俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか?   作:エノコノトラバサミ

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 私は笠原さんではありませんよ。

 あ、今回は作者視点の三人称でいきま~す。


私は魔王ではない、拳王だ!

「え~、この度はお忙しい中お集まり頂き、誠にありがとうございます野郎共」

「お集まりって、ここ私の家なんだけど」

 

 紅魔館の広間に集まったのは、お兄さんとその家に住む居候達、そして紅魔館の住人達。

 お兄さん、こいし、文、椛、お空、藍、小傘、レミリア、咲夜(と数人のメイド)、美鈴、パチュリーと十一人+αの面々。

 

「驚けぇ!!」

「あ、小傘テメェ俺のズボン脱がすんじゃねぇ!?」

「公衆の面前でパンツ一丁とは、お兄さんも中々の……おぉ、こわいこわい」

「ぅるセぇクソカラスぅ!!」

 

 皆さん相変わらずですね。

 

「しかしあの様子だと、お兄さんのアレは短小と見ましたな」

「イヤイヤ何を言う射命丸。お兄さんがその気になれば、大方私の尻尾並にはなるぞ」

「あの時はびっくりしたわ……私の制御棒よりもちょっとだけ大きかったもの」

 

 突っ込みどころ満載の会話ですが、お兄さんはズボンを奪われてそれどころではありません。必死に小傘を追い掛けてます。

 

「捕まえたぁッ!!」

「アハハ、捕まっちゃった」

「お兄さん、パンツ半分脱げてるよ」

「うわッ!?」

 

 メンツも何もありゃしない。

 元々ありませんが。

 

「……それで、結局アンタ等何の用?」

「あぁ、そうだった」

 

 再び壇上へ立つ。

 

「おどろ──」

「話が進まねぇだろバカ!」

「うッ!?」

 

 少女にボディーブローを撃ち込むお兄さん。

 容赦ないですね。

 

「あ……オ×××××」

 

 どんな相手でも吐かせる魔法のボディーブローです。

 

「ゴホン、え~、この度集まって頂いた目的はズバリ、この館の主であるレミリア・スカーレットの妹であるフランドール・スカーレットを」

「暗殺」

「誰だよ今暗殺って言ったの」

「はぁい」

「こいし……」

「えへへ、冗談だよ」

 

 随分ブラックな冗談です。

 

「暗殺ではなく、彼女の人間嫌いを治す為に、手を打とうという訳であります」

「けれど、どうするつもり?」

 

 レミリアが率直な疑問をぶつけます。

 

「私はそれを考える為に、三日三晩寝ながら考えました」

 

 寝てたらしいです。

 

「人間、寝ないと死んでしまいます」

 

 早速話が脱線してます。

 

「いいから続きを言え」

「ごめんなさい」

 

 妹の事になると厳しいお姉さま。

 

「その結果、一芝居打つのが得策かと」

「一芝居?」

「そう、名前の通り芝居です」

 

 お兄さんの思い付いた案は、こんな感じでした。

 ある日、フランが部屋に籠っていると、突然上から悲鳴が聞こえてきます。フランが紅魔館の一階に行くと、そこには紅魔館の住人やその仲間が倒れています。そして住人はフランに「レミリアが奥の部屋で闘ってる」と教えます。

 フランが奥の部屋に行くと、レミリアは既にやられて、相手のボスに捕まっていました。残るはフランのみ、絶対絶命のピンチ!

 そこで駆けつける人間のお兄さん。お兄さんはフランを意ともせずに相手と闘い、瀕死になりながらも見事レミリアを助けます。そうしてレミリアがお礼を言うと共に、フランに人間は悪い人ばかりではない事をアピールする、という作戦です。

 

「なんだか……吐き気がしてきたぞ」

「似合わないにも程がありますね」

「流石に無理があるんじゃないかしら?」

 

 批判殺到です。

 

「そんなことより○しちゃえば」

「出来るわけねぇだろ」

 

 最近こいしちゃんが悪に染まりつつあります。

 寺子屋のあの一件からでしょうかね。

 

「……悪くないわね」

「「「え?」」」

 

 お姉さまだけ何故か賛成です。

 

「よし、じゃあこれで」

 

 お兄さん勝手に決めてしまいました。

 

「という訳で、今から配役を決めたいと思います」

 

 まずお兄さんが主役。そしてレミリアを倒す悪者のボスが一人と、その手下が数人。後はフランが行く先々で道に倒れてたり、裏方で支援したりとその辺は曖昧です。

 

「とりあえず俺とレミリアを除いて、まずは悪者のボス、魔王だ」

「そこの門番でいいんじゃないすか?」

「私は魔王ではない、拳王だ!」

 

 中国人がなんか変なこと言ってます。

 

「ていうか、私達はフランに知られてるから無理よ」

「あ、確かに」

「じゃあ私やる!」

「こいし、お前は無理だ。見た目だけ見るとカエルにも負けそうだしな」

 

 酷い言い様です。

 

「う……」

「何だよその反応」

 

 しかも図星という。

 

「それじゃ、私が犬に変身するというのは?」

 

 今度はモミーが立候補。

 ちなみにこの子、狼です。

 

「悪くないけど……犬は、な」

「それでは、私がカラスに変身しましょう!」

「墜ちろクソカラス」

「私まだ何もしてませんよ!?」

 

 文には辛辣です。

 

「ごめんね……私は変身出来ないの」

「いや別に求めてませんから大丈夫ですよ」

 

 お空さんには優しいお兄さん。

 同じカラスでも凄い格差ですね。

 

「残るは藍一人だけど……」

「私か? 一応変身出来なくは無いぞ」

「とりあえず気になるから変身してみて欲しい」

「分かった、仕方ない」

 

 そう言うと、突如呻き出す藍。全身が大きく肥大し、服が裂け、狐色の体毛が生え始め、両手両足が長く鋭い爪が光出す。尻尾の先から九つの蒼白い炎が灯り、全長四、五メートルもあるであろう巨大な九尾へと姿を変えたのです。

 

『……フウ、コレデドウダ?』

「すげェ……」

 

 まさにバケモノですね。

 今思えばこいつ、幻想郷でも最強格の妖怪なんでした。

 

『コノスガタデイルトイロイロトフベンナノダ』

「と、とりあえずボスは藍で決まりだな。後は手下だ」

「じゃあ私やる!」

「こいしまた……いや、別にいっか」

 

 早速一人決まりました。

 

「ご主人様がやるなら私もやります」

 

 二人目もあっという間です。

 

「よし、もうこれでいいや。最後は裏方を決めて、残りは皆その他という事で」

「裏方って何をするの?」

「フランが目的の場所に着く様にこっそり誘導したり、フランの様子を俺達に知らせたり」

 

 要は見張りです。

 

「咲夜とそこのメイドでいいんじゃない? 通信なら『ムセンキ』ってやつを使えばいいんだし」

「お嬢様のご命令とならば」

 

 なんでそんなもの持ってるんでしょうね。

 

「ようし、後は皆台詞を覚えて、本番まで練習だ!」

「本番っていつですか?」

「明日」

「「「明日ァ!?」」」

 

 そうして、お兄さん達の劇の猛特訓が始まりました。

 果たして上手く行くんでしょうかね?

 失敗する予感がぷんぷんしますね。




 という訳で次回も三人称でいきま~す。

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