魔法少女リリカルなのはSEED   作:☆saviour☆

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PHASE-8 流れ行く時間 -River-

 

「日が眩しいな〜」

 

なんて呟きながら、茶髪の少年、キラ・ヤマトはのんびりと海鳴市の街中を歩いていた。

理由としてはジュエルシードの捜索が目的だ。これはキラの恩人でもある、金髪の少女、フェイト・テスタロッサとその狼使い魔アルフに頼まれたからである。

ちなみに、ジュエルシードの捜索は三人とも一人である一定の範囲を捜索することにしている。そうすることで、捜索範囲を三人で行動するよりも広げることができると同時に、ジュエルシードを見つけ、確保する数が増えるというものだ。

とは言え、キラだけは未だに探索魔法なるものは覚えてはいるものの、使いこなせているとまではいってない。故にジュエルシードが発生させている魔力波長、いわゆる魔力の波を感知することはできるが、それがどこにあるのか、具体的な位置までは確認できない。というより、ジュエルシードのある場所は『方向』でしかわからないのだ。

なので、位置特定のできないキラはしぶしぶと街中を約2時間近く歩いているのである。

まぁ、世の中便利にできているわけではないようで、ジュエルシードを含む指定遺失物(ロストロギア)類を探索魔法で探したとしても完全な位置を特定することはできない。あくまで“存在する範囲”だけだ。

 

(あ〜なかなか見つからないな〜)

 

流石に歩き疲れてきたようだ。こんなに歩いたのだから、ジュエルシードもそろそろ見つかってもいいだろ、なんてキラは思い始めてきたが、こんな街中で白昼堂々とジュエルシードが発動し、騒動が起きても困ることに気づき、気を引き締め、探索に集中する。というのも、キラは結界がはれないためだ。

 

(ほんと、魔導師見習いも楽じゃないよ…)

 

と、この心の中で愚痴りながら、キラは探索を続けたのだった。

 

 

 

 

綺麗な金髪をなびかせながら、少女、フェイト・テスタロッサは街中を歩いていた。

フェイトはジュエルシードの反応を感知し、その場所を特定するために、感知しやすい場所を探しているのである。最初に感知したジュエルシードの魔力波長はキラが探す、ということでここ、海鳴市の街中をフェイトとキラが。

海鳴市の外をアルフが捜索中である。

とりあえず、フェイトはキラが向かった方角とは反対の方向へ歩いていた。その途中のことである。フェイトは横断歩道で信号機が赤から青へと変わるのを待っていた。

その時だった。フェイトの反対側の歩道にはベビーカーを押す母親とその息子と思われる少年が仲良く話しているのが見えた。

少年と母親は楽しそうに、幸せそうに会話をしていた。…内容は聞き取ることはできなかった。でも、きっと、『今日の夕食はオムライスがいいな』だとか『それは一昨日も食べたでしょ?』とか言い合っているのだろう。それを見ていたフェイトは不意にも、昔のことを思い出してしまった(・・・・・・・・・)

もうどれくらい前のことかもよく覚えていなかったが、母がクッキーを焼いてくれたことを思い出した。

 

(あの時のクッキー…とても美味しかったな…)

 

フェイトは懐かしそうに、けれど悲しい顔をしながら、横断歩道を渡って行った。

 

 

 

 

『さぁーて。そっちはどう?見つかった?』

 

太陽の光がビルで隠されてしまい、昼間なので電気系統も光を発していないため、真っ暗な闇に染まっている路地裏の奥でキラはいた。

キラの視界には“ストライク”の通信機能である空間投影モニターに映し出されたアルフの姿があった。

 

「残念だけど、やっぱりジュエルシードは見つからなかったよ」

 

ひとまずキラは捜索結果の報告をする。“ストライク”の索敵レーダー、もとい、探索レーダーを見れば、南の方角を矢印が指している。これはジュエルシードの魔力波長の反応が南の方角にあるということだ。

…ちなみに先程までは東の方角に矢印があった。キラは、はぁ、とため息をつくと、

 

「僕はまだ時間がかかりそうだよ。帰りは夜になるかもしれないけど、大丈夫かな?」

 

と、アルフに伝えた。

アルフは少し考えるような仕草をした後、キラにこう言った。

 

『…あたしとフェイトがジュエルシードを見つけたら手伝いに行こうか?』

「いや、でもアルフさん達はその頃には疲れているだろうし、悪いよ」

『いいって!フェイトはどうだか知らないけど、少なくともあたしの方はジュエルシードなんて見つかりそうにないからね』

 

どうやらジュエルシード探索は難航しているようだ。まあ、発動前のジュエルシードの魔力波長は意外と微量のようで感知するのは難しいのだ。その上、詳しい位置ではなく、ある程度位置までしか確認できない。無理もないだろう。

そもそもキラが見つけたジュエルシードの反応はフェイトの補助があったからこそである。

 

『まあ、一個は確実にレーダーに捉えることはできたんだ。頑張ってよ?フナムシ(・・・・)

「うん、頑張って早めに見つけてみせるよ。それとフナムシ呼ばわりはやめて」

『あ、そうだ。もし見つけたジュエルシードが発動してしまったら、焦らずすぐにあたしかフェイトに連絡しなよ?フナムシ』

「わかりました。あとフナムシはやめて」

『じゃ、あたしはまたこっちを探索しておくから、終わったらそっちを手伝いに行くよ、フナムシ』

「だからフナムシはやめ」

『んじゃーね』

 

ブチッ、と。

 

強引に切られた。はぁ、と再びため息をつく。

実は5日前の、模擬戦終了後の風呂場騒動の後、キラはアルフから“フナムシ”と呼ばれてしまうようになっていた。原因は明らかにわかる。それはキラがフェイトの生まれたままの姿(要は裸)を見てしまったためである。アルフに殴り飛ばされた後、キラは必死に弁解したものの、フェイトは顔を背きながらも許してもらったが、アルフには終始睨まれたままだったが。故にアルフは平静を保っているようではあるが、実はめちゃくちゃ怒っているのである。しかも先に前述した通り5日間。

 

「やっぱり、許してもらえないだろうなぁ」

 

どんなに謝ってもフェイトを泣かしてしまった以上、そう簡単には許してもらえない。キラは覚悟を決め、フナムシ呼ばわりに耐えることを決意した。

 

それはそうと。

 

キラは暗闇の路地裏から抜け出すと、眩しくて凝視できない太陽を見る。眩しさで目が半開きになってしまうが、空が雲一つない青空が広がっているのを確認できた。

 

ーーー心に雲がかかっている自分とは大違いだ。

 

なんて、キラは厨二チックな考えを振り払うかのように顔を横に振り、気を引き締め直して、ジュエルシードの探索を開始した。

 

 

そして、それから日が沈み始めた頃。

 

「………僕は頑張った…頑張ったんだよ!でも仕方ないじゃないですか!僕はまだ魔法なんて自由自在に操ることはできないんだから!でも、それでも僕はやれるだけのことをやったんだよ!」

「あ、え、うん。あの、わかったから少し落ち着いて…」

 

フェイトが暴走気味のキラをなだめる。

結局、キラは約5時間ほどジュエルシードを探したものの、反応のあるジュエルシードが見つかることはなかった。レーダーの通りに歩を進めても、レーダーの矢印は気付けば北を指したり、南を指したりとあやふやだったためである。

しかし、それでも何の成果もあげることができなかったのはキラの力不足が招いた結果と言えよう。

 

「…フェイトちゃんはこんな役に立たない僕を許してくれるの?」

「…っ」

 

キラのその言葉に、フェイトは一瞬、悲しげな目つきを見せたが、すぐに笑顔を浮かべると、

 

「…それでも、私達の事を手伝ってくれるキラくんのこと、頼りにしてるからね」

 

と、言った。

 

「まあ、あたしは5日前のことから許してないけど………でもさ、キラのこと、信頼してるよ」

 

アルフも続けて言った。

正直、キラがフェイトとアルフに関わった期間は一ヶ月近くしか経っていない。それでも信頼してくれているのというのは今のキラにとってどんなに嬉しいことか。

 

「…うんっ、ありがとう二人とも」

 

少し涙を流しそうになるのを堪えつつ、キラは笑顔でお礼をした。

 

「………さて。こんなところでドラマなんてやってないで、さっさとジュエルシード見つけて帰るよ、フェイト、キラ」

「うん」

「ごめんね、迷惑かけて」

「いいって!どうせあたし達もジュエルシード、見つけられなかったしね」

 

結局のところ、フェイトとアルフはジュエルシードの反応を感知することはできなかった。故に現状、確保することのできるジュエルシードはただ一つ、キラが探していたものだけだ。

 

「さぁ、行くよ!」

 

アルフの掛け声とともに、キラとフェイトは頷き、彼、彼女らは闇に染まりつつある街の上空へと飛び立った。

 

 

 

 

同時刻。ある一人の少女は“それ”の魔力波長を感知した。

 

(これは…微弱だけど、これは確かにジュエルシードの反応(・・・・・・・・・・)…)

 

少女はすぐに我が家を目指して走っていく。家にもう帰ってきているであろう母親に、事情を話し、説得しなければならない。

…勿論、嘘の事情をするつもりである。なにせ、“魔法”のことなど、話すことはできないのだから。

 

少女は家に帰るとすぐに着替え、母親に、『友達の家で勉強をしてくる』と、時間的に結構無理な事情を話した。母親は少し不愉快そうにムッとしたが、笑顔を作り、夕飯までには帰るということで外出の許可をくれた。

 

(ごめんなさいってあとで謝らなきゃ…)

 

事実を隠すのは気分が悪いな…っと

罪悪感に駆られながらも、少女はジュエルシードの反応がある場所を目指して走る。

 

(綺麗な金髪に綺麗な赤い瞳…あの黒いマントを羽織った女の子も…気づいてるのかな)

 

少女は、、、

赤く丸い宝石を手に、ただ必死に走っていった。

 

 

 

 

(夜の街って案外綺麗…少し肌寒いけど)

 

海鳴市市街地にあるビルの屋上から、キラ、フェイト、アルフの三人は闇に抗うかのように光る街を見下ろしていた。

 

「どんどん反応が強くなってる…発動寸前かもしれないよ」

 

アルフが警戒染みた言葉を発する。確かにジュエルシードの魔力波長の反応は昼間より高くなっているのを感じた。

 

「でも、どこにあるかわからないよ」

 

キラの探索レーダーは今は北を指していた。それは“北の方角”にジュエルシードがある、ということだけで、どの位置にあるかはわからない。

 

「まって…私がもう少し頑張って範囲を絞るから。バルディッシュ、探して、青の輝きを」

 

フェイトがそう言って、探索魔法を行使する。

5分くらいたっただろうか。フェイトが目を開き、また疲れたかのように顔には汗を流していた。

 

「ふぅ…魔力切れ…か。弱いな…私…」

「でも、フェイトのおかげでだいぶ範囲は絞り込めたよ!」

「…どうやらほとんど街の中心部辺りにあるみたいだね」

「中心部か…」

 

距離からすれば、歩きならば多少時間はかかるかもしれないが、空を飛べる自分達にとって大したことはない。さっさと行って、ジュエルシードを封印してしまえば、それだけで今日の仕事はとりあえず終わる。それに。

 

「もうある程度の範囲はわかってるんだ。魔力が回復次第、魔力を撃ち込んでジュエルシードを強制発動させるよ」

 

と、フェイトが提案した。そうすることで、わざわざ慎重に探すことをしないで済むし、何より早急に得られる可能性があるからだ。

しかし、問題があった。

 

「…もしかしたら、またあの白い服の魔導師が現れるかもしれない」

 

白い服の魔導師。茶髪の髪を二つに束ねツインテールにしており、赤く、丸い宝石が目立つ杖を持った少女。

前回、見たときはフェイトが相手にしており、キラはチラリと見ただけなので、鮮明には覚えていない。

 

「大丈夫。例え来たとしても、あたしがブチのめしちゃる!だから、フェイト。フェイトはフェイトのやることをやっちゃって!」

「うん、僕もフェイトちゃんを守るから…フェイトちゃんは気にせず、ジュエルシードだけに集中して」

 

アルフとキラの言葉を聞き、フェイトは自然と笑顔になり、

 

「アルフ、キラくん。ありがとう。私、頑張るから…」

 

と言った。

それを聞いたアルフとキラはコクッと頷いた。

 

「じゃあ、行くよ」

 

フェイトの合図とともに、三人はジュエルシードがあると思われる街の中心部へと飛び立って行った。

 

…既に午後7時過ぎとなった時のことである。

 

 

 

 

時刻はもう午後の7時半…19時30分頃。

フェイトの魔力はほとんど回復し、おまけに街の中心部にあたるビルの屋上で立っていた。

 

「二人とも、準備いい?」

 

フェイトは背後に立つキラと狼姿のアルフに問う。

 

「僕はいいよ」

「…あ、待った。それ、あたしがやる」

 

アルフがそう言った。

 

「大丈夫?結構疲れるよ…」

 

それはフェイトの言った通りだ。ジュエルシードが存在する範囲を最小限に絞ったものの、必ずある、という位置までは特定できていない。そんな状況でジュエルシードに魔力流を撃ち込み、強制発動させるとなると、使用する魔法はただ一つ。広域魔法だ。広域魔法はその名の通り、広い範囲に魔法を発動させることができる、いわば複数の場所に爆弾を仕掛けて、同時に爆発させる、というような感じだ。

当然ながら、広域魔法は“一度に複数の場所に攻撃を仕掛けることができる”故に、通常の攻撃魔法、防御魔法などと違って魔力を大幅に減少させてしまう。

しかしアルフは余裕を持った笑みで答える。

 

「このあたしを、一体誰の使い魔だと?」

 

アルフがそう言うと、フェイトは「じゃあ、お願い」と言って、アルフに任せる。

 

「そんじゃ………」

 

アルフがそう呟き、魔法陣を展開、魔力を圧縮して固める。そして。

その圧縮した魔力は、

 

「ウオオオオオオオオオオオオッッッ!!」

 

という、アルフの咆哮とともに解き放たれる。

オレンジ色の魔力は闇夜の天を貫き、稲妻を発生させた。

 

 

 

 

少女は雷鳴が街の空で轟く音を聞いた。

大きく、街中に響いていた。

 

(これって…)

『(まさか、こんな街中でジュエルシードを強制発動させるつもりなのかっ!?)』

 

最近できた魔導師の師匠であるユーノ・スクライアが念話で話しかけてきた。口調からして明らかに驚いている。

と、突然、街から人の気配が一斉に消え、自分が魔力の壁に囲まれた感覚に襲われた。

恐らく、ユーノが街の人々を巻き込ませないために広域結界をはったのだろう。

さて、先程の稲妻があの金髪の少女のものだとしたら。

今の一撃でジュエルシードが発動したのなら。

少女の取るべき行動は一つ。

 

「レイジングハート…お願いっ!」

 

直後に。

少女の手の中にあった赤の宝石は、その姿を変える。

 

 

 

 

「…結界…!」

「……あの子かな」

 

フェイトが自分達のいる範囲を結界で閉じ込められたことに気付き、キラはその結界が以前見た“白い服の女の子”によるものなのだと推測した。

ドゴンッッッ!!、と稲妻が街の十字路の中心に落ちた瞬間だった。

何かが波打つ音が微かに聞こえた直後に、まるで水から浮き出てきたかのようにコンクリートからジュエルシードが現れた。

 

「見つけた…」

「あっちも気付いてる……フェイト!キラ!」

 

アルフの叫び声を聞いたフェイトは

 

「バルディッシュ!」

 

愛機の名を呼び、ジュエルシードを封印するための準備をする。

 

『set up.Grave form.Get set』

 

バルディッシュが主の言葉に応え、返事をする。魔法陣が展開され、封印の準備が整った。

 

ーーー恐らく、向こうも同じ…

 

『Spark Smasher』

 

直後に、ジュエルシードは金色と桜色の魔力砲に包まれた。

 

「ジュエルシード……………っ!」

 

その二つの魔力はジュエルシードを完全に抑え込み…

 

「封印…っ!!」

 

ゴウッッッ!!!!、という音ともに、青の輝きはその力を封じられたのだった。

 

 

 

 

石が、ジュエルシードが封印された

ことを確認した少女は、電灯の上に降り立った黒いマントを羽織る少女の近寄るために駆けていく。

しかし、近くに寄った、というには少し遠いかもしれない。それでも声は充分に届く距離だった。

 

少女は知りたかった。

 

同じ目的がある同士だから、ぶつかり合うのは仕方のないことなのかもしれない。

それでも少女は知りたかった。

 

ーーーどうして、そんなに………

寂しい目をしてるのか

 

だから、少女は。

 

「こないだは自己紹介できなかったけど……………」

 

そして告げる。自分の存在を示すために。彼女と話し合うために。彼女とわかりあうために。

 

「私、なのは………高町なのは。私立聖洋大付属小学校三年生」

 

 




重大なミスを犯したことに気付いてタイトル変更

最悪や…

てかなんとなくキラが女々しいような

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