IS ~THE BLUE DESTINY~   作:ライスバーガー

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第0章 ガンダム大地に立つ
第1話 メビウスの宇宙を越えて


宇宙世紀0093年。

ネオ・ジオンと地球連邦との戦いは最終局面を迎えていた。

小惑星アクシズの地球落下。

既に阻止限界点を越え、地球の引力に引かれている。

かつて一年戦争の開幕を告げたコロニー落とし。

その様子を彷彿とさせる光景は絶望を告げるに相応しかった。

 

しかし、

アクシズを押し返そうとする白が放つ淡く優しい光の粒子。

宙域を包み込むような美しい虹色のビロードのようなオーロラの輝き。

 

彼はその光を知っている。

 

「大佐! これ以上は!!」

 

部下の制止を振り切って、躊躇なく彼はアクシズに突っ込む。

愛機であるRGM-89 ジェガンの残るエネルギーで出来うる最大加速。

激突するような勢いのままアクシズに両手を添えてブースターに全エネルギーを回す。

後の事を考える必要はない。これが落ちれば帰る場所がなくなるのだから。

 

「たかが石ころ一つ!」

 

それは誰の声だったのか。

光に導かれるように、一機、また一機とMS(モビルスーツ)が集まってくる。

敵も味方も関係ない。ただ母なる大地を守ろうとする人の意思が宇宙に満ち溢れていた。

 

戦場に奇跡などない。

ならば、これは何なのか。

今の今まで争っていた者達が互いを鼓舞し目の前の現実に抗っている。

地球に降り注ぐアクシズを否定している。

 

「ぐぁ!」

 

すぐ傍らで敵機であったギラドーガがアクシズの圧力に耐え切れず引き剥がされる。

咄嗟にその腕を掴むが支えきれず、ギラドーガは弾き飛ばされ遥か後方に消えていく。

 

小さく舌を打つ。

ネオ・ジオンも地球連邦も階級も関係ない。

人類が地球を望んでいる。その事実を否定はさせない。

この戦いが始まる際にネオ・ジオン総帥であるシャア・アズナブルは人類への粛清を銘打っていた。

ならば今こそ奴にこの言葉を送ろう。

 

「その傲慢さを償え! シャア・アズナブル!!」

 

 

 

 

 

光は宇宙を包み、放たれる。

彼はその光景を何処か呆然と眺めていた。

かつて蒼と共に駆け抜けた激動に想いを馳せて。

 

奇跡のような現実がアクシズの地球落下を防いだ。

数多くの犠牲と行方不明者を出した第二次ネオ・ジオン抗争はここに終結する。

 

払われた犠牲。

その中にMIA(戦闘中行方不明)としてユウ・カジマ大佐の名前が刻まれていた。


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