Yem ole , saria quo ciel lef sic
夢、螺旋の彼方を降り
Yem orza , saria quo mofie olte
栄、悲劇の頂へと昇る
xeoi loar besti torn-l-kele
夜の風は冷たく 鋭く
zeon lef kamyu da goen uc zarabel lef nazarie Ies
罪色の涙は 記憶の筐を錆びつかせ
yupa jes loar sis neckt univa-o-sis defea quo somel mibbya
もはや帰ることのない風は 遥かなる彼方へと消えていく
『――あなたの詠は、すこし不穏に感じますね』
ふわりと空から降りて来た小鳥は、ちょうど人の目線の高さで人の姿へと形を変えた。
『鳥の神』を迎えた【夜】は黎色に揺らめく眸を細め、僅かに口元に笑みを乗せる。それを受けて『鳥の神』も静かに微笑んだ。
『鳥の神』は、髪も睫毛も月のように白く、身に纏う衣服もすべて白い。だが白い衣服に縫い付けられた意匠には、カナギと共通のものが多く散りばめられている。それを見ればたとえ知り合いでなかったとしても、何らかのつながりはあるのだろう、と察せられる程度には似ている意匠だった。
それもその筈で、その意匠は彼らの民の女たちが総出で業の限りを尽くして作り上げているものである。実のところ、刺繍のない場所を探すほうが大変な代物でもあった。
それを知っている【夜】は、そういう民の心づくしを知っていて、それでもあっさりと見事な白い衣を地面につけて歩く『鳥の神』に、思わず小さく苦笑を零す。
「――あなたは、自分ではあまり謳わないね」
『カナギに言わせると、わたしは少し黙ったほうが良いようなのです。手慰みに絃を爪弾くことくらいはありますが……そういえば、あまり最近は謡っていませんね』
ご所望でしたら、一曲歌いますが?
にこやかにそう言われて、しかし【夜】は首を振った。
「そういうことなら、自分は遠慮する。正式なお祭りの日に行ってみるから、その時に聴かせて欲しいかな」
そうですか、と『鳥の神』は頷き、次いで僅かに首を傾げて見せた。その仕草は、本当に小鳥の仕草に似ている。
『ところで――あなた。実は【カムイ】の行方を知っていたりしませんか?』
「知らないよ、本当に。――どちらかというと、自分が気にしているのはヴォルフシュテイン卿のほうなんだ。――このままだと、いろいろ大変なことになる気がして」
『行き先が判っているぶん、手は打ちやすそうですが』
「うん。――【カムイ】の彼は基本的に無茶とは無縁でしょう?」
そう言ってから少し首を傾げ、違うかな、と呟く。
「必要な時には無茶もするけど、基本的に不要な時に無謀な無茶はしない、でしょう?」
『――ああ、なるほど。確かに。【カムイ】の彼は無茶など出来ませんね。主に体調的な理由で』
「だから、本当は【フェンリル】に手伝ってほしかったのだけど……」
どうしたものかな、と困ったような笑みと共に、【夜】は僅かに首を傾げてみせた。
本日はここまで。
とりあえず、ここで邂逅編は終了。と、同時に次への下準備。