魔法少女リリカルなのはSEED   作:☆saviour☆

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PHASE-3 目も眩む世界

 

地球。惑星全体のほとんどが青い海で包まれ、緑の大地には人が街を築いており、様々な生命が誕生する母なる星。

でも、そこは彼が、キラ・ヤマトが知っている地球ではなかった。

最初は、てっきり中立国オーブ国内のどこかだと思った。看板にはオーブの古い文字、日本語というものが使われていたし、綺麗な海に囲まれ、豊かな自然が残った

オーブを覚えていたためである。

しかし、知ってしまった。フェイト達が母に頼まれた研究材料とやらを探すためにこの『世界』に拠点を築いたらしく、「じゃあ、ここがオーブのどこなのかわからないから折角だし、ついて行ってしまおう」とキラは考え、一緒にその拠点に行かせてもらった時のことだ。

その拠点は街中にあるらしく、フェイトとアルフ、そしてキラは住宅街を抜け、街中を歩いて行った。

その最中、ここが日本という国であることを知った。

キラの知識に、地球にそのような国はなかった気がする。というかその国名は確か古い独立国の名であったはずだ。

急遽予定を変更、図書館なる場所に寄らせてもらい、この国の歴史についての書物を読んでみたところ、戦争なんてものはもう結構昔のこと、らしい。

試しに今度はネットカフェというお店に入り(お金はフェイトが母より貰った物を使用)、パソコンを使わせてもらった。驚いたのはまず、パソコンのスペックの低さだ。明らかに自分が使っていた物よりも遥かに差がある。

次に最近のニュースを調べたところ、紛争地域の国はあるものの、戦争なんてしておらず、しかも地球連合軍、Z.A.F.T、オーブの情報が一切載ってなかった。勿論、機動兵器のことも。

おまけに宇宙にはスペースコロニーなどあるはずもなく、今の段階ではロケットや衛星を宇宙へと打ち上げ、調査程度のことしかしてないことがわかった。

 

以上のことを踏まえて考えると、

ここはキラの住んでいた『世界』、C.E.ではない。

 

「………はあぁぁぁぁぁ…」

 

大きくため息をはく。

 

(うんまあ、薄々気付いてはいたよ。そう簡単には帰れないことくらいね)

 

ネットカフェから出て、青空を眺める。その青空は透き通るような綺麗な空の色をしていた。

 

(戦争のない、平和な世界か…)

 

戦争なんてなければ、自分の世界もこの街のように、平和で明るく、賑やかな世界だったのだろうか。

そう考えながらも、キラはフェイト達を待たせている向かいのファーストフード店へと足を運ぶ。

 

 

 

 

フェイトとアルフはキラがネットカフェというお店に入店している頃、二人はファーストフード店内で食事をしていた。1時間くらい前に昼食をとっているので小腹を満たすくらいの量だ。

 

「このハンバーガー、美味しいね〜」

 

アルフがハンバーガーを頬張りながら言った。言葉通り、アルフは美味しそうにハンバーガーを食べている。フェイトは食べ物ではなく、飲み物を飲んでいた。中身はオレンジジュース。特にお腹が空いていた訳ではないので、飲み物を注文したのだ。

 

「それにしても、キラくんの言っていたことって本当なのかな。ここがキラくんの『世界』じゃないかもしれないって話…」

 

確かそう言いだしたのは図書館を出た時だったと思う。

 

「そういえば、キラの知っている『世界』の歴史や地理がこの『世界』と全く違うんだっけ?」

 

半信半疑だけどとは言っていたけど…、とアルフはやはりハンバーガーを食べながら言う。

そう、キラがネットカフェに行ったのは最近のニュースを確かめ、本当に自分の『世界』ではないのか確認するためだった。

フェイトは向かいにあるネットカフェ店を眺める。

キラくんはこれからどうするのだろう…、フェイトはそんな風に思いながら、ネットカフェ店を眺める。ネットカフェ店にはなんだか落ち込んだサラリーマンやハチマキをつけた背中にリュックを背負っている太った人や人相の悪い青年、様々な人が入店していっては、帰っていく。キラはまだ出てきていない。

 

「………………………どうしたのかな」

 

さすがに遅いと心配してくる。様子を見に行ったほうがいいのだろうか。

なんて、考えていると、

 

「あっ、キラの奴出てきたね」

 

アルフがネットカフェ店の入り口を見ながら言う。フェイトもそっちを見ると確かにキラがいた。…その顔はなんだか落ち込んだような暗い顔だった。

キラはファーストフード店の窓からこちらを見るフェイト達を見つけたのか、フェイト達に微笑みかける。

そして、ゆっくりと歩いてくる。

キラはファーストフード店に入ると、すぐにフェイト達の席に近づき、空いている席に座る。

 

「遅くなってごめんね。フェイトちゃん、アルフさん」

「…結果はどうだったの?」

 

フェイトが尋ねると、キラは笑いながら言う。

 

「残念ながら、ここは僕の『世界』じゃなかったよ」

 

ほんと、まいったよ、と笑いながら言うキラの顔はフェイトには少し触れただけで壊れてしまいそうなガラスのように見えた。

 

 

 

 

「…ということで、雨風しのげて、寝ることができる場所がないのでお世話になります」

「うん」

「しょうがいないね〜」

 

『世界』が違えば当然、家もないのでキラはフェイト達の拠点である、遠見市市街地にあるマンションに住まうこととなった。

…何やら黄色いオーラに包まれているような感じだったが、フェイト曰く「念のためのエリアタイプの結界魔法」らしい。フェイトの母の研究のための仕事をするためにこのマンションを拠点にしたのに、念のため、というのが気になるが、追求はしなかった。

きっと用心深いのだろう、そう思うことにしたキラだった。

 

 

「それはそうと、さっそく出かけてくるね」

 

フェイトはそう言うと、三角状の一見、黄色にも見えなくはない金色のキーホルダーのような物を持ち、アルフを連れて玄関へと向かう。

 

「あれ、どこに行くの?」

 

辺りはもうすぐ太陽の光が届かなくなり、月の光が街を照らす時間帯、要は夜になるというのに、フェイト達が出かけることに疑問を抱く。

 

「心配しないで。母さんの研究材料を探しに行ってくるだけだから」

「キラはここで留守番をよろしくね」

 

アルフが手を振りながら、フェイトとともに外へと出て行く。

バタンっ!という扉の音が響き、キラは呆然と玄関の前に立っていた。

 

「…………………僕はどうすれば……」

 

適当にくつろいでいればいいんじゃね?と言うキラ(悪魔のような姿)と、住ませてもらうお礼に帰ってきた時にインスタント食品のオンパレードじゃなくて手作りの夕食を振舞ってあげるべきだよ!、と言うキラ(天使のような姿)が頭の中で言い争っていた。勝負の結果は天使キラの勝利。

 

「……よし」

 

気合を入れ、手作り料理をフェイト達にふるまうために、キラ・ヤマトは行動する。

というか、フェイト達を止めなくても良かったのかと今になってキラは思う。

 

 

 

「これでいいのか、な?」

 

ドサリっ、と今しがた購入してきた物を台所の上に並べる。

料理をするために、まずはコンビニという場所の雑誌コーナーでレシピ本を購入、そして、スーパーで材料を購入してきたのだ。

お金は今日、フェイトに渡された物を使った。

そしてキラはレシピ本を開き、あるページを見る。

 

「ハンバーグか…」

 

手作りと言えば、やはりハンバーグが定番だろう。多分。とりあえず、キラは牛乳と卵、パン粉に玉ねぎ、そして挽肉を用意し、レシピを見ながら行動に移る。

 

「えっと、まずは…」

 

そこからキラの行動はレシピ通りだった。玉ねぎをみじん切りにし、炒め、冷やす。そして、炒めた玉ねぎとパン粉、牛乳、溶き卵、こしょう、挽肉をボールの中に入れ、全体が均等になるように混ぜ合わせる。混ぜ合わせた後、ハンバーグの形を作り(この時、両手でキャッチボールをするように何度も投げ、ハンバーグ内の空気を抜いた)、油のひいて熱したフライパンでハンバーグを中火で焼く。焼いている間、素早くハンバーグにかけるソースを作った。さすがコーディネイターと言ったところか。キッチンにハンバーグのいい匂いが漂い、空腹のキラの腹を刺激した。

 

「おおおおお……」

 

初めてにしては上出来だろうハンバーグはとても美味しそうだった。

ピッー!、とハンバーグを焼く前に炊飯器で炊いておいた(使い方は説明書を見ながら準備した)米が炊けたという音が鳴った。

だが、炊けたという確認をした後、何か思いついたようにキラはすぐにスープの用意をする。

やはり洋食にあうスープといえばオニオンスープだろうか。

玉ねぎ、バターやコンソメ、こしょうの準備をし、もう一つのフライパンにバターを入れ、玉ねぎを入れて黄金色になるまで炒める。水を入れ、フツフツと煮立ってきたら、コンソメを入れ煮詰める。そしてこしょうで味を整えた。

 

「これでいいかな」

 

皿を3枚用意し、そこに焼いたハンバーグを2個ずつ盛り付け、そこに切ったキャベツを加える。そしてハンバーグに手作りのソースをかけ、オニオンスープをカップに注ぎ、茶碗に炊いた米を入れた。

 

「あとはテーブルに置いてフェイトちゃん達の帰りを待つだけか…」

 

用意するの早すぎたかな、と思いながらもキラはテーブルの上に三人分の料理を並べていく。

と。

 

「ただいま〜」

「キラ〜帰ったよ〜」

 

なんとちょうどいいタイミングでフェイト達が帰ってきた。

 

「留守番ありがとねって、うおッ!?なにこの豪華な料理!!美味しそう!!」

 

アルフが目をキラキラとさせながら漫画みたいにヨダレを垂らしていた。

 

「食べていいのかな、食べていいのかな!」

「ア、アルフ。ちょっと落ち着いて…」

「これで落ち着いていられる訳がないんだよフェイト!!」

「食べていいけど、まずは手を洗ってこようね」

「はい!洗ってきます!」

 

そう言ってアルフはダッシュで洗面所まで行った。

 

「フェイトも洗ってきなよ」

「あ…うん」

 

フェイトはそう言われ、洗面所へと行った。

 

「うおおおおお!!!美味しいよキラ!」

「本当だ。美味しいよ」

「ありがとう、アルフさん、フェイトちゃん」

 

やはり初めてにしては上出来、というか上出来すぎるハンバーグは美味しようでフェイトとアルフも美味しいそうに食べている。

 

(……平和だな…このままこんな日常が続けばいいのに)

 

キラはハンバーグを食べながら、そう思った

 

 

 

 

朝。

キラは朝早くから起き、朝食の準備を始めた。

朝食は意外とシンプルな目玉焼きに米、味噌汁だ。意外でもないか…?

卵をフライパンの上で割り、味付けでコショウを多少ふりかける。

その際、思うことがあった。

フェイトとアルフの仕事についてのことだった。

フェイトは母の仕事の手伝いとは言っていたが、妙である。

フェイトとアルフ、二人は母の話になると、何故か顔を暗くするし、仕事内容も話してはくれなかった。

追求しないつもりではいたが、気になってしまう。

 

「…………よし」

 

キラは何かを決意すると、朝食を持って、テーブルへと向かって行った。

…あ、キッチンに余ったトマト(何故かみじん切りにされてぐちゃぐちゃ)があったけど何に使うつもりだったのかしらん?

 

 

 

 

朝食を済ませた2時間後、フェイト達が出かける時だった。

 

「連れて行ってほしい!?」

「う、うん。ダメ、かな?」

 

キラの決めたことはフェイト達の仕事を手伝うことだった。フェイトの返事を待っていると何やら深く考え事をしているような表情していたが。

 

「……いいよ」

「フェイト!?」

 

フェイトが承諾した。

 

「ありがとう、フェイトちゃん」

 

そう言うと、キラは微笑む。

キラは別にこのマンションで留守番でもしていてもよかったのだが、フェイト達の手伝いをしてもいいのではないかと思ったのだ。

 

「じゃあ、キラくん。準備してきて」

「わかった」

 

キラはそう言うと、自分の部屋へと行く。持ち物は…

 

「特にないや」

 

キラはすぐにフェイト達のもとへと駆けて行った。

特にない、というよりそもそもキラの持ち物はフェイトから渡された服や買ってもらった数少ない服である。

 

(服のオンパレードだよ。せめてパソコンでもあれば…)

「じゃあ、キラくん。行くから私に捕まってて」

 

玄関から出た後、キラは言われたとおりにフェイトに捕まる。不思議と何故捕まるのかは疑問に思わなかった。

すると、フェイトは地面を蹴り、空を飛んだ。

 

「うおああああああああ!?」

 

死ぬかと思った。

 

 

 

 

スタッ、とフェイトとアルフ、そしてフェイトに捕まっているキラは地面に足をつけた。

 

「はぁ…はぁ…し、死ぬかと思った……」

「だ、大丈夫?」

 

フェイトが息を切らしているキラの背中をさすった。まさか、女の子にしがみつきながら、あるいは抱かれながら空を飛ぶことになるとは、とキラは思う。

そしてキラは背中をさすられながら、辺りを見回す。そこは公園だった。

 

「アルフ、結界を張って」

「りょーかい!」

 

何が始まるのだろうか…そう思ったキラはフェイトに聞こうとして…

 

「キラくんは下がっていて。危ないから」

 

えっ…?、とキラが言う前に、

ゴォッ!!!と、風が勢いよく吹いた。

 

「あった、ジュエルシード!!」

 

フェイトの方を見ると、そこにいたのは。

手が4本生えたライオンのような動物。

 

「なん、だよ…あれ…」

 

見たことのない生物にキラは恐怖する。

だが、フェイトは何の焦りも見せず、ただ呟く。

 

「バルディッシュ」

 

その直後だった。フェイトの服が光り、若干露出の高い黒装束へと変わり、キラが以前見た黒い斧を持っていたのは。

 

「フェイト、ちゃん…?」

 

 

直後に、

 

バチンッッッ!!!という電撃がはしり、

フェイトはそれと同時に持っていた得物で、

化け物を斬り裂いた。




今回は平和な日常と、「ここで意外性、そして凄さをアピールするために家庭的キラ・ヤマトを書きたいな!」なんて思いながら書いた話でございました。

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