IS ~THE BLUE DESTINY~   作:ライスバーガー

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第109話 IS GENERATION

銀世界に開かれた扉から光が溢れる少し前。

ラウラとエムが激突し、迸る剣撃の光が幾度となく交差し刃を走らせ合っている。

第三世代機の中でも高い完成度を誇るシュヴァルツェア・レーゲンはIS全体の性能で見て上位に食い込む優秀な機体であるが、現在は姉妹機やパッケージの装甲を流用した応急措置の機体に過ぎない。

対するサイレント・ゼフィルスはイギリスがブルーティアーズの姉妹機として作り上げた最新鋭機であり、この日の為に調整された決戦兵器だ。

共にフルスペックでぶつかり合えばISファンが熱狂する好カードになるに違いないのだが、現在両者は得意としている距離の戦闘ではなく、刃を使い殴り合っているようなものだ。

片や千冬から借り受けた刀、片や桃色に輝くナイフと機体適正を無視した間合いだ。

それに加えてエムは感情メーターが振り切ってしまい、まともな精神状態で戦えていない。だからこと言うべきだろうか、両者の戦闘レベルは拮抗した状態に陥っていた。

 

「うぉおお!」「ハァァア!」

 

何度目かの交差で力比べの装いになった両者の視線が激突し至近距離で睨み合う。

 

「貴様に私の何が分かる!」

「分かるさ! 私には貴様の怒りが良く分かる」

 

人形だった過去を受け入れ先へ進む道を選んだ少女と人形である事を容認できず過去に固執する少女。

やり場のない怒りは自分を生み出した相手へと向かう事を似て非なる者は理解出来てしまう。

怒りも悲しみも、追い求めても手が届かない虚しさも、ラウラは経験してきている。

 

「分かるならば退け! 織斑 千冬を殺して私は初めて私になる!」

「違うな、間違っているぞ! 織斑 千冬を殺した所で何も変わりはしない!」

 

同じタイミングで放たれた蹴りが交わり両者の間に距離が開く。

力任せに思いの丈をぶつけ合っているだけでは戦いと呼べれるレベルではない。

再び同じタイミングで背面のブースターに火が灯り、何度目か分からない激突が始まる。

 

かつてラウラは何の為に自分と言う命が生み出されたのか理解出来なかった。

造られた存在であり戦う為の道具、狂気の産物であった自分を理解する必要はなく兵士であればそれでよかった。

だが、出会った。失敗作でも兵器でもなく、人間ラウラ・ボーデヴィッヒになれと言ってくれた人に。

千冬が引っ張り上げてくれなければ今尚人形だったかもしれない。

娘や孫のように可愛がってくれる人達がいた事も、部下であり仲間である者達と共に進めた事も、偶然が積み重なった奇跡のようなもの。

エムは出会えなかったのだ。

自分を肯定し引き上げてくれる恩師にも、共に進む仲間にも、愛してくれる人達を少女は知らない。

内に眠る千冬としての力を欲し、互いを利用しあう関係しか築けなかった。

目の前に自分を生み出す切欠になった張本人がいるのであればエムの感情が殺意に支配されるのは当然であり、エムも湧き上がる怒りを否定しない。

ラウラにはその気持ちが分かってしまう。己が如何に幸運に満ちていたか、目の前の少女が放つ怒りの矛先も無理はないと。

だが、認めていながらもラウラは目の前の少女を否定する。

 

「織斑 千冬はもっと速く、もっと強く、もっと美しい! お前は同じではない!」

 

エムとて分かっていない訳ではない。

自分と千冬が別人であり、個としての人格を持っているのだと。

それでも事実かどうかは問題ではなく認めるわけにはいかないのだ。

自分が織斑 千冬のクローンである事実と、派生して持ち合わせている力は本物だ。

クローンとしての自分を否定すれば自分の存在意義が揺らいでしまう。

クローンであると認めてしまえば自分が自分ではなくなってしまう。

クローンである自分を否定したくとも認めなくては自分と言う存在に価値を見出せない。

エムがエムである為には織斑 千冬の力を自分だけのものにするしかない。本物がいては成り立たない。

自分より優れたオリジナルがいれば自分は必要とされなくなってしまうから。

 

「いい加減分かれ! お前と織斑 千冬は別人だ!」

「そんな事は分かっている! それでも私はそれ以外に生きる方法を知らない!」

 

振り抜いた刃がラウラの眼前を掠め、反撃に振り抜いた刃がエムの目の前を通り過ぎる。

装甲を傷つける事は出来るがあと一歩が届かない。互いを削り合う剣撃の応酬は徐々に乱雑になっており致命打には程遠い。

 

「知らないなら知れば良い! 下らないと思っていた日々の楽しさを、和菓子の奥深さを!」

「何をッ!」

「これから経験していけば済む話だ、戦いだけがお前の全てで良いのか!?」

 

並べる言葉はIS学園に通い始めてラウラが知った日々。

黒兎隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)の面々と戦いに明け暮れる日々でも人間らしさを知る事は出来ただろう、同じ境遇の仲間達と不自由なく生活出来ただろう。

だが、違う。それだけでは得られなかったものがある。

世界は広く、軍の揺り籠の中だけでは知らない事を知る事が出来た。

少し知る勇気を持つだけで世界は大きく変わるのだ。

 

「黙れぇえ!!」

 

それを認める事が出来ないなら、教えてやるのが先輩の道理。

もしエムが冷静であったならば、サイレント・ゼフィルスの性能を存分に発揮していたならば、千冬のクローンとしての接近戦ではなく適正距離で戦っていたならば、万全の状態でないシュヴァルツェア・レーゲンに勝ち目はなかっただろう。

怒りは時として強大な力になるが、同時に弱体化の最大の原因になる。

戦闘の長期化は共に望む所ではなく、両者が取ったのは大上段の構え。

千冬に教わった訳でも憧れて真似した訳でもなく有無を言わせず相手を叩き伏せるにはこれしかないと本能的に理解していた。

 

──Ready?

 

愛機が問い掛ける。

全身全霊を賭けた一撃の為に死力を尽くす覚悟があるかと、必要ならば願えと。

 

「あぁ、行こう。相棒」

 

剣に宿すのは正義ではなく、言葉にならない想いを乗せて、恩師への恩を返す為に、目の前の分からず屋に叩き込もう。

 

シュヴァルツェア・レーゲン リミッター解除。

 

機体のエネルギー出力が上がり、継ぎ接ぎ機体の装甲を包むエネルギーフィールドが光り輝く。

限界なんてないと、分かり合えるはずだと、最大出力でISの持つ可能性が光に変わる。

 

「チェストォオ!!」

 

交差し激突した渾身の力が銀世界を揺らし空気が爆ぜる。

砕けたのは桃色の刃と青い装甲、すれ違った勝者の背後で崩れ落ちるのは自虐的な笑みを浮かべた敗者だ。

 

「お前はお前になれ」

 

かつて贈られた言葉を贈る側へ。

その道が険しくとも不可能ではない成功例の言葉にエムは返事をせず、変わりに小さく鼻で笑い抵抗する意思を捨てて瞳を閉じる。

出力を失ったサイレント・ゼフィルスが氷の大地への自由落下を開始するが、搭乗者の安全を最優先にするスリープモードが働いているのを確認し追いかけようとはしない。

 

「……いつでも挑んで来い、私はIS学園にいる」

 

誰にでもなく呟いたラウラの言葉を聞けば祖国の軍人達は人間らしく成長した娘の姿に喜び泣いた事だろう。

セシリアが姉妹機との戦闘を渇望していた部分は一先ず横に置くとして、亡国機業が持つ厄介な二枚の看板の一枚はこれ以上戦闘不可能だった。

 

 

 

リミッター解除、それは天に認められた者にのみ与えられる特典だ。

ISの楔を解き放ち、本来持てる全てのエネルギーを全開にする恩恵は想像を絶する。

無茶な組み合わせで運用していたはずのブルーティアーズは自在に空を飛び、重量バランスの悪かったシュヴァルツェア・レーゲンはエネルギーフィールドで覆う事で力任せに解決してみせた。

 

「アレは限定的なもので短時間のスペシャル仕様だけどね。この戦いが終わったら元に戻すよ」

 

しかしながら天は過ぎた力を与え続ける事を良しとはしない。

尚、全ての機体にリミッター解除を施していないのは短時間で手が回らなかった事と専用機としての立場を捨ててやってきた者達への贈り物だからだ。

紅椿と白式は特殊な機体故にリミッターは解除されていないが、性能的に問題は見られない。

 

「まぁ、それはいいや。ちーちゃん、手伝ってくれるかい?」

「何をすればいい?」

 

親友が屈託なく笑う。

歪んでいない束の笑みを見るのは久方ぶりだ。

その笑みが心強く、懐かしく、二人の距離を縮める手伝いをしているように思えてならなかった。

 

「私を戦場の真ん中に連れてって!」

 

告げられた願いの意味など問わず、親友が応じる。

 

「任せろ」

 

言ってISを装着していない束の体を丁寧に抱え上げる。

右手は脇の下、左手は膝下へ、所謂お姫様抱っこであるが千冬が抱える側であるならば違和感なく溶け込める。

 

エネルギーフィールドが守っていると言っても束は生身に違いなくISの全速に耐えられるとは思えない。

故に移動速度は速くはないが、今まで沈黙を保っていた人物が動き始めて警戒をするなと言う方が無理な話。

指示があったかは定かではないが標的である束を抱える千冬にゴーレムが狙いを付けるのは当然の流れだ。

が、頭上から押し潰さんと迫ったゴーレムを銀色の弾丸の嵐が弾き飛ばす。

 

「篠ノ之博士を中心に防衛フォーメーション!」

 

シルバーシリーズが束を中央にダイヤモンド状に広がる陣を組む。

中央に位置する銀の福音からの指示により弾幕が面の制圧射撃を作りゴーレムを押し返す。

 

「露払いは私達が引き受けるわ」

 

返事の代わりに一つ頷きを返した千冬の速度に合わせ、銀の天使が護衛につく。

豪勢な光景ではあるが、何をしようとしているのか分かっている者はいない。それでもこの決戦の地で束が動くにはそれだけの意味がある。

 

 

「チッ、何だか知らねぇが止めた方が良さそうだな」

 

ゴーレムが動きシルバーが守るのであれば重要度は言葉にするまでもなく、異変を察知したオータムであるが眼前に突き出された三つの刃が進攻を阻む。

 

「千冬姉の邪魔はさせねぇ!」「姉さんの邪魔はさせない!」

 

一息で飛び跳ねようとした蜘蛛の前に騎士と武者が立ち塞がる。

 

 

戦場の中心を目指すとなれば一番の激戦区に突っ込むと同意だ。

飛び回っていたシルバーシリーズが護衛についた事で手札が減り一層激しさを増している戦火の横っ腹に銀色の一団が突っ込む。

 

「思ったより妨害が少ないな」

 

オータムを弟と妹が足止めしている事は気付いているが、それを加味しても向かってくるゴーレムの数少ない事に千冬が疑問を感じる。

速度こそ早くはないが、ゴーレムとバーサーカーに通常兵器までもが入り乱れる戦場、直衛がいるとはいえ束を抱えての進軍は簡単ではないはずだ。

 

「ちーちゃん、上だよ」

「上?」

 

お姫様抱っこの姿勢のまま束が指で頭上を示し、千冬が視線を上げる。

真上で弾幕を張っているシルバーシリーズの更に上、光の粒子を撒き散らしながらゴーレムの動きを阻害する為に動き回り、群れを押し返そうとしている一年生ズの姿がある。

 

「あいつ等」

 

この場合呟きに含まれているのは”余計な事を”ではなく”助かる”の意味である。

やや見当違いな疑問符を浮かべ上を指した自分の指を意外そうに見詰めているのは束だ。

束が他人を認識していると言う現状に千冬は改めて気が付くが、それはきっと悪い事ではない。

 

「篠ノ之博士!」

 

感慨深いと思わず色々と過去を振り返りそうになった千冬に届いたナターシャの緊迫感に満ちた声。

視線を上げた先、一体のゴーレムが防衛網を突破し間合いに飛び込んで来る所だった。

 

「心配いらないよ」

 

思わず動きを止め刀を抜くべきかと迷った千冬を束が制止する。

箒と言う姉の敵を切り払う刀があるように、千冬と言う親友を守る剣があるように、この場には傲慢を切り裂く鎌がある。

突っ込んできたゴーレムの真上から落ちてきた深い蒼が輝くビームサーベルを肩の間接から差し込み最大出力で振り抜く。

両腕を失ったゴーレムを弾き飛ばし、打鉄七刀の前にブルーが君臨し先導に入る。世界最強と世界最凶が並び立つ。

 

「こんな日が来るとはな」

「思わなかった?」

「そうだな、だがそれ以上に胸が躍る」

「おっきいもんね」

「そういう意味じゃない!」

 

談笑こそしているが、この戦力で作られた布陣で抜けないはずがない。

天災を世界最強が抱え、頭上をシルバーシリーズが固め、先頭には蒼い死神がいる。

専用機が空を舞い援護しつつ、第四世代機と二次移行機も成すべき事を果たしている。

 

追求したい言葉は山ほどある。問い詰めたい質問は切りがない。これからを考えれば胃痛は尽きないだろう。

それでも、今この瞬間に限って言えば千冬は胸躍る気持ちで満たされていた。

 

「ちーちゃん、ここでいいよ」

 

氷の大地のほぼ中心、ど真ん中に天災が降り立つ。

束を中心とし戦闘は激化しているが、誰一人諦めの色を見せず戦い続けている。

ゆっくり大きな深呼吸を行い束は天を見上げる。

同時に周囲に張り巡らせていたエネルギーフィールドが縮小、束を包む最低限のものだけになる。

 

「束?!」

「大丈夫だよ」

 

思わず声を上げるのも当然だ。

バリアの意味を持っていたエネルギーフィールドを縮小させると言う事は盾を失うと同意。

今の束の周りにあるのは極寒の地で寒さを軽減している程度のもので物理的な防御能力はなくなったに等しい。

それを察知してシルバーシリーズが防衛網の間隔を短くしより密集した防御陣に切り替えている。

 

「これで終わらせる、これで……」

 

いつの間にか束の頭の上にメカウサミミが出現している。

不思議の国のアリスをモチーフにしているであろうエプロンドレスと相まって北極の地に強い違和感を残す。

ウサミミは箒が学園祭に入り込む際に顔見知りのIS乗りに見つからないよう渡されたIS感知用のセンサーだ。

 

「コアネットワークアクセス開始」

 

バリアに回していたエネルギーも全てを探査に回し、瞳を閉じた束の頭の中に戦場を飛び交うISが信号となって流れ込む。

コアを持たないゴーレムは別として、動き回る専用機と戦場に散っているバーサーカー機を認識する。

 

(EXAMシステムはコアネットワークを介して読み取るシステム、絢爛舞踏はコアネットワークを介して与えるシステム。二つの特性を使えば……)

 

天災、そう揶揄される束の頭脳は誇張でもなく異端の域に入っている。

天才と呼ばれる者は数多くいるが、人類の歴史の中でも束と言う存在は異質なのだ。

その天災が時間を掛けて作り上げたシステムの全容が明らかになる。

 

(バーサーカーは搭乗者を支配して強制的に凶暴化させるシステム、銀の福音と同じであれば一機ずつシステムを取り除く事は可能だけど、戦場でその時間を与えてくれるはずもない)

 

コアネットワークを経由し飛び回るISの中からバーサーカーを見つけて一機ずつコアに介入を果たしていく。

それは千冬やユウから見ても何が起こっているのか分からず、ただ束が目を閉じているだけにしか見えないだろう。

 

(なら全部同時に止めてやるしかない。それも力尽くじゃなくて、自分の意志で止まって貰う)

 

空中で銃撃をしているものや氷上で殴り合っているものや停止しているもの、新しく空母から出撃してきたものも含め全十七機のバーサーカーの認識を完了する。

見開かれた瞳に宿っているのはこれから起こるであろう未来を予測した強い光。

 

「ALICEシステム、インストール!」

 

ISの行く末を左右する信号がウサミミを通して真っ黒に染まったISへ送り飛ばされる。

ISにある心に近い物とは言ってみれば搭乗者を理解して成長する脳に近い電気信号システムだ。

バーサーカーがISの根底を無視しているならばコアネットワークに介入し別のシステムに書き換えてやればいい。

それがALICE、EXAMと絢爛舞踏を参照に組み上げたISのコアネットワークへ介入し強制的に自我を植え付け、自己を取り戻させる人工知能システム。

蓄積された膨大なデータ量を解析し上書きするのは容易ではなく、束であっても辿り着くのに時間が掛かったシステムが凶暴化したコアに浸透していく。

 

「もう望まない戦いをしなくていい、私はこんな事をさせる為に君達を作ったんじゃない」

 

人によってはISは兵器としてしか見られないだろう。

IS乗りにしても相棒であり心があると思う事があっても人間と同じ扱いはしない。

何処まで行っても道具の延長上として扱われるのは宿命であり致し方ない事だ。

しかし、束は違う。

場合によっては敵対し破壊する事もあるだろう、白式を半壊にまで持ち込んだ事もあるが、コアを粉砕する真似はしない。

例えテロリストが使っているとしても剥離剤(リムーバー)を使い強制的に持ち主と引き離したりはしない。

ISがどのように成長、進化するのかを一番楽しみにしているのは束なのだ。

バーサーカーが進化の過程の一つだとしてもそれは認められない。薬物で我が子が狂う姿を見届ける事など出来るはずがない。

コアを配布し、一切関与しなかったのは他ならぬ束自身だ。

今更介入する事が正義とは言えないだろう、我儘だと罵倒されるかもしれない。

上から自我を与える方法が正しいかどうかも分からないが、これが束が辿り着いた救い方だ。

覚醒を促した子供達に呼び掛けるのは創造主としての願い。

 

「帰っておいで!」

 

コアを駆け抜けたのは0と1の電気信号なのかもしれない。

もしかするとその現象を脳内を閃光が走ったと、種が割れたと表現するのかもしれない。

理由が何であれコアは応じた。

 

その声に応じるように一機のISが静止する。

目の前で殴り合っていた黒い甲龍が止まった事で鈴音の目が点になる。

搭乗者に植え付けられているであろう毒物を取り除く訳ではないが、少なくともISから与えられている痛みは止まり、強制的に動かしていたシステムが霧散する。

一機、また一機と空中で静止してバーサーカーシステムの支配下にあったISが落下を始める。その全てが戦いを拒み、スリープモードに移行している。

 

「止まった?」

 

誰の呟きか分からないが、それが事実を物語っている。

未だゴーレムとの戦闘は継続中であるが、次々に動きを止めるバーサーカー機をIS乗り達は確認している。

 

「やった、やったぁ!!」

 

動けなくなった黒いラファール・リヴァイヴを纏ったまま氷上に蹲っているくーの歓声が銀世界に木霊する。

 

「束、これは」

「ALICEシステムはISに自我を与えるシステム。成長を見守る意味じゃ矛盾しちゃうけど、これであの子達は望まない戦いを拒否できる」

「……つまり、だ」

 

千冬の顔に笑みが浮かぶ。

形容するならば凶悪なと付け加える事の出来る強力なもの。

 

「うん、もうあの子達への被害を考慮する必要はない。ゴーレムに遠慮もいらない……。つまり、だ」

 

同じく束の顔に笑みが張り付く。

 

「全部ぶっ壊しちゃえ!!」

 

千冬、シルバーシリーズ、一年生ズが事態を飲み込み頷き合い、ブルーの瞳は赤をより鮮烈に輝かせて見せた。




例え戦闘中でも束と千冬が楽しそうにしている時間があっても良いと思う。
やっぱりこの二人は友達なんだ、と言うお話。
EXAM、バーサーカー、ALICE、何れも元々のものとはズレていますが、このような形になりました。

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