IS ~THE BLUE DESTINY~   作:ライスバーガー

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第34話 小さな防衛線

月は分厚い雲に隠れ、虫の声も聞こえない静かで暗い夜。

デュノア社の全てが二十四時間稼働ではないが研究所は別だ。外部機関への貸出機の関係上深夜もメンテナンス作業が行われている。

研究室の扉を開いたシャルロットが最初に感じたのは違和感。次に異変に気付く。

天井からは灯りが煌々と照らしているが、作業中の機械音や電子音、或いは技師達の話声が聞こえてこない。

代わりにシャルロットの耳に届いたのは微かに響くエンジン音と静音を意識しているであろう人の動く気配。

 

「……あ、れ?」

 

不意に意識が遠くなる。

非常警報は鳴っていないが本能が危険を訴えており、異常だと気付いてからのシャルロットの行動は迅速だった。

すぐに口の内側を噛み破り痛みで意識を強引に引き寄せる。それでも足りない。意識が朦朧として瞼が重たくなる。急激な眠気が脳を揺らす。

 

(ガスっ!)

 

呂律が回らず、上手く声が出ない。刈り取られる前の残された意識で懸命に活路を見出す。視覚も嗅覚も認識できず迅速に体内に取り入れ可能なものの一つにガスがある。

ガスは元々無色透明だ。都市ガス等はガスと分かるように後付けで匂いを付与しているに過ぎず、視覚を奪うのであれば煙幕等も有効だが、この状況は違う。視覚は必要であり、敵性の人員だけを無力化する最適な手段を逆算すれば自ずとガスだと分かる。

ならばどうするか、来た道を引き返し助けを呼ぶか? 否、既に体内に摂取してしまったガスが意識を奪う方が先だ。

 

(それならっ!)

 

咄嗟にシャルロットが選んだ選択肢は前進。

残る気力を総動員して足元がふら付きながらも駆け出し展開状態でメンテナンス途中の相棒に手を伸ばす。

 

(ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ!)

 

辛うじて意識が飛ぶ前に装着が間に合うものの、状況は変わらない。

ISは宇宙での活動を視野に入れて開発をされており、これ以上ガスが体内に侵入してくるには至らないが、体内に滞留しているガスはシャルロットの脳に刺激を与え続けている。

鈍っている思考回路で周囲を確認、状況を把握してシャルロットは学園での生活が自分の危機認識力を落としていたのかもしれないと愕然とする。

夜勤組の技師達は周囲で眠りに落ちており、研究室の裏口に大型車両が横付けしている。ガスマスクを装着した男達がラファール・リヴァイヴをセットされている台座や端末と一緒に車に積み込んでいる真っ只中だ。

 

「あん? 今、入ってきたのお前か?」

 

ラファール・リヴァイヴを運び出している男達に指示を出しているらしき女が振り返る。

シャルロットの行動が数秒でも遅ければIS装着前に気付かれていた可能性がある。

 

「オータム様、五機まで搬入は完了しました。残り三機とあの専用機で最後ですが……」

「十分だろ、お前達は撤退しな。後始末は私がヤる」

「了解です」

 

ガスマスクにボディーアーマーと完全武装の男達は女の支持に従い撤退を開始する。

社員以外の研究室内への無断侵入や技師達に何かあった場合は警備へ伝達が行くが、その辺りは細工されていると分かる程に手際が良い。

メンテナンス用の台座を合わせて盗み出す辺り、ISだけではなく蓄積されている情報も奪うつもりなのだろうと推測できる。

 

「待て!」

 

ラファール・リヴァイヴを見す見す奪われる訳には行かないと霞みかかる視界に状況を納めながらシャルロットが辛うじて声を絞り出し叫ぶ。

身体が上手く動かない。ISは搭乗者の身体に及ぶ悪影響を取り除く機能を有しているが、既に体内を巡っている睡眠ガスを瞬時に抜ける程ではない。

搭乗者の安全の為に強制的に睡眠に陥らせるISの保護装置も今は逆効果であり、眠る方が危険と判断したのか、保護装置は働かず、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡも主人の意識を繋ぎとめようと覚醒を促し続けている。

 

「態々やられに来るなんてご苦労なこったな。その専用機も頂くぜ?」

「くっ!」

 

オータムと呼ばれた女がガスマスクを外しISを展開。装甲に覆われた八つの脚を背中に持つ禍々しい姿。ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡが即座に情報を取得しシャルロットに伝達、アメリカの第二世代型、アラクネ。近接と射撃を両立させた万能機だ。

エージェントとして様々な分野に精通しているシャルロットがその機体に気付く、目の前で展開されたアラクネは以前にアメリカから奪われた経緯のある機体だと。

研究室の状況と併せて考えればオータム達の目的が何であるかは一目瞭然。敵性と判断するには十分だったが今のシャルロットとラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは万全ではない。

メンテナンスに伴い武装が全て取り外され、機体制御プログラムも修正途中で動きが鈍い。おまけに補填されているエネルギーも少ない。

 

「お前、代表候補生のシャルロット・デュノアか?」

 

シャルロットがアラクネの機体情報を掴んだと言う事は逆も然りだ。

代表候補生は広告塔として大々的にも使われている。シャルロットに至っては雑誌に顔出しもしている程で機体情報から搭乗者に気付いても不思議はない。

オータムの口角が上がり粘り気のある嫌な笑顔を浮かべ、アラクネの八つの装甲脚の内側に仕込まれている銃器が照準を向ける。

ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡではなく、その足元でガスに襲われる直前までメンテナンス作業をしていたであろう技師に。

 

「ッ!」

「どうするよ、代表候補生さんよ!」

 

躊躇わず弾丸が射出される。

反射的にシールドを呼び出そうとするがエラーが返って来る。

シャルロットは何よりも守る大切さを知っている。自分自身が傷付く危険を冒しても箒を誘拐する際に輸送機を守る為に死神に立ち向かったように、ガーデン・カーテンと言う防御パッケージが指し示すように。

失う痛みを嫌と言う程味わい、抵抗できない無力さを噛み締めた過去があるのだ、守る行為に妥協はしない。

エラーを確認したシャルロットが取れた行動は技師を覆うように被さり背中で弾丸を受ける。鈴音が一夏を守った最後の防御手段。

 

「っぁぁああ!!」

 

衝撃が全身を貫く。ISの絶対防御が発動しているが、痛みに表情が歪む。

反撃したくとも武器がなく、守ろうにもシールドがなく、逃げ出そうにもエネルギーが無い。更にに眠たくてたまらないと来たものだ。

唐突にやってくる理不尽な暴力、世の不条理を知っているはずなのに抵抗すら許されずに現実を思い知らされる。

 

「ハッ! やっぱりIS乗りってのは甘ちゃんだな。それとも社長令嬢ってのは特別に甘やかされてんのか?」

 

罵る言葉と共に銃撃が止み、目の前の技師が変わらず寝息を立てているのを確認してシャルロットが安堵するのも束の間、その四肢をアラクネの装甲脚が掴み上げる。

手足を固定され空中で身動きを封じられてはシャルロットと言えど、呻き声を上げる程度の抵抗とも呼べない反抗しか出来ない。

 

「全力で戦えなくて残念だったな? まぁ、弱い奴の言い訳にしかならねーけどな」

 

刃物のようにギラついた眼がシャルロットを正面から見据える。それは牙を研いだ肉食獣の眼前に突きつけられた獲物と変わらない。

しかし、シャルロットの目は諦めた者のそれではない。強い意志を持って眼前の獣を睨み返している。

 

「んだよその目は、気にいらないな。その綺麗な顔を傷つけてやろうか? それとも手足をもぎ取るか? 機体は奪うとして、中身何かどうでもいいんだよ」

「やってみればいい、全力で叫んでやる」

「あん?」

「警備員が来ればお前達なんてすぐ捕まる。デュノア社を侮るな」

 

眠気で失われそうになる意識が痛みと屈辱で反芻している。普段のシャルロットからは考えられない強気な言葉。

 

「あっはっは! 結局は他人頼みかよ、代表候補生様ともあろう者が情けねーなぁ!」

 

(好きなだけ笑えば良い、少しでも時間が稼げれば)

 

「でも残念」

「っ!?」

 

愉悦的な笑みを浮かべていたオータムの表情が被虐的に歪む。

四肢を引き裂き弄ぶのではなく、シャルロットの眼前に残った装甲脚の銃口が向けられる。

 

「泣き叫ぶ余裕なんて与えねーよ。一発で終わりだ、グシャってな。助けを呼んで見たらどうだ、おとーさーん、おかーさーんってな。おっと、そういやお前愛人の子なんだっけ? 誰にも望まれて無いんじゃねーの? 安心しろよ、そのISは壊れるまで扱き使ってやるからよ」

 

瞬間、冷めていく心の音をシャルロットは自分の中で感じ取る。母を守れず、今はデュノア社の人間として技師達を守る事すら出来ないのかと無力を感じながらも冷静な自分が内側にいる。

 

「お前なんかに、負けるもんか。ばーか」

 

精一杯、強がって見せた。

多分、シャルロットが生まれて初めて他人を罵倒し自分から相手を否定した。辛い現実を耐える為の嘘ではなく、目の前の現実を否定する意志を乗せた。

迫る死への恐怖を怒りが塗り潰していた。何が琴線に触れたのかは自分さえも分かっていない。抵抗する術は無く、時間稼ぎも出来ない。不満だらけの人生だが、この人間にだけは負ける訳にはいかないと、この悪意は許してはいけないと本能が告げている。

 

「じゃぁ、死ねよ」

 

 

 

 

 

思わず目を瞑るシャルロットだが、死を運ぶ衝撃はやって来ない。状況を告げたのはアラクネのハイパーセンサー。

 

≪警告、ロックされています≫

 

オータムが驚愕に目を開き、思わずシャルロットと見詰め合った後、同時に横を見る。

次の瞬間、研究室の分厚い側面壁をブチ破り、蒼が突っ込んでくる。超高速の加速状態のまま肩からアラクネにぶつかり弾き飛ばす。

四肢が解放されたシャルロットが短い悲鳴を上げて床に落ちた。

 

「てめぇ、何で蒼い死神が出てくるんだよ!」

 

深い群青の装甲に緑に輝く双眼。無言の瞳に込められた圧力を反対側の壁際まで吹き飛ばされたオータムが睨み返す。

呆然としているのはシャルロットだ「な、なんで」と我ながら間抜けだと思いながらも自然と呟いてしまっていた。

一瞬だけ様子を窺うように蒼い死神が視線でシャルロットの無事を確認、オータムに向き直りゆっくり上昇を開始する。逃げるのではない、その視線は無機質ながら「上がって来い」と挑発している。

 

「上等だよ!」

 

アラクネが空に上がり、加速した蒼い死神が天井に穴を開けて夜空に飛び抜けて行った。

何が何だか分からないと状況把握が出来ないのは残されたシャルロットだけが視線を彷徨わせていた。

 

「助かっ、た?」

 

不鮮明な現状だが漏れたのは安堵の息。一気に気が抜けたシャルロットはそのまま眠りに落ちていく。

我が身に降りかかった不幸を整理する時間も無く、体内に残留していたガスを言い訳にしてシャルロットとラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは抵抗を止めた。

 

 

 

 

 

「すまん博士、少し遅れたようだ」

≪仕方ないよ、今回ばかりは長距離移動が仇になったね。損害はラファール・リヴァイヴが五機か、連中も中々やるね、もう居場所が掴めないよ。ステルス技術も侮れないみたい≫

 

シャルロットが飛行機と車を乗り継いで帰国を果している中、ユウはブルーで海上を進みフランスを目指していた。

ステルス状態と言えど各国に細心の注意を払い、尚且つ急いでとなれば間に合っただけでも最悪の事態を免れ御の字だろう。

ドダイと束の用意した人参型外部ブースターを推進力にしてギリギリのタイミングだった。

 

≪ユウ君が見込んだ通りだね、あのオレンジ、最後まで抵抗してたよ。ブルー相手に引き下がらなかっただけはあるね!≫

 

束が技術力で敵を褒め、更に他者を褒めている事態は驚愕だが、今はそれを追及している場合ではない。

ある程度まで上昇し移動したブルーは荒野の上に陣取り、眼下の街灯りで高度を確認。十分だと判断した位置で停止。追って来たアラクネと対峙する。

この高さであればある程度暴れても市街への被害は少なくてすむ。とは言えミサイルやマシンガンは危険性が伴う為、展開するのは両手にビームサーベルだ。

 

≪シールドの修理は完成してないし長距離移動の後なんだから、いくらユウ君でも疲れは溜まってるはずだよ。それから、連中に出来るだけ手札を見せたくない。目的は達成したようなもんだから、無理に戦う必要は無いんだからね?≫

 

注文が多い、と思わなくはないが実戦とはそういうものだ。

特にユウのような出自の軍人に取っては特定条件化での戦闘は珍しくない。単機でのミサイル基地制圧作戦や僚機が補助としても頼りないボールしかいない状況下での作戦経験もある。出来れば思い出したくは無いが華々しい戦果を上げているのも事実だ。

極力銃火器の使用は避け、デュノア社や市街地に被害を出さずに相手を無力化。束が認める程の技術力を持った相手に対し虎の子であるEXAMは使わずに、である。

 

「何とかしてみるさ」

 

 

 

 

ユウとの通信を一旦切り、束はブルーの情報が表示されているディスプレイとは別の表示を呼び出す。表示されるのはデュノア社の警備システム。

システムはオータム達に乗っ取られている状態だが、束であれば奪還は不可能ではない。もっと早くに介入していればラファール・リヴァイヴが奪われる事も技師達が眠らされる事も無かったはずだが、束には確認する必要があった。一夏や千冬の側にいる者の実力と覚悟を。

 

「憎んでくれていいよ」

 

監視カメラの主導権を奪い取り、シャルロットへ向けられた視線と小さな呟きから感情は読み取れない。

躊躇なく警備システムに介入しデュノア社の警備と救護班に研究室内での異常事態を伝える警報を鳴らす。シャルロットも技師達も眠っているだけだ、手遅れにはなるまい。

 

「中国で大規模イベントがあるタイミングにフランスを強襲か、予想通りだったね。でも、やっぱり手札が足りないなぁ」

 

打って変わって不敵な笑みを浮かべた束は視線をデュノア社内の映像から、遥か上空へ。ブルーの視線と衛星カメラの映像から二機のISの激突を確認していた。

 

 

 

 

既にアラクネの装甲脚が一本、ビームサーベルにより弾きとばされ空中で瓦礫と化しており、装甲脚による打撃も射撃もブルーには届いていないがオータムの表情には喜色が浮かんでいる。

荒野の上を選んでいるが砕けた装甲脚の欠片が市街地に流れ落ちない事を願うばかりだ。

 

「いいねぇ、アンタ最高だぜ。今まで切り刻んだどの獲物よりもヤりがいがある!」

 

短い攻防の中でオータムはブルーの性能だけでなく搭乗者の腕前を見抜いていたが、それはユウも同じだ。

オータムはISと言う武器を使って人を殺す戦い方を知っている。今まで戦ってきたIS乗り達とは一味も二味も違う。

 

七つになった装甲脚のうち二つで射撃、五つで近接攻撃、腕にはカタールを展開。受けるブルーは二刀を構え迎え撃つ。

近接主体の打突が様々な角度から面と点を伴ってなってブルーを攻め立てる。

装甲脚を防ぎ捌けば死角から両刃のカタールが首下を狙い振り払われ、身を屈めたブルーの脚がアラクネの腹部を狙い打つが、二本の装甲脚を交えて止められる。

 

「ハッ! アラクネの脚は攻防一体だ、そんな攻撃が通ると思うなよ!」

 

残る脚がブルーを狙うが、ユウは距離を取るのではなく攻めの姿勢を崩さない。

上下から来る多次元的な装甲脚の攻撃を出力を上げたビームサーベルで身を回転させながら薙ぎ払う。

一瞬で三本の装甲脚が砕け夜空に散る。距離を取らざるえないのはオータムの方だ。

 

「チッ、馬鹿みないな攻撃力だなオイ。おまけに硬いし重い」

 

ブルーの蹴りは装甲脚で防いだが、受けた衝撃は鈍く重たくアラクネに圧し掛かっていた。

攻防一体の万能機は伊達ではないが、防御の手を少しでも緩めれば瞬く間に死神の餌食になっているオータムも自覚はしている。

共に目的は達成しており、長期戦をするつもりはないが、何もせずに逃げるのも釈然としない。

 

「左から熱源!?」

 

咄嗟に身を翻したブルーの横を青白い閃光が駆け抜ける。

 

「まさかアレを避けるとはな、本物の化物か」

「エム!?」

 

挟み込む形でブルーの左後方にサイレント・ゼフィルスがスターブレイカーを構えて現れていた。

 

「オータム、撤退するぞ。目的は達成した」

「分かってるよ、もう少しだけ遊ばせろ」

「ダメだ。ここで蒼い死神と戦う必要は無い。ラファール・リヴァイヴを奪うのに成功した以上、我々の勝利だ」

 

≪悔しいけどその通りかな。ユウ君もこれ以上戦う必要ないよ。専用機を奪われなかったのとあのオレンジを守れただけでも良しとしよう≫

 

オータムとエム。二人には聞こえないようにブルーに束から通信が入る。

ユウとしてはむしろ助かる。可能であればこの場で制しておきたい相手ではあるが、不全な状態で戦うべき相手ではない。

勝てないとは思わないが、この二人は軍人とも違う、破壊の為に武器を使い、殺す事に抵抗が無い。ISを兵器として使いこなしている相手は初めてだ。

アラクネの攻撃は人体の急所を狙ってきていたしサイレント・ゼフィルスの射撃も躊躇う素振りを見せていない。

 

「興醒めだな、仕方ねーか。オイ蒼い死神、決着はまた今度だ」

 

そう言ったアラクネがカタールを格納。その手に黒い何かを展開し放り投げる。

 

「だから、これは置き土産だ」

 

ブルーのハイパーセンサーがソレを捉えるよりも早くユウは回避行動に入っているが、退避先をサイレント・ゼフィルスの射撃が奪う。

避けられないと判断し腕で防御の姿勢を取ると、オータムの投げたソレが右腕に巻き付いていた。

 

「これは!?」

 

吸着式の地雷型爆薬を連鎖させた爆弾兵器。通称、チェーンマイン。

規模こそ違うが宇宙世紀においてはMSや戦艦の装甲を剥ぎ落とす威力を秘めた高火力爆弾と同仕様。

右腕が爆風と衝撃、高熱に覆われ思わずユウが顔を顰める。ブルーの装甲はISの装甲でも群を抜いて硬く、爆薬程度で破られるものではないが、目の前で爆発するとなれば衝撃は計り知れない。

離脱していく二機のISをハイパーセンサーが捕らえているが、追いかけようとは思わなかった。

 

≪ユウ君! 大丈夫!?≫

「あぁ、問題ない」

 

ブルーの右腕装甲の一部が破損しているのがモニター越しに束も確認できた。

パーソナルデータから搭乗者にも多少なりともダメージが通っているのは分かっているが、ユウが言わないのであれば束も追求はしない。

 

≪ごめんユウ君。完全に私のミスだ、ブルーの修理も出来てない状態で戦わせるべきじゃなかった≫

「それは違う、方法は幾らでもあった。実行しなかった俺の責任だ」

 

実戦に特化した機体であろうともブルーとの性能さは言うに及ばず。オータムが実戦慣れしていようともユウの経験には到底及ばない。

だが、今この場においての勝利者が誰であるかは言うまでもないだろう。

決してユウが油断していたわけではないが、予想より上を行く相手であったのは間違いない。

今までの相手は全て防戦だった。欧州連合もIS学園も守る為に戦っていた。くーに関しては我を忘れていた状態で戦うと認識すらしていなかっただろう。

しかし、今回の相手はブルーを破壊、ユウを殺すつもりで来ていた。武力としてISを用いる恐ろしさの片鱗がそこにはあった。

 

「……フッ、ハハハ」

≪ユウ君?≫

「少々驕っていたようだ。俺もまだまだ未熟だな」

≪ふふ、そうかもね。次があるなんて甘い考えだよ。でもまぁ、私達が言うのも何だけど……。やられたらやり返さないとね? 今すぐにじゃなくてもさ。ま、ゆっくり戻っておいで≫

「了解した」




ブルーと言えば乱入な図式が出来つつある気がする。
一夏や代表候補生、クラス代表等を強化しておりますので、亡国の面々も強化されているべきかと。IS乗りと言うよりはISを武器として使っている。そんな感じです。

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