IS ~THE BLUE DESTINY~ 作:ライスバーガー
ISが世界最強の戦力である事は言うまでもない。
もしISが編隊を組み国境沿いに現れれば厳戒態勢を敷くに違いない。
しかし、その装いだけでは足りない。
単体で世界を亡ぼす力を持っていようが、うら若き乙女が肌を露出させる装備では威厳が、威圧が、圧倒さが足りていない。
空に覇者、陸に王者がいれば海には支配者が存在している。
空と海、二つの青の狭間、目に見えない境界線の主、それ以上先へ進むなら一切の容赦なく焼き払う意思表示。
男が強いと戯言を語るつもりは毛頭ない、大艦巨砲主義など前時代の遺産は実戦向きではない。
だが、それでもだ、雄々しく聳えるその姿は見る者の心に深く刻み込まれる。
水平線の彼方より現れたのは鉄と警笛、その姿は守護者にして破壊者の具現、軍艦である。
「あの旗艦、まさか!」
その姿に鈴音が目を見張る。
「くくくっ、本当にやってくれる」
思わず漏れた笑みをラウラは隠しきれない。
「えぇ、益々負けられなくなりましたわ」
油断するつもりはなくともセシリアの瞳に確信が宿る。
「軍だよね? デュノア社じゃないよね?」
何となく浮かんだ嫌な予感にシャルロットの表情が歪む。
「かっこいい……」
置かれた状況に恍惚とした熱を簪は帯びる。
「なぁ、箒、今どうなってるんだ?」
「知らん、私達がするべき事は変わらん」
周囲の浮つく空気を切り捨て眼前の敵に意識を集中させる一夏と箒。
「ねぇちーちゃん」
「何だ」
「人間って難しいね」
「人間だからな」
「そっか、そうだね」
軍は動く、それは確信として束に根付いていた世界情勢による結論だ。
だが、現実は予想を越えて現れた。
見抜く事が出来なかったのは束に経験が足りていなかったからだ。
世界と渡り合う知識を持っていても、本能としての部分を知らなかった。
幼い頃から個として確立した知識を持っていたが故、本来であれば手本になるはずの大人の姿を見てこなかった。
哲学的な意味ではなく、束は人間を知らない。
「…………」
戦闘を継続したまま、現れた軍艦を確認しユウはかつて戦闘機乗りであった自分の姿を重ね想いを馳せる。
ISを兵器として運用する未来が訪れるか、その手前で留まるか、ここはこの世界の分岐点だ。
兵器として有用なのは言うまでもないが、兵器としてではなく、ISがISとしての立場を主張する為には必要なのだ。世界に示す事の出来る軍事力を。
言葉にならない。そう表現するしかなかった。
それでも取り乱して大声を上げなかったのはスコールに出来た最後の抵抗か、或いは肝が据わっていると言うべきかもしれない。
ゴールデンドーンのハイパーセンサーは接近してくる大艦隊捉える事が出来ていた。
本当であればもっと早く気付けるはずだったのだ。
各国の通信網を遮断し脅迫を仕掛け、北極と言う全方位観測可能な地域で決戦を仕掛けた。
プランとしては完璧に近かったはず、脅迫が敗れた段階で警戒レベルを引き上げるべきだった、篝火 ヒカルノの接近に気付かなかった段階で異変に気付くべきだった。
束にレーダーが掌握されたと言う最悪の引き金は既に引かれてしまっている。
センサーが感知出来ず、人間の目視で確認が難しいにしてもISのハイパーセンサーを用いて周辺海域を哨戒していれば気付けたはずだ。
戦闘を行っていないスコールには唯一それが可能だったのだ。
もう既に手遅れだ、包囲は完成してしまっている。
「こいつぁ、壮観だ」
空を行く戦闘機から口笛混じりの声が聞こえて来る。
それは正に圧巻だった、圧倒的だった。
息を呑む音は一つや二つではない。広がる大艦隊の光景は敵も味方も震え上がらせる。
米海軍所属大型甲板航空母艦、中華連合所属超大型双胴母艦。
極めて巨大な二つの空母を筆頭に、各国空母が並び立ち、水平線から北極を中心にした包囲網が目視可能な領域に入っている。
周囲を取り囲むのは空母だけではない。巡洋艦、駆逐艦、フリゲート艦、輸送艦、揚陸艦、隙間を埋めるように潜水艦までもが配備されている。
空に参戦しているにいないに関わらず、色取り取りの国旗が風に靡いている。
「老子、後続がまだ揃っていませんが一通り配置についたかと」
双胴の空母の管制室、歴戦の勇士の覇気を滾らせた老人の後ろに控える側近が告げる。
「通信回線は?」
「全艦、近距離通信圏内です」
「うむ、では始めようか」
無線機を手に取った老人の左右、アメリカや欧州の軍艦の艦長達の映像が空中に投影される。
誰もが黙ったまま待っているのは必要な儀式。これだけの戦力が一ヵ所に集い火蓋を切るには相応の口火が求められる。
「この声を聞く全ての者達へ告げる」
スピーカーを通し、艦内外に響き渡る声は歴史の重みを実感させる深みあるものだった。
「かつて我々はたった一機のISの前に敗北を喫した」
それが白騎士を現しているのは誰の耳にも明らかだ。
白騎士事件の裏に天災が絡んでいる事は表立ってはいないが、想像は難しくない。
「それを機に時代は大きく変わった」
やはり表向きにではあるが、女尊男卑の時代は男を強いと言う風貌を一変させた。
無論、実際に政治や軍など政を動かしているのは男の方が大多数なのが現実で、女尊男卑を唄っているのは自分達に都合の良いように時代を見ているその他大勢だ。
それも一つの歴史の在り方で否定は出来ない。甘んじた男の罪か、無知である女の罪かは定かではない。
だが、男達が何もしなかったと言う訳ではない。
その最たるは軍備の強化だろう。
ISの技術を流用し戦闘機の稼働時間は大きく伸び、搭載しているセンサーは遥かに鋭敏になり、エースパイロットの腕と交われば機銃によるミサイル迎撃も現実のものとなった。
戦闘機や戦艦のステルス性能は上がり、ISを感知する為のレーダーにより広範囲を正確に探れるようになった。
IS一機に手も足も出ないのに変わりはないが、戦争です、何をしても構いませんとなれば話は別だろう。
進化したのはISだけではないのだ、通常兵器も大きく様変わりしている。
変革を促したのは蒼い死神にも言える事だ。
出現してから短期間にも関わらずISを圧倒する単機性能は世界に危機感を募らせるに十分過ぎた。
もしISが敵対すれば、もしISを使うテロリストが現れれば、その仮定が現実となるまでに時間は掛からなかった。
「個人的に言うなれば今の時代は嫌いではない。孫ほどの娘達が着飾り、空を飛ぶ。そういう時代があっても良いと思う」
各国の男達が自国、或いは知っているIS乗りの姿を思い浮かべている事だろう。
軍に関係あるなしに関わらずIS乗りは注目を集める。
その実力が高ければ高い程に非常時に国の戦力としてカウントされる事になる。
今年のIS学園一年生に多く集まっている専用機持ちとてまた然り、必要とあらば軍属に関係なく戦力として求められるだろう。
だが、それはまだ抑止力として言い訳が効く。
戦争を始めましょう、ISを使いましょう、ISで都市部を焼き払いましょう。そうなってしまってからでは遅いのだ。
「しかしなぁ、これは、違うじゃろう」
老人の瞳に紅蓮の炎が渦巻いたのを艦長達は見逃さない。
「無人機、武器商人、戦略衛星、大いに結構。戦争がしたいなら我々が相手を務めてやろう。お前達の求める戦争が国家間のものではない事は承知の上、それでも言わせて頂く。小娘一人を殺す為に世界を引っ掻き回す所業は見逃せん」
本音と建前、内に秘めたる想いを口上にする。
「女尊男卑? IS至上主義? 男が後ろ指を指される時代? そんなものは関係がない。お前達は我々軍人の逆鱗に触れたのだ」
一度だけ強く足を踏み込みダンと音を鳴らす。
声に怒気が宿り、スピーカーを通してにも関わらず北極全域に熱が伝播し闘志が満ちる。
「今、命を賭けて戦っているのは誰だ? 天災、世界最強、軍人、天使、死神、肩書はいかようにも書き連ねる事は出来るが、誓って言おう、そんな肩書に意味などない! そこにいるのは年端も行かぬ子供達だ!」
千冬や束、ユウやナターシャを子供と言えるかは微妙な所であるが、老人からすれば他愛もない事。
更に言うなら束に対する今までの世界の態度を考えれば今更何を言えなくもないが、それすらも今この瞬間においては関係がないのだ。
「子供達が命を賭ける戦場があっていいはずがない。そのような時代を我々は認めない。この時代の責任はこの時代の大人が取る、これは軍人としてではない、人間としての使命だ。子供達の未来に遺恨を背負わせる訳にはいかんのだ!」
少年兵と言うものは確かに実在する。
無くしたくても消えない傷として戦争の傷跡は各地に今尚根深く残り、紛争として現在進行形で子供達の命は奪われている。
負の連鎖をこれ以上拡大させる訳にはいかない、望んで子供達に戦争をさせるのは狂人以外何者でもないのだから。
老子の声が今か今かと出撃を待つ戦士達のボルテージを最大限に高めていく。
「ISを戦争の道具にしてはならない、戦場で女子供が死ぬ世界を作ってはならないのだ! お前達は禁忌を犯し、引き金を引いてしまった。もう御託は聞かぬぞ」
防衛としてISを使う事は女尊男卑の時代にISを使う最大限の譲歩だ。それが建前だとしてもそれ以上踏み込む事を許してはいけないのだ。
「戦士達よ、今立ち上がらずいつ立ち上がる! その胸にある誇りが飾りでないのなら、時代に抗い咆えて見せろ!」
燻っていた火種が巨大な大炎になる様子を時代の申し子達は目撃する。
「お前達の命を預かる!」
責任の所在は戦争において重要だ。
誰の命令で、誰の責任で、誰が死ぬのか、自分勝手な都合を押し付ける代償を支払う為に老人は礎になる事を宣言する。
スコールと同様の台詞であっても意味合いの異なる命の重みが時代に変化を促す。
「目標、テロリスト!」
粉砕すべき対象は世の平穏を乱す者達、亡国機業などと畏怖を込めた名ではない。
「全艦、戦闘開始!!」
口火が火蓋を切り払う。
左右のディスプレイに映し出される将校達が頷き合い、短い敬礼を飛ばす。
「全艦、攻撃開始!」
「攻撃開始だ!」
「作戦開始」
「撃ち方用意!」
「全機出撃だ」
「オペレーション レコンキスタを開始する」
「揚陸艦突撃開始、本艦はこの場で固定、支援射撃を開始する」
「行くぞ、野郎共!!」
双胴の旗艦から放たれた声を中心に攻撃指示が瞬く間に広がっていく。
それは信号だけでなく、通信障害に備えて甲板に配備された旗手からの手旗信号が鮮やかな指示となり飛ばされる。
右から右へ、左から左へ、振り上げられた旗が国から国へとたった一つの目標に対し攻撃が許可される。
「味方機の信号切り替え忘れるなよ」
「ドイツは今回は味方だからな!」
「アメリカ、ロシア、中国、全部味方だぞ! 間違えるな!」
レーダーに映っている各国の戦闘機や艦隊を示す信号が次々に変色し味方を示す青が大多数を占める。
同盟国も敵対国も紛争国も関係ない。たった一つのテロリストを相手に国と国が手を取り合った姿がそこにはある。
道中も加味すれば他国との連携を取る意味で長距離通信が使えない不便さは拭えないが目視可能距離であれば手旗信号でも、耳が届くならモールス信号でも手段はある。
通信が出来ない事は障害であっても解決できない難問ではない。
米軍の将軍が心配していなかったように、志を同じにしている者達であれば亡国機業の目を掻い潜り、今日この場に集うと彼等は確信を持っていた。
子供達が戦う未来を良しとするはずがないのだ。
「上がれ上がれ!」
「一機でも多く空へ上げるんだよ!」
「第二滑走を開けてくれ、07小隊出るぞ」
「お嬢達を死なせるなよ」
「大尉、準備出来ました」
「良し、04小隊上がるぞ」
「不死身と呼ばれた俺達の力を見せてやりましょうぜ」
手旗やデジタル信号が出撃可能を示し空母から戦闘機が続々と発艦を繰り返す。
歴史上有り得なかった組み合わせの編隊が空の上で臨時に組まれる。
空へ、空へと轟音を上げながら飛び上る鋼の勇士達に国境はない。
「揚陸艦、全速前進、取り付くぞ!」
「潜航開始、魚雷スタンバイ」
「味方機が多いから視界に注意しろ、レーダーだけに頼るなよ」
「砲撃長、攻撃許可下りました」
「よぉし、銃身が焼き付くまで撃ち続けろ!」
「ミサイル水平管開くぞ、射線上の味方機は退避しろ」
「無茶言うな、味方だらけだ!」
「なら自力で避けさせろ!」
「
行動を開始するのは空だけではない。
甲板の上で大型砲台をコントロールする射撃兵長が角度を確認し砲台が火を吹き、艦に備え付けられたミサイルが垂直に空を目指し雄叫びを上げる。
目標はすべて氷の中に隠れている空母とその付近に展開している潜水艦だ。
弾幕が激しくなれば敵味方射撃の中心地にいる束の危険度も増し、ISがゴーレムを取り漏らせば空も海も瞬く間に惨事が広がる事になる。
勢い、戦力、共に決定的に傾いた中であっても亡霊の脅威はまだ纏わりついている。
◆
北極よりやや南方、戦闘光を確認出来るギリギリの距離に一機のヘリが飛んでいる。
「これ以上は無理だ、ここだっていつ流れ弾が飛んできてもおかしくない!」
「無理でも行くのよ! 第三者の目で伝えないと意味がないでしょう!」
「だからって報道ヘリで戦地、それも北極なんて無理がある!」
乗組員は三人、パイロットとカメラマンの二人の男と後部座席で拳を握り締め北極を眺める女。黛渚子。
現在あらゆる報道は北極の戦争中継に切り替わっているが、何れも亡国機業の用意した束を殺す瞬間を映す為のカメラの映像に過ぎない。
各国が衛星カメラを使い望遠を試みているが戦地の詳細は掴めていない。
ジャーナリスト達がスクープを求め現地への足を求めた所で長距離通信が使えず、軍からの圧力により陸海空路が規制されている現状に地団駄を踏んでいる所だ。
ただ一つ例外があるとすれば、日本に更識の息の掛かった人間がいた事だ。
ただし、更識であっても動かせたのは一機のヘリが精一杯で、それも通常の報道ヘリである以上は限界ラインが存在する。
おまけにカメラを回した所で通信障害の影響で情報を本国に回せる訳でもないのだ。
「それでも行くのよ! あそこで何が起こってるか、誰が何の為に戦ってるのかを知らないと!」
無茶である事は彼女も承知している。
それでも妹がIS学園に通っている身としては世界にこの戦いの意味を知らせる必要性も理解していた。
テロリストの映像でも、軍の記録でもなく、第三者として伝えなくてはいけないのだ。
「やべぇ、黛! ミサイルだ!」
「え、嘘でしょ!!」
それが亡国機業側が放ったものなのか、各国の軍艦が放ったものなのかは分からない。
偶然か意図された攻撃か、何れにしても報道ヘリに防ぐ術はない。
が、目を瞑り衝撃に備えた彼女達を襲ったのは熱風だけだ。
「へ?」
煽られるヘリの姿勢を建て直し、視界に現れたのは頑強な装甲を持つ迷彩柄の軍用ヘリ。
「アンタら、国籍は?」
近距離通信にて語り掛けられる男の声に自分が無事である事、目の前の軍用ヘリがミサイルを迎撃してくれた事を理解する。
「もう一度聞くぞ、国籍は? 何人かって聞いてんだ」
「に、日本です」
「三人ともか?」
「三人とも日本人です」
「オーケー、艦長、言質取れましたよ!」
渚子達はその時になりやっと気付けた。
自分達の足元、海上に小型の駆逐艦と潜水艦が姿を現している事に。
「え、なんで貴方達が……」
迷彩柄のヘリは一機ではない。
合計四機が報道ヘリを取り囲んでおり、掲げているのは日の丸だ。
「だって、日本は! 自衛隊は出撃できないはずでしょう!?」
その通りだ、北極に集った各国戦力に日本がいないには理由がある。
日本は北極に戦力を向けていない、否、向ける事が出来ないのだ。
日本に対する縛りはIS学園が設立された際に国際法によって定められている。
IS学園と言う特殊な学園をどの国に置くかを当時揉めたのは言うまでもない。
束や千冬がいるとはいえ、国家に属さず国家を上回る戦力を持つIS学園を抱え込む事は容易ではないのだ。
万が一、世界大戦でも勃発しようものなら学園を抑える事が出来れば瞬く間に優位に立ち覇権を握る事に繋がるからだ。
その為、日本にIS学園を置くに辺り、国際法は日本に規定を定めた。
それが日本の持つ武力、即ち自衛隊は自国が戦闘に巻き込まれるまで一切の攻勢を禁ずると言うもの。
自分達から討って出る事は許されず、攻撃に晒されるまで何もするなと言う規律は防衛のみを唄うならば従来と大差はない。
ただしそれは今回のような場合にも何もするな、大人しくしておけと言うものだ。
北極で戦っている中に日本人はいるが一夏や千冬はIS学園所属であり国の法整備上では手が出せず、束や箒は戦争の中心人物だ。
救出を理由に参戦できなくはないが、束に対し今まで世界が取っていた態度を考えれば今更救出など虫の良い話だ。
世界中の軍が動いたのはテロリスト討伐の命題とISの未来への危惧があっての話だ。IS学園を自国に置くと言うのは簡単な話ではない。
故に首脳陣は頭を悩ませながらも出撃の許可は出せなかった。
妥協案として領海を大きく越えながらも北極ギリギリまで防衛と言う名目で哨戒に動く事。これが最大限切れる手札だった。
その妥協事態は世間体はともかく世界的に非難される謂れはないもの。
だが、状況は変化する。
更識の手が掛かった報道が動いた偶然、自国の防衛と言う名目で北極ギリギリまで哨戒を行っていた偶然、二つの偶然は出会ってしまった。
領海を凌駕していながらも、非常事態による防衛線であると言い張るつもりだった日本政府の考えを英断と呼べるかどうかは後の問題。
必要なのは現実だ。
特別な人間を助けるのに理由を探すのは大変だが、一般人を助けるのであれば動く理由に申し分はない。
「勇気あるお嬢さん、エスコート役が必要ではないかな?」
渚子の困惑を他所に駆逐艦の艦長が決断を下す。
「長距離通信が出来ない以上、現場の判断で我々は行動を開始する。異論がある者は退艦を許可する。場合によっては国賊扱いを受けるかもしれんが、死地に赴く覚悟がある者だけついて来い」
異論は出ない。
日本の立場、IS学園を国土に抱え込む意味、参戦する事で世界から非難されるかもしれない。
それでも彼等も燻っている火種だ。子供達が戦い、自分達が何も出来ない歯痒さを味わっていた中で自国の人間が攻撃された事実は彼等に戦う理由を与えるに十分だ。
それが例え無茶であろうとも、無理矢理であろうとも、突き進むだけだ。
「これより我々は自衛権を行使する」
IS、何それ?
そんな状況になってしまった。