東京喰種 (短編集)   作:サイレン

3 / 10
タイトルで分かるようにシリアスゼロのネタ100%です!
re2巻巻末四コマが面白すぎて、ネタに走ってみたくなりました。
キャラ崩壊
原作の雰囲気崩壊
1時間クオリティ
など、何でも受け止められる方のみ推奨です(笑)

ネタバレはないはずですが、一応2巻読んでからの方がいいかもしれません。

ではどうぞー!



あおぎり!

招待状

アヤトくんへ

 

今日の7時に、◯区のアジトの大広間に来て下さい。絶対来て下さい。じゃないとエトさんが迎えに行きます(物理)。お願いします。

あと、今日の任務はお休みだそうです。

 

ヒナミより

 

「………………はぁ」

 

いつも通り任務に向かうためヒナミの元に来たところ、このような置き手紙が用意されていた。当の本人は居らず、如何にも計画的な感じがする。そして、アヤトはそれに心当たりがあった。

 

今日は7月4日。アヤトの誕生日なのだ。

 

(なんか前からコソコソしてると思ったが、こういうことか……)

 

本当に幼い頃は誕生日に関心はあったのだが、父親がいなくなり、姉とも不仲になってからは殆ど無きに等しいものだった。『アオギリ』に来てからもそれは変わらず、今までこんなことはなかったのだが、恐らくヒナミの発案だろう。

 

(行かない選択肢はないな。物理とか書いてあるし……。せめて普通であってくれ)

 

アヤトが所属しているのは、凶悪な喰種組織『アオギリの樹』。普通など期待するだけ無駄だとは思うが、発案者がヒナミという『アオギリ』唯一の良心なら大丈夫な気もしなくはない。

溜め息を吐きそうなほど鬱屈な気分の中、とりあえず時間まで暇を潰しに出掛けるのであった。

 

 

 

 

「ここ、だよな?」

 

重い足取りでやって来たのは、招待状に指定されていた大広間の扉の前。誰かしらが待っているのかと思っていたがそんなことはなく、どうやら自分でこの扉を開けなければいけないようだ。

はっきり言って、いやはっきり言わなくてもなんとなく嫌なのだが、ここまで来て引くのは格好が付かない。まぁ最初から逃げ場など用意されていないのだから、来るしかないのだ。

深呼吸一つして、いざ把手に手を掛け開け放つ。

 

「……あ?」

 

中は予想に反して暗闇だった。しかも何のアクションも起こしてこない。こうまで静かだと、間違えていたのかと不安になる。

少し焦りが募ってきた頃、ライトが当てられた。

アヤトに、ではなく、いつの間にか用意されていたステージに。

 

「…………は?」

 

明かりに照らされたのは五人。

センターにヒナミ。

その両脇にエトとミザ。

更にその両脇にタタラとノロ。

その全員が全員、お揃いのポーズで高校の制服姿だった。

 

「……………………は?」

 

意味不明理解不能過ぎて言葉が出ない。ヤバい、胃が痛くなってきた。

アレは俗に言うコスプレというやつのだというのは分かる。しかも元ネタも分かる。それはつい最近ヒナミが見ていたからだ。

確かタイトルは、『涼宮ハ◯ヒの憂鬱』。

何処でアニメのDVD(そんなもの)を手に入れたのかとか、何故アニメなんて見てるのかとか些か疑問だったのだが、ここに来てエトの差し金だったのだと思い当たった。

 

どっちしろ訳が分からない。

 

そんなアヤトを置き去りに、(大分無理があるように見える)エトが叫ぶ。

 

「ミュージック、スタート!」

 

その掛け声と共に鳴り響くのは、ダンスで有名でもあるエンディング。そして予想通りというのか、舞台上のメンバーが踊り始めた。

 

「………………………………うめぇ」

 

キレッキレであった。しかもノロが一番上手いという衝撃の事実。あいつ何でも出来るなてか一体こいつらどんだけ練習したんだ……。ヤバい、胃が痛くなってきた。おかしい、誕生日なのにどんどん心労が溜まっていく。

 

「時間の果てまで♪」

 

エトがそんなこと歌い始めた怖い。

そもそもタタラが踊っている怖い。

ノロについてはもう何も言うまい。

あぁ、ヒナミがセンターにいると安心する。

 

「あ・そ・ぼう♪」

 

駄目だ。他が目に毒過ぎるのでヒナミしか見ないことにする。うん、ヒナミなら見れる。

 

「夢&夢 スキでしょ♪」

 

テーレーテッテレレテレレテッテ♪

 

……終わった。

 

「アヤトくん!」

『誕生日おめでとー!!!』

 

「…………………………………あ、あぁ。ありがとう……」

 

ヒナミの掛け声で部屋全体に明かりが灯り、いる限りの構成員がクラッカーを鳴らす。アヤトはいきなりで展開について行けなかったが、お礼だけは言えた。

 

こうして、アヤトの誕生日会(らしきもの)は開幕した。

 

 

 

 

「えへへ〜。どうだったアヤトくん! ダンス一杯練習したんだよ!」

「あ、あぁ。上手かったよ」

 

邪気のない笑顔で迫られては何も言えない。大人しくコーヒーを嗜みながら、与えられる歓迎を受け入れる。

 

(それにしてもヒナミのテンションが高いな……)

 

普段は大人しい、お淑やかなどの形容詞が似合うヒナミだが、今日に限ってはあり得ない位にハイテンションである。開幕ダンスの時から思っていたが、あんな羞恥プレイをヒナミが率先してやるなど何かおかしい。

そう思いヒナミの顔をよく見て気付いた。不自然に赤み掛かっている。

 

「お前、酔ってないか?」

「ふぇ? 酔ってなんからいよ〜」

「酔ってんじゃねぇか……」

 

持っているグラスに入っているのは血酒だった。きっとエトに騙されたんだろう。基本全てエトが悪い。

 

「おい、ヒナミ! 出番だぞ!」

「ナキさん! はーい」

「お、おい! ヒナミ!」

 

アヤトが止める間もなく、ヒナミはナキと共に何処かに行ってしまった。

 

大丈夫な気がしない。

 

(……もういいや。俺は流されよう)

 

この段階で色々と諦めたアヤトだった。

周りを見回すと、何かの準備が進められている。用意されていたステージでこれまた何かをやるらしい。

そのステージの最前列ともいえる場所にいるのは、我らが幹部のタタラ、エト、ノロ。ノロは超高性能なデジカメを三脚に立てセットしている。タタラとエトも手振れ補正のデジカメを構えている。

 

(一体何が起きるんだ?)

 

気になったアヤトは三人に近づき、この中で理性的そうな雰囲気がまだ残っているノロの側に寄った。

 

「…………」

 

無言でこちらを見るノロ。

懐をゴソゴソと漁り、手渡してきたのはデジカメ。何も言わずに受け取るアヤト。

部屋が再び暗くなり、ステージがライトアップされた。

静寂が場を包み、緊張感に満ちたその空間で舞台袖から現れたのは、白スーツにサングラス姿のナキと、コスプレ姿のままサングラスを掛けたヒナミ。

 

ナキ「ラ◯スンゴレライ♪」

ヒナミ「え? え? なんて?」

 

(………………は?)

 

本日何度目かのは?

アヤトだってテレビくらい見る。今のが最近流行っているお笑いコンビのネタというのも分かった。

 

だが……。

 

ーー寄りにもよってそっちがヒナミかッ⁉︎

 

「ラッスンゴ◯ライ♪説明してね♪」

「ちょっと待てちょっと待てお兄さん♪」

 

アヤト……唖然。

一心不乱にカメラを回すタタラエトノロ。

因みに、タタラとエトはヒナミしか映していない。

 

「スパイダーフラ◯シュロ◯リングサンダ◯♪」

「ちょちょちょっっと待て、うぉにさん♪」

 

ヒナミ、最早ノリノリである。

 

そして、アヤトはやっと気付いた。

 

ーーこれ、俺の誕生日会じゃなくて、ただのヒナミのステージじゃねぇか!

 

「スパイダ◯フラ◯シュロ◯リングサンダ◯♪」

「ちょちょちょちょちょっっっと待てうぉにさん♪」

 

(※あくまでイメージです)

 

【挿絵表示】

 

 

(ヒナミ……骨は拾ってやる)

 

エトが酒を呑ました理由がよく分かった。確かにこれは面白い。

アヤトもデジカメを回すことにした。

 

その後は、ヒナミの独壇場だった。

 

 

 

 

翌朝。

 

「やっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったやっちゃったどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……」

 

部屋の隅で体育座りで顔を青くしたり赤くしたりして冷や汗かいて激しく後悔しているヒナミの姿。それも仕方ないだろう。アレは一生分の恥をかいたというべき所業であった。しかも可哀想なことに記憶があるらしい。記録に残っていることも覚えていた。黒歴史確実だった。

それを少し空いたドアから覗いていたエトタタラノロアヤトの四人。全員で顔を見合わせ頷き合い懐からデジカメを取り出して、エトがドアをぶち開けた。

 

「きゃっ⁉︎ あ、う……みんな」

「せーのっ」

 

ポチッとな。

 

『ちょちょちょちょちょっっっと待てうぉにさん♪』

 

「嫌あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!⁉︎ やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎⁉︎」

 

ヒナミの絶叫が響き渡った。

 

凶悪な喰種組織『アオギリの樹』は、今日もなんだかんだで平和です。




なんて感じだったら超面白そうです(笑)
まぁ、今はダーク過ぎてヤバいですが……

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