RED GUNDAM   作:カメル~ン

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第02話 ガンダム移送命令

 

 シャアは、サイド内で連邦軍の白い新型MS(モビルスーツ)の鹵獲に成功する。

 

 サイド7周辺で待機するシャアの部隊は、将官用ムサイと更にもう一隻ムサイがあった。

 二隻のムサイは、副官のドレン少尉が指揮し、その援護を受けてシャアらのザク隊は一機も失わず帰還し、シャアの操縦するガンダムも艦後尾から格納庫へ帰還していた。

 艦橋へ上がって来たシャアをドレンが出迎える。

 

「少佐、おつかれさまです。大成功ですな」

「君も留守中、良くやってくれた。悪いがソロモンのドズル中将を呼び出してくれ」

 

 戦場からの宇宙要塞ソロモンへの帰投途中に、連邦軍の『V作戦』を偶然キャッチしたシャアは、事前にドズル・ザビ中将へ連絡を取っていた。そして可能なら連邦の『V作戦』の新造戦艦の情報とMSを奪取せよと命令されていたのだ。

 直通レーザー通信のモニタにドズルの姿が映ると、MS鹵獲成功の経緯を簡単に説明する。

 

「さすが赤い彗星のシャアだな、すばらしい功績だ。特進を近いうちに進言しておこう」

「はっ、ありがとうございます、中将。あの、一つお願いがあります」

「なんだ?」

「連邦の鹵獲した新型MS(モビルスーツ)、私に使わせていただきたいのです。データ等についてはこちらへ技術者をお送りください」

「気に入ったか。うーむ、それに実戦データも取れるというわけか……」

「はい、敵ながらすばらしい性能の機体です。これなら新造戦艦の情報も容易く取れると思います」

「……悪いが、貴様と貴様の艦は、すぐにソロモンへ帰投しろ。残り一隻は連邦の新造戦艦を追跡してもらいたい。戦力については心配するな、こちらから別のもう一隻を合流させるべく向かわせる」

「ドズル中将……」

「こちらにも都合がある……妹がな。今は我慢してくれ、悪い様にはせん」

「……はっ、分かりました。直ちにソロモンへ帰投します」

 

 現物を手元に置き、キシリア・ザビ少将に対し大きな手柄を先んじたいのだろう。

 通信を終わると、シャアはアムロを独房へ連れて行き報告に帰って来た軍曹に尋ねた。

 

「あの私服の連邦の士官は、どうしている?」

 

 連邦初のMSに雑兵が乗る訳がないのである。若そうに見えたが最低でも少尉以上と思われていた。

 

「大人しいですが……爪を噛んでましたね」

「「爪?」」

 

 横にいるドレン少尉と顔を見合わせ、声もハモった。

 こうして、シャアの将官用ムサイは間もなくサイド7宙域を離れソロモンへと向かう。

 だが、シャアには一つ気掛かりがあった。

 赤いザクでサイド7へ侵入した折に、避難の遅れた者を探しに車で移動していたのだろう、妹のアルテイシアにとても雰囲気と姿が似ている少女を見かけたのだ。道を塞ぎコクピットからザクの手の上まで降りて彼女に向かって素顔まで見せたが、他のザクの攻撃の振動で機体が傾き、その隙に逃げられてしまっていた。

 

(あの少女、似過ぎている……せめてサイド7に残ってくれていればいいが)

 

 

 

 そのころサイド7内では、コロニーの外に二隻のムサイ級軽巡洋艦があり、鹵獲されたガンダム以外に最低でも六機ものザクが存在するという情報を掴んでおり、焦った状態での出航を見送っていた。

 さらにコロニー内の戦闘では、動きの素早い赤いMSも見たという。

 

 WB艦長のパオロは呟いた、「鮮やかな手際と言い、ジオンの『赤い彗星』では」と。

 

 また宇宙港に停泊する、地球連邦軍新造戦艦WB(ホワイトベース)の艦内に残った軍属はかなり少ない。ただジオン側がガンダム鹵獲後すぐに引き上げたため、軍人はまだ三十人ほど残っていた。とはいえ正規のパイロットは不足している、というか居なかった。訓練兵のみである。

 WB自体の操艦もスペースグライダーのライセンスしかない、ミライ・ヤシマが買って出ていた。

 そんな中で、外へ出ていけば圧倒的に不利であったのだ。

 それを是正すべく宇宙港では、テム・レイのもと、残ったMSの搬入と調整が急がれていた。

 ガンキャノンが三機、ガンタンクが二機、コア・ファイターが三機。(ガンタンクはまだ二機あったが、乗り切らずサイド7に残る)

 ジオン側は、あの場に一機しかなく『人型で希少性』があると見た、白いガンダムのみを速やかに鹵獲して行っただけだった。

 それが幸いなことに、ガンダムの予備パーツも多く残っており、なんと―――

 

 

 もう一機ガンダムが組み上がっていた。

 

 

 WBの艦橋にテム・レイが整備終了の報告に上がって来ると、艦長のパオロ・カシアス中佐が艦長席で出迎える。補佐のブライト・ノア少尉とも軽く礼を交わす。

 

「ありがとう、レイ大尉。……息子さんが行方不明なところを」

「いえ、艦長。これが戦争ですから」

 

 艦長の言葉に、アムロの父はどこか冷めた形式的な返事を返していた。

 

「私に今出来る事はしておきました。あとはパイロットの方々にお任せします」

「……ここサイド7へは、援軍を差し向けるように要望を出しているから。しばしの辛抱だと思う」

「はい、ありがとうございます。では、私はまたこの地へしばらく残って研究を続けますので。失礼します」

 

 彼は下へと戻って行った。

 サイド7の外郭には直接穴は開いておらず、また多すぎる避難民すべてをホワイトベースに乗せることは出来ない状況だった。乗艦希望者の中で、若いもの、技術の有る者とその家族のみに選別された。ハヤト・コバヤシやフラウ・ボゥの家族らは皆、無事に乗艦していた。

 フラウらは艦内の雑用を行っていた。また彼女は元気な良く通る声と、アムロからいつの間にか教わっていた機械操作がある程度出来たため、サブの通信士としても考えられていた。

 

(アムロ……どこに行っちゃったの)

 

 それからしばらくすると、艦橋にいるオペレーターの一人、オスカ・ダブリンが外のムサイ艦二隻の内の一隻がサイド7宙域を離れてレーダー外へ出て行くと伝える。

 艦長は好機と見て、間もなくの出航を決断した。

 

 サイド7からゆっくりと白い木馬風な巨体の船が出港してゆく。

 護衛にガンキャノン二機とコア・ファイターが一機。

 加えて今、カタパルトにビームライフルを持ったガンダムの姿があった。

 それらのパイロットは、船内のシミュレーターで選考されており、訓練兵並びに候補者の中から上位が選ばれていた。艦長による戦時下の特別措置だ。

 

 コア・ファイターには、リュウ・ホセイ。

 ガンキャノンには、ジョブ・ジョンとカイ・シデン。

 そしてガンダムには―――

 

 

 

「セイラ・マスです。ガンダム、発進します!」

 

 

 

 カタパルトから急加速で打ち出され飛び出し、宇宙空間を飛翔先行する白いガンダム。

 彼らの目標は連邦軍の最前線基地、ルナツーである。

 

 

 

to be continued

 

 

 




2015年02月26日 投稿
2015年03月11日 文章修正
2015年04月04日 文章修正



 WBは、生き延びることが出来るか……


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