでに遅し、レミリアはひび割れた壁に埋もれてました。因みに、壁にヒビを入れたのはレミリア本人です。

 

『コンナヤツ、アイテニモナランワー』

「うっ、痛い、痛いよぉ」

 

 九尾の藍がレミリアの顔を足で踏みつけてますが、全く力を入れてないので痛いどころかちょっと気持ちよくて軽く恍惚の表情を浮かべてます。

 

「どうだ、怒ったかー」

「悔しかったらかかってこいー」

 

 子分の二人がフランを挑発しています。フランはただただじっと相手の事を見つめているだけで、微動だにしません。怯えているのてしょうか?

 

「──それまでだ!」

 

 真打ち登場!

 

『ダレダキサマワー』

「私はさすらいの勇者! 化け物よ、覚悟しろ!」

 

 ただ装飾が派手なだけの剣を掲げるお兄さん。

 

『オマエラ、ヤッチマエー』

「おりゃー」

「死ねー」

 

 ボスの言葉で子分二人がお兄さんに突撃します。しかしお兄さん、攻撃を正確に回避して反撃します。当たり前です、リハーサルしましたから。

 

「──瞬風神速斬!」

「ぐはぁー」

 

 名前が痛い。

 

「さぁ、残るはお前だけだ!」

『オノレー、ヤツザキニシテクレルワー』

 

 九尾がお兄さんに突撃。お兄さんはそれをかわして反撃しますが、その攻撃を弾かれてしまいます。

 

『カカッタナ、シネー』

 

 尻尾でお兄さんを持ち上げ、吹き飛ばします。

 

「ぐはぁ!?」

 

 だが着地点にはあらかじめ保護色のマットが敷かれてあり、その衝撃は受け身を取れば充分受け流せる程度でした。

 

『フッハッハッハ、コレデジャマモノハイナクナッター』

 

 だがしかし、お兄さんは諦めません。どんなに傷付いても、正義の為に立ち上がります。

 

『…………』

 

 立ち上が……あれ?

 

『……オーイ』

「…………」

『……チョット、ダイジョウブカ、オニイサーン』

 

 小声で話し掛ける藍。返事はありません。

 突如不安になり始め、狐モードから人間モードに戻ります。

 

「……脈が、無い」

 

 八雲藍、顔面蒼白。

 

「ちょっと、どうしたのよ!?」

「何かあったの?」

 

 異変を察知して、レミリアやこいしも駆け寄ります。

 

「……死んでる」

「あ……ぁぁ……」

「そんな……私は確かにマットの近くに投げた筈……」

 

 藍が辺りを調べると、お兄さんの頭の上辺りから地面かふかふかになってました。

 単純に角度をミスったのです。

 

「や、やばいわよこれ……」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう」

 

 もう劇どころではありません。

 

「そ、そうだ! お前のとこの時を操るメイドに時間を巻き戻して貰うってのは!?」

「そんなこと出来るわけ無いでしょう!」

「じゃあどうするんだよ!? お前確か運命操れるんだろ!? 予知とかしなかったのか!?」

「んなもんハッタリに決まってるじゃない!」

 

 お嬢様まさかの暴露。

 

「と、とりあえず中止! 皆を集めるわよ!」

「分かった! おぉい、集まれぇ!!」

「──ん、お兄さん……?」

「……うぅ、痛ってぇ」

 

 お兄さん、普通に生きてました。

 

「……頭が、クラクラする」

「ふぇ? 何で生きて……確かに脈は……止まってるのに……」

「脈は普通小指じゃなくて親指だぞ」

「え」

「おい……」

 

 結局、全部台無しになってしまいました。

 

「あ、そうだ、フラン!?」

 

 お姉さま、完全に忘れてました。

 

「おーい、フラン」

「…………」

「フラン?」

 

 フランは未だぼーっと一点を見つめています。

 

「ちょっと、どうしたのよフラン」

「…………」

 

 すると、ハッと気が付いた様な表情をするや否や、俯きながら何処かへ早足に移動し始めました。

 フランの向かった先は、なんとこいしの前。

 

「……あ、あのぉ!」

「ん?」

「わ、わわ、わたしと、付き合って下さい!」

 

 …………え?

 

 

 

 

 翌朝。

 

「えっと、どうしてこうなったんだ……?」

「よ……よよろし……しくお……おぉ……やっぱ無理!」

「ぐえッ!?」

「駄目だよフランちゃん、お兄さん叩いちゃ」

「ごめんなさい……」

 

 何故かフランがお兄さんの家にいます。

 

「なんで家にいるんだ……」

「そ、その……こいしちゃんと、一緒に……」

「だって。許してあげてお兄さん」

「人間嫌いは大丈夫なのか?」

「こ、こいしちゃんと……一緒なら……」

「やったねお兄さん、家族が増えたよ!」

「もう要らねぇよ……見ろよこれ……」

「おい憑喪神! その羊羮は私のだ! お前が食べるのは驚きだけだろ!?」

「やぁい、女狐は男でも食べればいいんだよ!」

「もーらい♪」

「あぁ文さん! それ私の羊羮ですよ!?」

「そんなに急がなくても羊羮は……無くなるわね。あぁ、私の分!?」

 

「……こんな所に住みたいか?」

「なんだか楽しそう!」

「そ、そうか……」

 

 




「……フラン……私の愛しいフラン……」

「レミィ……フランの事、心配なの?」

「ええ、けれど良いの。彼女が自分で決めたのだから。それに……」

「それに?」

「──私にはこれがある!」

『お姉さま大好き♥ お姉さま大好き♥』

「イィィィィィィィヤッフゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「相変わらずね……」

「よ~し、フィギュアの次はラ○ドールよ!!」

「やめなさい」

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