俺の事が好きなのであろう人形使いが毎回付きまとってくるのだが一体どうすればいいのだろうか? 作:エノコノトラバサミ
「助けてダーリン!」
「うわ、何だよ急に!」
突然家に駆け込んで来たのはアリス。普段のニヤケ面した変態みたいな表情ではなく、珍しく汗を掻いて焦っている。
「私そんな顔した事無いわよ」
「いいんだよテメェなんて大体そんな感じだろ」
「それより聞いてよ、大変なのよ!」
「ったく、何だよ?」
「私……どうやら、付けられてるみたいなの」
「は? お前が付けられてる??」
ストーカーがストーキングされてるとは、こりゃ珍しい。
「日頃の悪行の報いだ、死ね」
「そんなぁ……私何もしてないわよ、ダーリン以外には♥」
うるせぇ、と言いたい所だが、確かにその通りなのだ。
正直、こいつがストーキングされてるとして、誰がそんな事をするのか検討がつかない。少々、気になり始めた。
「まあ、仕事は烏と家のペットに任せればいいし……たまにはいっか」
「ホント!? ありがとうダーリン!! 正直全く期待して無かったわ!!」
じゃあ来るなよ。
「お礼に、私の大切なモノ……ア・ゲ・ル♥」
「じゃあテメェの財産全部渡して貰おうか」
「良いわよ」
「良いって言われると……やっぱいらねぇ」
アリスの家。一旦、ここで作戦を立てる事に。
「まず言っておくわ。今回の相手は相当のやり手よ」
「そうなのか?」
「ストーカーには、二種類あるの。敢えて姿を晒して相手を心理的に追い詰めるオープン型ストーカーと、最初から最後まで完璧に姿を隠すクローズ型ストーカー。今回の相手は後者、しかも腕が立つわ」
なんだその理論は、お前はオープン型か。
「私も人形を使ったりして姿を突き止めようとはしたわ。けど、ダメだった。速すぎるのよ」
「俺はどうすればいいんだ?」
「簡単よ」
そして、アリスは自らの服を脱ぎ始めた。
「脈絡もなく脱ぐな変態」
「今は違うわよ、はい」
「……なんで俺に服を手渡す?」
「私に変装して頂戴」
……マジかよ。
「ダーリンみたいな素人じゃ、相手を見付ける事さえ出来ないわ。だから、ダーリンが私に変装して、相手がダーリンにストーキングしてる所を、私が見付けて捕らえるの」
「……帰ってもいい?」
「外は人形達が監視してるわ……上海や蓬莱と子作りの練習したいなら良いわよ♥」
袋のネズミか、チクショウ!!
アリスに嵌められた俺は、アリスが脱いだばかりの服を着させられ、更に化粧までさせられる羽目に。下着まで着けなくていいのが唯一の救いだ……
「さぁ、お化粧終わったわ、ダーリン」
アリスに鏡を渡される。俺は勇気を出して、鏡を覗き込んで見た。
「嘘だろ……」
そこに写るのは一人の凛々しい少女。両性的な凛々しい顔立ちに、つぶらな瞳。整った鼻と口。頭のカチューシャが、可愛らしさを引き立てる。
……って危ねぇ、これ俺だぞ!! 香霖堂のあの人みてぇになる所だった!!
「あんま私に似てないけど、流石ダーリンね!」
似てたら多分自殺してたわ……
そんなこんなで、囮作戦は開始。如何にもアリスの様に振舞い、人形や本を抱えて森を歩く。とりあえず、二人のストーカーの姿は全く見えないし、気配も感じない。
ふと突然誰かの視線を感じ、振り向いた。そこには誰もいない。きっとこれがアリスの感じたストーカーなのだろう。
森を歩いてるとこれが何度も感じた。間違いない、確かにアイツは付けられていた。後はアイツが自分で捕まえられるかどうかだ。
もう既に三十分は歩いた。アリスはどうしたのか? そう気になってアリスの家に引き返して連絡を取ろうとしたその時だった。
「とうとう捕まえたわ!!」
森に響くアリスの声。俺は急いで声がする場所へと向かった。
「お前は……烏!?」
「あ、あややや……」
何してんだよ……
「お前、アリスなんかをストーキングしてたのか? 仕事はどうした!?」
「その声……もしかして飛脚のお兄さん!? まさか、目覚めたのですか!? これは一大スクープです!!!」
「ちげぇよ、書かせねぇよ」
「とにかく、私の家で事情を聞かせて貰うわ」
「あやぁ…………」
こうして、ストーカーの捕縛に成功した俺達。烏から事情を聞く事に。
「実はですね、今里で、アリスさんが大人気なんですよ……」
「私が?」
「いつも飛脚さんを付け回しているので、多くの人の眼に入り、その一途さと可憐さからファンが急増中でして……」
黙っていりゃあ可愛いもんな。
「人里の男性方百人にアンケートしてみたのですが、なんと九十五人の方が、アリスさんを好きと答えたんですよ~」
いつの間に取ってたんだよアンケート。俺にも取れよ。大嫌いって答えてやるからよ。
「好きな理由としては『あのスカートの中で死にたい』『好きな人を想う気持ちを容赦なく叩きおって○してやりたい』『上海様と結婚したい』『ストーキングされて襲われたい』『アタイ最強』等々ですね」
クズばっかじゃねぇか。
しかも最後何だよ、俺の知る限り男じゃねぇよ。
「という訳なので、飛脚さんの次はアリスさんの写真集でも発売して、大儲けしようかなと」
こいつゲスだな。
「勝手に写真集なんて……恥ずかしいじゃないの♥」
どうして地味に嬉しそうなんだテメェは。
「安心して下さい、ちゃんとお兄さんの女装も三十枚位撮ってありますから」
「ア、アシガスベッテカメラノウエニ!」
「ちょ、私の商売道具! 止めてェェッ!!!」
射命丸文、資金不足により新聞発行を断念。
無職になりました。
※仕事はモミーとこいしが二人で協力して終わらせました。二人ともとってもいい子ですね、変だけど。