IS ~THE BLUE DESTINY~ 作:ライスバーガー
戦争では相手の顔を見てはいけない。
戦闘機であろうがMSであろうが変わらず、ユウがACEと呼ばれる所以の一つだが、相手がISであればその願いは敵わない。
大型のバイザーを持つ銀の福音が特殊なのであって現行の第二、第三世代機、最新の第四世代機であっても基本的な構造として顔全体を覆い表情が分からない機体は少ない。
ISがファッションとして扱われる理由とも言える見た目の優美さを考えれば致し方ないとも言える。
しかし、相手がゴーレムであれば──。
LOCK ON 狙いは一瞬、躊躇う素振りも見せずにビームライフルの引き金を引く。
迸った閃光がゴーレムの頭部に命中、光を散らす中、左手に別途展開したマシンガンの弾丸をバラ撒く。
「なっ!?」
警告なしに飛来したビーム光にセシリアは言葉を失う。
ブリリアント・クリアランスによって接近してくる死神の存在には気づいていたが、身をもって経験した破格の攻撃力が頭部に命中。自分が撃たれる側であったらどうなったかを想像さえしたくない。
≪そこの金髪、邪魔だよ≫
「篠ノ之博士!?」
蒼い死神がいるのだから声の主がこの場を見ていても不思議はないが、愛機を通して直接通信が入るとは思っていなかった。
その言葉にはこの空域から離れろ、逃げろとの意味が含まれていると聞き手として理解するが鵜呑みには出来ない。
激しい弾雨に晒されたゴーレムから距離をとりつつも空域から逃げ出そうとはしない。
≪聞こえなかったのかい?≫
「これは私が売られた喧嘩ですわ、そちらが後から乱入しているのではありませんか?」
≪……巻き込まれたいならご自由に≫
言葉が遠のき、改めて視線をゴーレムに向ければ所々破損は見られるが健在だ。
卒倒しておかしくない攻撃を頭に受け、不規則に並んだセンサーレンズに欠如は見られるが未だ観察する視線は変わらず致命的なダメージと言う程ではなく、二機のブルーを視界に収め睨めつける視線に相変わらず温度はない。
「どちらも化物ですわね」
呟いた自分が小さく笑みを浮かべているとは気付いていない。
ISと出会い大空を飛ぶ喜びはIS乗りが等しく覚える快感だが、ISと言う無限に近しい力を全力で使える機会はそう巡ってこない。
代表候補生として、IS乗りとして、一人の人間として、越えるべき壁が目の前にあり用いて良い力が自分の手にある。その状況は例え戦闘狂でなくとも喜びを感じずにいられなかった。
ゴーレムと対峙しつつもブルーティアーズの反応が一定距離で立ち止まっている事をユウは確認する。
同じブルーでもブルーディスティニーは時と場合によって目立つべきか否か異なるが今回のように極秘裏に行われる戦闘に関しては極力目立たないに越したことはない。
が、後方にビット兵器を搭載し遠距離戦に特化した機体がいる現状が如何に心強いかは言うまでもない。援護に徹した後方機は敵にとって厄介の代名詞で味方にとってこの上なく頼もしい。
但し、これはセシリアが敵対しない前提の上に成り立っているが、この状況下で束とユウに対し敵対する意味があるとは思えない。
だからこそ、ユウは目の前の倒すべき対象に集中出来る。
「……デカい、な」
センサー越しにではなく改めて間近でゴーレムを視認してその大きさに圧倒される。
特にISはコックピットではなく自分自身に装着しているパワードスーツだ。MSと違い自分の視点がそのまま戦場の光景を表している。
世の中には大型の戦車や装甲列車のように巨大さを売りにする兵器も存在するが、人型で五メートルを越える兵器は少なくともこの世界には存在しない。
いや、目の前に存在しているのだから、存在していなかったと過去形にすべきだろう。
ISコアと言う出力源を使っていない為に大きさの戒めから解き放たれたとも言えるゴーレムは
目の前の光景はMAに正面から挑むMSと形容しても良い。それが如何に無謀かは宇宙世紀を知る者からすれば語るまでもない。
一言でMAと言っても種類は豊富で拠点防衛を主目的とした大型で局地戦に特化したタイプや高い機動力と攻撃力を有した強襲型と大きく二種類に分類される。
前者で言えばビグ・ザムのような規格外の代名詞であり単機で挑むのは非常に難しい存在だが、後者はビグロやザクレロに分類され圧倒的な戦闘力ではあるが状況次第で少数部隊、或いは単機でも挑める存在だ。どちらかと言えばゴーレムは後者に該当する。
中にはサイコガンダムやアプサラスと言った様々な状況下で運用可能なMAも存在するが今回の戦いからは除外して考えていいだろう。
「来るか」
新しく現れたブルーを敵と認識したゴーレムの両腕から極太のエネルギーが放たれる。
マシンガンを格納、ビームライフルを握り締め飛来するエネルギーを掻い潜り、引き金を絞る。迎え撃つブルーディスティニーから放たれたのは同じく二射。
空気を揺らす高出力が共に太く長い右腕に命中。スターライトMkⅢを上回る高火力のエネルギーが装甲に歪を作り空中で押し返す。
ハイパーセンサーが損傷状態をすぐに修正に入るナノスキン装甲を捉え舌打ちしたくなる衝動を抑えながら互いに三射目の姿勢に入る。
射撃は同時、両者から放たれた二つの光の奔流がぶつかり合い夜空に眩い閃光を散らす。
昼と見間違わんばかりの煌々とした輝きが一瞬だけ三機を白く染め上げ二つのエネルギーが互いを喰い尽くし相殺する。
単純な攻撃力だけで見るならビームライフルが僅かに上回るがエネルギー量で言えばゴーレムのエネルギー砲の方が上だ。
結果で言えば相殺し互角に見えるが実際に行われたエネルギーの攻防はブルーの放ったビームをゴーレムのエネルギーが力技で押し包み弾けた形。
視界を一瞬白く焼いた閃光の先、相対していたゴーレムが選んだ次の攻撃手段は自分自身を一発の弾丸とする突撃。
文字通り各部スラスターを爆発させて生み出した超加速をもって一気に距離を詰め接近、対するブルーは射撃体勢から無理矢理防御姿勢に移行してビームライフルを横倒しに正面から迎え打つ。
頭から突っ込んできた重たい衝撃、重く硬く大きく強い、単純だからこそ効果的な突貫と言う手段は防御を考える必要がなく恐怖を感じないゴーレムならではと言える。
だが、単純な力比べとなればブルーも負けている訳ではない。背面のブースターを吹かし拮抗した力は行き場を失くし空間そのものを揺らす。
ある程度離れた位置にいるセシリアの全身を揺さぶる程の衝撃の余波があったのだから二機の激突の凄まじさは言うまでもない。
「ぐっ!」
超至近距離にまで肉薄すれば大きさはそのまま武器になる。ユウの表情が歪み単純な力に押し込まれる。
軋む銃身にこれ以上無理をさせる訳にはいかないと力任せから脱却すべく取った手段は胸部バルカンの一斉射。
断続的な攻撃が与える衝撃で押し開いた空間に強引に身を押し込みゴーレムの頭部を蹴り上げる。
尚も近接戦闘が優位と踏んだかブルーを掴もうと巨大な腕を伸ばしたゴーレムから距離をとるべく照準を合わせる手間も惜しみビームライフルのトリガーを引く。
「至近弾を!」
再度距離を取り直したブルーのセンサーがゴーレムの状況を把握。
攻撃の手数こそ少ないがビームライフルの射撃を至近距離から受け全身の至る所が穿たれ損傷は幾つも出来ているが完全に装甲を抜けてはいない。何れも周囲の装甲同士が重なり合い修復作業に入るおまけ付きだ。
時間を掛ければ勝手に元に戻るのだから兵器としての優位性を疑うまでもない。更に疲労しらずの無人機で短期決戦に持ち込むには耐久力が高いときたものだ。
「……化物め」
お前が言うな、とも取れる発言ではあるが、短い攻防の中にユウがそれを実感するだけの要素が詰まっていた。
離れればビームライフルを呑み込む程の質量のビーム砲撃、接近すればバルカンを受け止めブルーと拮抗する力任せの戦法。
その上機械故の効率的に最短で行える攻撃手段を選択肢を選べるのだからたまったものではない。
状況的には一進一退、セシリアも感じた負けはしないが勝つのが難しいを体現している。
≪予想より手強いね≫
「基本性能も然ることながら感情がないと言うのは厄介だな」
≪そういうもんなの?≫
「あぁ」
人間であれば銃を撃たれれば痛みを感じる。次は受けないようにどうすればいいかと注意するのに神経を使う。
だが、痛みを感じず、他者の痛みを顧みないのであればそれは狂気以外何者でもない。
≪狙うなら関節部かな、腕の可動領域の為だと思うけど若干装甲が薄い。その為にはアレを抜けないとね≫
「分かっている」
装甲が薄いのであれば狙い目ではあるが、弱点をそのままにしておくはずがない。
太い腕の怪力とそこから放たれるビーム砲を掻い潜る必要があるのだ。束の言葉を最後まで聞くまでもなく注意を怠りはしない。
第二ラウンド開始前にビームライフルをシールドの内側に格納、選んだ武装はビームサーベル。
グレネードや有線式ミサイルであれば爆殺も可能かもしれないが弾数制限がある以上は外さない環境を先に作らなくてはならない。
まずは有効な一打を叩き出す為に射撃戦ではなく格闘戦を選択する。
背面のブースターを吹かしブルーが接近戦を挑めばゴーレムは二つの大きな腕を振り被り迎え撃つ。
狙いは腕の可動を確保している腋の関節部。振り下ろされる拳を桃色のサーベルで捌き、反対側から迫る拳をシールドで受け止める。
単純な殴り合いになってしまえばブルーの勝機は少なくなるが、再度頭上に振り上げられた拳が落とされる前にユウが薄く笑みを浮かべる。
夜空に輝いた星の光がゴーレムの振り上げられた右腕に直撃したからだ。
「結局こうなりますのね、援護させて頂きますわ」
武力介入をしたのはユウの方だが、戦いの行く末を見守っていたセシリアからすれば二機が敵対しているのは一目瞭然。
共に自分を攻撃した過去のある敵ではあるが、この状況下でどちらにつくかを間違う程に彼女は愚かではない。
或いはどちらにも付かないと言う選択肢もあったが、この場から離脱しなかった以上は戦わない道は選ばない。
スターライトMkⅢから放たれたレーザーがゴーレムの腕を押し上げワンテンポ遅れた隙をユウは見逃さない。
「貰った」
全身を跳ね上げビームサーベルの出力を上げる。ミサイルに次ぐ火力を誇る光の刃が唯一薄くなった装甲板を押し開きゴーレムの左肩を貫いた。
「貴方が私と言葉を交わすつもりがないのは重々承知、こちらは売られた喧嘩を買うだけですのでお気になさらず」
片腕の自由が失われたからと言って止まるゴーレムではないが、懐のブルーディスティニーを攻撃しようにも後方のブルーティアーズがそれを許さない。
堅牢な防御力を持つ前衛と高火力を持つ後衛、少数部隊の構図としてはこの上なく好条件が整った。
≪驚いた、こんな展開になるなんてね≫
「博士がやってきた結果だろう」
≪成程、そう考えると悪い気はしないね、それじゃ、状況は好転したと見ていいのかな?≫
「申し分ない」
右手にビームサーベル、左手にシールドを維持したまま再度格闘戦を挑むブルーディスティニー。守りに割く意識が少なくてすむのだから前衛としての仕事を果たすまでだ。
次の狙いは反対側の右腕の関節部、懐のブルーディスティニーを叩き落とそうと腕を振るおうとするが、今度の相手は一機ではない。
ダメージ効果が薄いとは言え衝撃力と貫通力で言えば申し分ないスターライトMkⅢから放たれる光がゴーレムの動き僅かずつではあるが鈍らせる。
中心的に狙うのは自由に動く右腕だが、それ以外にも頭部のセンサー部や脚部、関節がやられ動作が遅くなった左腕を狙い撃つのも忘れない。
完全に止める事が出来ないのは一対一の戦闘で思い知らされているが、今回はブルーディスティニーが前にいるのだ。
ビームサーベルとシールドの殴打による攻撃が加わったとなればゴーレムが存分に暴れられるはずもなかった。
既に片腕の可動領域が半減している以上は体重バランスからもコマ回転の攻撃が出来るとも思えない、この状況は完全な「チェックメイト」だ。
(蒼い死神……。一体何者なんですの、常に最善の射線軸があいている!)
後方からの射撃に関しては機体性能的にも得意としているセシリアだが、ただ撃てば良いわけではない。
IS乗りとして信頼の出来る欧州連合の演習であっても友軍の動きはここまで周囲を見渡せるものではない。
狙撃に徹底する為にスコープを覗いた姿勢のまま空中に愛機を固定したセシリアが驚嘆しているのはブルーディスティニーの気の配り方だ。そこに秘められた恐るべき現実に生唾を飲み込まざるえなかった。
懐に入り込んだからと言って関節部を簡単に狙い打てる訳ではない。
先程の一撃はブルーティアーズからの援護がゴーレムにとって完全に不意打ちであったが故の成功。
例え片腕が機能不全に陥ったとしても一対一であれば簡単に封殺出来る相手ではないが、今は背中を任せられる狙撃手がついている。
だからこそ正面から長く太い腕の攻撃を防ぎつつ攻撃のタイミングを探れている。
その間、格闘戦を行いながらも常に背後、セシリアからの射線軸が自分に優位に働く位置を取る事を忘れない。
ゴーレムのビーム砲が間違ってもセシリアに向かう事が無いよう腕をビームサーベルとシールドで受け止めつつも自分とゴーレムが重なり射線を殺す事の無いよう立ち回る。長い戦いの歴史の果て、鍛え抜かれた直感の成せる技。
戦乱を戦い続けた戦士達は友軍機からの誤射を避ける為にも無意識の中で後方へ意識を引き伸ばす事を忘れない。それは何も
このほぼ自然に行われたユウの行動は結果的にセシリアを束縛せず狙撃にだけに集中させ能力を大きく引き伸ばしていた。無論、元々彼女の持つ狙撃能力が高かった事は言うまでもない。
戦局を左右する程のACEと呼ばれる者は単独での評価に目が移りがちだが、実際にはどれだけ優れた腕前を持つ者であろうとも単機で状況を覆せる事は稀だ。
だが、有り得ないが実在するのも事実。その多くの場合は単機で優れた戦果を上げるACEだけに限らず、ACEに引っ張られ所属する小隊、或いは周辺の大隊が高い士気を叩き出すからだ。
たった一機に引っ張られ周囲が練度を高め潜在的な底力を引き出す。伝染するACEの効果はやがて戦場全体を揺るがし戦局を左右する。それはMSであっても軍馬を率いて戦っていた時代であっても変わらない。
一機の行動が戦乱を動かすとはそういう事だ。大きな力の流れを作り出す者こそがACEになりえるのだ。
「……終わりだ」
実力を引き出された結果かどうかはさておき、的確なセシリアの援護射撃を味方にゴーレムの懐に潜り込んだユウの目が関節部を捉える。突き上げられたビームサーベルが右関節部の装甲を貫き引き裂いた。
左右それぞれの関節部に入った攻撃は最早致命的なレベルであり両腕の可動範囲が狭まれば満足に腕を振り上げる事さえ敵わない。
突き刺したビームサーベルを引き抜き、そのまま守る腕がなくなった胸部を斬り払い幾重にも重なった装甲板が弾け飛ぶ。
「もう眠れ」
ユウは戦う為に利用された少女を知っている。蒼を巡る戦い以降、彼女がどうなったかは定かではないが、少なくともユウはあの語り掛けてきた少女の心を感じる事が出来ていた。
少女、マリオンとゴーレムは決して同列に語れる存在ではない。幻影を重ねている訳ですらない。
所詮は物言わぬ機械であり、戦うための兵器に過ぎない。ISでもないゴーレムに心に類似するものも存在しない。
ISのようでISではないISのようなもの。これはISとなったブルーディスティニーにも言える事ではあるが、意思を持たず戦う為に利用されるだけの存在ならば、この場で破壊してやるのが裁く力を持つ者のせめてもの努め。
振り上げられたビームサーベルの光が物言わぬゴーレムのセンサーレンズに反射する。
「……っ!!?」
だが、刃が振り下ろされる事はなく、反射的にその場からブルーディスティニーは後退る。
次の瞬間に響いたのは大気を揺るがす振動と焼き尽くすエネルギーの光の波。
≪上!≫
「上ですわ!!」
ブリリアント・クリアランスを本来の使い方である狙撃特化としてゴーレムを注視していた為に発見が遅れてしまった。
束とセシリアの声に視線を上げればそこ現れたのは灰色の全身装甲、もう一機のゴーレムの姿。
「信じられませんでしたが、やはり無人機でしたのね」
新たに現れたゴーレムの放ったエネルギー砲が先程まで自分達と戦っていたゴーレムを打ち砕いた。
その意図は分からないが、砕け散った装甲の内部に生体反応は感じない。
ブルーディスティニーが頭部を狙う事に躊躇わず、関節を打ち抜いても平然としていた様子からも予感は出来ていたが確信には至っていなかった。
「……何故だ」
≪一機目が動けなくなった段階から動力が止まってたからね、半ば自爆みたいなもんだよ。二機目が格段に強いわけじゃない≫
ビームライフルで装甲が抜けなかったにも関わらず同じゴーレムのエネルギー砲でゴーレムが砕けた理由を束は告げる。
同時にゴーレムと言う特性を理解したつもりになっていた自分達の落ち度も理解する。ISコアが使われていないと言う事は量産されている可能性があると言う事だ。
だが、ユウの心に生じた想いはそんな単純な話ではない。
「お前達はこんな事をする為に生み出された訳ではないだろう」
束も言ってた「本意ではない」使われ方。
宇宙世紀の歴史を紐解けば特攻やMSの使い捨て、人間の命を何とも思わない作戦と言うものは少なからず存在する。
それを肯定するつもりはなくとも現実として受け入れてはいる。ましてや目の前で砕けたのは無人の兵器に過ぎない。感情を持ち込むのは筋違いだ。
だが、それでもだ、戦場で幾多の命を奪い去ろうとも、使い捨てにされる悲しい兵士の姿は見るに堪えない。
──EXAM System Stand By
ヴォンと短い音を立ててブルーディスティニーの瞳が緑から赤に変わる。
その変化にセシリアは気付くが新手に対する注視を怠る訳にもいかず疑問を口にする事はない。
≪EXAM? ユウ君、それは意味がないって≫
「博士、貴方はまだブルーを理解していない」
≪え?≫
「EXAMはシステムの一つに過ぎないが、ブルーの全力を表す記号でもある」
≪全力……≫
「覚えておくといい、こいつは最高の殺人マシンだと言う事を」
もしこの場にNTと呼ばれる人間がいたならばブルーディスティニーから立ち上る赤い狂気に気が付いたのかもしれない。
「俺自身の意志として、貴様を討つ!」
兵器ならば戦いに利用されるのが当たり前だ。
無人機としてのあり方は間違っていないのかもしれないが、戦争と言う人の意思を左右する場でその力は使っていいものではない。
故に、ユウ・カジマはその存在を否定する。
ブルーディスティニーとブルーティアーズ。二機のブルーがいると呼称が中々難しい。