IS ~THE BLUE DESTINY~   作:ライスバーガー

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第80話 青の部隊(前)

篠ノ之 束はISを生み出す以前から天才だった。

果て無き知識の探求の行き着いた先が人類未踏の地、宇宙。

正確には深海や大森林の深部、人類がまだ踏破せぬ地は存在するが、天才の目は母なる星には収まりきらなかった。

ISは元々は宇宙開発を主目的として生み出されたしたパワードスーツであるが、もう一つ、束が作り上げようとしていたものがある。

無人端末、通称ゴーレム。ISのサポートを主目的とし宇宙と言う果て無き世界に対する目であり手足になる予定であったもの。

結果としてISの現状は言うまでもなく、宇宙を夢見た少女の願いは叶わず、ISは武力としての道を歩んだ。

頓挫した夢に伴いゴーレムは生まれ変わる。世の中を粛清する為の先兵として、対IS用ISとして束が再設計したものこそが新しいゴーレム。

しかし、これもまた頓挫する。

ユウ・カジマ。宇宙から落ちてきた異物によって少女は人間の可能性を垣間見る。血の通わない兵器ではなく、人間としての改革を志す。

無人機の有用性を否定はしないが、エレガントではないと少女はゴーレムを使用しない決断を下す。

二度に渡り存在を否定されたゴーレムは三度、その姿を変える。

篠ノ之 束の拠点であった孤島が攻撃され、逃げ出す選択肢を選ばる得なかった結果、主人を失った島に残された設計図は狂気を孕む亡国機業の手に渡る。

元々は世界に公表されているISコアとは別に新しいコアを用意しコアネットワークにて遠隔操作での運用を想定していたゴーレムであるが、コアは愚かネットワークに関しても詳細に把握出来る者は束を置いて他にいない。

武器や装甲と言ったISのハード的な面はともかくとして、束以外にコアを新しく用意出来るはずもなくゴーレムは束が想定していたものとは違う変化を遂げる事となる。

 

束が基礎設計を施した戦闘用の機械人形、それだけでも常識を逸すると言っていい。

何よりもその大きさが異質だ、束の設計段階では長い腕を含め二メートル程度だった全長が五メートルにまで巨大化している。

人型こそしてはいるが、手が足よりも長く一ミリの隙間もない全身装甲。その巨体を無理やり制御する為か全身の至る所にスラスターが装着されており、頭部に不規則に備え付けられたセンサーレンズは前後左右を分け隔てなく見渡せる。更に異様に長い両腕の先端には大小様々なビーム砲塔が口を開いている。

亡国機業の技術者達は初めからこのサイズで作りたかった訳ではない。可能であれば元々の設計通り平均的なISより少し大きい程度で作りたかったはずだ、これが亡国機業の、束以外の技術の限界。

足りない技術を補う為の苦肉の策。束であれば作れた大きさをを必要としない強固なエネルギーシールドの変わりに堅牢な装甲板を何重にも重ね、束であれば作れた小さくも圧倒的な機動力を生み出す推進器の変わりに大型で場所を取るが爆発的な加速を作る推進器を内蔵し、束であれば作れた小型で大出力のエネルギー兵器の代わりに大型で大出力のエネルギー兵器を搭載した。

防御力の為に、機動力の為に、攻撃力の為に、束であれば小型化出来た内容を補った結果が巨体化と言う結論。

単純に大きくなっただけであれば的と言えなくもないが基本設計が対IS用ISであり、亡国機業と言う狂気が加算されたのであればそれは最早暴力の化身。悪夢の顕現と言って差し支えない。

 

 

 

センサーレンズに映り込む空虚は物言わぬ人形故であるが、見上げるセシリアには相手が無人のゴーレムと呼ばれる存在であると知る術はない。

頭ではアレがISであると肯定しているが、ISである事を否定したくなっているのも事実。放たれたエネルギー攻撃の残留反応からもアレが敵である事は間違いないにも関わらずだ。

高度差があってもハイパーセンサーは嘘をつかない。その大きさを示す数値が有り得ないものである以上、驚嘆を覚えるしかない。

 

「繰り返しますわ、何者ですの?」

 

背筋を流れる冷たい感覚に言い知れぬ恐怖と緊張感の現れを感じながら再度問い掛けるが返事はない。

返ってくるのは温度を感じない視線を砲塔となっている長い腕をセシリアに向け、先端にエネルギーを集中させる攻撃の意思表示。

 

「問答無用と言う訳ですのね!」

 

狙いが自分に定められているのならばとセシリアは地面を蹴り上げ空高くに舞い上がる。地上で受身に回る危険性を狙撃手の立場から良くわかっているからだ。

おまけに相手は高火力の遠距離兵器を搭載している。住宅地から離れているとは言え地上に撃ち込まれでもすれば被害は甚大なものになる。

戦闘を行い犠牲を出しましたとはいかない。代表候補生や専用機乗りに関わらず人命救助はIS乗りの最優先事項なのだから。

 

「狙いを私に絞っていると言うなら、無差別攻撃ではなさそうですわね」

 

高速で直上する自分を追いゴーレムの照準が高度を上げるのを確認し内心で安堵する。

無差別破壊を目的とした相手であれば阻止する難易度は高くなるが、攻撃対象が明確なら対処のしようはある。

高度を上げながら超高感度ハイパーセンサー、ブリリアント・クリアランスを展開。ハイパーセンサーに上乗せし対象を観察する視力を上げる。

同時に展開した武装はスターライトMkⅢ。ストライク・ガンナーと共に増設された新しい武器スターダスト・シューターよりはサイズも威力も劣るが基本にして最も手に馴染んだレーザー式の狙撃銃。

 

「貴方が何者か知りませんが、私と踊りたいと言うのならお付き合いして差し上げますわ」

 

凛と言い張る言葉が相手に通じたかどうかは定かではないが、感情のないセンサーレンズは言葉を発する事なく、セシリアの一挙一動を逃すまいと見詰め続けている。

代表候補生としても貴族としても人前に立つ場面のあるセシリアだが、観察とも取れる視線を全身に向けられては不快感を覚えずにはいられない。

秋の夜空、移り変わりの激しい季節ではあるが、今宵は薄い雲が掛かるだけで深い群青の空に輝く月が美しく二機を照らすがロマンチックの欠片も感じない。

 

「……行きますわよ」

 

既に初手は相手が撃ってきている。正当防衛の理由もあるが、代表候補生に銃を向けたのだ、粉砕する理由も十分だ。

エネルギー砲塔を勤めている長い腕を向けたまま動かないゴーレムに対しセシリアが動く。

使ったのは一零停止、空気が軋む程の音を響かせ、澄み渡る青い雫の名を冠する機体が僅かに残像を残し消える。

高速移動と瞬間停止の技術の組み合わせによる擬似的な瞬間移動を用いてセシリアが姿を表したのは先程の位置よりも少し後方。

千冬がブルーディスティニーに対し使った接近し間合いを詰める為の一零停止ではなく、距離を開き射程を整える為の手段としての一零停止。

スターライトMkⅢから放たれた光線は的確に胸部中心に命中、高威力のレーザーが激しい震源を作り物言わぬゴーレムの姿勢を崩し、分厚い装甲に亀裂を作る。

 

「大きい上に硬いですわね!」

 

損傷こそ作ったものの貫けなかった。

ISである以上はエネルギーシールドを持つ事が前提だが、ゴーレムはシールドではなく強固な装甲による防御だけでスターライトMkⅢの一撃を防いで見せた。

短く舌を打つセシリアに対するゴーレムは一撃を受けた事を何とも思っていないかのように自然な動作で右腕をセシリアに向け、先端から極太のエネルギーを放つ。

 

「っ!?」

 

反射的に跳ね上がり更に上へと飛翔し砲撃を回避するが、直撃を与えた上で反撃されるとは思わなかったセシリアは驚きを隠せられなかった。

スターライトMkⅢによる射撃は確かに命中しており、例えダメージがなかったとしても次の攻撃対する恐怖心は植え付けられたはずなのだ。

真っ直ぐ上を目指すセシリアは月夜を突き抜け一気に高度を上げる。

空と大地の中間に位置していたゴーレムから追撃のビーム砲が二発放たれるが背後からの射撃に対し横軸の回転と上昇を組み合わせたバレルロールで回避しながらも上を目指す。

ストライク・ガンナーをブルーティアーズの新しい足であり翼とするならハイパーセンサーの性能を大きく引き上げるブリリアント・クリアランスは新しい目であり耳だ。

視神経や脳処理に負担が掛かる事からも通常は狙撃時のみの展開であり常時発動は好ましくないが、相手の異質さからも注視は怠れない。

スターライトMkⅢ以上の火力を誇るスターダスト・シューターはストライク・ガンナーとエネルギー連動をして運用する必要があるが、ブリリアント・クリアランスは別枠だ。ブルーティアーズそのものに新しく量子格納されており、必要に応じて展開が出来る。

相変わらずショートブレードのインターセプターを除きエネルギーによる射撃兵器で成り立つ機体構成ではあるが、攻撃力で言及すればバラエティに富む一年生専用機持ちに引けを取るものではない。

にも関わらず、眼下から競り上がるように高度を上げセシリアに接近してきたゴーレムにはダメージを通すことが出来ない。

 

「……本当にISですの?」

 

IS以外は有り得ないと知りながらも呟かずにはいられない。

ハイパーセンサーを上回る感度を持つブリリアント・クリアランスが告げている現実はそれだけ許容し難いものだった。

胸部、間違いなく命中し装甲を抉り与えた外傷が蠢き、じわじわと周辺装甲が重なり合い、少しずつだがダメージに修正が掛かっていっているからだ。

 

薄い雲を抜けた先、夜の月が見守る高高度にて二機が対峙する。

改めて直線上で相対すればその巨体さが如何に異質なのかが良く分かる。

ダメージが回復している現実に思い返されるのは紅椿の単一仕様能力。銀の福音との戦いで底をついていたエネルギーを回復させ逆転に導いた束の切り札の一つであろう一手。

だが、今回はエネルギー所の騒ぎではない。物理的に装甲に修正が掛かっているのだ。有り得ないと思いながらも目の前の現実から目を逸すわけにはいかない。

正体不明の相手が問答無用で撃ってくる限り、撃滅の覚悟なしに戦える相手ではないとスターライトMkⅢを握り締める手に力を込め引き金を絞る。

射撃と同時に軸移動で身を逸らし、同じ場所に留まらない狙撃の基本はISであっても変わらない。

スターライトMkⅢでダメージが通らないのであればビットの攻撃力でも貫通は難しいだろう。

単純火力であればスターダスト・シューターを使うべきだがストライク・ガンナーとの連携装備故に個別展開出来ない。

狙い済まし放たれたのは四連射、何れも的確に堅牢な装甲の縫い目とも呼べる肩口の関節部に命中させ鈍い音と共に装甲の表面が弾けるものの、ゴーレムは意に介さず接近戦に移行する。

両手を左右水平に持ち上げ遠心力を生み出しまるでコマのように横回転、空気を切ると言うよりは叩きつけるように重たい拳を振り乱しながら突進を開始する。

 

「出鱈目な!」

 

射撃が通じないのであろうとも攻撃手段として他に有効打が見い出せない以上は撃つしかない。

照準を外す事なく後退を余儀なくされながらも浮かび上がる疑問は益々膨れ上がる。

ISにはPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)があり姿勢制御、加速、停止等の三次元的な補正を自動で行ってくれるシステムが搭載されている。

が、PICが働いているにしても横方向への高速回転が生み出す視点変更は空を飛ぶ感覚に慣れた者でさえ方向感覚を失い空間酔いに陥る場合さえある。

しかし、目の前の相手はそんなものは関係ないとばかりに激しく一方向に回転している。IS搭乗者としての常識を逸している。

放たれたスターライトMkⅢからの射撃は着弾と同時にゴーレムの装甲を弾き飛ばしているが高速回転する堅牢な装甲に決定だは浴びせられず、回転により生まれた遠心力は更に防御力を高めており突破が出来ない。

 

現状を打破する為にセシリアの脳内では様々なシミュレーションが高速で展開される。

イチかバチかインターセプターを使い正面からぶつかる方法、ビットによる飽和射撃、ミサイルビットによる火力頼みの攻撃。

現状使える武器から攻撃方法を演算するが何れもイメージが現実と重ならず有効打になるとは思えなかった。

それどころかイメージトレーニングの弊害とも言うべき最悪の想定ばかりが頭を過ぎる。攻撃が通じず巨大な腕で殴り飛ばされる。或いは極太のエネルギー砲で粉砕されるイメージだ。

 

「くっ!」

 

引き金を引きっぱなしに射撃を続けながら後ずさるセシリアの抵抗を嘲笑うようにゴーレムが肉薄。

距離を取ればビーム砲が飛んでくる以上、遠距離での撃ち合いは好ましくないと結論付け機動戦にもつれ込ませるセシリアの狙いは成功しているが、間合いを詰め力量を発揮するのはゴーレムの方だ。

目前に迫る太い拳に対し取った回避は直撃寸前にブルーティアーズの全ブースターを停止させての落下、重力に身を任せる時間は一秒にも満たず、即座に真下に全力機動。

ゴーレムが下方向を意識する時間を与えずにブースターを吹かしゴーレムの背面に急浮上、至近距離からスターライトMkⅢを放つ。

後頭部に命中した一撃はその名の通り星の光となり夜空に花を咲かせるが、セシリアの目に映ったのは勢い良く振り返るゴーレムの姿。

頭部パーツに並んで機械的なセンサーが慌てて回避運動に入るセシリアを逃すまいと両腕を振り上げ力任せに叩きつける。

 

「っ!!」

 

物理的にも大きな一撃に悲鳴を上げずに食いしばり、落ちてきた暴力に屈する事なく距離を取り直す。

 

「中々やりますわね」

 

それが強がりである事はセシリアにも分かっている。

常時ゴーレムを含め宙域を観察しているブリリアント・クリアランスが後頭部に直撃させた攻撃に対し修復が始まっていると教えてくれており、初撃の胸への攻撃によって出来た損傷は完全にではないが塞がりつつある。

射撃でダメージが通らず回復までされる始末。おまけに相手の一撃で大きくエネルギーが削られる。理不尽な、と喚きたくなる衝動を抑え込めているのは蒼い死神と戦った経験故だろう。

幸いなのはゴーレムの動きは直線において爆発的だが機敏ではなく、対応出来ない程に絶望的な状況ではないと言う事。問題なのは相性だ。

対象に断続的なダメージを与えられる甲龍やシュヴァルツェア・レーゲン、一撃必殺の威力を誇る武器を有するラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡであれば立ち回りは違ったものになったかもしれない。

全周囲から攻撃可能なビットも同時に動けない以上は突破されれば対抗手段がなく、距離を取ればビーム砲、近づけば力任せに殴りつける。頑丈な装甲を持つからこそ出来る単純にして効果的な攻撃手段に成す術がない。

地上への被害も考えながら勝機を見出す必要のあるセシリアに取って状況を覆す一手が必要だった。

 

「……え?」

 

負けはしないが勝つのが難しい現状に思考の行き止まりに陥りかけていたセシリアは近づいてくる存在に気づく。

狙撃手として広い視野を持ち未知の相手を観察する為にブリリアント・クリアランスを使っていた結果、敵の増援でもIS学園や日本からの援軍でもない、個の中で最大戦力を持つ勢力の介入に。

 

 

 

 

対IS用兵器と言うものは実用的かどうかはさておき存在する。

最も代表的な例で言えば欧州連合も所有している電磁ショックロッドや鋼鉄製の投網、各種ジャミングやジャマーを搭載した対IS用特殊車両であるが高速で移動するIS相手に目立った成果を上げているとは言い難く、暴走状態にあったとはいえ戦いの素人であるくー相手に通用しなかった。

例外的なものと言えば倉持技研のトリモチ弾だがアレは篝火 ヒカルノの趣味の領域だ。効果的とも言えるが悪趣味と言い換えてもいい。

対IS用兵器ではないがクアッド・ファランクスもそれに近い存在だ。IS用にカスタマイズされているとは言え超火力を生み出すラファール・リヴァイヴ用特殊パッケージは通常兵器の延長に分類されている。

固定放題としてクアッド・ファランクスと同様のものを重要施設等に設置出来なくはないがISの防御力や演算能力がなければ所詮は固定砲台の域を出ず、効率が良い兵器とは言えない。通常兵器とは言えISでの運用が前提に作られているのにはきちんと理由がある。

IS用の装備を戦闘機に搭載する計画もあったが、重量や演算、反動等の問題から見送られ結局ISはIS、通常兵器は通常兵器と住み分けされるに至っている。

では、無人機と言う概念はどうか。

例えば無人偵察機や深海探査機、災害支援用を含め直接人が乗り込まないマシンは確かに存在する。

無人戦闘機や無人戦闘車両、その類も開発はされているが遠隔操作にしても人工知能を使うにしても技術的な壁は高く、人道的な配慮からも実戦に送り込まれるレベルには達していない。

ISの無人機計画も当然ながら上がったがほぼブラックボックスと言って差し支えないISコアの兼ね合いもあり現実的とは言えなかった。

動力をコア以外で代用した場合は人型機動兵器として動かす事は出来るが機動力の確保やISだから出来る量子変換やシールド防御が成り立たず、遠隔操作でも難が生まれ劣化ISと呼ぶにもお粗末なレベルにしかなり得なかった。

では、ゴーレムとはどのような存在なのか。

前述した通り、元々は束が新しくコアを用意してコアネットワークを介し遠隔操作し対IS用の武器を使って成り立つ予定だったもの。

今、姿を表したゴーレムはかつて束が想定したものと同一でありながら全くの別種。

 

「……博士、アレの動力は?」

≪バッテリーを使ってるね、私の設計図を元に全くの別の物として仕上げてる。大したものだよ≫

 

大きさや動力こそ違うが人型を維持したままISの武装を自在に操るのであれば束が予定していたゴーレムと基本的には大差ない。

世界中が一度は手を伸ばし諦めた形を具現化されたもの、二度も否定された上で帰ってきた悪夢だ。

 

「コアの代わりにバッテリーか、代用出来るものなのか?」

≪機械的に動かすだけならね。重力制御にPICコントロールその他諸々、コアの代わりの動力を用意したからと言って、はい出来ましたとは行かないよ。世界中の軍隊や研究施設に成功例がないのがその証拠でしょ≫

「連中はそれを可能にしたと言う事か」

≪私の設計図ありきでね、気に入らない≫

 

たった一人の天災によって世界は敗北を喫した。

だが、その一人に抗う為に大勢の天才が手を組んだとしたら、それは天災に対抗できるだろうか。

無論、その裏には束と言う根源たる天才の設計図があったからこそ到達出来たのは言うまでもない。誰も成し得なかった未知の領域を可能にしてみせた。

各国も無人機を作ろうと試みた事はあるけれど、うまくいかなかった。亡国機業は設計図を手に入れた為に完成することが出来た。

紙切れで生まれた差が世界のバランスを大きく狂わそうとしている。

 

≪それにあの機体、装甲にナノマシンが含まれてる≫

「ナノマシン?」

≪簡単に言うと自動装甲修復システムって所かな、ナノスキン装甲と言ったほうがイメージが湧きやすいかも≫

「勝手に治るのか、厄介な。……動力に核融合炉が使われなかっただけマシか」

≪あのサイズだしね、バッテリーもそう長くは続かないと思うけど≫

 

正確にはMSにもバッテリー駆動のものやナノスキン装甲を持つものもあるのだが、それはユウが知らぬ黒歴史やコズミックな世界での話。

 

≪それと動力がISコアじゃないからコアネットワークにも接続されてない。当然EXAMは反応しないよ≫

 

戦闘兵器として見た場合ゴーレムはこの上なく優秀と呼べるがISコアを有していない以上はコアネットワークやISのシールドを所有していない。その為の重装甲とナノスキン装甲だ。

束設計の恩恵で完成したISの武器を使いこなせるISのような人型の機動兵器と言うのが正しいだろう。

 

≪今まで戦いとは違って厄介な相手だけど、撃滅! 必殺! 滅殺! で宜しく≫

「いいのか、一応は博士の作品だろう」

≪だからこそだよ、こんな使われ方は本位じゃない≫

「……了解した、やってみよう」

 

青い雫が輝く戦場に死神が参戦する。




ゴーレムの説明を交えた戦闘描写はどうもくどい感じが出てしまった気がする。精進します。
……あれ? ユウさんの出番がない? 次回に持ち越しました。

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