自由の向こう側   作:雲龍紙

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新章、開始です。
ハーメルンに移すにあたって最大のネックがこの先です。
胃が痛い……。
全ての原作をタグに付けることは不可能です。ハイ。

この先は『レギオス』(『エレメンタル・ジェレイド』+『モノクローム・ファクター』+『翼の帰る処』)×(『神喰』+『アルトネリコ』+『歌劇』)×(『黄昏色の詠使い』+『氷結鏡界のエデン』)in『進撃の巨人』な感じです。
もはや原作を列挙すると、逆に意味が解りません。

……大丈夫です。一度には出ませんから。



すまう風招きの剣 ~序~
【前奏:hypes Loar】


 

 ―――― 共に来ますか。

 

 そう訊かれて、あの日の自分は差し出された手を取った。

 

 その人は、貧民街の端で死に掛けていた孤児の自分を引き取り、育ててくれた恩人だった。

 その人自身はとんでもない虚弱体質で、元気でいる方が珍しい人だった。どうやらそれで同情して拾ってくれたらしい。

 その人の為に、強くなろうと思った。強くなければ、何も守れないと知っていたから。

 彼自身はお世辞にも強いとは言えない――というか、弱いとすら言えないくらい脆弱だったから、自分が彼を守ろうと思った。

 

 彼が【王】になってしばらくして、彼を【王】に選んだ【天剣】が自分に問いかけた。

 

 ―――― 何の為に、強くなりたいのか、と。

 

 護る為に。

 一言で応えれば、【天剣】は軽く満足そうに微笑んだ。

 

 ―――― お前に、覚悟があるのなら。

 

 そう言われて、自分はあの時、躊躇いなく『彼』の手を掴んだ。

 

 

 

 ―――― それ なのに。

 

 

 

 あの時、どうして自分は2人の傍にいなかったのか。

 

 駆け付けて、扉を力任せに抉じ開けた先の光景が、脳裏に甦る。

 白い部屋に、赤と黒。

 床に広がった漆黒の髪と、紅い水溜まり。

 白を基調とした部屋で、その鮮やかな色彩の対比が、嫌でも目についた。

 

 

 

 ―――たぶん、正気に戻ったのは、宰相の声が届いたからだ。

 

 

「――様っ!! 陛下は無事です! 猊下もまだ生きておられます!!」

 

 

 気が付けば、周囲には倒れて呻きながら蹲っている叛逆者たちが10人ほどいた。

 うち、半数は【降魔】だ。もっとも、【降魔】で生きている者はいなかったが。どうやら処分してしまったらしい。

 ただ、これ以上、部屋を汚さないようにとは配慮していたのかもしれない。流血は殆どしていなかった。

 

 くるり、と視線を巡らせる。

 

 真っ青な顔で、それでも隣に立って自分の腕を掴んでいる宰相に、思わず瞬いた。自分でも、これは客観的に見て、相当にかなり勇敢な行動だと思うのだが。誰も正気を失った獣に、自分から近づこうとは思わないだろう。

 

 だが、ダメだ。

 

 

「――すみません。でも、【核石】が無いんです」

 

 その言葉に宰相も息を呑む。

 当たり前だ。この状況の中で【天剣】の【核石】が奪われた、など。都市の滅亡を宣告されたに等しい。

 

「最低限の権限移譲に必要な措置はすぐに全部やります。だから、行かせて下さい」

 

 

 宰相をじっと見詰める。

 彼は微かに息を吐くと、そっと腕を離して目を伏せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レギオス新暦276年。

 

 光浄都市ヴォルフシュテインにて『血ノ謡』によるテロが発生。

 【天剣】は当時臥せっていた【王】を庇い、【核石】を奪われ瀕死状態に陥る。

 駆け付けた【剣守】により、テロリストは捕縛されたが一部の叛逆者は逃亡に成功。

 

 【剣守】は必要な措置をすべて終えると、自ら叛逆者を追って自律型移動都市(レ ギ オ ス)領域より出奔した。

 

 

 

 




サブタイトル訳:『風の(おこ)り』

……この章、長いんだよなぁ。
というのも、当時、いつもの長文化の癖が発動した為、予定の倍の長さになったのですよ。途中で切って分ければよかった、と後々後悔したので、こちらでは一度真ん中あたりで分ける予定。
あ、いや。違う。たぶん3つですね!!


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