東方酔迷録   作:puc119

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第転話~こっちの巫女さんはちょっと怖い~

 

 家に帰ってきたら、紅白色の腋を出した巫女さんがいた。

 早苗さんもそうだったけど、幻想郷って脇を出すの流行ってるのかな? 女の子として流行には乗っておきたいところ。でも、腋を出すってことは見られるってことで、その……いや、うん、まぁ、生々しい話はやめておこう。女の子は男性の夢を壊しちゃダメなのだ。いや、女の子だって大変なんだよ? 今度、早苗さんにどうしているのか聞いてみようかな。

 

「えっ……あんた、誰?」

 

 奇遇だね。私も同じこと思った。

 

 綺麗な黒髪、頭には大きな赤いリボン。整った顔立ち。誰が見ても美少女と言われる容姿。私よりも歳は下で、胸は……うむ、私の勝ちだ。それにしてもこの女の子は誰だろうか?

 ホント、ここには可愛い女の子が多いね。どうなってんだよ。

 

「私は桜だよ。最近この幻想郷に来たばかりで、今は黒くんと一緒に生活しているんだ」

 

 もしかして、この巫女さんはお客さんだったりするのかな? だけど、今は黒くんがいないからどうしたら良いのかさっぱりわからない。

 んもう、早く帰ってきてよ。

 

「は? えっ……? く、黒と一緒に生活しているの?」

 

 巫女さんにめちゃくちゃ驚かれた。

 そんな驚かれても困るんだけど……やっぱりおかしなことだったのかなぁ。

 

「うん、そうだよ。それで、えと……貴女はお客さんってことでいいのかな?」

 

 何の用事もなく来たとは思わないし、やっぱりお茶ぐらいは出さないとだよね。しかし、困った。この店の中のことはさっぱりわからない。

 だって、今までお客さんが来たことなかったもん。

 

「ま、まぁそうね。お客と言えばお客だけど……」

 

 どうにも歯切れの悪い巫女さん。なんだろう、後ろめたいことでもあったりするの?

 

「う~ん、じゃあもうちょっと待っててもらっていい? 黒くんも、もう少ししたら帰ってくるはずだから」

 

 私がそう言うと、巫女さんは『わかったわ』なんて言って、椅子へ座った。

 

 う~む、これは困ったぞ。残念ながら私にコミュニケーション能力はないから、どうすればいいのかわからない。こう言う時は、やっぱり会話をした方がいいんだよね?

 人見知りだけど、沈黙は苦手なんです。

 

「えっと……貴方の名前は?」

「博麗霊夢よ。博麗神社ってとこで妖怪退治をしているの」

 

 ……うん? 巫女さんって妖怪退治をする職業だっけ?

 いや、違う。そういう職業じゃない。知識の乏しい私は、巫女さんが何をやっているか詳しく知らないけれど、お守りを売ったり境内を掃除しているイメージ。そもそも妖怪退治って何さ。

 

 

「ただいま~、戻ったよ」

 

 

 巫女さんについて、一人でうんうん考えていると、あの扉の開く音と黒くんの声が聞こえた。

 おかえり~。待ってたんだよ。

 

 帰って来た黒くんの手には何かが入った瓶が一本。どうせお酒だ。

 

「ふふっ、せっかく美味しいお酒も手に入ったから、桜ちゃんも少しどう?」

 

 ニコニコと嬉しそうな顔をしながら、私に聞いてきた。

 いや、確かにちょっと飲んでみたいけれど、今は霊夢ちゃんが来ているから、そっちの対応をしないとじゃない?

 

 

「お邪魔してるわよ」

 

 

 霊夢ちゃんが言った。

 

 

「…………」

 

 

 笑顔のまま黒くんが固まった。

 

 

 カランカランと、またあの扉の開く音がした。

 てか、黒くんが逃げた。

 

 

 無言のまま霊夢ちゃんが立ち上がり、黒くんに続いて店を出て行った。

 カランカランとベルの音。

 

 一人残される私。

 

 なんだこれは。

 

 私はどうすればいいんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 十分くらいだと思う。黒くんと霊夢ちゃんが二人で帰って来た。

 霊夢ちゃんの服の色の比率ちょっと変わっちゃったね。赤色増えたね。うん、私は何があったのかなんて聞かないよ。

 

「ただいま」

「おかえり」

 

 本日二回目の挨拶。

 霊夢ちゃんと黒くん。この二人はどう言う関係なんだろう? 一人は巫女さん。一人はカフェの店主。その間に何か繋がりがあるとは考え難い。

 

「霊夢は何か飲む?」

「日本酒」

 

 ちょっと考えると、これものすごい光景だよね。明らかに二十前の女の子が日本酒を頼むって。だって、仕事帰りのおっさんみたいだもん。

 

「了解。桜ちゃんは?」

「あれ、私は手伝わなくていいの? 霊夢ちゃん、お客さんでしょ? それなら私も何か手伝うよ」

 

 初めてのお客さんだもの。普段、掃除くらいしかしていないのだから、これくらいは手伝わねば。

 

「ん~……今日は別に良いよ。お客さんと言っても霊夢だけだから、やることも少ないし」

 

 そうなの? でも、この店にお客さんが二人同時に来るとか想像できない……

 あれ? もしかして、私っていらない子? そ、それはまずい。でも、黒くんはいいって言ってるしなぁ。その思いを無駄にするのも……

 

「ま、とりあえず、今日のところは大丈夫だよ。桜ちゃんはアルコールの少ない果実酒で良いかな?」

 

 ふむ、じゃあ今回はお言葉に甘えよう。

 そして、アルコールの少ないお酒助かります。甘いやつがいいな。

 

 

 

 

 柑橘系の香りのする甘いお酒をちびちびと飲みながら、何をするでもなく目の前にある茹でた枝豆を眺めてみる。このお酒、ジュースみたいで美味しいね。なるほど、こんなお酒もあるのか。

 

 チラリと隣に座っている霊夢ちゃんを見てみると、なんとも機嫌の悪そうな顔で日本酒の入った御猪口を傾けていた。

 整った顔立ち。どう見ても美少女。笑えばもっと可愛んだろうなぁ。もったいないね。

 

 黒くんも黙ってしまい。痛いほど沈黙が店の中を流れる。な、なんでしょうか、この空気は……

 

 ど、どうしよう。『はい、一発芸やりまーす』とか言った方がいいのかな? 一発芸なんてできないけど……

 それにしても、この空気は困る。私のせいではないと思うけど、これじゃあまるで、何か悪いことをしてしまったみたいだ。どうしてこうなった。

 

 何か会話をしなきゃいけない。でも、何を喋っていいのかわからない。そりゃあ、霊夢ちゃんに聞きたいことは沢山あるけどさ。

 

 

「ねぇ、桜……だっけ?」

 

 痛いほどの沈黙はそんな霊夢ちゃんの声によって終わりが来てくれた。

 おおー、漸くですか。ちゃ、ちゃんと会話を広げないと。頑張れ私。

 

「うん、そうだけど。どうしたの?」

「あんたは、外来人だったわよね?」

 

 此方の方を見ず、ぽそりぽそりと霊夢ちゃんが言葉を落とす。あんまり楽しげな雰囲気ではなさそうだ。

 あれかな? 外来人……ってか幻想郷の外から来た人ってのはやっぱり珍しいのかな? きっと外の世界のことが気になっているんだろう。女の子だもんね。気になるよね。まぁ、そこは任せなさい。丁寧に教えてあげるよ。

 

「うん、そうだよ」

 

 そう言えば、幻想郷へ言ったら帰って来られないって言われていた。だから、霊夢ちゃんも外の世界へ行くことはできないんだろう。

 そっか、私ももう旅とかできないのかぁ……まぁ、きっとそれ以上に素敵なことがあるはずなのです。

 

 

 

「じゃあ、どうして桜はそんなに強い力を持っているのよ?」

 

 

 

 ……はい?

 

 全くもって予想していなかった質問が来たせいで、思考が一瞬止まってしまった。

 ち、力? えっ、でも私は腕相撲、めちゃくちゃ弱いよ? 体力測定の握力検査だって笑っちゃうくらい酷かったし。

 

「え、えと……どう言う意味、なのかな? 別に私は力持ちじゃないけど」

 

 そりゃあ、霊夢ちゃんのように細い女の子との腕相撲なら勝てるかもしれないけど、私なんて一般的に見れば力のない部類になると思う。

 二の腕とかお肉でぷるんぷるんだし。いや、腕立てとかやってちょっとは頑張ってみたんだよ?

 

「ああ、えっと、そう言うことじゃなくて……う~ん、もしかして自覚ない?」

 

 漸く此方を見てくれた霊夢ちゃん。

 その顔は少々、困っているようにも見えた。

 

 あら? もしかして、また私勘違いしてる? でもなぁ、力とか言われてもよくわかんないもん。もしかして、アレですか? こう私の中に秘められた力がーとかそう言う話? なにそれ、素敵。わくわくしちゃうね。

 

 まぁ、それはないと思うけど。

 

「ねぇ、黒。どう言うなのよ?」

 

 あっ、この流れはマズい。また私だけ蚊帳の外へ追い出されるやつだ。

 私に関する話なはずなのに話についていけず、ただただボーっとするしかない未来が容易に想像できる。

 

 寂しいなぁ。

 

 

「……元々さ、才能はあったんだ。外の世界じゃ、そんな人はいないだろうと思っていたんだけどなぁ。桜ちゃんと出会ったのは偶然だし、幻想郷へ来たのも偶々。でも、俺や幽々子と関わり、幻想郷へ来たせいで……そんな感じじゃないかな」

 

 ほら、みなさい。何を言っているのかさっぱりわからない。

 さてさて、今回は何をして暇を潰そうか。

 

 はぁ、誰か解説してくれる人はいませんか?

 

「そんなことがあるの?」

「俺はないと思ってた」

 

 そう言えば、霊夢ちゃんも300歳とかなのかな? でも、霊夢ちゃんはどう見ても人間だよね。流石に14歳とかか。西行寺さんや黒くんの見た目も人間だったけど、アレは嘘だよね?

 この話が終わったら霊夢ちゃんに聞いてみよう。

 

 

「まぁ、せっかくの機会だし……ねぇ、桜ちゃん」

 

 私は何歳って設定にしようかなぁ。なんて考えていたら、急に黒くんから話しかけられた。

 めちゃくちゃ驚いた。

 

「えっ、あ、はい。670歳です」

「いや、意味わかんねーよ」

 

 ツッコミを入れらた。

 ごめんなさい。テンパってました。

 

 さてさて、何の用事なのかな?

 

 

「桜ちゃんって空を飛べたりする?」

 

 

 ……真顔で何言ってんだろ、この人。

 

 もしかして、暇だった私のためにボケてくれたの? いや、でもごめんなさい。私はそんないきなりボケられてもどう返していいのか……

 

「ああ、んと……まぁ、そっか。外の世界じゃ、まずそんなことはないもんな。ん~……その、さ。どうやら桜ちゃん、霊力があるみたいなんだ。それもかなりの量が」

 

 私には霊力がある。

 どこか場都合が悪そうに、そう黒くんが私へ教えてくれた。話は急展開。ずっと置いていかれていた私じゃそんな話にはついていけない。

 

 

 霊力――私に、霊力が……それもかなりの量。

 

 

 で、でも、ちょっと待って。私に教えて欲しいことがある。

 

 

 そもそも――

 

 

「れ、霊力ってなに……かな?」

 

 

 いや、そんな二人揃って『そこからかよ』みたいな顔をされても……

 

 





のんびり書くぞ

と、言うことで第転話でした
桜さんを主人公にしたのだから、何かしらの理由が必要かなぁ
な~んて思いこんな感じに
まぁ、ただ第繋話の伏線を回収しただけなんですけど

この作品ですが、それほど長く続ける予定はありません
ですが、かなりのんびりと進めていくので、完結はいつになることやら……

次話もまだ動かない……のでしょうか?
終わりも決めないとなぁ

では、次話でお会いしましょう

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